従業員が休職する際の面談の流れと企業側の準備や復職判断のポイント
病気やケガ、メンタルヘルス不調などを理由に、従業員が休職を申し出るケースがあります。特に最近では、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴うテレワークや外出自粛といった行動の変化によって、精神的な不調を訴える人が増えているのが現状です。
従業員から休職の申し出があった場合は面談を実施したり治療に専念してもらったりします。また、休職者が職場復帰する際は、産業医との面談や復職支援を行います。
しかし、休職対応は企業によって異なるため「適切な面談の進め方を知りたい」「復職までの間に何を行えばよいか分からない」という意見もあるのではないでしょうか。
この記事では、従業員が休職する場合に行う面談の流れや企業側の準備、復職に向けたフォローについて解説します。
また、クラウド型健康管理サービス「first call」では、産業医業務のオンライン対応(職場巡視を除く)が可能な嘱託産業医の選任や、医師への相談窓口など産業医や医師による企業の健康サポートを行っています。ストレスチェックの実施に加え、健康診断結果や面談記録の管理、面談日程調整など企業の健康管理業務をオンライン化できます。
出典:厚生労働省『新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査結果概要について』
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従業員が休職する際に行う面談の3つの流れ
ここでは、従業員が休職を申し出た場合の面談の主な流れについて解説します。
①休職の判断
従業員から休職の申し出や主治医による診断書の提出があった場合、休職が必要か判断する必要があります。
本人が提出した休職願いに加えて、医学的な視点から健康状態や業務遂行能力などを適正に判断することが重要です。
休職判定の材料となる医学的データには以下が挙げられます。
▼医学的データの例
- 主治医による診断書
- 産業医による意見書
- 産業医の面談後のフィードバック
また、仕事の勤務状況や様子を見て、企業側から休職を提案する場合には、従業員と主治医・産業医などからの意見を聞く必要があります。
ただし、就業規則に休職についての内容が規定されていないケースでは、企業から一方的に休職命令を出すとトラブルに発展する可能性があります。そのため、休職に関して細かくルールを定めたうえで、就業規則に記載しておくことが重要です。
出典:厚生労働省 中央労働災害防止協会『〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援の手引き』/厚生労働省労働基準局監督課『モデル就業規則』
②労災可否の判断
次に、労災可否の判断を行います。休職に至った病気やケガなどが、労災にあたるか認定要件を確認する必要があります。
労災として認定される条件としては、その病気やケガが仕事に起因していることが挙げられます。メンタルヘルス不調をはじめとする精神障害の労災認定については、仕事による強いストレスが原因の場合に限られます。
厚生労働省では、精神障害の労災認定要件を以下のように定めています。
▼精神障害の労災認定要件
①認定基準の対象となる精神障害を発病していること
②認定基準の対象となる精神障害の発病前おおむね6か月の間に、業務による強い心理的負荷が認められること
③業務以外の心理的負荷や個体側要因により発病したとは認められないこと
引用元:厚生労働省『精神障害の労災認定』
労災にあたる具体的なケースには、以下のような例が挙げられます。
▼労災にあたるケース
- 通勤途中で自転車との事故に遭い、骨折をした
- 仕事中に棚が転倒してケガをした
- 新規事業を任されたプレッシャーと長時間労働が続いたことで、適応障害を発病した
上記ケース以外にも要件を満たしており労災として判断できる場合には、労働基準監督署に労災申請・調査を依頼します。その後、労災と認定されれば従業員に保険が給付されます。
出典:厚生労働省 中央労働災害防止協会『〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援の手引き』
③休職手続き
主治医の診断書や産業医の意見を基に、休職が必要と判断する場合は従業員に申請書面を記入・提出してもらい、休職手続きを進めます。
休職にあたって従業員とのトラブルを防ぐために、労働契約や就業規則に合わせ、以下の内容を取り決めて通知することが重要です。
▼休職者との取り決め・通知事項
- 休職期間(延長や上限について)
- 休職中の給与の取扱い
- 傷病手当などの保障の有無
- 休職中の面談頻度
- 休職中の不安や悩みの相談先
- 復職判定の基準
なお、休職中は休職者に月に1〜2回ほどの連絡、または面接を実施して、回復状況や復帰の見込みについて確認します。診断書や産業医の意見などがある場合には、それらも参考としながら進めていきます。
また、休業期間中の保障や相談先などの情報を休職者と共有することで、休職中の面談・復職支援をスムーズに進められます。その結果、休職者の不安や疑問を取り除き、治療・療養に専念してもらうことができます。
出典:厚生労働省 中央労働災害防止協会『〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援の手引き』/厚生労働省労働基準局監督課『モデル就業規則』
休職者との面談をスムーズに行うための準備
従業員の休職が決定した後は、職場復帰プランの作成を行うことが大切です。
休職者と休職期間中にも面談を実施して、回復状況や日常生活の様子などを確認します。そのうえで、職場復帰プランを作成します。
職場復帰プランを作成する際は、産業医を中心として、管理監督者・上司と休職者が連携して、スムーズな職場復帰を支援するための具体的なプランを作成します。
職場復帰プランの作成にあたって検討する項目には、以下が挙げられます。
▼職場復帰プラン作成時の検討項目
- 職場復帰時期
- 就業時間・日数の調整有無
- 移動や配置転換の有無
- 模擬出勤・通勤訓練の実施 など
なお、職場復帰する際は、段階的に仕事に慣れてもらうための配慮が必要です。休職者の状況に合ったプランを作成することで、円滑な職場復帰や疾患の再発防止にもつながります。
出典:厚生労働省 中央労働災害防止協会『〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援の手引き』
復職決定には産業医の意見も参考に
復職の判断を行う場合、具体的な職場復帰プランの作成後に、復帰に関して配慮が必要な項目や産業医の意見などをまとめた意見書を産業医に提出してもらいます。
産業医による意見書を基に、管理監督者や人事・総務担当者などの関係者間で就業の可否を確認して、最終的に事業主が復職の判断を行います。
復職面談は、休職者が職場復帰できる状態か適切に判断することが目的です。本人の復職したい意思を尊重しつつ、休職した原因となった病気・症状の回復状況、生活の様子、業務遂行能力の有無などを総合的に判断する必要があります。
休職面談のときと同様に、以下の情報に基づいて判断するようにしましょう。
▼復職可否の判断ポイント
- 本人の意向(通常業務に戻れるか、業務量の削減が必要かなど)
- 休職中の生活リズムや、家事などの作業ができているかの確認
- 主治医の診断書
- 産業医による意見書
復職可否を見極めるポイントや注意点については、こちらの記事もご確認ください。
出典:厚生労働省 中央労働災害防止協会『〜メンタルヘルス対策における職場復帰支援〜心の健康問題により休職した労働者の職場復帰支援の手引き』
まとめ
この記事では、休職の申し出があった従業員との面談について、以下の項目で解説しました。
- 休職前に行う面談の3つの流れ
- 休職者との面談をスムーズに行うための準備
- 復職の判断に関する産業医の必要性
従業員から、病気やケガ、メンタルヘルス不調による休職を申し出があった場合、面談を実施して適切な手続き・情報共有を行う必要があります。休職に関する面談をスムーズに進めるためには、職場復帰プランの作成も欠かせません。
また、休職あるいは復職の判断には、本人の意向だけではなく、主治医の診断書や生活記録表などを踏まえた医学的な判断も必要です。
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