人事担当者はなれない? ストレスチェックの実施事務従事者の役割と要件

人事担当者はなれない? ストレスチェックの実施事務従事者の役割と要件

職場におけるストレスチェックを適切かつ円滑に行うためには、あらかじめ実施体制を整えておく必要があります。

ストレスチェックの実施体制を整えるにあたってキーパーソンとなるのが、実務担当者・実施者・実施事務従事者・面接指導を行う医師の4者です。

4つの担当部門では、それぞれ実施業務や職務上の権限、守秘義務などが異なるため、事業者が各担当者を選定する際は役割・要件について理解しておくことが重要です。

この記事では、ストレスチェックの実施に関わるキーパーソンのうち、実施業務従事者の役割や要件について解説します。

出典:厚生労働省 神奈川労働局『ストレスチェック制度


目次[非表示]

  1. 1.ストレスチェックの実施事務従事者とは
  2. 2.実施事務従事者の役割
  3. 3.実施事務従事者の要件
    1. 3.1.人事権を持たない
    2. 3.2.守秘義務を遵守する
  4. 4.まとめ


ストレスチェックの実施事務従事者とは

実施事務従事者とは、産業医や保健師などの実施者の指示を受けて、ストレスチェックの実施事務の業務に携わる人を指します。

実施事務従事者の対象者は、一般的に職場の事務職員や産業保健スタッフなどが選任されます。

ストレスチェックの実施にあたってキーパーソンとなる4つの担当部門と、実施事務従事者との関係性は以下のとおりです。


▼ストレスチェックの実施体制と4つの担当部門

ストレスチェックの実施体制と4つの担当部門

画像引用元:厚生労働省『ストレスチェック制度導入ガイド


出典:厚生労働省『ストレスチェック制度導入ガイド』『改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について』/厚生労働省 神奈川労働局『ストレスチェック制度



実施事務従事者の役割

実施事務従事者は、ストレスチェックの“実施の事務”を行う役割があります。

実施の事務とは、ストレスチェックの企画をはじめ、結果の集計や評価など、労働者の健康情報を取り扱う業務のことを指します。実施事務従事者は、実施者がこれらの職務を行うにあたって、指示を受けて補助する立場です。

実施事務従事者の具体的な職務としては、以下が挙げられます。いずれも実施者の指示を受けて行います。


▼実施事務従事者の職務

  • ストレスチェック調査票の回収、記入内容の確認、データ入力・集計、記録作成
  • 評価基準に基づく評価結果の出力、高ストレス者の選定
  • ストレスチェック結果(書面)の封入、労働者への通知
  • 未受検の労働者への受検勧奨
  • 面接指導対象者への申出の勧奨
  • 集団分析、集団分析結果の出力と事業者への情報提供


出典:厚生労働省『ストレスチェック制度導入ガイド』/厚生労働省 神奈川労働局『ストレスチェック制度



実施事務従事者の要件

ストレスチェックの実施事務従事者を選定する際は、職務上の権限や、個人情報の取扱いについて一定の要件を満たしている必要があります。


人事権を持たない

ストレスチェックの実施の事務では、従業員の健康情報を取扱います。そのため、職場で人事権を持つ人は、実施事務従事者としてストレスチェックに携わることはできません。

人事権を持つ人が担当すると、健康情報を利用して、従業員の意に反して人事上の不利益な取扱いがなされる可能性があるというのが理由です。

このようなトラブルを防ぐために、『労働安全衛生規則』第52条の10では、人事に関して直接の権限を有する監督的地位にある人は、実施事務に従事できないと定められています。


▼労働安全衛生規則第52条の10

第五十二条の十 法第六十六条の十第一項の厚生労働省令で定める者は、次に掲げる者(以下この節において「医師等」という。)とする。
一 医師
二 保健師
三 検査を行うために必要な知識についての研修であつて厚生労働大臣が定めるものを修了した歯科医師、看護師、精神保健福祉士又は公認心理師
2 検査を受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、検査の実施の事務に従事してはならない。

引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則


人事に関して直接の権限を有する監督的地位にある人とは、事業者や専務、人事部長などが該当します。

なお、人事部門に所属する人であっても、人事を決定・判断する権限を持たない職員については、実施事務に従事することが認められています。

出典:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』/厚生労働省『ストレスチェック制度導入ガイド』『改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について』/厚生労働省 神奈川労働局『ストレスチェック制度


守秘義務を遵守する

実施事務従事者は、ストレスチェックの実施事務を通して労働者の個人情報を扱う立場にあるため、守秘義務が課せられています。

ストレスチェックによって確認できる健康情報は“要配慮個人情報”となり、本人への不当な差別や不利益が生じないように取扱いへ配慮する義務があります。

要配慮個人情報となる健康情報には、ストレスチェックの結果をはじめ、医師による面接指導の結果、事後措置の内容なども含まれます。実施事務従事者は、これらの健康情報について守秘義務を遵守するとともに、事業者は事前に健康情報の取扱規定を作成しておくことが重要です。

なお、外部にストレスチェックの実施の事務を委託する場合には、健康情報の取扱規定に沿って安全管理を行うように委託契約の締結が必要です。

出典:厚生労働省 神奈川労働局『ストレスチェック制度』/厚生労働省『ストレスチェック制度導入ガイド』『改正労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度について』『事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き



まとめ

この記事では、ストレスチェックの実施事務従事者について、以下の内容を解説しました。


  • 実施事務従事者の概要
  • 実施事務従事者の役割と要件


実施事務従事者は、実施者の指示を受けて調査票の回収やデータ入力・集計などの職務を補助する役割を担います。

ただし、人事に関して直接の権限を有する監督的地位にある人は、実施事務従事者として携わることはできません。また、ストレスチェックの実施事務を通して取得した健康情報については、守秘義務を遵守することも定められています。

実施事務従事者を選定する際は、職務上の権限や健康情報の取扱いについて明確に定めるために、規定を作成しておくことが重要です。

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