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個人情報の扱い方に注意!産業医に求められる守秘義務と事業者の報告義務について解説

産業医面談とは、主に長時間労働者および高ストレス者を対象に、産業医が従業員本人の健康の状況を把握したうえで適切な指導を行う面談のことです。過労やストレスが原因で、従業員の健康問題やメンタルヘルス不調が発生するのを未然に防ぐことを目的としています。

面談が必要な従業員のなかには「話したことを上司に報告されるのでないか」といった不安から、面談に応じないといったケースも考えられます。

しかし、産業医には守秘義務が課せられているため、従業員はプライバシーが守られた状態で安心して面談に臨むことが可能です。

この記事では、産業医面談における守秘義務や、面談後の対応について解説します。

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出典:厚生労働省『長時間労働者への医師による面接指導制度について』/厚生労働省 こころの耳『長時間労働者、高ストレス者の面接指導について


目次[非表示]

  1. 産業医に課せられる守秘義務
  2. 産業医面談の内容
  3. 事業者に課せられる報告義務
  4. まとめ


産業医に課せられる守秘義務

産業医は、従業員や管理監督者から相談を受ける際、健康診断の結果やメンタルヘルスに関する個人情報が集まるため、個人情報の取扱いに注意が必要です。

また、『労働安全衛生法』第105条に基づき、産業医には面談で知り得た従業員の秘密を他人に漏らしてはならないという義務が課せられています。


第百五条 第六十五条の二第一項及び第六十六条第一項から第四項までの規定による健康診断、第六十六条の八第一項、第六十六条の八の二第一項及び第六十六条の八の四第一項の規定による面接指導、第六十六条の十第一項の規定による検査又は同条第三項の規定による面接指導の実施の事務に従事した者は、その実施に関して知り得た労働者の秘密を漏らしてはならない。

引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法


そのため、事業者は従業員に対して、「産業医面談で話した情報は周囲に知られることはない」ということを伝えることも大切です。

また、事業者・産業医には健康診断の結果や面談の内容といった情報を適切に取扱い、従業員が安心して相談できる環境をつくることが求められます。

産業医が面談するなかで、健康管理に関する範囲を超えた、従業員の個人的な情報まで知ってしまうというケースも存在します。

知ってしまった情報のなかに、事業者へ報告したほうがよい情報がある場合は、産業医が従業員に“事業者へ情報を伝えてもよいかどうか”を確認したうえで、共有することが望ましいといえます。

ただ、本人が事業者への報告を拒否した内容についても、本人の安全や健康を確保するために不可欠であると考えられるものもあります。その場合産業医は、事業者が適切な措置を講じることができるよう、健康情報を労務管理上の情報(就業上の措置に関する事項)に加工するなど、労働者本人の意向も十分配慮した上で報告することが求められます。

一方で万が一、産業医が守秘義務に違反した場合は、『刑法』第134条に基づき、6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金が科せられる可能性もあるため、注意が必要です。


第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。

引用元:e-Gov法令検索『刑法


出典:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』『刑法』/厚生労働省『現行の産業医制度の概要等』『長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル



産業医面談の内容

産業医面談で行われる内容は、対象者によって異なります。いずれの場合であっても守秘義務があるため、従業員の情報が周囲に知られないような配慮が必要です。


▼産業医面談の内容および対象者例

内容
対象者
面接指導
  • 長時間労働者
  • ストレスチェックで高ストレスと判定された従業員
両立支援を目的とした面談
病気の治療を行っている従業員
フォローアップを目的とした面談
休職から復帰する従業員


面接指導は、勤務時間やストレスの状況などを踏まえて、申出があった従業員に対して実施します。企業は、産業医の具体的な内容や申出の方法、個人情報の取扱いなどについて従業員へ周知することも大切です。

なお、産業医面談の具体的な内容は、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。

  産業医との面談を実施する目的と内容について解説 産業医は、従業員の健康保持・促進や職場環境の改善などについて、医学的な立場から助言を行い、健康に就労できるよう支援する役割を担っています。この記事では、産業医面談の実施目的と内容について解説します。 first call

出典:厚生労働省『中小企業事業者の為に産業医ができること』『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』『過重労働による健康障害を防ぐために』/厚生労働省 こころの耳『長時間労働者、高ストレス者の面接指導について



事業者に課せられる報告義務

労働安全衛生規則』第52条の21に基づき、従業員が50人以上在籍する職場では、ストレスチェックと産業医面談の実施状況を、労働基準監督署に報告する義務が発生します。報告書の提出時期は定められておらず、事業場ごとに設定が可能です。


第五十二条の二十一 常時五十人以上の労働者を使用する事業者は、一年以内ごとに一回、定期に、心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書(様式第六号の三)を所轄労働基準監督署長に提出しなければならない。

引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則


長時間労働者や高ストレス者との面談後は、産業医は面談結果を報告書・意見書にまとめて、事業者への報告が必要です。事業者は、産業医から受けた報告書・意見書を基に、就業上の措置を適切に実施して労働環境の改善を目指すことが重要です。

事業者は同規則第52条の6に基づき、面談結果の記録を紙媒体もしくは電子カルテにまとめて、5年間保存することが定められています。

また、常時50人以上の労働者を使用する事業者は、健康診断の結果についても、所轄労働基準監督署長に報告する必要があり、その結果を原則5年間保存しなければなりません。

結果報告書は厚生労働省のサイトからダウンロードが可能です。詳細は、こちらをご覧ください。

心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書

定期健康診断結果報告書

出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』『医師による長時間労働面接指導実施マニュアル』『心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書』『長時間労働者、高ストレス者の面接指導に関する報告書・意見書作成マニュアル』『健康診断結果報告の提出の仕方を教えて下さい。』『健診結果等の保存期間について(現状)』/e-Gov法令検索『労働安全衛生規則



まとめ

この記事では、産業医面談について、以下の内容を解説しました。


  • 産業医に課せられる守秘義務
  • 産業医面談の内容
  • 事業者に課せられる報告義務


産業医には、面談で知り得た従業員の情報を他人に漏らしてはならないという守秘義務が法律で定められています。そのため、従業員は情報が周囲に知られる心配をすることなく、安心して産業医面談に臨むことができます。

面談が終わったあとには、産業医は面談結果を報告書・意見書にまとめ、事業者に報告することが必要です。

また、従業員が50人以上在籍する職場では、事業者はストレスチェックと産業医面談の実施状況や、健康診断の結果を労働基準監督署に報告する義務があります。

また、事業者は、適切な産業医を選任して、従業員が安心して産業医面談を行える環境を整えることも大切です。

クラウド型健康管理サービス『first call』は、従業員への産業医面談の案内から、面談の日程調整、実施、意見書の管理までをすべてオンラインで行えるサービスです。面談記録や意見書もオンラインで管理できるため、報告義務への対応にも役立ちます。

サービス詳細については、こちらからご確認ください。

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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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