産業保健師とは?役割や仕事内容、相談できる内容をわかりやすく解説
企業には、労働者のメンタルヘルス対策や過重労働対策、働き方改革の推進が求められており、これまで以上に産業保健活動の強化と効率的な運用が期待されています。
産業保健活動に効率的に取り組むためには、産業医や保健師、看護師などの産業保健スタッフのサポートが欠かせません。
しかし、産業保健師について、選任義務や資格、業務内容などをあまり把握していない担当者の方もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、産業保健師の概要をはじめ、特徴や業務内容について解説します。
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産業保健師とは
産業保健師とは、医療・保健に関する専門的な知識を持ち、労働者の健康管理を支援する専門職のことです。
『労働安全衛生法』第12条では、常時50人以上の労働者を使用する事業場において、労働者の健康障害を防止するために、衛生管理者の選任義務が定められています。
第十二条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、都道府県労働局長の免許を受けた者その他厚生労働省令で定める資格を有する者のうちから、厚生労働省令で定めるところにより、当該事業場の業務の区分に応じて、衛生管理者を選任し、その者に第十条第一項各号の業務(第二十五条の二第二項の規定により技術的事項を管理する者を選任した場合においては、同条第一項各号の措置に該当するものを除く。)のうち衛生に係る技術的事項を管理させなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』第12条
企業で活動する産業保健師は、事業場の衛生に関わる技術的事項の管理者として、衛生管理者に求められる要件を保有しています。
以下の2つのアプローチによって、労働者の健康管理を支援しています。
▼産業保健師のアプローチ
- 職場・事業場全体の健康課題に対する取り組み
- 労働者個人の健康度に合わせた個々への支援
また、企業における産業保健活動のなかでも、産業保健師は身近な専門職として労働者から気軽に相談を受ける役割を担っています。
産業医や産業保健スタッフと連携して、労働者の健康に関する情報提供を行うことで、チームとして効率的・効果的な産業保健活動を運用できると期待されています。
出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』『衛生管理者について教えて下さい。』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
産業保健師の特徴
産業保健師は、選任義務がないことや国家資格の取得が必要なことが特徴です。ここでは、産業保健師の特徴について解説します。
選任義務がない
産業保健師は、事業場の規模や業種にかかわらず、事業場での選任義務は定められていません。
産業医の場合、『労働安全衛生法』第13条・『労働安全衛生法施行令』第5条に基づいて、常時50人以上の労働者を使用する事業場において選任義務があると定められています。
第十三条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』第13条
第五条 法第十三条第一項の政令で定める規模の事業場は、常時五十人以上の労働者を使用する事業場とする。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法施行令』第5条
一方、産業保健師には、事業場における選任義務はありません。ただし、同法令第13条の2では、医学に関する知識を有する医師または保健師に、労働者の健康管理を行わせるよう努めることが定められています。
第十三条の二 事業者は、前条第一項の事業場以外の事業場については、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識を有する医師その他厚生労働省令で定める者に労働者の健康管理等の全部又は一部を行わせるように努めなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』第13条の2
出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』『労働安全衛生法施行令』
国家資格の取得が必要
保健師は、『保健師助産師看護師法』第2条で定められている国家資格です。
第二条 この法律において「保健師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。
引用元:e-Gov法令検索『保健師助産師看護師法』第2条
産業保健師として労働者の健康管理・保健指導を行うには、厚生労働大臣の免許を受ける必要があります。
保健師の免許取得は、大学や専門学校において一定のカリキュラムを修了したあと、看護師国家試験と保健師国家試験に合格することが前提です。その後、保健師籍に登録した者が保健師として活動できます。
出典:厚生労働省『保健師国家試験の施行』/e-Gov法令検索『保健師助産師看護師法』
産業保健師の業務内容
産業保健師は、職場における産業保健スタッフとして、労働者の健康管理を行います。労働安全衛生法で規定されている、産業保健師の業務内容は以下のとおりです。
▼産業保健師の業務
労働安全衛生法 |
産業保健師の業務 |
第13条の2 |
労働者の健康管理等 |
第13条の3 |
労働者からの健康相談と適切な措置 |
第66条の7 |
健康診断の結果、特に健康保持に努める必要がある労働者に対する保険指導 |
第66条の10 |
ストレスチェックの実施 |
厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』を基に作成
産業保健師は、職場における健康相談の窓口として、保健指導やアドバイスを行ったり、ほかの専門職につなげたりする役割を担います。
また、産業医と定期的に事業場の情報共有を行い、医学的な判断・助言を行えるようにサポートすることも業務の一つです。
産業保健師などの専門職がチームに加わることで、各専門職それぞれの役割が明確になり、業務フローを整理できます。その結果、労働者のよりきめ細やかな健康管理が可能となって、産業保健活動の質の向上にもつながります。
出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』『メンタルヘルス対策に関連する資格等』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
まとめ
この記事では、産業保健師について以下の項目を解説しました。
- 産業保健師とは
- 産業保健師の特徴
- 産業保健師の業務内容
産業保健師は、医療・保健に関する専門的な知識を持ち、労働者の健康管理のために従事する専門職です。労働者が気軽に相談できる窓口であり、法令で規定された保健指導やストレスチェックを行う者として活用されています。
事業場での選任義務はありませんが、産業医や産業保健スタッフと円滑な連携を図ることで、効率的・効果的な産業保健活動が期待できます。
一方、産業保健活動に関わるスタッフの人数が増えると、スタッフ間での情報共有や資料管理のフローが増え、業務が複雑化してしまうこともあるでしょう。
クラウド型健康管理サービス『first call』では、面談履歴や、産業医からの意見書を一か所にまとめて管理することが可能です。従業員に関する情報が一つのツールに集約されているため、保健師や人事労務担当者など複数人で産業医保健関連業務を行う場合にも便利です。
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