過重労働と長時間労働の違いとは?時間外・休日労働を削減するための取り組みを解説
過重労働には、脳・心臓疾患や精神障がいなどの健康問題を発症するリスクがあり、過労死につながるケースも見られています。
このようなリスクを防止するには、時間外・休日労働時間の削減をはじめ、健康管理に関わる対策を徹底することが重要です。
しかし、従業員の労働時間を管理するうえで、「過重労働と長時間労働はどう違うのか」とそれぞれの定義について明確に理解できていない場合も多いのではないでしょうか。
この記事では、過重労働と長時間労働の違いや定義、また時間外・休日労働時間を削減するための取り組みについて解説します。
出典:厚生労働省『令和3年度「過労死等の労災補償状況」を公表します』『過重労働による健康障害を防ぐために』
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過重労働と長時間労働の違い
過重労働と長時間労働は、どちらも健康問題のリスクが高まる労働のことを指します。大きく捉えると同じ言葉に感じますが、定義の有無や労働時間の基準に違いが見られます。
ここでは、それぞれの定義について詳しく解説します。
過重労働の定義
厚生労働省では、以下のいずれかを超えた労働を過重労働と定義しています。
- 時間外・休日労働が月100時間
- 2~6ヶ月平均の時間外・休日労働が月80時間
過重労働は、疲労の蓄積をもたらす重要な要因の一つと考えられており、脳・心臓疾患との関連性が深いとの医学的知見も得られています。
時間外・休日労働が基準の時間を超えると、業務における過重な負荷がかかり、健康問題を発症するリスクが高くなると考えられています。
ただし、業務の過重性については、労働時間だけでなく就労態様の諸要因も含めて、総合的に評価することが必要です。
出典:厚生労働省『過重労働による健康障害を防ぐために』『STOP!過労死』
長時間労働の定義
過重労働と異なり、長時間労働には明確な定義がありません。しかし、厚生労働省では、以下のいずれかを超えた場合に長時間労働と呼んでいるケースが見られます。
- 1ヶ月あたりの時間外労働が45時間以上
- 週40時間労働の場合、1週間あたりの労働時間が60時間以上
1ヶ月に45時間以上というラインは、労使協定を締結して働かせることのできる時間外労働の限度時間を指します。
時間外・休日労働が45時間を超えて増えるほど、健康問題を発症するリスクが徐々に高まると考えられています。
また、時間外労働が以下の時間を超える場合には、精神障がいの原因となり得るとの見方も示されています。
▼精神障がいの原因となり得る長時間労働
- 1ヶ月の時間外労働がおおむね160時間以上
- 2ヶ月連続した時間外労働がおおむね月120時間以上
- 3ヶ月連続した時間外労働がおおむね月100時間以上
このように、長時間労働は定義されていないため、過重労働との違いを明確に示すことはできません。ただし、時間外・休日労働が月45時間を超えて増えるほど、健康問題との関連性が高まるため注意が必要です。
長時間労働のリスクについては、こちらの記事で解説しています。併せてご確認ください。
出典:厚生労働省『時間外労働の上限規制わかりやすい解説』『過重労働による健康障害を防ぐために』『STOP!過労死』『精神障害の労災認定』
時間外・休日労働を削減するための取り組み
過重な長時間労働による健康問題や過労死を防ぐためには、時間外労働・休日労働の削減に向けた取り組みが必要です。
ここでは、企業ができる取り組みを3つ紹介します。
①有給休暇の取得促進
時間外・休日労働を削減するために、有給休暇の取得を促進します。
2019年4月に施行された働き方改革関連法によって、年5日の年次有給休暇の確実な取得が企業に義務づけられました。
企業には、法律で定められた最低取得日数を満たすとともに、有給休暇を取得しやすい環境づくりが求められます。
▼有給休暇取得促進に向けた取り組み
- 年次有給休暇の計画的付与制度の導入
- 半日単位・時間単位の年次有給休暇の付与制度を導入
- ブリッジホリデー(※)の設定
- アニバーサリー休暇制度の導入
なお、年次休暇の計画的付与制度を活用する際は、労使協定の締結と就業規則への記載が必要です。
※ブリッジホリデーとは、日曜や祝日が飛び石となっている場合に、休日の橋渡し(ブリッジ)として計画的年休を活用して、平日を休みにして連休にする制度のこと。
出典:厚生労働省『年5日の年次有給休暇の確実な取得わかりやすい解説』『STOP!過労死』/働き方・休み方改善ポータルサイト『働き方・休み方改革 取組事例集』
②ノー残業デーの導入
毎月・毎週、または特定の曜日などにノー残業デーを導入することも有効です。
ノー残業デーを導入することで、所定労働時間を超える労働を抑止できるようになり、時間外労働の削減につながります。
ただし、設定した日に定時の帰宅を促すためには、業務量や納期などに配慮して、支障が出ないように調整する必要があります。また、残業しなかった分が翌日の負担にならないような計画も大切です。
▼ノー残業デーの導入方法
- 業務内容や進捗状況に応じて、各自で毎週1日を設定する
- 従業員間で各自のノー残業デーを共有して重複しないように調節する
- やむを得ず残業が必要な場合に、振替申請ができる制度を導入する
出典:厚生労働省『労働時間等の設定の改善 1.所定外労働時間の削減』
③時間外労働時間の把握・事前申請の導入
時間外労働時間の把握や、事前申請制度の導入も取り組みの一つです。
部署・課ごとに発生している時間外労働を把握することで、削減が必要となる優先度を順位づけできます。また、時間外・休日労働を事前承認制にすると、業務内容や進捗状況などを上司が把握しやすくなり、残業が必要な業務かを判断できます。
このようなトップダウンによる時間外労働時間の管理によって、無駄な残業の削減につながります。
▼時間外労働時間の把握・事前申請の導入方法
- 労働時間を適正に管理できるサービスを導入する
- 時間外労働を行う際は、毎回上司に申請書の提出やチャットで連絡する
出典:働き方・休み方改善ポータルサイト『働き方・休み方改革 取組事例集』
まとめ
この記事では、過重労働と長時間労働について以下の内容を解説しました。
- 過重労働と長時間労働の違い
- 時間外・休日労働を削減するための取り組み
時間外・休日労働が月100時間を超える、または2~6ヶ月平均で月80時間を超える過重労働は、脳・心臓疾患や精神障がいを発症するリスクが高まります。
長時間労働の明確な定義はありませんが、月45時間を超えて増えるほど健康問題のリスクが徐々に高くなるため注意が必要です。
健康問題のリスクを防ぐには、時間外・休日労働を削減する取り組みが重要です。また、働きすぎによる健康問題を防止するには、日頃のメンタルヘルス対策や生活習慣病予防などの取り組みも欠かせません。
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