
企業のメンタルヘルス対策とは? 3つの具体例を紹介
厚生労働省は、2020年に全国の約14,000の事業所を対象に“労働安全衛生調査”を実施しました。その結果が示されている『令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』によると、「現在の仕事に関することで強い不安やストレスとなっていると感じる事柄がある」と回答した労働者の割合は、全体の54.2%でした。
全体の半数以上もの労働者が仕事に関するストレスを感じていることから、企業においてメンタルヘルス対策に取り組むことがいかに重要であるかがうかがえます。
しかし、「メンタルヘルス対策としてどのような取り組みを行えばよいのか分からない」と悩む担当者の方もいるのではないでしょうか。
そこで本記事では、企業が行っているメンタルヘルス対策の具体例を紹介します。
出典:厚生労働省『令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』
目次[非表示]
- 1.メンタルヘルス対策の3つの具体例
- 1.1.①卸売・小売業【従業員:1,000人以上】
- 1.1.1.実施内容
- 1.2.②建設業【従業員:50人未満】
- 1.3.③製造業【従業員:400人弱】
- 2.まとめ
メンタルヘルス対策の3つの具体例
従業員のメンタルヘルス対策にはさまざまな方法があります。今回は、業種別に3つの企業が行っているメンタルヘルス対策の具体例を紹介します。
①卸売・小売業【従業員:1,000人以上】
はじめに、全国で小売業を展開している、従業員数1,000人以上の企業の事例を紹介します。
こちらの企業では、“攻めのストレスチェック”の一環として、従業員一人一人のストレス度を改善すること、組織全体が仕事に対してポジティブな心理状態で取り組めるよう、ワーク・エンゲージメントを高めることに注力しています。
実施内容
職場全体で主体的に取り組むために、ストレスチェックの実施のほか、従業員が悩みを相談できる体制を取り入れたメンタルヘルス対策を行っています。
▼メンタルヘルス対策の内容
- 10人以上の従業員が所属する部門でのストレスチェックの集団分析
- 健康に関するセミナーの開催
- 産業医と各部門長の面談の実施
- 外部相談機関を活用した相談窓口の設置
ストレスチェックを実施したあとは、検査結果や課題を伝えます。そのうえで、ほかの部門で結果が出ている施策を共有しました。
そのほか、外部相談機関を活用した相談窓口も設置しており、日頃から仕事の悩みを相談しやすい仕組みが整えられています。
効果
ストレスチェックの実施にあたり、各部門に健康管理委員を設置して、積極的に呼びかけることにより、回答率は約98%になりました。
また、企業全体で開催した健康に関するセミナーに参加した従業員のほうが、参加していない従業員に比べて良好な結果も得られたようです。
さらに、“産業医と各部門長の面談”で課題が見られる場合は、“産業医と部門全員の面談”を実施しています。3ヶ月かけて300人との面談を実施したところ、面談後は、従業員が不調を感じ始めた早めのタイミングで相談に来るようになり、ポジティブな変化が見られました。
出典:厚生労働省『職場のメンタルヘルス対策の取組事例 - 株式会社丸井グループ(東京都中野区)』
②建設業【従業員:50人未満】
次に、建設業を展開している、従業員数50人未満という小規模の建設会社の事例を紹介します。
こちらの建設会社では、人間関係が流動的であることや、“仕事のミスが許されない”という職場環境がストレスの要因になるのではないかという懸念から、自主的にストレスチェックを導入しています。
実施内容
従業員のメンタルヘルス対策として、ストレスチェックの実施と、中小企業ならではの働きやすい環境づくりを実現しています。
▼メンタルヘルス対策の内容
- ストレスチェックの実施
- 業務時間外かつ会社以外の場所での面談の実施
- 月1回の希望休の取得
ストレスチェック導入時には、社長から従業員へ「社長が結果を見ることはないから安心して正直に答えてほしい」と直接伝えました。
また、従業員のプライバシーを遵守するために、業務時間外に会社以外の場所で面談を行うことを徹底しました。これにより、全員の回答を実現しました。
ストレスチェックで高ストレス者と判断された従業員には、外部の専門家が面談を行い、体調管理の方法や、職場・家庭での過ごし方をアドバイスしています。
さらに、従業員自ら、リフレッシュできる休みの取り方について考えられるように、月に1回、全員に希望休を取得してもらう取り組みを行い、休暇の取り方についての指導につなげているそうです。
効果
事前に社長から従業員に丁寧な説明を行い、従業員に納得してもらったうえでストレスチェックを導入したことで、メンタルヘルス対策の取り組み全体が効果的に機能しています。
また、LINEグループで業務連絡を行うことによって、コロナ禍で生まれた社内のコミュニケーション不足の課題を解決へ導きました。
なお、コロナ禍におけるテレワーク環境下での健康課題については、こちらの記事で解説しています。併せてご一読ください。
出典:厚生労働省『職場のメンタルヘルス対策の取組事例 - 有限会社三崎工業(沖縄県那覇市)』
③製造業【従業員:400人弱】
最後に、グループ全体で従業員数およそ400人の食品加工会社の事例を紹介します。
こちらの食品加工会社では、従業員の不満やストレスを早い段階で解消して、メンタルヘルス不調を未然に防ぐために、メンタルヘルス対策や職場環境を改善する取り組みを開始しました。
実施内容
メンタルヘルス対策では、ストレスチェックの実施に加えて、研修や面談を活用しています。
▼メンタルヘルス対策の内容
- ストレスチェックの実施
- 医師や心理士との相談サービスの導入
- メンタルヘルス・ハラスメントに関する研修の実施
- 職場環境に関する調査の実施
- 管理職と従業員の面談
ストレスチェックは毎年行われる健康診断のタイミングで実施して、医師や心理士との対面・電話相談サービスも同時に導入しました。
また、閑散期には、講師を招いてメンタルヘルスの研修を実施しています。研修で話されるのは、メンタルヘルスの基本的な内容やハラスメント対策など、管理部部長が現場を見て気づいたことに関連した内容です。
さらに、職場環境に関する調査も毎年実施しています。調査項目は、人間関係や休暇・福利厚生、労働負荷などです。
この調査結果とストレスチェックの集計結果から、管理職と従業員の認識の相違点を比較します。そのうえで、働きやすい環境づくりにおける課題を洗い出して、改善のための施策を行っています。
そのほか、管理職と従業員の面談も実施しています。
効果
これらのメンタルヘルス対策を進めるなかで、当初は不満の声も多く出ていました。しかし、調査やヒアリング、それらに基づく施策の実行を繰り返すことで、従業員からの不満は徐々に減ったようです。
出典:厚生労働省『職場のメンタルヘルス対策の取組事例 - 株式会社マルハニチロ北日本(北海道釧路市)』
まとめ
この記事では、メンタルヘルス対策の具体例として、以下の内容を解説しました。
- ①卸売・小売業【従業員:1,000人以上】
- ②建設業【従業員:50人未満】
- ③製造業【従業員:400人弱】
メンタルヘルス対策では、ストレスチェックだけでなく、根本的な原因の発見・改善のために面談を行うことが大切です。
一方で、「ストレスチェックの結果の集計・分析に手間がかかってしまう」「産業医がいないので、面談が行えない」といった悩みを抱える企業さまも多いのではないでしょうか。
クラウド型健康管理サービス『first call』では、オンラインでストレスチェックの実施や分析、産業医面談の実施が可能です。また、産業医がいない企業や事業所で単発で産業医面談が実施できるスポットオンライン面談サービスも提供しています。ストレスチェックと、その後の対応に課題をお持ちの方は、ぜひご検討ください。