【毎年11月実施】過重労働解消キャンペーンの活動内容と実施事例

【毎年11月実施】過重労働解消キャンペーンの活動内容と実施事例

国内における長時間労働は依然として社会問題となっており、過労死による労災認定件数も高水準で推移しています。

そのようななか、厚生労働省では、長時間労働の削減をはじめとする過重労働の解消に向けて、毎年11月に“過重労働解消キャンペーン”を実施しています。

この期間中には、従業員の健康問題や労働災害を防ぐために、企業に対して過重労働削減に向けた取り組みが推進されています。

本記事では、過重労働解消キャンペーンの概要をはじめ、主な活動内容と実施事例について解説します。

出典:厚生労働省『長時間労働削減に向けた取組』/『過重労働解消キャンペーン


目次[非表示]

  1. 過重労働解消キャンペーンとは
  2. 過重労働解消キャンペーンの主な活動内容
  3. 過重労働解消キャンペーンの実施事例
    1. ① 『ベストプラクティス企業』の取り組み
    2. ② 重点監督の実施例
  4. まとめ


過重労働解消キャンペーンとは

過重労働解消キャンペーンとは、過労死等防止啓発月間の一環として、厚生労働省が毎年11月に実施している活動です。

この活動は、長時間労働の削減をはじめとする過重労働解消に向けた取り組みを、企業に向けて集中的に周知・啓発・推進することが目的とされています。

近年、週の労働時間が60時間以上の労働者の割合は減少傾向にありますが、依然として恒常的な長時間労働の実態が報告されています。加えて、業務における過重な負荷によって発症した脳・心臓疾患、精神障がいを原因とする、過労死等の労災認定件数も高水準で推移している状況です。

このような背景を踏まえて、働き方改革関連法の施行によって労働基準法が見直され、2019年4月1日から(中小企業は2020年4月から)、時間外労働の上限規制が設けられました。

企業には、労働者の健康問題を防ぐとともに、時間外労働の上限規制を遵守するために、本活動を通じて過重労働解消に取り組むことが求められます。

期間中は、厚生労働省が主体となり、使用者団体や労働組合への協力要請、リーフレットの配布による周知・啓発等の取り組みが集中的に実施されます。

出典:厚生労働省『過重労働解消キャンペーン』『H29 過重労働解消キャンペーン パンフレット』『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説



過重労働解消キャンペーンの主な活動内容

過重労働解消キャンペーンの期間中は、使用者団体・労働組合への協力要請や企業への周知・啓発、職場訪問、事業場への重点監督などが実施されます。

主な活動内容としては、以下が挙げられます。


▼主な活動内容

活動内容
詳細
労使の主体的な取り組みの促進
  • 使用者団体や労働組合への厚生労働大臣名による協力要請
  • 傘下の企業・団体への周知・啓発の要請
ベストプラクティス企業への職場訪問
  • 都道府県労働局長によるベストプラクティス企業への職場訪問
  • 長時間労働の削減に向けた積極的な取り組み事例の収集・紹介
過重労働が行われている企業への重点監督
〈監督対象となる事業場〉
  • 過労死等による労災請求が行われた事業場
  • 離職率が極端に高いなど、若者の使い捨てが疑われる事業場(労働基準監督署、ハローワークへの相談に基づく)
〈確認・実施事項〉 
  • 36協定の違反有無
  • 賃金不払い残業の有無
  • 上記2点の法違反に対する是正指導
  • 長時間労働者に対する医師による面接指導、健康確保措置の実施指導
電話相談の実施
都道府県労働局・労働基準監督署等の相談窓口の設置
キャンペーンの周知・啓発
企業へのリーフレットの配布、広報誌、ホームページでの周知
セミナーの開催
企業の過重労働防止対策の推進に向けたセミナーの実施(無料)

厚生労働省『過重労働解消キャンペーン』『H29 過重労働解消キャンペーン パンフレット』を基に作成


出典:厚生労働省『過重労働解消キャンペーン』『H29 過重労働解消キャンペーン パンフレット



過重労働解消キャンペーンの実施事例

ここからは、過重労働解消キャンペーンにおいて、労働局が発表しているベストプラクティス企業の紹介と、重点監督の実施事例を紹介します。


① 『ベストプラクティス企業』の取り組み

都道府県労働局では、長時間労働削減に向けて積極的に取り組むベストプラクティス企業の訪問を実施しています。

ここでは、地域全体の過重労働解消等に向けて気運の醸成を図るために、運送会社における取り組み事例を紹介します。


▼ベストプラクティス企業として訪問した運送会社の取り組み事例

課題
  • ドライバーの不足による長時間労働の発生
  • 入社面接においての年間休日や有休休暇の質問の多さなど、働き方に対する意識の変化
取り組み事例
  • 完全週休2日制の導入
  • 有給休暇の取得促進
  • IT機器を活用した労務管理の実施
結果
  • 年5日の法定有給休暇の取得率100%を達成
  • 全体の有給休暇64%取得を実現
  • 書類作成・管理・情報共有など間接業務の時間短縮

京都労働局『「過重労働解消キャンペーン」の取組』を基に作成


出典:京都労働局『「過重労働解消キャンペーン」の取組


② 重点監督の実施例

次は、2020年度11月の過重労働解消キャンペーンのなかで、9,120の事業場に重点監督を実施しています。

労働基準関連法令の違反が疑われる9,120の事業場に重点監督を行った結果、以下のような法違反が認められました。


▼主な違反内容と違反が認められた事業場の割合

法令違反例
事業場数とその割合
違法な時間外労働
2,807事業場(30.8%)
賃金不払い残業
478事業場(5.2%)
過重労働による健康障害防止措置が未実施
1,829事業場(20.1%)

厚生労働省『令和2年度11月「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表』を基に作成


過重労働による健康障害防止措置が不十分な企業に対しては、以下のような改善指導が実施されました。


▼主な健康障害防止に関わる指導の状況

指導状況例
事業場数とその割合
健康障害防止措置の改善指導
3,046事業場(33.4%)
労働時間の把握方法が不適切なことによる指導
1,528事業場(16.8%)

厚生労働省『令和2年度11月「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表』を基に作成


このように、重点監督を実施した事業場のうち、健康障害防止措置が適切に行われていない企業や、指導が行われた企業が約2~3割見られている状況です。

企業は、時間外労働の上限規制の遵守に加えて、長時間労働者に対する適切な健康確保措置についても監督指導の対象となることに注意が必要です。

出典:厚生労働省『令和2年度11月「過重労働解消キャンペーン」の重点監督の実施結果を公表



まとめ

この記事では、過重労働解消キャンペーンについて、以下の項目で解説しました。


  • 過重労働解消キャンペーンの概要
  • 主な活動内容
  • 実施事例


過重労働解消キャンペーン期間中は、労使間の主体的な取り組みを促すとともに、職場訪問や重点監督の実施、電話相談窓口の設置、企業への周知・啓発などが集中的に実施されます。

また、重点監督の実施においては、長時間労働者に対する面接指導や、健康確保措置が適切に講じられているかといった点も確認対象です。

企業は、長時間労働者を放置せずに、産業医と連携して適切な措置を講じることが求められます。長時間労働者への面接指導の仕組みをまだ整備していない企業では、過重労働解消キャンペーンを機に、自社の働き方や産業保健体制を見直してみてはいかがでしょうか。

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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。新卒で大手証券会社入社。 その後、スタートアップ企業への転職を経て、2020年4月にメドピアに入社(Mediplat出向)。 クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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