安全衛生推進者とは?選任区分や職務内容、資格要件をわかりやすく解説
『労働安全衛生法』第1条において、事業者には労働災害を防止するとともに、従業員の安全・健康を確保して快適な職場環境を形成する責務があると定められています。
このような、職場における衛生管理や従業員の健康確保を行うための専門職の一つとして“安全衛生推進者”があります。
中小規模の事業場では、自社に安全衛生推進者の設置が必要かどうか、また、職務内容や資格の要件について確認しておくことが必要です。
この記事では、安全衛生推進者の選任義務をはじめ、職務内容や資格要件について解説します。
出典:厚生労働省『安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。』『1.安全衛生管理の基本』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
安全衛生推進者とは
安全衛生推進者とは、職場において労働者の安全や健康を確保するための役割を担う専門家のことです。
『労働安全衛生法』第12条の2・『労働安全衛生規則』第12条の2において、常時10人以上50人未満の労働者を使用する事業場で、安全衛生推進者の選任を義務づけています。
第十二条の二 事業者は、第十一条第一項の事業場及び前条第一項の事業場以外の事業場で、厚生労働省令で定める規模のものごとに、厚生労働省令で定めるところにより、安全衛生推進者(第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生推進者)を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除くものとし、第十一条第一項の政令で定める業種以外の業種の事業場にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当させなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』第12条の2
第十二条の二 法第十二条の二の厚生労働省令で定める規模の事業場は、常時十人以上五十人未満の労働者を使用する事業場とする。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』第12条の2
安全衛生推進者の選任の目的は、安全管理者・衛生管理者の選任が義務づけられていない中小規模の事業場の安全衛生水準向上を図ることです。
なお、この安全を管理する役割には安全衛生推進者と衛生推進者の2つの役職があります。
安全衛生推進者と衛生推進者は、業種によって選任の区分が分けられており、安全衛生推進者選任対象の業種では安全衛生推進者を、それ以外の業種においては、衛生推進者を選任して、衛生にかかる業務を担当させることとされています。
安全衛生推進者の選任区分
安全衛生推進者を選任する事業場には、以下が挙げられます。
- 林業
- 鉱業
- 建設業
- 製造業(物の加工業を含む)
- 電気業
- ガス業
- 通信業
- 各種商品小売業
- じゅう器小売業
- 燃料小売業 など
出典:厚生労働省『安全衛生推進者』
衛生推進者の選任区分
安全衛生推進者を選任する事業場以外においては、衛生推進者を選任する必要があります。衛生推進者を選任する事業場の例として、以下が挙げられます。
- 社会福祉施設
- 飲食業
- 食料品小売業
- 教育研究業 など
安全衛生推進者または衛生推進者の選任においては、必要になった日から14日以内に専属の担当者を選任します。
選任時には、所轄の労働基準監督署への報告は不要ですが、安全衛生推進者・衛生推進者の氏名を作業場の見やすい場所に掲示して労働者へと周知することが必要です。
出典:厚生労働省『安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。』『安全衛生推進者』/厚生労働省 佐賀労働局『安全衛生推進者・衛生推進者を選任していますか』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』『労働安全衛生規則』
職務内容
安全衛生推進者・衛生推進者は、労働者の安全・健康を確保するための措置や、労働災害を防止するための対策などを主な職務としています。
▼安全衛生推進者・衛生推進者の職務
画像引用元:厚生労働省『安全衛生推進者』
具体的な業務例は、以下のとおりです。
▼安全衛生推進者・衛生推進者の業務例
- 事業場の施設・設備の点検や使用状況の確認、それに基づく改善措置
- 作業環境の測定、作業方法の点検
- 健康診断の実施、安全衛生教育
- 安全衛生情報の収集、労働災害・疾病・休業状況などの統計
なお、安全衛生推進者・衛生推進者は、安全衛生業務の責任・権限を有する人からの指揮によって業務を担当する役割を担います。
出典:厚生労働省『安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。』『安全衛生推進者』/厚生労働省 佐賀労働局『安全衛生推進者・衛生推進者を選任していますか』
資格要件
安全衛生推進者として事業場に選任する人には、一定の学業の修了や実務経験、講習の受講などの要件を満たしていることが求められます。
『労働安全衛生規則』第12条の3には、以下のいずれかの資格要件を満たす人は、安全衛生推進者・衛生推進者として選任することが可能であると定められています。
第十二条の三 法第十二条の二の規定による安全衛生推進者又は衛生推進者(以下「安全衛生推進者等」という。)の選任は、都道府県労働局長の登録を受けた者が行う講習を修了した者その他法第十条第一項各号の業務(衛生推進者にあつては、衛生に係る業務に限る。)を担当するため必要な能力を有すると認められる者のうちから、次に定めるところにより行わなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』第12条の3
▼安全衛生推進者・衛生推進者の資格要件
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なお、安全衛生推進者・衛生推進者の資格要件は同じです。
出典:厚生労働省『安全衛生推進者等の選任に関する基準』/厚生労働省 佐賀労働局『安全衛生推進者・衛生推進者を選任していますか』/e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』
まとめ
この記事では、安全衛生推進者について以下の内容を解説しました。
- 選任義務と選任要件
- 職務内容
- 資格要件
安全衛生推進者は、職場における労働者の安全・健康の確保や労働災害防止のための業務を担う専門家です。
安全管理者・衛生管理者の選任義務がない、従業員規模が10人以上50人未満の事業場において、専属での選任が義務づけられています。
安全衛生推進者・衛生推進者には、それぞれ業種によって選任区分が分けられているため、自社の業種に応じて選任することが重要です。
ただし、有資格者として選任するためには、一定の学業の修了や実務経験、講習の受講などの要件を満たす必要があります。安全衛生推進者は、50名未満の事業場で職場の安全衛生水準の向上を図り、労働者の安全を守っていく大切な役割です。
一方、怪我や病気と付き合いながら働く従業員や、メンタルヘルスの不調で急な休職の申し出があった場合など、安全衛生推進者だけでは対応に悩む場面もあります。
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