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【産業医の変更】必要な手続きと守るべき期限について解説

産業医には、労働者の健康管理を行う産業保健チームの中核となることが期待されています。『労働安全衛生法』第13条第1項、『労働安全衛生法施行令』第5条では、常時50人以上の労働者を使用する事業場において、産業医の設置が義務づけられています。

しかし、産業医を設置している事業場のなかには、「月に数回の訪問のため、依頼できる業務に限りがある」「専門の診療科とは異なる健康問題に対応してもらえない」といったケースもあるのではないでしょうか。

選任中の産業医が自社の実態にそぐわない場合には、変更することも一つの方法です。

この記事では、産業医の変更が考えられるケースや必要な手続き、選任期間について解説します。

出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』/こころの耳『Q1:適切な復職判定の原理原則や主治医との連携とは?』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』『労働安全衛生法施行令


目次[非表示]

  1. 産業医の変更が考えられるケース
  2. 産業医の変更に必要な手続き
    1. ①衛生委員会・安全衛生委員会への報告
    2. ②新たな産業医の選任
    3. ③労働基準監督署への届出
  3. まとめ


産業医の変更が考えられるケース

産業医の変更が考えられるケースとして、選任中の産業医が専門とする診療科や出務頻度などが事業場の実態にそぐわないことが挙げられます。

産業医には、資格の取得や所定の学業を修了するなどの一定の要件が定められていますが、専門とする診療科や個人の経験値は異なります。

特に嘱託産業医の場合は、開業医または勤務医として働きながら、産業医を担当しているケースが多く、訪問回数や業務範囲もさまざまです。

そのため、産業医に依頼したい業務はあるものの時間が足りなかったり、特定の分野の知識・経験が少なかったりと事業場で十分に活用できないことがあります。

事業場での産業保健機能を強化するためには、現場の健康課題に対応できる新たな産業医への変更を検討することが望まれます。

出典:厚生労働省『産業医について』『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』/こころの耳『Q1:適切な復職判定の原理原則や主治医との連携とは?



産業医の変更に必要な手続き

産業医を変更する際は、一定の期間内に新たな産業医を選任するとともに、所定の手続きが必要です。


①衛生委員会・安全衛生委員会への報告

産業医が辞任・解任したときは、『労働安全衛生規則』第13条第4項において、遅滞なく衛生委員会または安全衛生委員会に報告することが義務づけられています。


▼労働安全衛生規則 第13条第4項

4 事業者は、産業医が辞任したとき又は産業医を解任したときは、遅滞なく、その旨及びその理由を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則


なお、衛生委員会・安全衛生委員会とは、労働者の健康障がいや労働災害を防止するための取り組みについて、労働者の代表を含めて調査審議を行う機関のことです。

安全衛生委員会の詳細については、こちらの記事で解説しています。

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出典:厚生労働省『安全委員会、衛生委員会について教えてください。』/e-Gov法令検索『労働安全衛生規則


②新たな産業医の選任

現在の産業医との契約を終了したあとは、14日以内に新たな産業医を選任することが必要です。

労働安全衛生規則』第13条第1項第1条では、産業医を選任する事由が発生した日から14日以内に選任することが定められています。


▼労働安全衛生規則 第13条第1項第1条

第十三条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
 一 産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。

引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則


なお、産業医の選任にあたっては、事業場の規模に応じて嘱託または専属といった選任方法が定められています。

また、場合によっては、産業医にすべてを任せるのでなく、各専門職を活用する体制も考えてみてもよいでしょう。

近年、事業場において産業保健活動の、質、量両面での充実が求められている一方で、病院勤務や開業医との兼務が多い嘱託産業医は、多くの場合活動時間が限られています。産業医、各専門職の強みを活かした業務・役割分担を行うことも一つの方法です。

産業保健スタッフの産業保健師、産業カウンセラーについてはこちらの記事でも解説しています。併せてご覧ください。

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出典:厚生労働省『総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医はいつまでに選任し、どこに報告すればよいのでしょうか。』『現行の産業医制度の概要等』『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』/e-Gov法令検索『労働安全衛生規則


③労働基準監督署への届出

新たに産業医を選任した際は、遅滞なく所轄の労働基準監督署に所定の報告書を届け出る必要があります。

届け出る書類は“産業医選任報告(様式第3号)”となり、インターネットから作成・印刷できます。

届出方法は、窓口での提出のほか『e-Gov電子申請』での申請も可能です。電子申請は、年末年始やシステムの点検による停止を除く24時間365日受けつけています。

出典:厚生労働省『総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医はいつまでに選任し、どこに報告すればよいのでしょうか。』『総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告』/e-Gov電子申請『産業医の選任報告



まとめ

この記事では、産業医について以下の内容を解説しました。


  • 産業医の変更が考えられるケース
  • 産業医を変更する際の手続き


現在選任している産業医の出務頻度や、依頼できる業務範囲が自社の実態にそぐわない場合は、変更することも可能です。産業医を変更する場合は、衛生委員会または安全衛生委員会に報告するとともに、速やかに新たな産業医を選任し、労働基準監督署へ届け出る必要があります。

新たに産業医を選任する際は、事業場の特性や、抱える課題解決に求められる機能に応じて、産業医を含めた専門職の業務・役割分担を見直すことも大切です。

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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。新卒で大手証券会社入社。 その後、スタートアップ企業への転職を経て、2020年4月にメドピアに入社(Mediplat出向)。 クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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