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産業医面談の目的とは? 4つの実施ケースと内容、メリットについて解説

※2023年3月22日更新

産業医は、従業員の健康保持・促進や職場環境の改善などについて、医学的な立場から助言を行い、健康に就労できるように支援する役割を担います。その業務の一つとして“産業医面談”が挙げられます。

産業医面談について、「どのような目的で実施するのか分からない」「面談で何をするのだろう」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

この記事では、産業医面談の目的をはじめ、4つの実施ケースやメリットについて解説します。


目次[非表示]

  1. 1.産業医面談とは
  2. 2.産業医面談の目的
  3. 3.産業医面談を実施するケースと内容
    1. 3.1.①従業員の申し出による健康相談
    2. 3.2.②法令で義務化されている面接指導
      1. 3.2.1.長時間労働者への面接指導
      2. 3.2.2.高ストレス者への面接指導
    3. 3.3.③休業・復職時の面談
    4. 3.4.④健康診断後の保健指導
  4. 4.産業医面談の実施メリット
  5. 5.オンラインでの産業医面談
  6. 6.まとめ


産業医面談とは

産業医面談とは、健康相談や面接指導、健康診断後の事後措置などのために、従業員と産業医が行う面談のことです。

産業医面談を通じて、従業員にヒアリングを行うことで、健康状態や疲労の蓄積度、治療の状況などを把握できます。産業医は、これらの情報を踏まえて、就業上の措置や休職・復職の判断などの意見を事業者に述べることが可能です。

また、心身の健康問題の原因を明らかにして、専門医療機関への受診を促したり、従業員に対して具体的な指導・助言を行ったりする役割もあります。

出典:厚生労働省『現行の産業医制度の概要等』『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』/厚生労働省 こころの耳『長時間労働者、高ストレス者の面接指導について』『面接指導の具体的な進め方と留意点



産業医面談の目的

産業医面談を実施する目的は、従業員の健康状態・病気のリスクを把握して、治療や就業上の措置を適切に講じることです。

従業員一人ひとりの健康状態は、従業員本人だけではなく、生産性や品質といった企業の経営にも関わりのある部分となります。産業医との面談を通じて問題点を洗い出すとともに、それぞれに合わせた対策を講じることが大切です。

  産業医面談は義務? 必要なケースと拒否された場合の対応について解説 産業医面談では、病気やメンタルヘルス不調を早期発見することを目的に、従業員の健康状態、勤務状況などについてヒアリングを行います。しかし、産業医面談の呼びかけを行ったものの、従業員に拒否されてしまうケースもあるのではないでしょうか。本記事では、産業医面談が必要なケースと従業員に拒否された場合の対応について解説します。 first call



産業医面談を実施するケースと内容

産業医面談を実施するケースとして、以下の4つが挙げられます。


①従業員の申し出による健康相談

従業員からの申し出によって、産業医との面談・相談を実施するケースがあります。

産業医は、従業員からの健康や体調不良に関する相談窓口としての役割を担います。面談では、産業医が従業員の体調や病状を確認して、人事・総務部門や主治医との連携を図りながら、必要に応じて就業上の措置を講じます。

事業者は、産業医との健康相談を申し出る方法(日時・場所など)を従業員に周知しておくことが必要です。また、従業員が安心して相談できるように、産業医が入手した従業員の心身に関する情報の取扱いについても、規定・周知しておくことが重要です。

出典:厚生労働省『事業場における労働者の健康情報等の 取扱規程を策定するための手引き』『過重労働による健康障害を防ぐために


②法令で義務化されている面接指導

産業医による面接指導のなかには、法令によって実施が義務づけられているものがあります。労働安全衛生法では、以下の2つの面接指導が義務づけられています。


▼法令で義務化されている面接指導

対象ケース
労働安全衛生法
長時間労働者への面接指導
第66条の8
ストレスチェックにおける高ストレス者への面接指導
第66条の10の3

出典:厚生労働省 こころの耳『長時間労働者、高ストレス者の面接指導について』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法


長時間労働者への面接指導

長時間労働者への面接指導とは、一定の時間外・休日労働を行った従業員の健康状態を把握して、必要な指導を行うことです。

面接指導では、主に以下の対応を行います。


▼長時間労働者への面接指導の内容

  • 勤務状況の確認
  • 問診による疲労の蓄積状況、メンタルヘルス面の確認
  • 面接結果に基づく指導


長時間労働者とは、一般的に80時間以上の時間外・休日労働を行い、かつ疲労蓄積が認められる従業員が対象となります。この対象者には、管理者も含まれることに注意が必要です。

従業員の申し出に応じて実施する義務がありますが、申し出がない場合でも面談指導を行うよう努める必要があります。

また、研究開発業務従事者や高度プロフェッショナル制度を採用している場合は、100時間以上の従業員が対象となります。

事業者は、面接指導を実施した産業医に意見聴取を行い、就業場所の変更や労働時間の短縮、作業の転換などの必要な措置を講じます。

高度プロフェッショナル制度における労働時間については、こちらの記事で詳しく解説しています。

  高度プロフェッショナル制度の健康管理時間とは? 残業時間との違いを解説 高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門職に就き、職務の範囲が明瞭で一定の年収要件を満たす労働者に対して、労働基準法で定めた労働時間や休日の規定を適用しない制度のことです。この記事では、高度プロフェッショナル制度における健康管理時間とは何か、混同されやすい残業時間との違いについて解説します。 first call

出典:厚生労働省『過重労働による健康障害を防ぐために


高ストレス者への面接指導

高ストレス者への面接指導とは、ストレスチェックの結果を基に、従業員のストレス状況や就業上の配慮を検討するために必要なヒアリングを行うことです。

高ストレス者から申し出があった場合は、以下の対応を行います。


▼高ストレス者への面接指導の内容

  • ストレスチェックの振り返り、従業員への説明
  • チェックシートを用いた評価(性格傾向・業務状況・体調など)
  • チェックシートの評価結果に基づくストレス状況の説明
  • ストレスに対する従業員自身の考え、背景要因の確認
  • 就業上の配慮に関する従業員の意向確認
  • 医療機関への受診勧奨


事業者は、面談を通じて従業員のストレス状況・勤務状況などを確認して、メンタルヘルス不調・健康問題を予防するためのアドバイスや就業上の措置を講じます。

出典:厚生労働省『医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル


③休業・復職時の面談

病気やメンタルヘルス不調などを理由に休業を希望する従業員に対しては、休業・復職時に産業医による面談を実施します。

休業・復職時の産業医面談の内容は以下のとおりです。


▼休業・復職時の産業医面談の内容

実施のタイミング
内容例
休業前の面談
  • 診断書の確認
  • 病状の確認
休業期間中の面談
  • 不安や悩みの相談
職場復帰の可否判断のための面談
  • 診断書の確認
  • 職場復帰の意思確認
  • 治療状況・回復状況の確認
  • 日常生活状況の確認


休業時の面談では、主治医による診断書(病気休業診断書)を基に、従業員と相談のうえで休業期間や休業中の報告方法などを取り決めます。

休業中に病状を確認する際は、従業員の体調に合わせて、電話やメールなどの連絡を取りやすい方法を検討することが重要です。

また、従業員から職場復帰の意思が伝えられた際は、主治医による診断書と面談の結果を踏まえて、産業医が業務遂行能力を精査します。

なお、職場復帰後においても、産業医による定期的な面談を実施しながら、再発防止に向けたフォローアップを行うことが必要です。

出典:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』/厚生労働省 こころの耳『第4回 休業中の社員への連絡と確認』『Q1:適切な復職判定の原理原則や主治医との連携とは?


④健康診断後の保健指導

労働安全衛生規則』第14条第1項第1号では、健康診断の結果に基づいて、従業員の健康保持のために適切な措置を取るように義務づけられています。この措置の一つに、産業医面談による個別指導があります。


▼労働安全衛生規則第14条第1項第1号

一 健康診断の実施及びその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。

引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則


職場で健康診断を実施する際、再検査や治療が必要と診断された場合でも、医療機関を受診しない従業員は少なくありません。このような場合に、従業員に医療機関への受診を勧奨する、または受診ハードルを下げることを目的として、産業医面談を実施することがあります。

面談では、従業員に対する健康・生活習慣に関するヒアリングや、生活改善のための保健指導などを実施することが一般的です。

また、産業医が保険指導を行う際は、従業員の健康状態を把握して、生活習慣との関連性やセルフケアの方法について分かりやすく説明することが求められます。

出典:厚生労働省『標準的な健診・保健指導 ログラム【平成30年度版】』/e-Gov法令検索『労働安全衛生規則



産業医面談の実施メリット

産業医面談を実施するメリットは、従業員の健康維持・増進を図り、健康問題の予防・早期発見につなげられることです。

長時間労働者や高ストレス者、健康診断の有所見者に対して、面接指導を実施することで、従業員の健康状態に応じた保健指導、就業上の措置を講じられます。その結果、さまざまな疾患の発症やメンタルヘルス不調を防ぎ、労働災害や休業を防止できます。

また、休業・復職の際に産業医面談を実施することで、従業員の業務遂行能力・回復状況を判断して、復職判定や職場復帰支援プランなどを検討できるようになります。これにより、疾患の再燃・再発を防止して、スムーズな職場復帰・フォローアップにつなげられます。

従業員の希望に応じて、日頃から産業医に健康相談ができる体制を構築しておくと、健康問題の早期発見・早期対処が可能です。

さらに、産業医が面談によって得た従業員の健康情報については、『労働安全衛生法』第105条において守秘義務が課せられています。


▼労働安全衛生法第105条

第百五条 第六十五条の二第一項及び第六十六条第一項から第四項までの規定による健康診断、第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項及び第六十六条の八の四第一項の規定による面接指導、第六十六条の十第一項の規定による検査又は同条第三項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない。

引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法


面接指導の結果や保険指導の内容は、適切に情報管理・保存を行うことが重要です。

なお、産業医の守秘義務については、こちらの記事をご確認ください。

  個人情報の扱い方に注意! 産業医に求められる守秘義務と事業者の報告義務について解説 産業医面談とは、主に長時間労働者および高ストレス者を対象に、産業医が従業員本人の健康の状況を把握したうえで適切な指導を行う面談のことです。過労やストレスが原因で、従業員の健康問題やメンタルヘルス不調が発生するのを未然に防ぐことを目的としています。 面談が必要な従業員のなかには「話したことを上司に報告されるのでないか」といった不安から、面談に応じないといったケースも考えられます。 しかし、産業医には守秘義務が課せられているため、従業員はプライバシーが守られた状態で安心して面談に臨むことが可能です。 この記事では、産業医面談における守秘義務や、面談後の対応について解説します。 first call


出典:厚生労働省『現行の産業医制度の概要等』『事業場における労働者の健康情報等の 取扱規程を策定するための手引き』『過重労働による健康障害を防ぐために』『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』『職場における心の健康づくり』/厚生労働省 こころの耳『面接指導の具体的な進め方と留意点』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法



オンラインでの産業医面談

産業医面談をはじめとする産業医の職務は、次の要件を満たす場合にオンラインで実施することが認められています。


▼オンラインで産業医面談を実施する際の要件

項目
要件
情報通信機器
  • 産業医と従業員が相互に表情・声・顔色・しぐさなどを確認できて、映像や音声の送受信が安定かつ円滑に行える
  • 情報セキュリティが確保されている
  • 面接を実施する情報通信機器の操作を従業員が容易に行える
実施方法
  • 衛生委員会で調査審議を行ったうえで、事前に労働者に周知する
  • 第三者に面接指導の内容が知られないように、労働者のプライバシーに配慮する


産業医面談をオンラインで実施する際は、労働者の健康管理に必要な情報を産業医に対して円滑に共有できる仕組みを構築することが求められます。

オンラインでの実施により、テレワークで働く従業員や、遠方で働く従業員に対しても平等に面談を受けてもらうことが可能になります。

なお、産業医を選任していない事業場や、選任中の産業医が忙しく面談対応ができない場合は、1面談から依頼できる“スポットオンライン面談”の活用もおすすめです。詳しくは、こちらをご確認ください。

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まとめ

この記事では、産業医面談について以下の内容を解説しました。


  • 産業医面談の概要と目的
  • 産業医面談の実施ケースと内容
  • 実施のメリット
  • オンラインでの対応について


産業医面談は、病気・健康リスクを早期発見して適切な措置を講じるとともに、仕事と治療の両立を支援することが目的です。

従業員の申し出による健康相談をはじめ、長時間労働者や高ストレス者への面接指導、休業・復職面談、健康診断後の面談などさまざまな場面で実施します。

実際の面談では、従業員の体調や病状、勤務状況、疲労・ストレスの蓄積度などの内容についてヒアリングを行ったのち、就業上の措置、保健指導を実施します。また、産業医面談は、一定の要件を満たせばオンラインで実施することも認められています。

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