
介護休暇と介護休業の違いとは?企業担当者が知るべき取得条件や給付金を解説
従業員から「親の介護が必要になった」と相談を受けたとき、介護休暇と介護休業のどちらを案内すればよいか迷うことがあるかもしれません。
両制度は、育児介護休業法に基づく仕事と介護の両立支援制度ですが、取得できる日数や給付金の有無など、多くの点で違いがあります。
特に2025年4月からは法改正により、企業に求められる対応が大きく変わりました。
雇用環境整備の義務化など、人事担当者として押さえておくべきポイントが増えています。
詳細な改正内容は、厚生労働省の改正ポイント解説パンフレットもあわせてご確認ください。
この記事では、介護休暇と介護休業の違いをわかりやすく整理し、従業員への対応で押さえるべきポイントを解説します。
法改正への対応や給付金の申請方法まで解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
もし、介護休暇・休業を必要とする従業員も含めた、全従業員の健康管理、健康増進を行っていきたい方は、ぜひ一度「first call」までご相談ください。
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介護休暇と介護休業の違いを比較表でわかりやすく解説
介護休暇と介護休業はどちらも育児介護休業法で定められた制度ですが、取得目的・期間・給付金など多くの違いがあります。
企業の人事担当者が従業員からの相談に適切に対応するためには、まずこれらの違いを正しく理解しておくことが重要です。
ここでは、両制度の違いを目的や期間の観点から解説します。
- 介護休暇は短期の突発的な対応に使える
- 介護休業は長期の介護体制整備に活用する
- 両制度の違いを一覧で比較する
介護休暇は短期の突発的な対応に使える
介護休暇は、対象家族の介護や世話のために短期間の休みを取得できる制度です。
病院への付き添いやケアマネジャーとの打ち合わせ、介護サービスの手続きなど、急な対応が必要な場面で活用できます。
取得できる日数は、対象家族1人につき年5日(対象家族が2人以上の場合は年10日)までとなっています。
1日単位だけでなく時間単位でも取得でき、当日の申し出も認められているため、柔軟に利用しやすい点が特徴と言えるでしょう。
具体的には、以下のようなケースで活用できます。
- 親の急な体調変化で病院へ付き添う必要がある
- ケアマネジャーとの面談に参加する
- 介護保険の申請手続きを行う
- デイサービスの見学に行く
介護休暇中の賃金については、法律上の支払い義務はありません。
そのため、有給か無給かは会社の規定によって異なります。
なお、介護休暇に対する国からの給付金制度はありませんので、この点も従業員に説明しておくと認識の齟齬を防げます。
介護休暇は「短期・突発的な対応」に最適な制度として設計されています。
介護休業は長期の介護体制整備に活用する
介護休業は、対象家族1人につき通算93日まで取得できる長期の休業制度です。
介護施設の選定や在宅介護の体制づくりなど、まとまった時間をかけて準備が必要な場合に適しています。
介護休暇との違いは、取得できる期間の長さと給付金の有無です。
介護休業では、一定の条件を満たすと雇用保険から介護休業給付金が支給されます。
取得にあたっては、休業開始予定日の2週間前までに書面で申し出る必要があります。
また、93日の期間は最大3回まで分割して取得することが可能です。
分割取得は、以下のように活用できます。
- 1回目:親が入院し、退院後の介護サービスを手配するために2週間取得
- 2回目:在宅介護から施設介護へ移行する際に3週間取得
- 3回目:容体が変化し、介護体制を見直すために1ヶ月取得
なお、93日には土日祝日も含まれる点に注意が必要です。
従業員に説明する際は、「連続して休んだ場合は約3ヶ月分」と伝えるとイメージしやすいはずです。
介護休業は「長期的な体制構築」のための制度であり、分割取得を活かして状況の変化に柔軟に対応できます。
両制度の違いを一覧で比較する
介護休暇と介護休業の違いを、表形式で整理しました。
従業員への説明や社内資料の作成にご活用ください。
項目 | 介護休暇 | 介護休業 |
|---|---|---|
目的 | 短期的・突発的な介護対応 | 長期的な介護体制の整備 |
取得期間 | 年5日(対象家族2人以上は年10日) | 対象家族1人につき通算93日 |
取得単位 | 1日または時間単位 | 原則として連続した期間 |
分割取得 | 回数制限なし(日数内) | 最大3回まで分割可能 |
申請期限 | 当日の申し出も可能 | 2週間前までに書面で申請 |
給付金 | なし | 介護休業給付金(賃金の67%相当) |
賃金 | 無給(会社規定による) | 無給(会社規定による) |
ポイントは、介護休暇は「短期・柔軟」、介護休業は「長期・計画的」という点です。
従業員の状況に応じて、どちらの制度が適しているかをアドバイスできるようにしておきましょう。
介護休暇と介護休業の対象者の違いと家族の条件
介護休暇と介護休業は、どちらも一定の条件を満たす労働者であれば取得できます。
ただし、雇用形態や勤続期間によっては対象外となるケースもあるため、正確なルールを把握しておくことが重要です。
ここでは、対象となる労働者と家族の範囲を解説します。
- 正社員だけでなくパートやアルバイトも対象になる
- 対象家族は配偶者や父母など法律で決まっている
- 労使協定で対象外になるケースもある
正社員だけでなくパートやアルバイトも対象になる
介護休暇と介護休業の対象者は、正社員に限りません。
パートタイム労働者やアルバイト、契約社員なども、雇用形態に関わらず取得の権利があります。
育児介護休業法では、日雇い労働者を除くすべての労働者を対象としています。
「正社員だけが使える制度」と誤解されがちですが、これは誤りです。
従業員から相談を受けた際は、雇用形態を理由に取得を断ることがないよう注意しましょう。
もし取得を拒否したり、取得を理由に不利益な扱いをしたりすると、法律違反となります。
対象家族は配偶者や父母など法律で決まっている
介護休暇・介護休業の対象となる家族は、育児介護休業法で以下のように定められています。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 父母
- 子
- 配偶者の父母
- 祖父母
- 兄弟姉妹
- 孫
この範囲は法律で決まっているため、企業が独自に対象を狭めることはできません。
なお、ここでいう「要介護状態」とは、負傷、疾病または身体上・精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態を指します。
介護保険制度の「要介護認定」を受けている必要はありません。
「常時介護を必要とする状態」の判断基準については、厚生労働省のガイドラインでも詳しく示されていますが、基本的には「自力での歩行や食事、排泄が困難な状態」などが目安となるでしょう。
労使協定で対象外になるケースもある
介護休暇と介護休業のいずれも、労使協定を締結することで一部の労働者を対象から除外できます。
介護休暇の場合
2025年4月の法改正により、入社6ヶ月未満の労働者を除外する規定は廃止されました。
現在、労使協定で除外できるのは「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」のみとなっています。
介護休業の場合
労使協定により、以下の労働者を対象から除外できます。
- 入社1年未満の労働者
- 申し出の日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
自社の就業規則や労使協定でどのような定めになっているか、あらかじめ確認しておきましょう。
介護休業給付金の支給条件と申請方法
介護休業を取得した場合、一定の条件を満たすと雇用保険から介護休業給付金が支給されます。
介護休暇には給付金制度がないため、この点は両制度の違いの一つです。
ここでは、給付金の条件や金額、申請手続きについて解説します。
- 給付額は休業開始時の賃金日額の67%相当
- 支給には雇用保険の加入と被保険者期間が必要
- 申請は原則として会社が行う
給付額は休業開始時の賃金日額の67%相当
介護休業給付金の支給額は、休業開始時の賃金日額の67%相当です。
具体的な計算方法は以下の通りです。
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
例えば、月給30万円の従業員が30日間の介護休業を取得した場合、おおよそ20万円程度の給付金が支給される計算になります。
ただし、休業期間中に会社から賃金が支払われている場合は、賃金と給付金の合計が休業開始時の賃金の80%を超えないよう調整されます。
賃金が80%以上支払われている場合は、給付金は支給されません。
支給には雇用保険の加入と被保険者期間が必要
介護休業給付金を受け取るためには、以下の条件を満たす必要があります。
- 雇用保険の被保険者であること
- 介護休業開始日前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること
また、休業中に就労した場合は、支給単位期間中の就労日数が10日以下(10日を超える場合は就労時間が80時間以下)である必要があります。
パートタイム労働者であっても、これらの要件を満たしていれば給付金を受け取ることができます。
申請は原則として会社が行う
介護休業給付金の申請手続きは、原則として事業主(会社)が行います。
申請期限は、介護休業終了日の翌日から2ヶ月を経過する日の属する月の末日までです。
必要書類は以下の通りです。
- 介護休業の事実を確認できる書類(介護休業申出書の写しなど)
提出先は、事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)となります。
申請書の様式や手続きの詳細は、ハローワークインターネットサービスで確認・ダウンロードが可能です。
2025年4月施行の法改正で企業に求められる対応
2025年4月から育児介護休業法が改正され、介護離職防止のための企業の取り組みが強化されました。
法改正により新たな義務が課されているため、まだ対応が完了していない場合は早急に確認が必要です。
ここでは法改正のポイントと具体的な対応について解説します。
- 介護休暇の取得要件が緩和された
- 従業員への個別周知と意向確認が義務化された
- 雇用環境の整備が義務付けられた
- テレワークの導入が努力義務になった
介護休暇の取得要件が緩和された
2025年4月1日から、介護休暇の取得対象者が拡大しました。
これまで労使協定により「入社6ヶ月未満の労働者」を対象から除外できましたが、この規定が廃止されました。
現在、労使協定で除外できるのは「1週間の所定労働日数が2日以下の労働者」のみとなっています。
この改正により、入社直後の従業員であっても介護休暇を取得しやすくなりました。
就業規則や労使協定の見直しが必要な企業もあります。
従業員への個別周知と意向確認が義務化された
労働者から介護に直面した旨の申し出があった場合、企業は以下の対応が義務付けられています。
- 介護休業制度や両立支援制度等について個別に情報提供すること
- 制度利用の意向を確認すること
この個別周知と意向確認は、面談や書面交付などの方法で行う必要があります。
また、40歳以上の労働者に対しては、介護に直面する前の段階で、介護休業や両立支援制度に関する情報を提供することが努力義務となっています。
雇用環境の整備が義務付けられた
介護離職を防止するため、企業には雇用環境の整備が義務付けられています。
具体的には、以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
- 介護休業・介護両立支援制度等に関する研修の実施
- 相談体制の整備(相談窓口の設置など)
- 自社の労働者による介護休業取得事例の収集・提供
- 介護両立支援制度の利用促進に関する方針の周知
少なくとも1つは必ず実施しなければなりません。
研修の実施や相談窓口の設置など、自社に適した方法を選択しましょう。
テレワークの導入が努力義務になった
要介護状態の家族を介護する労働者がテレワークを選択できるよう、事業主が措置を講じることが努力義務化されました。
介護と仕事の両立を支援するため、テレワーク制度の導入を検討することが望ましいとされています。
努力義務であるため罰則はありませんが、介護離職の防止や従業員満足度の向上につながる施策として、前向きに検討する価値があるでしょう。
介護休暇と介護休業の違いを踏まえた企業側の対応手順
従業員から介護休暇や介護休業の申し出があった場合、企業は適切な手続きを踏む必要があります。
対応を誤ると法律違反になるリスクもあるため、実務上の流れを把握しておきましょう。
ここでは実務上の対応手順について解説します。
- 就業規則に介護休業制度を明記する
- 従業員からの申し出を適切に受け付ける
- 休業中の業務引き継ぎ体制を整える
- 不利益取扱いやハラスメントを防止する
就業規則に介護休業制度を明記する
介護休業制度は、就業規則に記載することが義務付けられています。
常時10人以上の労働者を使用する事業場では、介護休業に関する事項を就業規則に定め、労働基準監督署へ届け出る必要があります。
就業規則に記載すべき事項は以下の通りです。
- 介護休業の対象者
- 取得できる日数・期間
- 申請手続きの方法
- 休業中の賃金に関する取り扱い
- 休業後の復職に関する事項
まだ規定が整備されていない場合は、厚生労働省が公開しているモデル就業規則を参考に作成してください。
従業員からの申し出を適切に受け付ける
介護休暇・介護休業の申し出があった場合は、速やかに対応することが求められます。
企業は正当な理由なく取得を拒否できません。
介護休暇の場合は当日の口頭での申し出も認められていますが、社内のルールとして申請書の提出を求めることは可能です。
介護休業の場合は、書面による申し出が必要です。
申出書には、休業開始予定日、休業終了予定日、対象家族の氏名・続柄などを記載してもらいます。
休業中の業務引き継ぎ体制を整える
介護休業は最長93日と長期にわたるため、休業中の業務をどうするか事前に検討が必要です。
休業に入る前に、業務の引き継ぎや代替要員の確保について話し合っておきましょう。
具体的には以下の点を確認します。
- 担当業務の洗い出しと優先順位付け
- 引き継ぎ先の決定
- 引き継ぎ期間の確保
- 休業中の連絡体制(緊急時の連絡先など)
円滑な引き継ぎができれば、休業者も安心して休業に入ることができます。
また、中長期的には業務の「標準化」を進めることが重要です。
特定の従業員しかできない業務(属人化した業務)が多いと、介護休業の取得が現場の大きな負担になります。
マニュアルの作成や多能工化を進め、誰かが休んでも業務が回る体制を作っておくことは、介護休業だけでなく急な体調不良や退職へのリスク管理にもつながります。
不利益取扱いやハラスメントを防止する
介護休暇・介護休業の取得を理由として、不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。
具体的には、以下のような行為が該当します。
- 解雇
- 降格
- 減給
- 昇進・昇格の対象から除外
- 不利益な配置変更
- 契約更新の拒否
また、介護休業の取得に関するハラスメント(いわゆる「ケアハラ」)を防止するための措置を講じることも企業の義務です。
上司や同僚からの嫌がらせを防ぐため、研修の実施や相談窓口の設置などを行いましょう。
介護休暇と介護休業の違いに関するよくある質問
最後に、介護休暇と介護休業の違いに関して、従業員や人事担当者が抱えるよくある質問にお答えします。
- 介護休暇と介護休業は同時に使えますか?
- 介護休暇は有給扱いになりますか?
- 介護休業中に転職活動をしても問題ありませんか?
- 93日を使い切った後はどうなりますか?
- パート勤務でも介護休業給付金はもらえますか?
介護休暇と介護休業は同時に使えますか?
いいえ、同時に使うことはできません。
介護休業を取得している期間中は、介護休暇を取得できません。
ただし、介護休業の取得とは別に、年度をまたいで介護休暇を取得することは可能です。
例えば、4月〜5月に介護休業を取得し、その後復職してから、別の機会に介護休暇を取得するという使い方ができます。
介護休暇は有給扱いになりますか?
法律上は無給とされていますが、会社の規定により異なります。
育児介護休業法では、介護休暇中の賃金支払いを義務付けていません。
そのため、有給か無給かは各企業の就業規則によって決まります。
自社のルールがどうなっているか、就業規則や労使協定で確認しておきましょう。
介護休業中に転職活動をしても問題ありませんか?
法律上の制限はありませんが、制度の趣旨から問題視される可能性はあります。
介護休業は「家族の介護のための休業」として設けられた制度です。
また、介護休業給付金を受給している場合、転職活動が発覚すると給付金の返還を求められる可能性もゼロではありません。
93日を使い切った後はどうなりますか?
法律上の介護休業としては、それ以上の取得はできません。
ただし、以下のような選択肢を検討できます。
- 介護のための短時間勤務制度の利用
- 所定外労働(残業)の制限
- 有給休暇の取得
- 会社独自の介護支援制度がある場合はその利用
また、状況によっては休職制度の適用が検討されることもあります。
個別の事情を踏まえて、会社と従業員で話し合いながら対応を決めることが大切です。
パート勤務でも介護休業給付金はもらえますか?
はい、条件を満たせばパート勤務でも受給できます。
介護休業給付金の受給要件は雇用形態ではなく、雇用保険の加入状況と被保険者期間によって判断されます。
具体的には、介護休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が12ヶ月以上あれば対象となります。
パートタイム労働者であっても、上記の条件を満たしていれば給付金を受け取れます。
【まとめ】介護休暇と介護休業の違いを理解して従業員の両立支援に活かす
この記事では、介護休暇と介護休業の違いについて、企業担当者向けに解説しました。
両制度の主なポイントを改めて整理します。
- 介護休暇は年5日(対象家族2人以上は年10日)の短期対応向け制度
- 介護休業は対象家族1人につき通算93日の長期対応向け制度
- 介護休業では給付金(賃金の67%相当)が受けられるが、介護休暇には給付金制度がない
- 2025年4月の法改正により、個別周知・意向確認や雇用環境整備が義務化された
- 就業規則の整備と従業員への周知・説明が重要
高齢化の進展に伴い、今後ますます介護と仕事の両立支援が求められます。
従業員が安心して働き続けられる環境を整えることは、企業の人材確保・定着にもつながります。
もし、これから必要になる相談体制の整備について、「効率よく進めたい」「オンラインで手軽に相談できる窓口を作りたい」とお考えなら、クラウド型健康管理サービス「first call」をチェックしてみてください。
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