企業の健康経営に“予防医療”が重要とされる理由とは?
人生100年時代を迎えようとしている日本において、人々が元気に活躍し続けて、安心して暮らすための基盤となるのは“健康”です。
高齢化や現役世代の減少が見込まれているなか、健康寿命を伸ばすための予防・健康づくりに目を向ける必要があります。
そこで注目されているのが“予防医療”です。予防医療に取り組むことで、心身ともに健康で活躍できる人材を確保することが期待できます。
この記事では、予防医療の概要をはじめ、予防医療が重要とされる理由や企業における施策について解説します。
出典:経済産業省『人生100年時代に対応した「明るい社会保障改革」の方向性』
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予防医療とは
予防医療とは、病気・要介護になる前に健康づくりを行うこと、または病気の早期治療や重症化を防ぐことです。
医療を予防の視点で捉えて、以下の3段階で健康増進・対策を実施します。
▼予防医療の3段階
一次予防 |
病気や要介護になるのを未然に防ぐ
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二次予防 |
疾病の早期発見や早期治療
|
三次予防 |
疾病の治療・再発防止
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予防医療を行うためには、個人だけでなく、企業・保険者・地方自治体の役割が重要です。
出典:経済産業省『人生100年時代に対応した「明るい社会保障改革」の方向性』/厚生労働省『介護予防マニュアル改訂版』/厚生労働省 こころの耳『一次予防』『二次予防』『三次予防』
予防医療が重要とされる理由
予防医療は、超高齢化社会への対策をはじめ、慢性疾患への対策、健康寿命の延長の観点から重要とされています。
①超高齢化社会への対策
少子高齢化によって、将来における社会保障の担い手不足が懸念されています。健康に働く人を増やすには、健康寿命を延ばすための予防医療が必要です。
『令和4年版高齢社会白書』によると、日本の総人口は減少を続けており、2053年には1億人を切ると推測されています。一方、総人口に占める高齢者の割合は増加しており、2036年には3人に1人が65歳以上となることが推計されています。
▼高齢化の推移と将来推計
画像引用元:内閣府『令和4年版高齢社会白書』
また、1950年時点では、65歳以上の者1人に対して現役世代(15~64歳の者)が12.1人いました。しかし、2065年には、現役世代1.3人で1人の65歳以上の者を支える社会が到来すると考えられています。
現役世代の社会保障制度の負担を削減するには、高齢者の健康寿命を延ばして社会保障制度の担い手を確保することが重要です。
出典:内閣府『令和4年版高齢社会白書』/経済産業省『人生100年時代に対応した「明るい社会保障改革」の方向性』
②慢性疾患への対策
予防医療が重要とされる理由の一つには、慢性疾患への対策が挙げられます。
日本では、急速な高齢化や生活習慣の変化によって、国民がかかる疾病全体に占める生活習慣病の割合が高まっています。
生活習慣病に関連する医療需要と、高まる介護需要の適正化を図るには、予防医療によって生活習慣の改善・早期予防を行う必要があります。
出典:経済産業省『人生100年時代に対応した「明るい社会保障改革」の方向性』/厚生労働省『平成28年版 厚生労働白書』
③健康寿命の延長
健康寿命を伸ばすためには、疾病予防と健康づくりが大切です。
『令和4年版高齢社会白書』によると、2020年における平均寿命は、男性が81.56歳、女性が87.71歳となっています。今後も平均寿命は延びるとされており、2065年には男性が84.95歳、女性は91.35歳になることが見込まれています。
▼平均寿命の推移と将来推計
画像引用元:内閣府『令和4年版高齢社会白書』
一方、健康寿命(日常生活に制限のない期間)は、2019年時点で男性が72.68歳、女性が75.38歳となっており、平均寿命と差があります。
▼健康寿命と平均寿命の推移
画像引用元:内閣府『令和4年版高齢社会白書』
経済社会の継続・活性化を図るためには、予防医療によって健康寿命を延ばすことが重要です。
出典:経済産業省『人生100年時代に対応した「明るい社会保障改革」の方向性』/厚生労働省『平成28年版 厚生労働白書』/内閣府『令和4年版高齢社会白書 第1節 高齢化の状況 1 高齢化の現状と将来像』『令和4年版高齢社会白書 第2節 高齢期の暮らしの動向 2 健康・福祉』
企業における施策
企業における予防医療として、政府が行っているプロジェクトや顕彰制度の参加、従業員の健康を維持するための体力づくりなどが挙げられます。
①スマート・ライフ・プロジェクトへの参加
企業における健康寿命の延伸に向けた取り組みの一つに、厚生労働省が行っているスマート・ライフ・プロジェクトへの参加が挙げられます。
スマート・ライフ・プロジェクトとは、健康寿命の延伸を目的として、国民の健康づくりをサポートする国民運動のことです。食事・運動・健康診断・禁煙といった4つの柱において、情報提供やイベントが実施されています。
プロジェクトに参加すると、予防・健康づくりに役立つコンテンツを活用できたり、イベントに参加できたりします。
出典:スマート・ライフ・プロジェクト事務局『スマート・ライフ・プロジェクトについて』
②健康経営銘柄の認定に向けた取り組み
経済産業省が行っている健康経営銘柄の認定を目標とすることも、施策の一つといえます。
健康経営銘柄とは、日本再興戦略に位置づけられた、国民の健康寿命の延伸に関する制度です。
また、従業員の健康管理を経営的な視点で考えて、優れた健康経営を行う企業を顕彰する“健康経営優良法人認定制度”もあります。
健康経営銘柄の認定要件には、予防医療に関する取り組みが含まれています。
▼予防医療に関する認定要件
- 従業員の健康診断の実施
- 50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施
- 食生活の改善に向けた取り組み
- 運動機会の増進に向けた取り組み
- 女性の健康保持・増進に向けた取り組み
- 長時間労働者への対応に関する取り組み
- メンタルヘルス不調者への対応に関する取り組み
- 感染症予防に関する取り組み
- 喫煙率低下・受動喫煙対策に関する取り組み など
出典:経済産業省『健康経営』『健康経営銘柄』『令和3年度健康経営度調査』
③若年時からの体力づくり
従業員の疾病や心身の不調を防いで、健康で元気に働いてもらうためには、若年時からの体力づくりも重要です。
企業ができる取り組みとしては、定期健診の受診と併せて、年齢の節目で体力測定を実施することが挙げられます。
また、運動時間を記録できる活動量計を貸与する、活動量計の結果に応じてトレーナーによるアドバイスを実施するなど、日常的な運動を継続できる工夫が必要です。
出典:厚生労働省『企業における従業員の健康保持増進等に配慮した職場づくりのための取組事例集』
まとめ
この記事では、予防医療について以下の項目を解説しました。
- 予防医療とは
- 予防医療が重要とされる理由
- 企業における施策
少子高齢化による社会保障制度の担い手不足や、生活習慣病の増加、平均寿命と健康寿命の差を解消するために、予防医療が重要視されています。
企業における予防医療の一環として、スマート・ライフ・プロジェクトの参加や、健康経営銘柄の認定を目指してはいかがでしょうか。
また、日ごろから従業員の健康・体力づくりを支援したり、病気や不調を早期発見できる仕組みを構築したりすることも重要です。そのためには、定期的な検診や医療相談を行い、健康意識を持つことが大切です。
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