
産業医と契約する際の流れと契約形態の種類
産業医の選任が義務づけられている事業場では、選任を要する事由が発生した日から14日以内に産業医を選定して、労働基準監督署に届け出る必要があります。これは、『労働安全衛生規則』第13条第1項において定められています。
▼労働安全衛生規則 第13条第1項
(産業医の選任等)
第十三条 法第十三条第一項の規定による産業医の選任は、次に定めるところにより行わなければならない。
一 産業医を選任すべき事由が発生した日から十四日以内に選任すること。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』
これから産業医との契約が必要になる可能性がある企業担当者の方は、選任から契約を滞りなく行うために、契約の流れや手続き、契約形態などについて理解を深めておくことが重要です。
この記事では、事業場における産業医の役割を踏まえつつ、契約の流れ、契約形態の種類について解説します。
出典:e-Gov法令検索『労働安全衛生規則』
目次[非表示]
- 1.産業医の役割
- 2.産業医と契約する際の流れ
- 2.1.①産業医を探す
- 2.2.②契約を締結する
- 2.3.③労働基準監督署に届け出る
- 3.産業医の契約形態
- 4.まとめ
産業医の役割
産業医は、事業場における産業保健活動を推進する産業保健チームのリーダーシップを取る役割を担います。
事業場での産業保健活動の質・量を充実させるには、産業医をはじめとする各専門職の強みを生かした役割分担を行うことが求められます。
なかでも産業医は、労働者の健康管理に必要な医学知識を備えているため、専門性の高い業務に専念することが期待されます。各専門職と役割を分担することで、業務フローが整理されて、産業保健活動の円滑化、質の向上につながると考えられます。
産業医の具体的な職務には、以下が挙げられます。
▼産業医の職務
- 定期的な職場巡視
- 健康診断、その結果に基づく措置
- ストレスチェックの実施、その結果に基づく措置
- 長時間労働者、高ストレス者に対する面接指導
- 作業環境の維持管理
- 健康教育、健康相談、衛生教育
- 健康障がいの原因調査と再発防止措置
- 衛生委員会での指導・助言
これから産業医を選任する事業場では、事業場の規模や健康課題、産業医以外の専門職の配置などを踏まえて、産業医に求める機能を明確にしておくことが大切です。
出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』『現行の産業医制度の概要等』
産業医と契約する際の流れ
産業医との契約には、いくつかのステップを踏む必要があります。ここでは、一般的な契約の流れについて解説します。
①産業医を探す
まずは、自社が求める要件にマッチした産業医を探します。産業医を探す方法として、以下が挙げられます。
▼産業医を探す方法
- 医師紹介を行っている会社に相談する
- 都道府県医師会や郡市区医師会に相談する
- 近隣の医療機関に相談する
- 健康診断を依頼している機関に相談する
- 競合他社や近隣の会社で選任している産業医を紹介してもらう
なお、医師が産業医になるには、一定の養成研修・講習を修了する必要がありますが、専門とする診療科や産業保健活動の経験有無は医師によって異なります。また、嘱託か専属かといった選任方法によって、訪問回数や業務範囲が異なるケースもあります。
産業医を探す際は、産業医に求める要件を満たしているか、業種での経験や得意分野を見極めることが重要です。
出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』『現行の産業医制度の概要等』
②契約を締結する
選任する産業医が決まったら、契約書を作成して契約を締結します。
産業医は、事業場の規模によって専属または嘱託といった選任方法や、設置人数が定められています。
▼産業医の選任方法と設置人数
事業場の規模 |
選任方法 |
設置人数 |
50~999人 |
専属または嘱託(※) |
1人以上 |
1000~3000人 |
専属 |
1人以上 |
3001人以上 |
専属 |
2人以上 |
契約書の作成にあたっては、職務内容や報酬額、契約期間、情報の取扱いなどについて明記しておくことが重要です。
なお、産業医と直接契約する場合の契約形態については、雇用契約と業務委託契約の2つがあります。これは次項で詳しく解説します。
※…有害業務に500人以上従事させる場合は専属での選任が必要。
出典:厚生労働省『現行の産業医制度の概要等』
③労働基準監督署に届け出る
産業医と契約を締結したあとは、所轄の労働基準監督署へと必要書類を届け出る必要があります。届出に必要な書類は、以下のとおりです。
▼届出に必要な書類
- 産業医選任報告書
- 医師免許の写し
- 産業医資格を持つことを証明する書面または写し
産業医の選任報告についてはこちらの記事で詳しく解説しています。併せてご覧ください。
出典:厚生労働省『総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告』『様式第3号』
産業医の契約形態
産業医と契約を結ぶ際、雇用契約と業務委託契約の2つの形態があります。それぞれの契約形態について、詳しく解説します。
雇用契約
雇用契約は、産業医を事業場の従業員として直接雇用する契約のことです。専属の産業医として設置する場合に雇用契約を締結するケースです。
雇用形態は、企業に常駐する専属産業医や契約社員、アルバイトなどがあります。
業務委託契約
業務委託契約は、外部の企業または個人へ業務を委託する契約のことです。嘱託産業医として選任する場合、業務委託契約を締結することが一般的となっています。
業務委託契約を締結する際は、雇用契約と比べて専門的な知識や交渉が必要です。そのため、産業医紹介サービス会社が間に入り、産業医を派遣してもらうといった間接的な契約方法を選択するケースもあります。
産業医紹介サービス会社を活用すると、産業医を探す際や辞任した場合、変更が必要な場合もスムーズに選任をサポートしてもらえるメリットがあります。
なお、専属産業医と嘱託産業医の違いについては、こちらの記事をご確認ください。
まとめ
この記事では、産業医との契約について以下の内容を解説しました。
- 産業医の役割
- 契約の流れ
- 契約形態の種類
産業医は、医学知識を持つ専門性の高さから、事業場での産業保健活動のリーダーシップを発揮することが期待されています。事業場の規模や健康課題、ほかの専門職の役割によって、産業医に求める役割が異なるため、事前に何を求めるかを明確にしておくことが重要です。
また、産業医によって専門とする診療科や産業保健活動の経験有無は異なるため、自社の要件に満たしているか、業種・得意分野を見極めることもポイントです。
なお、産業医との契約には雇用契約と業務委託契約があります。産業医紹介サービス会社を活用すれば、産業医の選任や契約内容の交渉、契約書の締結などのサポートを受けることが可能です。
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なお、産業医の見つけ方については、こちらの記事で解説しています。