ラインケアの基本!メンタルヘルスケアの重要性と職場でのストレス対策方法
「部下のメンタルヘルス対策って、どこまで踏み込めばいいのだろう...」
「休職者が増えているけど、予防のために何をすればいいんだろう...」
人事担当者の方は、このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
メンタルヘルス不調による休職者は年々増加しており、厚生労働省の調査では令和4年において、仕事で強い不安やストレスを感じる人がは82.2%と非常に高くなっています。
このような状況を放置すると、企業にとって大きなリスクとなります。
2022年4月からはパワハラ防止法が全面施行され、企業には従業員のメンタルヘルスを守る責任が、より一層強く求められるようになりました。
そんな中で注目されているのが「ラインケア」です。部長や課長など、職場の管理監督者による日々のケアを通じて、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ取り組みです。
ただし、ラインケアは正しい知識と方法で行わなければ効果は期待できません。場合によっては、逆効果になってしまうことも。
そこでこの記事では、人事担当者の皆さまに向けて、効果的なラインケアの基本から実践的な方法まで、具体的に解説していきます。現場ですぐに活用できる実践的なノウハウになっているため、ぜひ参考にしてみてください。
また、優秀な人が辞めてしまう前のメンタルヘルス対策は産業医との連携が効果的です。産業医の役割は非常に幅広いですが、産業保健の現場にある課題を理解している「first call」であれば、法令を守り、従業員の健康に繋がる産業医サービスが利用できます。
目次[非表示]
- ・ラインケアとは
- ・ラインケアのメリット
- ・1人の休職でかかる422万円の出費を減らせる
- ・新入社員の早期退職で失うコストを守れる
- ・社員全体の生産性が上がり売上アップにつながる
- ・パワハラなどの法律違反による損害を防げる
- ・社員が長く働き続ける会社に変わる
- ・「働きやすい会社」として人材が集まりやすくなる
- ・ラインケアに注目が集まっている理由
- ・ラインケアの方法
- ・毎日の声かけと会話で信頼関係を作る
- ・定期的な面談で部下の本音を聞く
- ・日々の様子を見て小さな変化に気付く
- ・部下の話をじっくり最後まで聞く
- ・休みがちな社員に早めに声をかける
- ・残業が増えた部下の仕事量を見直す
- ・産業医との面談をさりげなく勧める
- ・仕事の進め方を分かりやすく伝える
- ・部下の成長に合わせて仕事を任せる
- ・相談しやすい雰囲気の職場を作る
- ・ストレスを感じやすい業務を改善する
- ・管理職が押さえるべきラインケアのコツ
- ・毎日10分の会話時間を必ず作る
- ・部署の集まりは全員が発言する場にする
- ・体調が悪そうな部下には休暇を勧める
- ・休憩時間は部下と一緒に過ごす機会を作る
- ・部下の長所を見つけて具体的に褒める
- ・飲み会や懇親会は参加を強制しない
- ・早めの帰宅を率先して実践する
- ・業務の優先順位を明確に伝える
- ・仕事の進め方は部下の意見も取り入れる
- ・プライベートには深入りしすぎない
- ・ラインケアに関するよくある質問
- ・ラインケアは法律で決められた義務なの?
- ・部下との距離感はどのくらいが適切?
- ・相談内容は上司に報告すべき?
- ・産業医との面談を嫌がる部下への対応は?
- ・休職明けの社員への接し方で気をつけることは?
- ・年上の部下へのラインケアのやり方は?
- ・ラインケアのまとめ
ラインケアとは
ラインケアとは、部長や課長など、職場の管理監督者が行う部下のメンタルヘルスケアのことです。
職場でのメンタルヘルスケアにおいて、管理職による「ラインケア」は非常に重要な役割があります。
日々の声かけや観察を通じて部下の小さな変化に気付き、適切なサポートを行うことで、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことができます。
ラインケアのメリット
ラインケアを適切に行うことで、企業には様々なメリットがあります。
社員のメンタルヘルスを守ることは福利厚生というだけではなく、企業の成長に直結する重要な投資といえます。
休職や退職による損失を防ぐだけでなく、生産性の向上や人材の定着にもつながります。
具体的にどのようなメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
【ラインケアのメリット】
- 1人の休職でかかる422万円の出費を減らせる
- 新入社員の早期退職で失うコストを守れる
- 社員全体の生産性が上がり売上アップにつながる
- パワハラなどの法律違反による損害を防げる
- 社員が長く働き続ける会社に変わる
- 「働きやすい会社」として人材が集まりやすくなる
1人の休職でかかる422万円の出費を減らせる
内閣府の調査によると、従業員(30歳代後半、男性)1人がメンタルヘルスの不調で6ヶ月間休職した後に復職する場合、会社は422万円もの損失が出ると言われています。
ラインケアを行うことで、この損失を防ぐことができるのです。
まず、休職者の仕事を他の社員が引き継ぐため、残業代が増加します。また、業務の引き継ぎ時間や、人員が減ることでの生産性も低下してしまいます。
休職期間が長引くと、これらのコストはさらに膨らみます。
新入社員の早期退職で失うコストを守れる
新入社員1人が早期退職することでも、会社には損失が発生します。
採用にかかった費用だけでなく教育に使った時間や労力も含まれますが、ラインケアをしっかり行うことで、新入社員の早期退職を防ぎ、このコストを守ることができます。
特に問題なのは、早期退職が他の新入社員にも影響を与えることです。「あの人も辞めたから、自分も...」という連鎖が起きやすく、せっかく採用した人材が次々と退職してしまう可能性があります。
社員全体の生産性が上がり売上アップにつながる
ラインケアを行うと、社員の仕事の効率が上がり、会社の売上も伸びていきます。
というのも、メンタルヘルスが保たれている社員は仕事に集中できるため、良いアイデアも出しやすくなるためです。また、チームの雰囲気も良くなり、みんなで助け合いながら目標に向かって進むことができます。
特に大切なのは、メンタルヘルスが保たれている社員は「やらされている仕事」ではなく「やりがいのある仕事」として取り組めることです。そうすると、難しい課題にも前向きに挑戦できるようになります。
パワハラなどの法律違反による損害を防げる
2022年4月からパワハラ防止法が中小企業にも適用され、会社には社員の健康を守る責任がより強く求められるようになりました。
ラインケアをしっかり行うことで、法律違反を防ぎ、会社の評判や信用を守ることができます。
特に注意が必要なのは、一度問題が表面化すると、その影響は長く続くということです。
インターネットで会社名を検索したとき、パワハラの記事が上位に表示され続けることもあります。そうなると、優秀な人材の採用が難しくなり、取引先との関係にも影響が出てきます。
社員が長く働き続ける会社に変わる
社員のメンタルヘルスに気を配る会社では、多くの社員が長く働き続けたいと思えるようになります。
良い人材が定着することで会社の成長も安定し、新しい挑戦もしやすくなります。
また、ベテラン社員の経験やノウハウも会社に残り続けるため、若手の成長も早くなります。
「働きやすい会社」として人材が集まりやすくなる
ラインケアがしっかりしている会社は、口コミで「働きやすい会社」として広まっていきます。
そうすると、優秀な人材が自然と集まるようになり、採用活動が楽になります。
特に最近は、就活サイトの口コミ欄やSNSで、社員の生の声を簡単に見ることができます。
「上司が話を聞いてくれる」「困ったときに助けてくれる」といった声は、これから入社を考える人にとって、とても参考になる情報です。
ラインケアに注目が集まっている理由
ラインケアの重要性が高まっている背景には、働き方の多様化や業務の複雑化などの変化があります。
若手社員の早期離職や、メンタルヘルス不調を訴える社員の増加など、職場の課題は深刻化しています。
なぜ今、ラインケアが必要とされているのか、その理由を詳しく見ていきましょう。
【ラインケアに注目が集まっている理由】
- 若手社員の3人に1人が3年以内に退職する
- メンタル不調を訴える社員が約82%もいる
- 1人あたりの仕事量が多い
若手社員の3人に1人が3年以内に退職する
厚生労働省の調査によると、新卒入社した若手社員の約3割が3年以内に会社を辞めています。
この状況を変えるには、ラインケアを通じて若手社員の悩みや不安に早めに気付き、サポートしていく必要があります。
特に問題になるのが、「相談できる相手がいない」という点です。若手社員は分からないことも多く、誰かに聞きたいと思っています。
しかし、「忙しそうだから聞けない」「質問しても迷惑かもしれない」と悩んでしまうのです。
メンタル不調を訴える社員が約82%もいる
メンタルヘルス不調を感じている社員の数が、年々増え続けています。
厚生労働省の調査では、令和4年において、仕事で強い不安やストレスを感じる人がは82.2%と非常に高く、過去最多を記録しました。
「朝から憂うつで会社に行きたくない」「眠れない日が続いている」「身体の調子が悪いのに休めない」といった悩みも多いのです。
毎日の声かけや定期的な面談を通じて、社員の小さな変化に気付けるようになることが大切です。早めに気付き、適切なサポートをすることで、メンタル不調の深刻化を防ぐことができます。
1人あたりの仕事量が多い
人手不足や業務の複雑化により、社員1人あたりの仕事量が増加しています。
その結果、厚生労働省の調査では36.3%の社員が「仕事量が多すぎる」と感じ、ストレスを抱えています。
特に深刻なのは、これらの問題が悪循環を生んでいることです。仕事量が増えると残業も増え、体調を崩して休む人が出てきます。
すると、その人の仕事も他のメンバーが引き受けることになり、さらに負担が増えていきます。
ラインケアの方法
ラインケアを効果的に行うには、具体的にどのような取り組みが必要なのでしょうか。
特別な時間や労力をかけなくても、日常的なコミュニケーションの中で実践できることがたくさんあります。
部下との信頼関係づくりから、具体的な声かけの方法、業務改善まで、現場ですぐに活用できる実践的な方法を紹介します。
【ラインケアの方法】
- 毎日の声かけと会話で信頼関係を作る
- 定期的な面談で部下の本音を聞く
- 日々の様子を見て小さな変化に気付く
- 部下の話をじっくり最後まで聞く
- 休みがちな社員に早めに声をかける
- 残業が増えた部下の仕事量を見直す
- 産業医との面談をさりげなく勧める
- 仕事の進め方を分かりやすく伝える
- 部下の成長に合わせて仕事を任せる
- 相談しやすい雰囲気の職場を作る
- ストレスを感じやすい業務を改善する
毎日の声かけと会話で信頼関係を作る
普段の何気ない声かけと会話が、部下との信頼関係を作る土台になります。
「おはよう」「お疲れさま」といった簡単な言葉でも、毎日続けることで、部下が困ったときに相談しやすい関係を築くことができるのです。
また、日々の会話は部下にとっても大きな意味があります。上司が自分に関心を持ってくれていると感じられれば、困ったときに「相談してもいいかな」と思えるようになります。
毎日の声かけは、わずか1分でもできる大切なラインケアです。特別な時間を作る必要はありません。日常的な会話を大切にすることで、自然と部下との信頼関係が育っていきます。
定期的な面談で部下の本音を聞く
定期的な1on1面談は、部下の本音を聞き、早めに問題を見つけるための大切なラインケアの方法です。
月1回など決まったペースで面談を行うことで、部下は自分の悩みや考えを整理して話せるようになり、上司は深い理解と適切なサポートができるようになります。
特に最近は、在宅勤務やハイブリッド勤務が増え、普段のコミュニケーションが減っています。そういった中で、しっかりと時間を取って話を聞く機会を作ることは、これまで以上に重要になっています。
面談で得た情報を適切にフォローすることで、働きやすい職場づくりに繋がります。
日々の様子を見て小さな変化に気付く
部下のメンタルヘルス不調は、突然現れるのではなく、小さな変化から始まります。
普段の様子をよく観察し、「いつもと違う」というサインに早く気付くことで、深刻な問題を防ぐことができるのです。
メンタルヘルスの変化は、最初は本人も気付かないような小さなものです。例えば、いつもより口数が減る、表情が暗い、遅刻が増えるなど、日常的な変化として表れます。こうした変化に気付くには、普段から部下の様子をしっかり見ておく必要があります。
部下の小さな変化に気付くことは、ラインケアの基本です。普段から様子を見守り、変化に気付いたら、さりげない声かけをすることが大切です。
部下の話をじっくり最後まで聞く
部下の話を途中で遮らず、最後までじっくり聞くことがラインケアの基本です。
相手の気持ちに寄り添って聞くことで、本当の悩みや問題点が見えてきます。話を聞いてもらえる経験が、その後の信頼関係にもつながっていきます。
最近は時間に追われる毎日で、ゆっくり話を聞く余裕がないと感じる管理職も多いかもしれません。しかし、部下の話を途中で切り上げたり、すぐに解決策を押し付けたりすると、かえって信頼関係を損なうことにもなりかねません。
たとえ忙しくても、話を聞く時間だけは確保するように心がけましょう。
部下の話に耳を傾けることは、時間はかかりますが、非常に重要な取り組みです。
休みがちな社員に早めに声をかける
遅刻や早退、欠勤が増えてきた社員には、できるだけ早く声をかけましょう。
体調の変化は、まず休み方の変化として表れることが多いからです。早めに対話の機会を作ることで、深刻な問題を防ぐことができます。
休みがちな状態というのは、実は大きなサインです。特に、今まで規則正しく出勤していた人が突然休みがちになった場合は要注意です。ただの「怠慢」というわけではなく、心や体の不調が隠れている可能性が高いからです。
休みがちな状態は、心や体の不調のSOSかもしれません。早めに優しく声をかけ、対話の機会を作ることで、問題の深刻化を防ぐことができます。
残業が増えた部下の仕事量を見直す
残業時間の急な増加は、メンタル不調のきっかけになりやすいので注意しましょう。部下の残業が増えてきたら、すぐに仕事量や進め方を見直す必要があります。
残業が増える理由には単純に仕事量が多すぎる場合もありますが、実は仕事の仕方が分からずに時間がかかっているケースや、周りに相談できずに一人で抱え込んでいるケースも多いのです。
真面目な社員ほど無理をする傾向があり、「自分の時間で何とかしよう」「他の人に迷惑をかけたくない」という思いから、残業を重ねてしまいます。
産業医との面談をさりげなく勧める
メンタルヘルスの不調が気になる部下には、産業医との面談を勧めることも効果的です。
ただし、その勧め方が重要で、「あなたが心配だから」という気持ちを伝えながら、さりげなく提案することがポイントです。
強制ではなく、本人の意思を尊重した声かけを行うようにしましょう。
多くの社員は産業医との面談に対して誤解を持っています。「心の病気だと思われるのでは」「人事評価に影響するのでは」といった不安を感じているのです。そのため、上司からの声かけの際は、こうした不安を取り除くような説明が必要です。
仕事の進め方を分かりやすく伝える
仕事の進め方が分からないことは、大きなストレス要因になります。
特に若手社員や新しい業務を任された社員は、「正しくできているか」という不安を抱えがちです。分かりやすい指示と丁寧な説明を行うことで、この不安を減らすことができます。
仕事の指示が曖昧だと、社員は大きな精神的負担を感じてしまいます。「これで合っているのかな」「失敗したらどうしよう」と常に不安を抱えながら仕事をすることになるからです。
まずは大枠を示し、細かい部分は進めながら一緒に考えていく姿勢が、部下の成長を支えることになります。
部下の成長に合わせて仕事を任せる
部下の成長に合わせて適切な仕事を任せることで、やりがいと自信につながります。
逆に、能力以上の仕事を急に任せたり、同じ仕事ばかりを続けさせたりすると、大きなストレスを生む原因になるので注意しましょう。
一人ひとりの成長のペースを見極めながら、段階的に仕事を任せていくことが大切です。
相談しやすい雰囲気の職場を作る
「相談したいけど、迷惑かな」と悩む社員は思いのほか多いのです。
誰もが気軽に相談できる雰囲気があれば、小さな問題の段階で対処でき、メンタルヘルス不調を防ぐことができます。そのため、相談しやすい職場づくりはラインケアでは重要になります。
特に大切なのは、相談を受けた時の最初の反応です。
例え些細な相談でも真剣に耳を傾ける姿勢があれば、その後も安心して相談できる関係が築けます。逆に、最初の相談で冷たい反応をされると、次から相談することを躊躇してしまいます。
ストレスを感じやすい業務を改善する
ストレスの多い業務が続くと、どんなに頑張る社員でも、いずれ限界が来てしまいます。
「これは仕方ない」と思われている業務の中にも、工夫次第で改善できるものが多くあります。
例えば、締切直前に集中する作業、深夜に及ぶ対応、休日出勤が必要な業務など、これまで当たり前と思われていた負担を、違う角度から見直してみる価値があります。
業務改善は単に効率を上げるだけでなく、社員の離職を防ぐための重要な取り組みです。
管理職が押さえるべきラインケアのコツ
ラインケアを成功させるためには、管理職一人ひとりが意識して取り組むべきポイントがあります。
毎日の小さな心がけから職場全体の雰囲気づくりまで、様々なコツを押さえることで、より効果的なケアが可能になります。
ここでは、現場の管理職がラインケアで抑えておくべき具体的なコツをお伝えします。
【管理職が押さえるべきラインケアのコツ】
- 毎日10分の会話時間を必ず作る
- 部署の集まりは全員が発言する場にする
- 体調が悪そうな部下には休暇を勧める
- 休憩時間は部下と一緒に過ごす機会を作る
- 部下の長所を見つけて具体的に褒める
- 飲み会や懇親会は参加を強制しない
- 仕事の進め方は部下の意見も取り入れる
- プライベートには深入りしすぎない
毎日10分の会話時間を必ず作る
毎日、短い時間でも顔を合わせて話をすることで小さな変化に気付きやすくなり、信頼関係も深まっていきます。
普段の短い会話が重要な理由は、実はメンタルヘルスの変化は突然ではなく、徐々に進行していくためです。毎日会話をする中で、表情の違いや声のトーンの変化など、わずかな異変に気付くことができます。
部署の集まりは全員が発言する場にする
一人も取り残されることなく全員が参加している実感を持てる場を作ることで、孤立を防ぎ、メンタルヘルスを守ることができます。
会議やミーティングの場ではいつも同じ人ばかりが話し、特定の人が一度も発言しないという状況は要注意です。
発言できない人は次第に孤立感を深め、チームの一員としての実感が薄れてしまいます。
体調が悪そうな部下には休暇を勧める
部下の体調が悪そうなときは、早めに休暇を取るよう声をかけることが大切です。
「無理して出社するより、しっかり休んで回復してほしい」という気持ちを伝えることで、安心して休める環境を作ることができます。
多くの社員は、体調が悪くても「周りに迷惑をかけたくない」「仕事が遅れてしまう」という思いから、無理をして出社しがちです。
しかし、この無理が重なることで、小さな不調が深刻な病気につながってしまうことがあります。
休憩時間は部下と一緒に過ごす機会を作る
リラックスした雰囲気の中での会話は、普段の業務中では見えない部下の本音や悩みを知る貴重な機会となります。
休憩時間は普段の緊張から解放される大切な時間です。この時間を部下と共有することで、自然な形でコミュニケーションを深めることができます。
【休憩時間の過ごし方のポイント】
- 無理なく自然な形で一緒の時間を作る
- 業務の話は必要最小限に抑える
- 相手のペースに合わせる
- プライバシーには配慮する
大切なのは、この時間を「監視」や「指導」の場にしないことです。上司も一人の人間としてリラックスした態度で接することで、部下も心を開きやすくなります。
部下の長所を見つけて具体的に褒める
「よく頑張った」という抽象的な言葉ではなく、「ここが良かった」と具体的に伝えることで、自信とやる気を引き出すことができます。
特に、若手社員は自己肯定感が低い傾向にあります。自分の価値を見出せないことは大きなストレス要因となり、メンタルヘルスに悪影響を与えかねません。
「この資料の◯◯という部分が分かりやすく、お客様にも好評だった」といった具体的な褒め方は、次の行動にもつながります。
飲み会や懇親会は参加を強制しない
飲み会や懇親会はコミュニケーションを深める機会として有効ですが、参加を強制することはかえってストレスの原因となります。
「参加は自由」という雰囲気を作り、一人ひとりの状況や希望を尊重することが、ラインケアでは重要です。
働き方や価値観が多様化する中で、従来型の「飲みニケーション」に負担を感じる社員が増えています。育児や介護の事情を抱える人、お酒が苦手な人、時間外の付き合いを避けたい人など、様々な理由があるのです。
早めの帰宅を率先して実践する
「上司がいるから帰れない」という雰囲気をなくし、「定時で帰って良いんだ」という安心感を作ることが、部下のメンタルヘルスケアに繋がります。
職場によっては、上司が残っていると部下が帰りづらい雰囲気があります。この「見えない残業圧力」は、部下の大きなストレス要因となっているのです。
特に大切なのは上司自身の行動になるため、「早く帰りましょう」と言いながら自分は残業していては、言葉の説得力がありません。
管理職が率先して定時退社することで、部下も安心して帰宅できるようになります。
業務の優先順位を明確に伝える
業務の優先順位が不明確だと、部下は何から手をつければいいか迷い、大きなストレスを感じます。
優先順位を具体的に示し、「今、どの仕事に集中すべきか」を明確にすることで、不安やプレッシャーを軽減することができます。
特に若手社員は経験が少ないため、優先順位の判断に不安を感じやすいものです。
仕事の進め方は部下の意見も取り入れる
仕事の進め方を上司が一方的に決めるのではなく、部下の意見も積極的に取り入れることで、モチベーションとメンタルヘルスを保つことができます。
「自分の意見が仕事に活かされている」という実感は、働きがいと自信につながります。
現場で実際に作業する部下たちには、上司が気付かない課題や改善案が見えていることも多いものです。しかし、多くの部下は「意見を言っても無駄かもしれない」「否定されるかもしれない」という不安から、良いアイデアがあっても発言をためらってしまいます。
プライベートには深入りしすぎない
部下のメンタルヘルスケアに気を配ることは大切ですが、プライベートへの過度な介入は逆効果です。
適度な距離感を保ちながら、必要なときにはサポートできる関係を作ることが、効果的なラインケアのコツとなります。
管理職の中には「部下のことを何でも知っておくべき」と考え、プライベートな部分まで踏み込もうとする人もいます。しかし、そのような関わり方は、かえって部下に重いプレッシャーを与えることになります。
ラインケアに関するよくある質問
ラインケアを実践する中で、多くの管理職が様々な疑問や悩みを抱えています。
「これって報告すべき?」「どこまで踏み込んでいい?」など、現場では日々判断に迷う場面が出てきます。
ここでは、よくある質問とその対応方法について、具体的に解説していきます。
【ラインケアに関するよくある質問】
- ラインケアは法律で決められた義務なの?
- 部下との距離感はどのくらいが適切?
- 相談内容は上司に報告すべき?
- 産業医との面談を嫌がる部下への対応は?
- 休職明けの社員への接し方で気をつけることは?
- 年上の部下へのラインケアのやり方は?
ラインケアは法律で決められた義務なの?
ラインケアそのものは法律で定められた義務ではありませんが、労働契約法で定める「安全配慮義務」の一環として、管理職には部下の心身の健康を守る責任があります。
効果的なラインケアを行うことは、この責任を果たす重要な手段となります。
部下との距離感はどのくらいが適切?
部下との適切な距離感は、「近すぎず、遠すぎず」が基本です。
必要なときには相談できる関係でありながら、プライバシーは尊重するというバランスが大切です。
この距離感を保つことで、より効果的なラインケアが可能になります。
相談内容は上司に報告すべき?
部下からの相談内容を上司に報告するかどうかは、内容の性質や緊急性によって判断が必要です。
プライバシーに関わる内容は慎重に扱い、業務に重大な影響がある場合のみ、本人の同意を得て必要最小限の情報を共有するようにします。
産業医との面談を嫌がる部下への対応は?
産業医面談を嫌がる部下には、まず拒否する理由や不安を丁寧に聞き取ることが大切です。
「上司が心配している」という気持ちを伝えながら、産業医面談がサポートの場であることを説明し、無理強いせずに理解を促していきます。
休職明けの社員への接し方で気をつけることは?
休職明けの社員への対応は、「温かく、でも特別扱いせず」が基本です。
徐々に職場に馴染めるよう配慮しながら、過度な気遣いは避け、自然な形での復帰をサポートすることが大切です。
年上の部下へのラインケアのやり方は?
年上の部下へのラインケアでは、経験やプライドに配慮しながら、互いの立場を理解し合える関係作りが大切です。
年齢や経験に関係なく、一人の専門職として敬意を持って接することで、効果的なラインケアが可能になります。
ラインケアのまとめ
ここまで見てきたように、ラインケアは職場のメンタルヘルスケアのための重要な取り組みです。
決して難しいものではなく、日々のちょっとした気配りの積み重ねが、大きな効果を生み出します。
本記事で紹介した方法やコツを参考に、自分の職場に合った形でラインケアを実践していってください。メンタルヘルスケアは、企業の持続的な成長のために必要な要素となっています。
また、優秀な社員が離職してしまう前のメンタルヘルス対策は産業医との連携が効果的です。
産業医の役割は非常に幅広いですが、産業保健の現場にある課題を理解している「first call」であれば、法令を守り、従業員の健康に繋がる産業医サービスが利用できます。