産業医によるメンタルヘルス対策とは?産業医面談でのポイントや不調者への対応を解説
産業医は、医療の知識と職場環境をよく知る専門家として、効果的なメンタルヘルス対策や労働者の健康管理等を行う役割を担っています。
また、産業医だけでなく企業側でもメンタルヘルス対策の内容について理解しておかないと、後々困ったことが起きる可能性もあります。例えば、労働者の調子が悪くなって仕事の効率が下がったり、長期休職者が増えたり、良い人材が辞めてしまったりすることがあります。
様々な問題が起きることで、会社の業績や評判に大きく影響することがあります。
この記事では、産業医によるメンタルヘルス対策の重要性や具体的な取り組み、調子の悪い人への対応方法、産業医面談でのポイントについて解説します。
企業の担当者として産業医とどう協力するか、どう活用するかを考える上で役立つ情報になっています。
また、専門的な内容も多い産業医との契約は、経験豊富な産業医紹介会社に相談するのがおすすめです。first callの産業医サービスは、ご要望に合わせた産業医をご紹介し、法令に沿った業務実施のサポートが可能です。
目次[非表示]
- ・産業医によるメンタルヘルスケアの重要性
- ・産業医が行うメンタルヘルス対策の内容
- ・ストレスチェックの実施と結果分析で職場の課題を把握
- ・高ストレス者への面接指導で個別の問題に対応
- ・職場巡視で作業環境や人間関係の問題を早期発見
- ・長時間労働者への面談で過重労働によるメンタル不調を防止
- ・管理職向けのラインケア研修で職場の対応力を強化
- ・労働者向けセルフケア教育でストレス対処能力を向上
- ・産業医によるメンタル不調者への対応
- ・メンタルヘルス対策には産業医面談が重要になる理由
- ・専門知識を持つ医師が冷静に状況を見極められる
- ・労働者の心と体の状態を直接確認して適切な対応のアドバイスができる
- ・職場環境と健康の両方を考えた総合的なアドバイスができる
- ・守秘義務があるため安心して相談できる
- ・産業医によるメンタルヘルス対策のポイント
- ・まとめ
産業医によるメンタルヘルスケアの重要性
近年、産業医によるメンタルヘルスケアの重要性が注目されています。
労働者の心の健康を守り、企業の生産性を保つために、産業医の仕事はとても重要です。
以下では、産業医によるメンタルヘルスケアの重要性や効果について、詳しく説明します。
【産業医によるメンタルヘルスケアの重要性】
- 労働者の心の健康を守り、企業の生産性向上につながる
- メンタルヘルスケアは労働安全衛生法で定められた産業医の役割
- 早期発見と早期対応でメンタル不調の重症化を防ぐことができる
労働者の心の健康を守り、企業の生産性向上につながる
産業医によるメンタルヘルスケアは、労働者の心の健康を守るだけでなく、企業の生産性向上にも繋がります。
例えば、次のような効果が出る場合があります。
効果 |
内容 |
---|---|
休職者の減少 |
メンタルヘルス不調による長期休業を予防 |
離職率の低下 |
健康的な職場環境により、人材の流出を防止 |
モチベーション向上 |
心の健康が保たれることで、仕事への意欲が向上 |
チームワークの改善 |
メンタルヘルスへの理解が深まり、職場の雰囲気が改善 |
創造性の促進 |
ストレスが軽減され、新しいアイデアが生まれやすくなる |
厚生労働省の調査によると、仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は、令和4年度で82.2%にまでなっています。
この数字は、令和3年の53.3%から大きく増加しており、職場でのメンタルヘルス対策がますます重要になっていることが分かります。
メンタルヘルスケアは労働安全衛生法で定められた産業医の役割
産業医によるメンタルヘルスケアは、労働安全衛生法で定められた産業医の重要な役割です。
労働安全衛生法第13条では、常時50人以上の労働者を使用する事業場での産業医の選任が義務付けられています。
具体的な産業医の職務内容は労働安全衛生規則に書かれていますが、この中にメンタルヘルスケアに関連する項目が含まれています。
例えば、産業医には以下のような職務があります。
【産業医の職務】
- ストレスチェックとその結果に基づく措置
- 長時間労働者への面接指導
- 労働者の健康管理
- 健康教育や健康相談
早期発見と早期対応でメンタル不調の重症化を防ぐことができる
メンタルヘルス対策は、早めに気づいて産業医と企業が連携して対応することで、メンタル不調の重症化を防ぐことができる場合もあります。
まず、なぜ早期発見・早期対応が大切なのかというと、上記の通り、厚生労働省の調査によると仕事で強いストレスを感じている労働者の割合は年々増えており、このままではメンタル不調で休職する人が増えてしまうかもしれません。
ですが、産業医と企業がストレスチェックの結果を分析したり、面接指導を実施したりなどの早期発見・早期対応の仕組みを整えることで、メンタルヘルス不調による休職者数を減らすことができます。
産業医が行うメンタルヘルス対策の内容
産業医が行うメンタルヘルス対策は、具体的に何をするのかよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
産業医の仕事は様々で、労働安全衛生規則の中だけでも、健康診断の実施やその結果に基づく措置、作業環境の維持管理、労働者の健康管理に関することなどが定められています。
以下では、産業医が行うメンタルヘルス対策の具体的な内容について、詳しく説明します。
【産業医が行うメンタルヘルス対策の内容】
- ストレスチェックの実施と結果分析で職場の課題を把握
- 高ストレス者への面接指導で個別の問題に対応
- 職場巡視で作業環境や人間関係の問題を早期発見
- 長時間労働者への面談で過重労働によるメンタル不調を防止
- 管理職向けのラインケア研修で職場の対応力を強化
- 労働者向けセルフケア教育でストレス対処能力を向上
ストレスチェックの実施と結果分析で職場の課題を把握
ストレスチェック制度は、労働安全衛生法の改正により2015年12月から始まった制度で、従業員50人以上の事業場では、毎年1回以上の実施が義務付けられています。
産業医がストレスチェックを通じて行う主な活動は、以下の通りです。
【産業医のストレスチェックへの関わり】
- ストレスチェックの実施
- 結果の分析
- 職場環境改善の提案
ストレスチェックでは、労働者が「職業性ストレス簡易調査票」などの質問に回答します。
産業医はこの結果を個人レベルと組織レベルで分析し、職場の課題を特定していきます。
例えば、産業医の分析により、以下のような部署別の課題と改善策が提案されることがあります。
部署 |
主な課題 |
改善策 |
---|---|---|
営業部 |
長時間労働によるストレス |
ノー残業デーの導入、営業活動の効率化 |
製造部 |
上司とのコミュニケーション不足 |
管理職向けコミュニケーション研修の実施 |
管理部 |
仕事の裁量度が低い |
業務の見直しと権限委譲の促進 |
このような取り組みを行うことで、次のような効果が出てきます。
【ストレスチェックの分析と改善による効果】
- ストレス高リスク者の割合の減少
- 年間残業時間の削減
- 労働者の満足度向上
高ストレス者への面接指導で個別の問題に対応
産業医による高ストレス者への面接指導も、メンタルヘルス対策の重要な一環です。
面接指導は、ストレスチェックの結果で高ストレスと判定された労働者に対して行われる個別のケアです。
労働安全衛生法では、ストレスチェックの結果で高ストレスと判定され、かつ本人が希望する場合、事業者は医師による面接指導を実施することが義務付けられています。この面接指導を通じて、産業医は個々の労働者が抱える問題に対して、細かな対応を行います。
面接指導の流れは、大まかに以下のようになります。
【面接指導の流れ】
- ストレスチェックの実施
- 高ストレス者の選定
- 面接指導の案内と申し出
- 面接指導の実施
- 就業上の措置の検討
面接指導では、産業医は労働者と1対1で話し合い、ストレスの原因や心身の状況を詳しく聞き取ります。
例えば、次のような質問をすることがあります。
【産業医の質問例】
- 最近の仕事の状況はどうですか?
- 睡眠や食事などの生活習慣に変化はありませんか?
- 家庭や私生活での心配事はありますか?
こういった質問によって、産業医は労働者のストレス状況を確認し、必要に応じて具体的なアドバイスを行います。
職場巡視で作業環境や人間関係の問題を早期発見
労働安全衛生規則第15条では、産業医は少なくとも毎月1回(一定の条件下では2ヶ月に1回)、作業場などを巡視し、作業方法や衛生状態に有害のおそれがある場合は、直ちに必要な措置を講じることが定められています。
職場巡視の主な目的と確認ポイントは以下の通りです。
目的 |
確認ポイント |
---|---|
作業環境の評価と改善 |
照明、温度、湿度、騒音レベル、換気状況、作業スペースの適切さ |
労働者の健康状態の観察 |
表情や態度の変化、疲労の蓄積状況 |
人間関係や職場の雰囲気の把握 |
上司と部下の関係性、同僚間の雰囲気、ハラスメントの兆候 |
安全衛生上の問題点の早期発見 |
長時間労働の有無、休憩時間の確保状況、作業姿勢や動作の適切さ |
産業医は職場巡視を通じて、こういった点に注意を払いながら職場の状況を観察します。
職場巡視の効果を高めるためには、以下の点に注意しましょう。
【職場巡視のポイント】
- 定期的な実施:少なくとも月1回の頻度で巡視を行う
- 全部署の見回り:偏りなく全ての職場を見て回る
- 時間帯への配慮:夜勤がある場合は夜の時間帯の巡視も検討する
- 労働者との会話:可能な範囲で労働者から直接話を聞く
- 記録の作成:巡視結果をメモし、時間とともに変化する様子を把握する
長時間労働者への面談で過重労働によるメンタル不調を防止
長時間労働は労働者のメンタルヘルスに悪影響を与える要因です。
労働安全衛生法第66条の8によって、事業者は、労働時間が一定の基準を超えた労働者に対して、産業医による面接指導を実施する義務があります。
産業医による面談では、主に以下の項目をチェックします。
チェック項目 |
確認内容 |
---|---|
身体的症状 |
疲労感、睡眠の質、頭痛、胃腸の不調など |
精神的症状 |
イライラ、不安感、気分の落ち込みなど |
業務状況 |
仕事量、締め切りの状況、残業の理由 |
生活習慣 |
食事、運動、睡眠時間、休日の過ごし方 |
面談を通じて、産業医は労働者の状態を全体的に見て、心の不調になりそうかどうかを判断します。
例えば、ある人が「最近よく眠れない」「仕事のミスが増えた」といった話をした場合、注意が必要でしょう。
面談の後、産業医は企業に対して、労働者の健康を守るために必要なことについて以下のようなアドバイスを行います。
【産業医面談を踏まえたアドバイス】
- 残業時間の上限を決める
- 仕事の分け方や優先順位を見直す
- 休暇を取りやすくする
- 夜勤の回数を減らす
こういった産業医の意見をもとに、必要な対策を取る必要があります。
管理職向けのラインケア研修で職場の対応力を強化
管理職向けのラインケア研修は職場の対応力を高める取り組みです。
ラインケアとは、上司が部下の心の健康に気を配ることを指します。
厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」でも、ラインケアは職場のメンタルヘルス対策の柱の一つとして位置づけられています。
この研修で、管理職は次のようなことを学びます。
【ラインケア研修で学ぶ内容】
- 心の健康について基本的な知識
- 部下の様子の変化に気づくこと
- 適切な声かけや相談の受け方
- 職場の雰囲気を良くする方法
- 産業医や人事部門と協力する方法
以下のようなポイントを意識すると、より効果的です。
【効果的に行うポイント】
- 実際にありそうな例を多く使う
- 管理職自身のストレス対処法も教える
- 定期的に研修を行い、学んだことを忘れないようにする
- 研修後にフォローアップの時間も設ける
研修で学んだことを意識しすぎてしまい、管理職が部下の様子を気にしすぎることで、かえってストレスを与えてしまうことがないように注意しましょう。
労働者向けセルフケア教育でストレス対処能力を向上
産業医が行うセルフケア教育は、労働者自身がストレスに上手く対処する力を身につける取り組みです。
厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」において、セルフケアは職場におけるメンタルヘルスケアの「4つのケア」の一つとして挙げられています。
セルフケア教育の主な目的は次の3つです。
【セルフケア教育の目的】
- ストレスの仕組みを知る
- 自分のストレス状態に気づく
- ストレス解消法を学ぶ
産業医が行う教育内容として、以下が一例です。
教育内容 |
内容例 |
---|---|
ストレスについて |
ストレスの種類、心と体への影響 |
自己チェック |
自分のストレス度を確認する方法 |
リラックス方法 |
深呼吸、体の力を抜く方法など |
考え方の工夫 |
物事の捉え方を変える方法 |
生活習慣 |
睡眠、運動、食事の大切さ |
産業医は、ただ話を聞くだけでなく、実際に体験する時間も作る場合もあります。例えば、その場でストレスチェックをしたり、複数人でリラックス法を試したりすることも考えられます。
産業医によるメンタル不調者への対応
産業医によるメンタル不調者への対応は、職場のメンタルヘルス対策の重要な部分です。心の健康問題で長期休職や退職する人がいる企業は少なくありません。
そのため、メンタル不調の人への適切な対応は、会社にとって欠かせない課題となっています。
以下では、産業医がメンタル不調の人にどのように対応するのか、具体的な方法について詳しく説明します。
【産業医によるメンタル不調者への対応】
- 主治医と連絡を取り職場での対応方法を検討する
- 休職中も定期的に面談して回復の様子を確認する
- 復職後も継続的に面談して再発防止に努める
- 職場の受け入れ体制づくりに向けてアドバイスを行う
主治医と連絡を取り職場での対応方法を検討する
主治医は労働者の病状や治療方針を理解しているため、その情報を踏まえた上で職場での対応方法を検討することが大切です。
まず、産業医が主治医と連絡を取る際には、個人情報保護の観点から労働者本人の同意が必要です。
同意を得たら、産業医は以下のような情報を主治医に渡します。
【主治医に渡す情報】
- 労働者の職場での様子
- 業務内容や負荷の状況
- 職場環境の特徴
これらの情報を元に、主治医から以下のような点について意見をもらいます。
【主治医からもらう情報】
- 現在の病状
- 治療の見通し
- 就業上の配慮事項
産業医と主治医のやり取りは、記録を残し、正確な情報を伝えるために、通常は書面で行われます。ただし、緊急性が高い場合は電話で連絡を取ることもあります。
そして、主治医からの情報をもとに、以下のような対応方法を検討します。
主治医からの情報 |
職場での対応例 |
---|---|
集中力が低下している |
短時間勤務から始める |
対人関係のストレスが高い |
一時的に個室で作業する |
服薬の影響で眠気がある |
午前中のみの勤務とする |
産業医と主治医には役割の違いがあるため、意見が食い違うこともあります。そういった場合は話し合い、最善の方法を見つけるようにしましょう。
休職中も定期的に面談して回復の様子を確認する
メンタルヘルス不調で休職中の労働者に対して産業医が定期的に面談を行うことで、回復状況を確認するだけでなく、スムーズな職場復帰に繋げることができます。
面談の頻度は労働者の状態や企業の規定によって異なりますが、1〜2ヶ月に1回程度行うのがおすすめです。
ただし、状況に応じて柔軟に対応するように心がけましょう。
産業医が休職中の労働者と面談する際のポイントは、以下の通りです。
【休職者との面談のポイント】
- 元気になっているかの確認
- 生活のリズムを聞く
- 仕事に戻る準備ができているかを確認
- 心配なことがないか聞く
- 主治医との連絡がうまくいっているか確認
面談では、具体的に以下のような内容をチェックします。
確認すること |
内容 |
---|---|
睡眠 |
寝る時間、眠りの質、規則正しさ |
食事 |
食欲、決まった時間に食べているか |
日中の過ごし方 |
外に出る回数、体を動かす量 |
気分 |
落ち込みやイライラの程度 |
治療 |
病院に行く回数、薬を飲んでいるか |
面談を通じて、産業医は労働者の回復具合を見極めて次のようなアドバイスをします。
【産業医から休職者へのアドバイス】
- 生活のリズムを整える方法
- ストレスへの対処法
- 仕事に戻る準備の仕方
休職中の面談も強制ではありません。労働者の同意を得てから行う必要があります。また、面談の時期や方法も、労働者の状態に合わせて決める必要がある点には注意しましょう。
復職後も継続的に面談して再発防止に努める
復職した後も定期的に話を聞くことで様子を見守り、また具合が悪くなるのを防ぐことができます。
仕事に戻ったばかりの頃は、1〜2ヶ月に1回程度話を聞けるとよいでしょう。
その後、調子が安定してきたら少しずつ間隔を空けていきましょう。
話を聞く時は、主に次のようなことを確認します。
【復職後の面談で聞く内容】
- 仕事になじめているか
- 残業の時間や仕事の量
- 睡眠や食事などの生活のリズム
- ストレスへの対処法を実践できているか
- 職場での人間関係
例えば、「最近、仕事に慣れてきて楽しいです」「同僚と一緒にお昼ご飯を食べられるようになりました」という話が聞けたら、良い兆しだと言えるでしょう。
復職後の面談は、労働者の負担にならないよう気をつけることが重要です。時間や場所、頻度などは希望を聞きながら決めていきましょう。
職場の受け入れ体制づくりに向けてアドバイスを行う
復職に向けた産業医の大切な仕事の一つが、職場の受け入れ準備に関するアドバイスです。
受け入れ体制ができていると、休職中の労働者がスムーズに仕事に戻れて、また調子が悪くなるのを防ぐことに繋がります。
産業医が行うアドバイスの主な内容は、次の通りです。
【受け入れ体制を整えるためのアドバイス】
- 仕事に戻るプランを作る
- 職場の環境を整える
- 上司や同僚への説明の仕方
- 仕事の内容を見直す
- 話し方や聞き方の工夫
誰にどのようなアドバイスを行うか、具体的な例を挙げると以下のようになります。
誰に |
アドバイスの内容 |
---|---|
人事 |
少しずつ仕事を増やすプランを立てる、会社のルールを確認する |
直属の上司 |
適切な仕事の量を決める、進み具合を確認する頻度 |
同僚 |
戻ってきた人への接し方、助け方 |
休職している本人 |
ストレスへの対処法、困った時の相談先 |
受け入れ準備で気をつけたいのは、戻ってきた人への特別扱いと周りの人の負担のバランスです。
例えば、「残業なし」という配慮は必要かもしれませんが、それで他の人が大変になりすぎないよう注意が必要です。
メンタルヘルス対策には産業医面談が重要になる理由
労働者のメンタルヘルスを守って会社の生産性を保つには、産業医との面談が重要になります。
仕事でストレスを感じている人も多いことから、産業医面談は心の不調を早めに見つけて対応することができる良い機会です。
以下では、産業医面談が重要な理由や、上手な面談の進め方について詳しく説明します。
【メンタルヘルス対策には産業医面談が重要になる理由】
- 専門知識を持つ医師が冷静に状況を見極められる
- 労働者の心と体の状態を直接確認して適切な対応のアドバイスができる
- 職場環境と健康の両方を考えた総合的なアドバイスができる
- 守秘義務があるため安心して相談できる
専門知識を持つ医師が冷静に状況を見極められる
産業医は、体や心の健康について詳しい医師です。職場のことも良く知っているので、労働者の心の健康状態を落ち着いて見ることができます。
例えば、産業医の以下のような知識が役立ちます。
【産業医の専門知識による影響】
- 心の不調に早く気づくことができる
- 症状がどのくらい深刻かを正しく判断することができる
- 仕事との関係を理解することができる
- 適切な対処方法を提案することができる
産業医は感情に流されず、様々な面から状況を見ることができます。そのため、ただの疲れなのか、本格的な治療が必要なのかを見分けられます。
労働者の心と体の状態を直接確認して適切な対応のアドバイスができる
産業医との面談は、労働者の心や体の調子を直接見られるので、書類だけでは分からない小さな変化も話しながら気づけます。
具体的には、産業医は面談で次のような点を見ています。
【面談で見ているポイント】
- 顔つきや姿勢
- 話し方や声の調子
- 体の具合
- 仕事への取り組み方
- 周りの人との関係
例えば、労働者から「最近、ちょっと疲れていて...」と言われた場合、産業医はその言葉だけでなく、顔色や座り方、話す速さなども見たうえで総合的に判断します。
職場環境と健康の両方を考えた総合的なアドバイスができる
産業医は、労働者の健康と職場の様子の両方をよく知っています。そのため、この二つを一緒に考えたアドバイスができます。
例えば、労働者から「最近、肩が痛いんです」と言われた場合、産業医は肩の痛みをどうするかだけでなく、「机の高さは大丈夫?」「ずっと同じ姿勢で仕事してない?」など、職場のことも合わせて聞くことがあります。
また、産業医は企業の事情をよく分かっているので、企業側にも「残業を完全に無くすことは難しいが、まずは週に2日、残業なしの日を作ることはどうか?」のように、可能な範囲で提案をします。
ですが、産業医のアドバイスを実行するには、会社の理解と協力が必要です。産業医の提案をどのように職場で実行するか、企業内でよく話し合うことが重要です。
守秘義務があるため安心して相談できる
産業医面談では、労働者が心配せずに話ができることも重要です。
産業医には労働安全衛生法による守秘義務があるため、話した内容を他の人に勝手に言うことはありません。
安心して話せることで、次のようなメリットがあります。
メリット |
内容 |
---|---|
本当のことが言える |
秘密が守られるので正直に話せる |
心配せずに話せる |
話したことで会社での評価が下がる心配がない |
良いアドバイスがもらえる |
正しい情報を元に適切なアドバイスがもらえる |
ただし、例外もあります。例えば、自分や他の人の命に関わるような大事な問題がある場合です。そういう時は、本人の許可がなくても必要な情報を会社に伝えることがあります。
産業医によるメンタルヘルス対策のポイント
産業医によるメンタルヘルス対策を上手に進めるには、いくつかのポイントがあります。
労働者との信頼関係づくりや、会社の管理職や経営陣との連携、そして主治医との情報共有などが大切です。
以下では、産業医によるメンタルヘルス対策の具体的なポイントについて、詳しく解説します。
【産業医によるメンタルヘルス対策のポイント】
- 管理職や経営陣と協力して企業全体のメンタルヘルスの取り組み方を決める
- 産業医に相談しやすい雰囲気を作り気軽に話せるようにする
- 職場でのハラスメントを防ぐための具体的な対策を提案する
管理職や経営陣と協力して企業全体のメンタルヘルスの取り組み方を決める
産業医が企業全体のメンタルヘルス対策を効果的に進めるには、管理職や経営陣との協力が効果的です。一緒に取り組み方を検討することで、より実効性のある対策が可能になります。
協力して決めるべき内容には、以下のようなものがあります。
【協力して決める内容】
- メンタルヘルス対策の基本方針
- 具体的な施策内容
- 予算配分
- 実施スケジュール
- 効果測定の方法
管理職や経営陣と協力して取り組むと、以下のようなメリットがあります。
メリット |
内容 |
---|---|
会社全体で取り組める |
全社的に同じように取り組める |
必要なものが用意しやすい |
予算や人手が確保しやすい |
長く続けられる |
企業の重要な取り組みとして続けやすい |
また、産業医と管理職や経営陣での役割分担も大切です。産業医は健康の専門家として意見を言い、上層部ではそれを聞いて企業としての決定をするという形が一般的です。
産業医に相談しやすい雰囲気を作り気軽に話せるようにする
産業医に気軽に相談できるかどうかは、職場のメンタルヘルス対策がうまくいくかどうかを大きく左右します。
労働者が産業医に相談しやすい環境を作ることで、問題を早く見つけて対応でき、メンタルヘルスの不調を防ぐことにもつながります。
相談しやすい雰囲気を作るポイントは、次の通りです。
【産業医に相談しやすい雰囲気を作るポイント】
- 産業医の仕事内容と秘密を守る約束を知らせる
- 相談室を適切な場所に置く
- 予約の仕組みを整える
- 定期的に産業医が来る日を決める
例えば、産業医との相談を予約制にして、Webからでも予約できるようにしましょう。そうすることで相談に来る人が増えて、労働者の声をより多く聞けるようになります。
注意点としては、産業医に負担がかかりすぎないよう、来る頻度や相談時間の決め方には配慮しましょう。
また、相談の内容は個人の秘密なので、相談室の壁を厚くしたり、記録の管理をしっかりしたりすることも大切です。
職場でのハラスメントを防ぐための具体的な対策を提案する
職場のハラスメントは、労働者のメンタルヘルスに大きな影響を与えます。
産業医は、医学の知識と職場環境への知識を活かして、ハラスメントを防ぐための具体的な対策を提案できます。
産業医が提案するハラスメント対策のポイントには、次のようなものがあります。
【産業医によるハラスメント対策の提案】
- ハラスメントとは何かを明確にする
- 相談できる窓口を作る
- 管理職向けの勉強会を行う
- 全ての労働者に向けて情報を伝える
ただし、ハラスメント対策を進める上で気をつけることもあります。例えば、厳しすぎるルールは職場での会話を減らしてしまう可能性があります。
そのため、産業医は職場の実情に合わせたバランスの良い対策を提案することが求められます。
まとめ
この記事では、産業医が行うメンタルヘルス対策について解説してきました。
主なポイントをまとめると、以下の通りです。
【産業医によるメンタルヘルス対策が重要な理由】
- 労働者の心の健康を守り、仕事の効率も上げる
- 法律で決められた産業医の仕事
- メンタルヘルス不調を早く見つけて対応し、悪化を防ぐ
【産業医が行うメンタルヘルス対策の内容】
- ストレスチェックの実施と結果の分析
- ストレスが高い人との面談
- 職場巡視で問題を早く見つける
- 長時間労働者との面談
- 管理職向けの研修
- 労働者向けの自己管理の教育
【産業医によるメンタル不調者人への対応】
- 主治医と連絡を取る
- 休職中に定期的に話を聞く
- 復職後も続けて様子を見る
- 職場の受け入れ準備へのアドバイス
【産業医との面談が重要な理由】
- 専門知識を持つ医師が冷静に状況を判断できる
- 労働者の心と体の状態を直接確認できる
- 職場環境と健康の両方を考えたアドバイスができる
- 秘密が守られるので安心して相談できる
こういった取り組みによって労働者の心の健康を守り、職場環境が良くなります。
企業にとっては、自社に合った適切な産業医を選んで上手に協力していくことが、効果的なメンタルヘルス対策につながります。
産業医の役割は非常に幅広いですが、産業保健の現場にある課題を理解している「first call」であれば、法令を守り、従業員の健康に繋がる産業医サービスが利用できます。