【人事総務担当者必見】健康診断の対象者はどこまで? 実施義務がある従業員とない従業員

【人事総務担当者必見】健康診断の対象者はどこまで? 実施義務がある従業員とない従業員

事業者は労働者に対して、医師による健康診断を受けさせる義務があります。健康診断を受けさせることは、労働者の心身の健康を守ることにつながるため大切です。

しかし、「派遣社員やアルバイト・パートは対象なのだろうか」「健康診断を実施しない場合はどうなるのだろうか」といった疑問を持たれている人事・総務担当者の方もいるのではないでしょうか。

この記事では、健康診断の実施義務がある対象者や、健康診断の種類などを解説します。

出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう


目次[非表示]

  1. 健康診断の対象者
    1. 正社員
    2. 派遣社員
    3. アルバイト・パート
  2. 健康診断を実施しない場合の罰則
  3. 健康診断結果の見方
  4. 健康診断の種類
    1. 一般健康診断
    2. 特殊健康診断
  5. まとめ


健康診断の対象者

事業者は、自社で働く正社員に対して、定期的に健康診断を実施する義務が課せられています。

また、派遣社員やアルバイト・パートであっても、一定の条件を満たす場合は、正社員と同様に健康診断を受けてもらう必要があります。

労働安全衛生規則』第44条では、事業者は常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに健康診断を行わなければならないと定められています。

健康診断の実施対象者は以下のとおりです。


正社員

正社員の場合は、1年に1回の定期健康診断を実施する義務があります。また、雇い入れ時や特定業務への配置替えを行う際にも、別途で健康診断を受けてもらう必要があります。

なお、『労働安全衛生規則』第45条において、特定業務に従事する労働者は、6ヶ月に1回は健康診断を受けなければならないとされています。


派遣社員

派遣社員の場合は、『労働安全衛生法』 第66条に基づき、派遣元企業に健康診断を実施する義務が課せられています。

また、派遣元企業の規模が正社員を含め50人以上である場合は、健康診断結果報告書を労働基準監督署に提出する義務も生じます。

なお、派遣社員が実施する健康診断の詳細は、以下の記事でご確認ください。

  【派遣社員の健康診断】派遣元・派遣先企業の実施義務を解説 『労働安全衛生法』第66条において、事業者は従業員に対して健康診断を行うことが義務付けられています。この記事では、派遣社員の健康診断の実施義務や派遣元・派遣先の対応、健康管理における役割について解説します。 first call


アルバイト・パート

アルバイト・パートの場合は、以下の常時使用する短時間労働者の条件を満たした場合に健康診断を実施しなければなりません。


▼一般健康診断におけるアルバイト・パートの条件取り扱い

(1)期間の定めのない契約により使用される者であること。なお、期間の定めのある契約により使用される者の場合は、1年以上使用されることが予定されている者、及び更新により1年以上使用されている者。(なお、特定業務従事者健診<安衛則第45条の健康診断>の対象となる者の雇入時健康診断については、6カ月以上使用されることが予定され、又は更新により6カ月以上使用されている者)

(2)その者の1週間の労働時間数が当該事業場において同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数の4分3以上であること。

引用元:厚生労働省 東京労働局『Q16.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?


厚労省『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし』によると、アルバイト・パートは、無期契約あるいは契約期間が1年以上の有期契約であり、一週間の所定労働時間が正社員の4分の3を超える場合は、健康診断を受ける必要があるとされています。

また、契約期間が6ヶ月以上1年未満の有期契約に該当しても、特定業務に従事、あるいは配置替えを行う際は、6ヶ月に1回健康診断を実施しなければなりません。

出典:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』『労働安全衛生法』/厚生労働省 東京労働局『Q16.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?』/厚生労働省『派遣元が実施すべき事項』『パートタイム・有期雇用労働法のあらまし



健康診断を実施しない場合の罰則

正社員と一定の条件を満たした派遣社員やアルバイト・パートに対して、健康診断を受けさせていない事業者には罰則が科されます。

労働安全衛生法』 第66条、第120条では、健康診断を受けさせる義務を怠った事業者には、50万円以下の罰金が科される場合があるとされています。

健康診断は、労働者が作業することで起こる事故や疾病を防ぐだけではなく、労働衛生問題の発見や環境改善を促す役割もあるため、必ず実施しなければなりません。

出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づく健康診断の概要』/厚生労働省 石川労働局『労働安全衛生法に基づく健康診断に関するFAQ』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法



健康診断結果の見方

健康診断の結果から労働者の健康状態を評価するには、検査項目の基準値を把握しておく必要があります。

しかし、健康診断を受ける医療機関によって判定区分は異なるため、産業医や提携している医療機関に確認することが推奨されています。

検査項目の基準値や判定区分を基に、健康のリスクを把握することで、労働者に対する健康確保の取り組みを促進することが可能です。 

健康診断の検査項目は以下のとおりです。


▼健康診断の検査項目

  • 身体計測
  • 視力(眼)
  • 聴力
  • 胸部X線
  • 血圧
  • 血液検査
  • 尿検査
  • 心電図
  • 呼吸機能検査
  • 子宮頸部細胞診


健康診断の実施後、医師によって、異常なし・要観察・要医療などに判定されます。

健康診断結果の見方に関する詳細は、以下の記事で解説しています。

  健康診断結果の判定区分と項目別の見方を解説 従業員に対して健康診断を実施した際、企業はその結果に基づいて適切な措置を講じる必要があります。しかし、健康診断の結果には専門用語や検査値が多いため、「見方がよく分からない」という人事・労務担当者の方も多いのではないでしょうか。本記事では、日本人間ドック学会の基準値を基に、健康診断結果の判定区分と各項目の見方について解説します。 first call

出典:厚生労働省『事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き』『労働安全衛生法に基づく定期健康診断



健康診断の種類

健康診断は、一般健康診断と特殊健康診断に分けられています。

それぞれの特徴は以下のとおりです。


一般健康診断

一般健康診断は、雇い入れ時の健康診断・定期健康診断・特定業務従事者の健康診断など、5つの種類が存在します。

対象者および実施時期は以下のとおりです。


▼一般健康診断の対象者と実施時期

健康診断の種類
対象となる労働者
実施時期
雇い入れ時の健康診断
常時使用する労働者
雇い入れ時
定期健康診断
常時使用する労働者
1年以内ごとに1回
特定業務従事者の健康診断
労働安全衛生規則第13条第1項第2号に掲げる業務に常時従事する労働者
配置替えの際、また6ヶ月以内ごとに1回
海外派遣労働者の健康診断
海外に6ヶ月以上派遣する労働者
派遣する際、また帰国後に国内業務に就かせる際
給食従業員の検便
事業に附属する食堂または炊事場における給食の業務に従事する労働者
雇い入れ時、また配置替えの際

厚生労働省『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』を基に作成


一般健康診断の詳細は、こちらの記事でも紹介しています。

  職場での健康診断は義務! 実施の目的と5つの健康診断を解説 従業員の健康状態を把握して健康保持に努めるために、企業には健康診断の実施が義務付けられています。本記事では、健康診断の義務や種類、実施の目的について解説します。 first call


特殊健康診断

特殊健康診断は、一定の有害な業務に従事する労働者に対して実施します。実施時期は、雇い入れ時や配置替えを行う際、および6ヶ月以内に1回が目安とされています。

特殊健康診断の対象者は以下のとおりです。


▼特殊健康診断の対象者

▽以下の有害業務に常時従事する労働者

  • 有機溶剤業務
  • 鉛業務
  • 四アルキル鉛等業務
  • 特定化学物質業務
  • 高圧室内業務
  • 潜水業務
  • 管理区域に立ち入る放射線業務
  • 除染等業務
  • 石綿業務(過去に特定化学物質業務と石綿業務に従事した労働者も対象)


上記以外にも、情報機器を用いた事務所作業(VDT作業)や振動業務などに従事する労働者に対しても、特殊健康診断の実施が指導勧奨されています。

出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』『職場のあんぜんサイト - 特殊健康診断』『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン』『情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて



まとめ

この記事では、企業における健康診断について、以下の内容を解説しました。


  • 健康診断の対象者
  • 健康診断を実施しない場合の罰則
  • 健康診断結果の見方
  • 健康診断の種類


健康診断は、労働者の健康保持や業務中の事故防止のために行うものであり、事業者は労働者に対して、健康診断を受けさせる義務が法律で定められています。

正社員の場合は、1年に1回定期健康診断を実施して、雇い入れ時や特定業務への配置換えを行う際にも、別途健康診断を受けなければなりません。

また、派遣社員やアルバイト・パートに関しても、一定の条件を満たす場合には健康診断が義務づけられています。

万が一、健康診断結果に“再検査”の判定があった場合は、労働者に再検査を促すとともに、就業上の措置を検討することが重要です。その際、データ管理や産業医との情報共有をスムーズに行える体制づくりが欠かせません。

クラウド型健康管理サービス『first call』では、健康診断の結果をデータ化して、産業医への共有をスムーズに行えます。過去の記録を参照することもできるため、継続的な健康管理にも役立ちます。
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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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