快適な職場環境をつくるための温度や湿度の管理基準を徹底解説
従業員の健康管理に関わる要素の一つに、職場の室温管理が挙げられます。快適で過ごしやすい職場環境は、仕事のパフォーマンスにもよい影響を与えることが期待されています。
しかし、快適と感じる温度・温度には個人差があるほか、新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の感染対策として、こまめな換気を行うことも必要です。
そのため、「どのような基準で室温を管理すればよいのだろう」「室温管理を行ううえでのポイントを知りたい」と対応に悩んでいる担当者の方もいるのではないでしょうか。
本記事では、『事務所衛生基準規則』で定められた室温の基準をはじめ、快適な職場環境をつくる室温管理のポイントを解説します。
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室温基準を遵守する目的
職場の室温基準を守る目的は、従業員のパフォーマンスの低下を防ぐことや健康を保持することです。
快適な室温ではない環境では、パフォーマンスの低下のみならず、熱中症や冷え性などの体調不良を引き起こす可能性があります。
特に夏場は、過度な冷房によって室内の温度と外気温に急激な温度差が発生しやすくなります。急激な寒暖差によって、夏バテの原因となり得る次のような症状が起こることがあります。
- 自律神経が乱れる
- 体のだるさが現れる
- 食欲不振になる
環境省が提唱した夏のライフスタイル“クールビズ”で、適正な室温の目安として示されているのは28℃です。熱中症の予防も含めて、外部の気温・湿度、建物の状況、従業員の体調などを考慮しながら、冷やしすぎない室温管理が求められます。
併せて、従業員が快適と感じる温度に差があることや、業務内容・デスクの位置によって生じる温度のムラ、コロナの感染対策としての定期的な換気についても考慮が必要です。
法令の基準を目安にしたうえで、業務内容・作業場所に配慮して、従業員一人ひとりの状況に応じた温度管理を行うことが重要です。たとえば、暑くなりやすい場所に扇風機やサーキュレーターを配置したり、寒いと感じる従業員が使えるブランケットを用意したりといった工夫ができます。
職場での熱中症対策や対処方法については、こちらの記事をご確認ください。
出典:環境省『令和3年度 クールビズについて』『「暑さに負けない生活習慣を心がけましょう」』
職場における温度・湿度の基準
『事務所衛生基準規則』では、職場の環境管理について、適正な温度・湿度に保つことが定められています。
同規則第5条第3項において、空気調和設備(※)を設けている職場における室内の温度・湿度が基準値内に収まるように義務付けられています。
温度 |
18℃以上28℃以下 |
湿度 |
40%以上70%以下 |
厚生労働省『事務所衛生基準規則』『ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました』『事務所衛生基準規則の一部を改正する省令の施行等について』を基に作成
また、同規則第4条では、室温が低い場合や冷房を使用する際についても、次のように規定しています。
室温が10℃以下の場合 |
暖房で温度調節を行う |
冷房を使用する場合 |
外気温よりも著しく室温を低くしてはいけない ※電子計算機等を設置する部屋で、作業者に保温のための衣類等を着用させる場合は例外 |
厚生労働省『事務所衛生基準規則』を基に作成
さらに、中央管理方式の空気調和設備を設けている建築物の部屋について、2ヶ月以内に1回、定期的に室温・外気温・相対湿度等を測定することが、同規則第7条第1項において義務付けられています。
事務所の気温・湿度を測定する方法には以下の2つが挙げられますが、同等以上の性能を有する測定器であれば問題ありません。
▼気温・湿度の測定方法
- 気温:0.5℃目盛りの温度計
- 相対湿度:0.5℃目盛りの乾湿球湿度計
※空気を浄化して温度・湿度・流量を調節して供給する設備のこと。
出典:厚生労働省『事務所衛生基準規則』『ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました』『事務所衛生基準規則の一部を改正する省令の施行等について』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法施行令』/デジタル庁『労働安全衛生法と作業環境測定』
職場における適切な室温管理のポイント
職場の室温管理を行う際は、エリアごとに温湿度の基準値を保つとともに、業務内容や体感の個人差を考慮することが重要です。
ここからは、適切な室温管理のポイントを3つ紹介します。
①温湿度計を設置する
法令で努力義務とされている温室度の基準を守れているか把握するために、職場内に温湿度計を設置する方法があります。
室温が18℃以上28℃以下、湿度が40%以上70%以下に収まっているか確認して、冷暖房機器の温度調節を行うことがポイントです。
また、冷暖房時の室温との温度差が大きくならないような配慮も必要です。
▼温湿度計による室温管理のポイント
- 1日のうち定期的に温湿度の測定を行う
- 冷房が効きにくい・効きやすい場所を把握して、換気や温度調整を行う
出典:e-Gov法令検索『事務所衛生基準規則』/デジタル庁『労働安全衛生法と作業環境測定』/環境省『「暑さに負けない生活習慣を心がけましょう」』
②局所的な冷暖房設備を設置する
職場で一律設定されている冷暖房によって、体感温度の個人差が生まれる場合には、局所的な冷暖房設備を導入することも大切です。
温度の感じ方には個人差があるほか、作業場所によっては「冷房の風があたって寒い」「窓際で暑くなりやすい」といったように不快感を覚える従業員もいます。
こうした個人差をなくすためには、従業員の体感温度や作業場所に応じて、以下のような冷暖房設備を導入することがポイントです。
▼暑いと感じる場合
- サーキュレーターの設置
- 冷風機の設置
- 遮熱シートの貼付
- ブラインドの活用
- 空調クッションの利用
▼寒いと感じる場合
- 冷暖房機への後付けルーバー・ファンの設置
- ヒーター、ストーブの設置
出典:環境省『オフィスの暑さを“見える化”して、温度のムラを少なくしよう!』/厚生労働省『「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」について』
③レイアウトを見直す
職場内における室温のムラをなくして、冷暖房設備を効率的に利用できるように、デスクやOA機器のレイアウトを見直すことも一つの方法です。
パソコンやプリンターなどのOA機器は発熱しているため、周辺の室温が高くなりやすいといえます。また、古いビルの空調設備では、冷暖房の効き具合にムラが発生することもあります。
同じ室内であっても、デスクの位置や仕切りの有無などによって、温度の感じ方が変わるケースも考えられます。
以下のようにレイアウトを見直すことで、熱源の影響を抑えて、室温のムラを改善できる可能性があります。
▼レイアウトの見直し例
- 熱源となるOA機器を一箇所に集約する
- OA機器が複数台ある場合は、人がいない別のエリアに移動する
- ブラインドや仕切りを設置して、窓からの熱、出入り口からの気流を防ぐ
出典:環境省『オフィスの暑さを“見える化”して、温度のムラを少なくしよう!』
まとめ
この記事では、職場の室温管理について以下の内容を解説しました。
- 職場における温度・湿度の基準
- 室温基準を遵守する目的
- 職場における適切な室温管理のポイント
職場の室温は、従業員のパフォーマンスや健康管理にも影響するため、適正な温度管理が重要です。室温を18℃以上28℃以下、湿度を40%以上70%以下になるよう管理することが努力義務とされています。
法令の基準を目安に冷暖房設備の温度調節を行うとともに、局所的な冷暖房設備で体感温度の個人差を解消する、レイアウトの見直しを図ることがポイントです。
また、オフィス環境の改善をしても、さまざまな要因で従業員が体調を崩してしまうこともあります。そのような状況になった際に必要に応じて産業医との面談ができるような体制を整えておくことも重要です。
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