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専属産業医とは? 嘱託産業医との違いも解説

常時50人以上の従業員が勤務している場合、事業者は産業医を選任する義務があります。

この義務を負っている事業場では、一般的に依頼された際に事業場に出向く“嘱託産業医”を選任します。

しかし、特定の条件に該当する場合には、“専属産業医”の選任が必要です。

この記事では、専属産業医の選任が義務づけられる条件や、専属産業医と嘱託産業医との違いを解説します。


目次[非表示]

  1. 1.専属産業医とは
  2. 2.専属産業医の業務内容
  3. 3.専属産業医と嘱託産業医の違い
    1. 3.1.働き方の違い
    2. 3.2.報酬の違い
  4. 4.まとめ


専属産業医とは

専属産業医とは、特定の事業場に所属する産業医のことです。

専属産業医の選任が必要な事業場の条件は、以下の2つです。


▼専属産業医の選任が必要な事業場の条件

  • 常時1,000人以上の従業員が勤務している事業場
  • 労働安全衛生規則』第13条第1項第3号で定められている有害業務に、常時500人以上の従業員が携わっている事業場

有害業務とは、労働安全衛生関係法令に定める有害な業務、または作業方法や作業環境の管理が適切に行われないと従業員の健康問題を引き起こすおそれのある業務のことを指します。

常時500人以上の従業員が携わる事業場で、専属産業医の選任が必要とされる有害業務は、以下のとおりです。


▼専属産業医の選任が必要な有害業務(労働安全衛生規則 第13条第1項第3号)

イ 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務
ロ 多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務
ハ ラジウム放射線、エツクス線その他の有害放射線にさらされる業務
ニ 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務
ホ 異常気圧下における業務
ヘ さく岩機、鋲びよう打機等の使用によつて、身体に著しい振動を与える業務
ト 重量物の取扱い等重激な業務
チ ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務
リ 坑内における業務
ヌ 深夜業を含む業務
ル 水銀、砒ひ素、黄りん、弗ふつ化水素酸、塩酸、硝酸、硫酸、青酸、か性アルカリ、石炭酸その他これらに準ずる有害物を取り扱う業務
ヲ 鉛、水銀、クロム、砒ひ素、黄りん、弗ふつ化水素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリンその他これらに準ずる有害物のガス、蒸気又は粉じんを発散する場所における業務
ワ 病原体によつて汚染のおそれが著しい業務
カ その他厚生労働大臣が定める業務

引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則


また、常時3,001人以上の従業員が勤務する事業場では、2人以上の専属産業医の選任が必要です。

出典:厚生労働省『現行の産業医制度の概要等』/e-Gov法令検索『労働安全衛生規則



専属産業医の業務内容

専属産業医の業務内容は、従業員の健康を保持増進することであって、基本的に嘱託産業医の業務内容と同じです。

専属産業医の主な業務内容は次のとおりです。


▼専属産業医の業務内容の一例

  • 健康診断の実施とその結果に基づく措置
  • 長時間労働をする従業員に対する面接指導とその結果に基づく措置
  • ストレスチェックと、ストレスチェックで高ストレス者と判断された従業員への面接指導とその結果に基づく措置
  • 作業環境の維持管理
  • 作業管理
  • 上記以外の従業員の健康管理
  • 健康教育、健康相談、労働者の健康の保持増進を図るための措置
  • 衛生教育
  • 従業員の健康問題の原因調査と再発防止措置


専属産業医に限らず産業医は、労働者の健康を確保する必要があると判断した場合は、事業者に対して従業員の健康管理や作業環境の管理などに関する勧告ができます。

出典:厚生労働省『産業医の職務』『産業医について~その役割を知ってもらうために~』『中小企業事業者の為に産業医ができること』/e-Gov法令検索『労働安全衛生規則



専属産業医と嘱託産業医の違い

専属産業医と嘱託産業医の職務内容は基本的に変わりませんが、働き方や報酬に違いがあります。


▼専属産業医と嘱託産業医の違い


専属産業医
嘱託産業医
労働形態
常勤
非常勤
設置する事業場
  • 常時1,000人以上の従業員が勤務
  • 常時500人以上の従業員が有害業務に携わっている(常時1,000人以下)
50~999人の従業員が勤務
報酬
年俸制
時給制


働き方の違い

専属産業医が常勤であるのに対して、嘱託産業医は非常勤です。

専属産業医は、週3日以上かつ1日3時間以上の勤務としていることが一般的で、嘱託産業医は、月1回以上事業場に訪問する必要があります。事業者の同意と所定情報の提供などがあれば、2ヶ月に1回の訪問であってもよいとされています。

常時1,000人以上の従業員が勤務している場合は、専属産業医を選任します。一方、従業員が50~999人の事業場の場合は、嘱託産業医の選任も可能です。

ただし1,000人未満の事業場であっても、常時500人以上の従業員が有害業務に携わっている場合は、専属産業医を選任します。

このように、専属産業医と嘱託産業医の働き方は異なりますが、業務内容は基本的に同じです。

出典:厚生労働省『現行の産業医制度の概要等』『事業者・産業医の皆様へ 産業医制度に係る見直しについて労働安全衛生規則等が改正されました


報酬の違い

専属産業医と嘱託産業医では報酬にも違いがあります。

専属産業医は特定の事業場に所属して勤務しますが、嘱託産業医は非常勤勤務のため報酬が異なります。

専属産業医の報酬は年俸で設定して、嘱託産業医は月1回、1時間の訪問で報酬額を設定することが一般的です。なお、報酬は、事業場の規模や産業医の勤務時間などによって変わります。



まとめ

この記事では、専属産業医について以下の内容を解説しました。


  • 専属産業医とは
  • 専属産業医の業務内容
  • 専属産業医と嘱託産業医の違い


専属産業医を選任する条件は、従業員が常時1,000名以上勤務している、もしくは常時500人以上が有害業務に携わっている事業場です。専属産業医と嘱託産業医の業務内容は基本的に同じですが、専属産業医が常勤である一方で、嘱託産業医は非常勤であるという点や、報酬の点で違いがあります。
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