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産業医が復職を認めない理由とは?判断基準や面談での確認内容、迷った時の対処法を解説

休職している労働者が復職することは、簡単ではありません。

心身が回復に向かっていても、産業医から「まだ復職は難しい」と言われてしまうこともあるのです。

いったいなぜ、産業医は復職を認めないのでしょうか。円滑な職場復帰を目指すためには、そういった理由を知っておく必要があります。

また、復職の最終的な判断は会社が行います。その際に考えるべき重要なポイントも抑えてきましょう。

この記事では、産業医が復職を認めない理由や、復職面談で確認される内容について詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

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目次[非表示]

  1. 産業医が復職を認めない理由と判断基準
    1. 復職への意志が弱く、就業意欲がない
    2. 生活リズムが乱れている
    3. 業務遂行に必要な体力や集中力が不足している
    4. 一人で安全に通勤できない
    5. 職場の受け入れ体制が整っていない
  2. 産業医が復職を認めるために必要な確認方法
    1. 診断書の内容から職場復帰ができるか判断する
    2. 労働者との復職面談で就業意欲や生活状況のヒアリング
    3. 職場環境を確認して必要に応じて改善提案を行う
  3. 産業医が復職を認めない場合の対処法
    1. 主治医と産業医の意見を再度確認して判断する
    2. 産業医との協議を重ねる
    3. 労働者との話し合いを行う
  4. 産業医や主治医の意見を踏まえて復職を最終的に認めるのは会社の役割
    1. 復職時の産業医面談は義務ではないが、可能であれば実施すべき
  5. 産業医が復職を認めない場合のまとめ

産業医が復職を認めない理由と判断基準

休職していた労働者の復職を巡って頭を悩ませるのが、産業医の判断です。

主治医の診断書では「復職可能」とされていても、産業医から「まだ時期が早い」と言われてしまうことがあります。

以下では、産業医が復職を認めない場合の理由と判断基準について、詳しく解説していきます。

  • 復職への意志が弱く、就業意欲がない
  • 生活リズムが乱れている
  • 業務遂行に必要な体力や集中力が不足している
  • 一人で安全に通勤できない
  • 職場の受け入れ体制が整っていない

復職への意志が弱く、就業意欲がない

労働者の復職への意欲が十分でないと、産業医は「まだ休職させるべきだ」と判断することがあります。

特にメンタルヘルス不調の場合、再発への不安から復職に踏み出せない人も少なくありません。「もう少し休養を取りたい」という気持ちが強いと、なかなか職場復帰には繋がりません。

そういった不安を抱えたまま無理に復職しても、すぐに再休職に繋がってしまう可能性もあります。

そのため産業医は、面談を通じて「職場に戻りたい」という労働者の意志を確認するために、以下のような質問を行う場合があります。

  • 仕事に対するモチベーションは十分にあるか
  • 職場復帰について、具体的な不安要素はないか
  • 治療は継続して行えているか
  • 規則正しい生活リズムが取り戻せているか

こうした質問に対する労働者の反応から、産業医は復職への意欲があるかどうかを見極めます。復職への強い意欲が感じられる発言があれば、産業医としてもその意志を後押ししやすいと言えます。

生活リズムが乱れている

長期の休職により、生活リズムが乱れてしまうこともあります。昼夜逆転した生活や不規則な食事など、健康的とは言えない状態が続いてしまうと、そのままの状態で職場復帰しても、すぐに体調を崩してしまうリスクがあることから復職が認められない場合があります。

そのため産業医は、労働者の生活リズムをチェックし、適切な指導を行います。理想とされる生活習慣としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 朝は決まった時間に起床する
  • 日中は適度な運動を心がける
  • 夜は早めに就寝する
  • バランスの取れた食事を摂る
  • アルコールは控えめにする

このような規則正しい生活を送ることで、体内時計が整い、社会生活のリズムに合わせやすくなります。

業務遂行に必要な体力や集中力が不足している

長期の休職により、体力が大幅に落ちてしまうことがあります。それによって、仕事に必要な集中力や体力が不足していると判断された場合は、復職が認められない場合があります。

産業医は、労働者の健康状態を確認する際、以下のような点を重視してチェックを行います。

  • 1日8時間、週5日のフルタイム勤務をこなせる体力があるか
  • 休憩時間を除いて、継続的に業務に集中できる状態にあるか
  • 肉体労働に従事する場合、十分な筋力が回復しているか
  • デスクワークが中心の職種であれば、長時間のPC作業による疲労に耐えれるか

これらの項目を満たせないようであれば、「復職はまだ早い」と判断される可能性があります。

精神面では職場復帰の準備ができていても、体がそれに見合うだけの回復ができていなければ意味がありません。

一人で安全に通勤できない

メンタルヘルス不調により休職した労働者の中には、「ラッシュ時の電車に乗るのが怖い」「人混みでパニックを起こしそう」といった悩みを抱えている人もいます。

通勤時のストレスは、職場復帰後の業務に影響を与える可能性があります。

産業医はこの点を十分に理解しているため、復職の判断をする際には、労働者の通勤事情を確認するはずです。例えば、以下のような質問が行われることが考えられます。

  • ラッシュを避けた時間帯での通勤が可能か
  • 人混みが苦手な場合、代わりとなる通勤ルートはあるか
  • 最寄り駅から職場までの道のりで、特に不安を感じるポイントはないか
  • これまでに通勤時に気分が悪くなったことはないか

労働者の状態によっては、通勤時の安全が確保できるまでは復職を認められない場合もあります。

職場の受け入れ体制が整っていない

周囲のサポートがなくては円滑に職場復帰が行えないため、休職の原因が過重労働やパワーハラスメントなど、職場環境に問題があったケースでは要注意です。

産業医はこの点をよく理解しているため、職場の受け入れ体制を入念にチェックします。

こうした確認を行った後、「この職場なら問題なさそう」と産業医が判断できれば、復職が認められます。

逆に、「まだ環境整備が不十分だ」と感じた場合は、復職を認めない可能性が高いと言えるでしょう。

職場復帰は休職者一人の力では難しいため、職場のメンバーが受け入れる準備ができているかどうかが重要になります。

産業医が復職を認めるために必要な確認方法

休職していた労働者が職場に復帰する際、産業医の判断も重要になります。そのために産業医はいくつかの方法で情報を集め、様々な視点で状況を確認します。

以下では、具体的に産業医が行う確認方法について詳しく解説していきます。

  • 診断書の内容から職場復帰ができるか判断する
  • 労働者との復職面談で就業意欲や生活状況のヒアリング
  • 職場環境を確認して必要に応じて改善提案を行う

診断書の内容から職場復帰ができるか判断する

産業医が復職を判断するにあたり、参考にするのが主治医の診断書です。

そこには、休職者の症状や治療の経過、回復具合が詳しく書かれています。例えば、うつ病で休職した労働者の場合、下記のような内容が記載されているはずです。

  • 症状はどのくらい良くなったか
  • 薬の処方内容と効果
  • 今後の治療方針
  • 生活リズムは整っているか
  • 仕事に復帰できる状態かどうか

こうした情報をもとに、産業医は「この人なら職場復帰できそうだ」と判断します。

ただし、ここで気をつけたいのが、診断書の内容をそのまま信じ込んではいけないということです。主治医は職場の様子を詳しく知らないため、あくまでも参考程度にとどめておく必要があります。

休職者から聞いた話を基に判断しているので、現場の実際の状況とは違う可能性があります。

また、休職者本人の希望で「復職可」の診断書を出してもらうこともあるため、診断書の内容を見るだけでは十分ではありません。

診断書の情報も参考にしたうえで、実際に本人と面談して、復職への意欲や体調などを確認する必要があるのです。

労働者との復職面談で就業意欲や生活状況のヒアリング

産業医が復職を認める際に重要なのが、休職していた労働者本人との面談です。診断書だけでは読み取れない、労働者自身の声を聞くことができるからです。

面談では、主に以下のような内容をチェックするはずです。

  • 仕事へのモチベーションはあるか
  • 通勤時に不安はないか
  • 家族など周りのサポート体制は整っているか
  • 趣味など、ストレス発散の方法はあるか
  • 規則正しい生活が送れているか

こうした質問を通じて、産業医は休職者の状態を分析します。単に病気が治ったかどうかだけでなく、仕事を続けていく意欲と体力があるかどうかを見極める必要があります。

例えば、「職場の人間関係が心配で、まだ自信がありません…」と消極的な発言が目立つようだと、産業医としては復職を認めづらいでしょう。

一方で、「療養中に資格を取ったので、その知識を仕事に生かしたい」と前向きな姿勢が見られれば、復職も認めやすくなるはずです。

もちろん、体調面の回復も大前提です。

「朝はきちんと起きられますか?」「夜は眠れていますか?」など、生活リズムの乱れがないかもしっかりと確認されます。

こうした確認を踏まえ、産業医は総合的に判断を行います。

職場環境を確認して必要に応じて改善提案を行う

復職の判断をする際、産業医は職場環境の確認も行います。

特に、休職の原因が業務上のストレスだった場合は、慎重にチェックを行います。職場環境に問題があったままでは、たとえ労働者の心身が回復していても、再び休職となるリスクが高いからです。

せっかく復帰しても、すぐに体調を崩してしまっては意味がありません。

そのため、産業医は職場巡視などを通して、以下のような点を入念に確認します。

  • 休職前の業務量や労働時間に問題はなかったか
  • 上司や同僚との人間関係は円滑か
  • 有害な作業環境はないか
  • 休憩が適切に取れる環境になっているか
  • 安全衛生面の配慮は十分か

こうした確認を行い、「ここは改善が必要だな」と感じれば、会社側に積極的に提案を行うはずです。

産業医が復職を認めない場合の対処法

産業医から復職が認められない場合、確かに専門家である産業医の意見を尊重する必要はあります。

しかし、復職させたいという会社側の意向もあることや、労働者本人の希望もあるでしょう。

以下では、そのような状態になった場合の対処法を解説していきます。

  • 主治医と産業医の意見を再度確認して判断する
  • 産業医との協議を重ねる
  • 労働者との話し合いを行う

主治医と産業医の意見を再度確認して判断する

労働者の職場復帰については、主治医の「復職可能」の診断書があっても、産業医が「復職はまだ早い」と判断するケースがあります。産業医の判断を尊重することは大切ですが、主治医と産業医の両方の意見をよく聞いて、総合的に判断することが求められます。

まず、主治医は労働者の健康状態を継続的に診察しているため、病気の回復具合をよく理解しています。一方で、職場の状況や業務内容については情報が不十分な場合もあるでしょう。

対して産業医は、職場巡視や衛生委員会への参加を通じて、労働者の職務内容や職場環境を把握しています。そのため、その労働者が職場復帰した際に、業務でどの程度のストレスを受けるかを想定できます。

そのため、主治医と産業医では労働者の状況を見る視点が異なります。だからこそ、復職の判断が分かれることもありえます。

このような場合、主治医と産業医の両方から改めて意見を聞くことが大切です。

例えば、主治医に対しては以下のようなことを確認しましょう。

  • 病気はどの程度回復しているのか
  • 今の体力や集中力で、従来の業務をこなせるレベルにあるのか
  • 投薬治療は続けているのか、服薬によって眠気が出るなどの副作用はないか

一方、産業医からは次のような意見を求めましょう。

  • 主治医判断の妥当性をどう考えるか
  • 職場復帰した場合に、労働者の健康状態で懸念される点は何か
  • 復職後、業務遂行で配慮すべき点は何か
  • 環境や業務を変更すれば、復職の判断が変わる可能性はあるか

主治医と産業医の意見が食い違った場合、安全配慮義務があることから、基本的には産業医の判断を優先すべきでしょう。とはいえ、主治医の意見を無視してよいという訳ではなく、状況をよく見極めたうえで、主治医と産業医の両方の意見を踏まえて、冷静に判断することが重要です。

産業医との協議を重ねる

復職が認められなかった場合はすぐにあきらめるのではなく、産業医とよく話し合うことが大切です。

まずは、なぜ産業医が復職に慎重なのか、その理由をよく聞き取りましょう。例えば、産業医の懸念点として以下のようなことが考えられます。

  • 休職前と同じ職場環境では、再発のリスクが高い
  • 通勤ラッシュ時の電車通勤は、労働者の心身の負担が大きい
  • 労働者の体力が完全に回復しておらず、フルタイムでの勤務は難しそう

このような点を押さえたうえで、職場復帰に向けて自分達にできることはなにがあるかを確認しましょう。

そこから、労働者を受け入れる環境を整える議論に進みます。

その後、産業医のアドバイスを受けて、職場環境を整えていくことが求められます。さらに、再発防止の取り組みについても、産業医と一緒に考えていきましょう。

こうした取り組みを通して、「これなら復職しても大丈夫だろう」と産業医に思ってもらえるよう働きかける必要があります。

労働者との話し合いを行う

職場復帰は本人の意欲が無ければ始まらないので、会社側が一方的に進めるのではなく、労働者の思いに寄り添いながらどうすれば復職できるかを話し合いましょう。

例えば、下記のようにコミュニケーションを取る方法があります。

「◯◯さん、先日の産業医面談では『もう少し休養が必要』との意見でしたが、あなた自身はどう感じていますか?正直に聞かせてくださいね」

このように、労働者がどう感じているかを率直に聞くことから始めましょう。

その後は、「自分でも自信がないので、もう少し休みたい」といった返答があるかもしれません。もしくは、「できる限りのことはしたい」といったように、復職したい意思の返答があるかもしれません。

いずれにせよ、労働者と話し合い、気持ちをしっかりと受け止めることが重要です。そこから、具体的にどういったサポートができるかを一緒に考えていきましょう。

労働者が休職となった理由によっても変わりますが、下記のようなアプローチも可能です。

  • 「産業医の意見も踏まえ、まずは短時間勤務から始めるのはどうでしょうか?」
  • 「デスクワーク中心の業務にシフトすることで、負担を減らせるかもしれません」
  • 「もう少し休養を取ったほうがいいですね。2週間後に、もう一度産業医に相談してみましょう」

労働者と話し合うことで、少しずつ復職がしやすくなるはずです。

産業医や主治医の意見を踏まえて復職を最終的に認めるのは会社の役割

休職していた労働者の復職可否を判断するのは、最終的には会社の責任です。

その判断の材料としては、主治医の診断書や産業医の意見が非常に重要になります。特に、職場の実情をよく知る産業医の意見は、会社にとって貴重な判断材料となるはずです。

とはいえ、「産業医がこう言っているのだから、その通りにすればいい」というわけではありません。会社は、産業医や主治医の意見を参考にしつつ、労働者の状況に合わせた柔軟な対応を取らなければいけません。

例えば、産業医から「この労働者の職場復帰には、業務内容の変更が必要」というような提案があった場合であっても、他の労働者の配置換えが難しいなどの理由から、すぐには受け入れ態勢を整えられないことも考えられます。

そんな時は、今すぐの業務変更ではなく、まずは短時間勤務から始めることを提案してみる方法もあります。

しかし、気を付けたいのが、医師の意見を軽視してはいけないということです。産業医から「この職場環境のままでは、再発のリスクが高い」と指摘されたのであれば、その内容はしっかりと受け止めるようにしましょう。

復職時の産業医面談は義務ではないが、可能であれば実施すべき

労働者の復職に際して、産業医との面談は法律上義務付けられているわけではありません。

しかし、職場復帰をより円滑に進めるためには、産業医面談を行うのがおすすめです。主治医の意見だけでは判断しきれない部分を、産業医の意見も加わることで判断しやすくなります。

主治医は労働者の症状の回復具合を見ることはできますが、実際の業務内容や職場環境については詳しくありません。対して産業医は、労働者の職場環境について深く理解しています。

そのため、同じ医師でも主治医と産業医では見る視点が大きく異なることを活かしましょう。

さらに、復職可否の判断だけでなく、復職後のフォローという点でも、産業医は頼りになります。

職場復帰後、万が一体調が悪化した場合、主治医のもとへは労働者自ら通院しなければなりませんが、産業医との面談の場は会社側で設定できます。復職者の「不調サイン」を見つけ次第、適切なサポートを行うことができるのです。

このように産業医面談には、職場復帰の判断に加え、その後のリスク管理という点で大きな意味があります。だからこそ、法律上の義務ではありませんが、可能な限り実施することが推奨されます。

産業医が復職を認めない場合のまとめ

この記事では、産業医が労働者の復職を認めない理由や判断基準などを詳しく解説してきました。

まとめると、産業医が復職を認めない主な理由は主に以下の5つとなります。

  • 就業意欲が高くない
  • 生活リズムが乱れている
  • 業務遂行に必要な体力や集中力が不足している
  • 安全な通勤が困難
  • 職場の受け入れ体制が整っていない

復職を認めることは簡単なことではありません。労働者の心身の回復度合いはもちろん、職場環境の整備状況など、様々な要因を考慮する必要があります。

最終的に復職の可否を判断するのは会社ですが、企業の担当者としては、そうした状況でこそ産業医と連携しながら労働者に合った細かなサポートを行っていきましょう。

産業医の役割は非常に幅広いですが、産業保健の現場にある課題を理解している「first call」であれば、法令を守り、従業員の健康に繋がる産業医サービスが利用できます。

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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。新卒で大手証券会社入社。 その後、スタートアップ企業への転職を経て、2020年4月にメドピアに入社(Mediplat出向)。 クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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