労働衛生コンサルタントとは?産業医との違いや業務内容を解説
近年、技術の進歩によって労働災害が発生する環境にも変化が現れており、労働環境の変化に即した衛生対策が求められています。それに伴い、専門知識・知見を持つ労働衛生コンサルタントを求める傾向も見られます。
常時使用する従業員が50人未満の事業場で労働衛生コンサルタントや産業医の選任を検討しながら、「産業医と何が違うのか分かっていない」「どのような業務を行うのか知りたい」という担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、労働衛生コンサルタントの概要や、産業医との違いについて解説します。
出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『労働安全・衛生コンサルタント』
労働衛生コンサルタントとは
労働衛生コンサルタントとは、『労働安全衛生法』第81条第2項に規定された、事業場での衛生管理に関する国家資格です。労働災害を防止して、職場の実態に即した衛生対策を実施するために、活用が期待されています。
第八十一条
2 労働衛生コンサルタントは、労働衛生コンサルタントの名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、労働者の衛生の水準の向上を図るため、事業場の衛生についての診断及びこれに基づく指導を行なうことを業とする。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』第81条第2項
同法第83条に基づく国家資格に合格して、厚生労働省に備える労働衛生コンサルタント名簿への登録を受けることで、労働衛生コンサルタントの名称で事業場への衛生診断・指導を実施できます。
第八十三条 労働衛生コンサルタント試験は、厚生労働大臣が行なう。
2 前条第二項から第四項までの規定は、労働衛生コンサルタント試験について準用する。この場合において、同条第三項第一号及び第二号中「安全」とあるのは、「衛生」と読み替えるものとする。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』第83条
中小企業において、衛生面の問題点の抽出や対応が困難な場合に、外部の専門家として労働衛生コンサルタントを活用することで、事業場の衛生診断や的確な指導が可能となります。
労働衛生コンサルタントは、保健衛生と労働衛生工学の2つの分野に区分されます。このうち、保健衛生の労働衛生コンサルタントには、産業医や看護師、保健師も数多く登録されています。
なお、労働衛生コンサルタントに指導を依頼する際は、企業が直接依頼する方法のほか、一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会(※)に相談する方法もあります。
※一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会とは、『労働安全衛生法』第87条に基づき設立された団体のこと。
出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『労働安全・衛生コンサルタント』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
労働衛生コンサルタントと産業医の違い
労働衛生コンサルタントと産業医の違いとして、選任義務の有無や免許要件が挙げられます。
▼労働衛生コンサルタントと産業医の違い
労働衛生コンサルタント |
産業医 |
|
事業場の専任義務 |
なし ※本資格(保健衛生区分)を有していれば事業場の産業医として登録が可能 |
あり |
免許要件 |
試験合格後、労働衛生コンサルタントの名簿登録を受ける |
厚生労働省の定める要件を満たす |
労働衛生コンサルタントには、事業場での選任義務はありません。一方、産業医については、『労働安全衛生法』第13条において一定の規模に該当する事業場で選任する義務があると定められています。
第十三条 事業者は、政令で定める規模の事業場ごとに、厚生労働省令で定めるところにより、医師のうちから産業医を選任し、その者に労働者の健康管理その他の厚生労働省令で定める事項(以下「労働者の健康管理等」という。)を行わせなければならない。
引用元:eーGov法令検索『労働安全衛生法』第13条
労働衛生コンサルタントの免許を受けるには、以下の2つの要件が定められています。
▼労働衛生コンサルタントの免許を受ける要件
- 同法第83条で定められた試験に合格する
- 厚生労働省に備える労働衛生コンサルタント名簿への登録を受ける
一方、産業医の免許を受けるには、医師免許に加えて、『労働安全衛生規則』第14条第2項が示す、厚生労働省令で定める要件のいずれかを満たす必要があります。
2 法第十三条第二項の厚生労働省令で定める要件を備えた者は、次のとおりとする。
一 法第十三条第一項に規定する労働者の健康管理等(以下「労働者の健康管理等」という。)を行うのに必要な医学に関する知識についての研修であつて厚生労働大臣の指定する者(法人に限る。)が行うものを修了した者
二 産業医の養成等を行うことを目的とする医学の正規の課程を設置している産業医科大学その他の大学であつて厚生労働大臣が指定するものにおいて当該課程を修めて卒業した者であつて、その大学が行う実習を履修したもの
三 労働衛生コンサルタント試験に合格した者で、その試験の区分が保健衛生であるもの
四 学校教育法による大学において労働衛生に関する科目を担当する教授、准教授又は講師(常時勤務する者に限る。)の職にあり、又はあつた者
五 前各号に掲げる者のほか、厚生労働大臣が定める者
引用元:eーGov法令検索『労働安全衛生規則』第14条第2項
出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『労働安全・衛生コンサルタント』/厚生労働省 東京労働局『共通3「総括安全衛生管理者」「安全管理者」「衛生管理者」「産業医」のあらまし』/eーGov法令検索『労働安全衛生法』『労働安全衛生規則』
労働衛生コンサルタントの業務内容
労働衛生コンサルタントの業務内容は、『労働安全衛生法』第81条第2項において、事業場の衛生についての診断及びこれに基づく指導を行うことと定められています。
労働衛生コンサルタントは、労働衛生に関するプロフェッショナルとして、以下のようなさまざまな業務を行います。
▼主な業務内容
- 事業場の衛生水準向上のための診断
- リスクアセスメント
- 従業員の衛生に関する教育の実施
- 衛生管理のしくみの構築
- 衛生管理のための諸規定の点検・作成
- 衛生管理者業務 など
事業者は、労働衛生コンサルタントへ依頼して、有償で労働衛生に関する診断・指導を受けることが可能です。
出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『労働安全・衛生コンサルタント』/厚生労働省『衛生管理者について教えて下さい。』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
まとめ
この記事では、労働衛生コンサルタントについて以下の項目を解説しました。
- 労働衛生コンサルタントとは
- 産業医との違い
- 主な業務内容
労働衛生コンサルタントは、衛生の知識・知見を持つ専門家として、企業の衛生管理をサポートする役割を担います。
事業者は、国家資格を持つ労働衛生コンサルタントに依頼することで、事業所の労働衛生のための診断・指導を受けることが可能です。
従業員数50人未満の事業場には産業医のような選任義務はありませんが、職場の衛生について、外部の専門家の助言・支援が必要な場合には活用が有効です。
なお、労働衛生コンサルタント(保健衛生区分)の資格取得は、産業医要件の一つとしても認められているため、産業医のなかには労働衛生コンサルタントの資格を所有する人もいます。
産業医、労働衛生コンサルタントはどちらも企業の労働衛生に関するプロフェッショナルです。職場の衛生管理体制強化に向けて、安全衛生コンサルタントや産業医の選任を検討してみてはいかがでしょうか。
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