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ストレスチェック制度とは? 実施の流れを解説

2015年12月以降、労働安全衛生法の改正によってストレスチェックの実施が義務付けられました。

ストレスチェックにより、従業員のストレスがどのような状態にあるかを把握できます。うつ病を含むメンタルヘルス不調の未然防止に役立つ制度です。

本記事では、ストレスチェックの基本概要、実施の流れ、注意点を分かりやすく解説します。


目次[非表示]

  1. 1.ストレスチェック制度とは
  2. 2.ストレスチェック制度が重要視されている背景
  3. 3.ストレスチェックの流れ
    1. 3.1.①実施前の準備
    2. 3.2.②調査票の配布と記入
    3. 3.3.③面接指導の要否判定
    4. 3.4.④本人への通知
    5. 3.5.⑤面接指導の申し出
    6. 3.6.⑥面接指導の実施
    7. 3.7.⑦就業上の措置
    8. 3.8.⑧集団分析・職場環境改善
    9. 3.9.⑨労働基準監督署への報告
  4. 4.ストレスチェック制度の注意点
    1. 4.1.①実施者の選定
    2. 4.2.②プライバシーの保護
  5. 5.まとめ


ストレスチェック制度とは

ストレスチェック制度とは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防止するために制度化された取組みです。

従業員が常時50人以上の全業種の事業場で義務付けられており、検査対象には正社員だけではなく、アルバイトやパートも含まれます。

未然に高ストレス者を抽出してメンタルヘルス不調を防止し、従業員が心身ともに健康な状態で働ける環境を構築していくことが目的です。



ストレスチェック制度が重要視されている背景

ストレスチェックの重要性が増している背景には、以下のような社会的課題があります。

  • 仕事で受けた強いストレスによって精神障害になるケース
  • 精神障害によって労災認定される労働者数が年々増加

厚生労働省の『令和2年度「過労死等の労災補償状況」を公表します』によると、2020年度の過労死等に関する請求件数2,051件のうち、支給決定件数は608件。前年度比99件の増加です。

ストレスチェックは、仮に実施しない場合でも特定の罰則を科せられることはありません。ただし、労働安全衛生法第52条の21で、所轄労働基準監督署長への報告をしなければならないとの記載があるため、報告を怠らないよう注意が必要です。

出典:厚生労働省『ストレ スチェック制度 導入マニュアル』『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』『令和2年度「過労死等の労災補償状況」を公表します



ストレスチェックの流れ

ここからはストレスチェックを実施する際の流れを8つのステップで紹介します。


①実施前の準備

実施前の準備として、ストレスチェックを実施する際の方針を示す必要があります。準備段階では、以下の項目を話し合います。

  • ストレスチェックの実施方法
  • ストレスチェックの実施者
  • 調査票の内容
  • 面接指導を依頼する医師
  • 集団分析の方法
  • ストレスチェックの結果の管理者・管理方法

なお、ストレスチェックの実施を外部機関に委託する場合でも、事業場の状況を日頃から把握している人を共同実施者として選定することが望ましいです。

自社で実施する場合は、医師や保健師、一定の研修を受けた看護師や精神保健福祉士のなかから実施者を選定します。

出典:厚生労働省『ストレスチェック制度導入ガイド


②調査票の配布と記入

一般的に、ストレスチェックは調査票を用いて行います。

各事業場で独自の調査票を作成することもできますが、厚生労働省が公開する『職業性ストレス簡易調査票』を利用するのも一つの方法です。自社で独自に作成する場合は、以下の項目に関する質問を盛り込む必要があります。

  • ストレスの原因に関する質問
  • ストレスによる心身の自覚症状に関する質問
  • 従業員に対する周囲のサポートに関する質問

ストレスチェックの調査票は、オンラインでも取得できます。また、調査票を回収する際は、ほかの従業員の目に触れないように、配慮が必要です。

出典:厚生労働省『職業性ストレス簡易調査票』『ストレスチェック制度導入ガイド


③面接指導の要否判定

ストレスチェックによる評価の結果、高ストレス者に選定された従業員を面接指導の対象者とします。高ストレス者を選定する際の基準となるのが心身のストレス反応の評価点数です。

ただし、点数だけで判断した場合、潜在的な高ストレス者を選定できない可能性があります。そのため、点数はあくまでも基準として捉え、「仕事のストレス要因」「周囲のサポート」の評価点数が著しく高い従業員も高ストレス者として選定することが望ましいです。

出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』『ストレスチェック制度導入ガイド


④本人への通知

事業者から本人へは以下の内容を通知します。

  • 個人のストレスプロフィール
  • ストレスの程度
  • 面接指導の対象者か否かの判定結果
  • セルフケアのためのアドバイス
  • 事業者への面接指導の申出方法


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画像出典:厚生労働省『ストレ スチェック制度 導入マニュアル


従業員本人へストレスへの気付きを促すためにも、ストレスプロフィールはレーダーチャートなどに出力して分かりやすい方法を用いることが望ましいといえます。

ストレスチェックの結果は直接本人に通知され、事業者(実施者や実施事務従事者以外)が結果を入手するには通知後に本人の同意が必要です。

出典:厚生労働省『ストレスチェック制度導入ガイド』『ストレスチェック制度 導入マニュアル


⑤面接指導の申し出

ストレスチェックの結果、面接指導が必要であると判断された従業員に対しては、実施者が本人に面接指導を希望する旨を申し出るように勧奨できます。

企業側から面接指導を強制することはできませんが、従業員が申し出やすいように窓口を設けるといった環境整備が求められます。

出典:厚生労働省『ストレスチェック制度導入ガイド


⑥面接指導の実施

面接指導は、従業員の申し出から1ヶ月以内に実施する必要があります。医師による面接指導では以下の事項を確認します。

  • 心理的な負担状況
  • 現在の勤務状況
  • その他の心身の状況

このほか、医師から従業員へ、メンタルヘルス不調を未然に改善するための指導と助言が実施されます。

厚生労働省は、面接指導を実施する医師に事業場の産業医を推奨しています。仮に外部へ委託する場合でも、産業医資格を有する医師へ委託することが望ましいです。

出典:厚生労働省『ストレスチェック制度 導入マニュアル』『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』『ストレスチェック制度導入ガイド


⑦就業上の措置

従業員の実情を考慮したうえで、医師のアドバイスに基づき就業場所、作業内容の転換、労働時間の短縮、深夜勤務回数の減少などの就業上の措置を実施します。

就業上の措置を行う際、当該従業員にとって不利益な取扱いにならないように、事前に従業員の意見を十分にヒアリングすることが重要です。

出典:厚生労働省『ストレスチェック制度 導入マニュアル』『ストレスチェック制度導入ガイド


⑧集団分析・職場環境改善

ストレスチェックのデータ分析と職場環境改善は努力義務のため、必ずしも実施する必要はありません。

しかし、職場の問題点を改善して従業員が働きやすい環境を整えるためには、医師からの面接指導を踏まえた分析は行ったほうがよい施策といえます。

従業員のストレスが軽減されて働きやすい職場環境へと改善できれば、労働生産性が向上し、経営面でもプラスの効果を期待できます。

出典:厚生労働省『ストレスチェック制度 導入マニュアル』『ストレスチェック制度導入ガイド


⑨労働基準監督署への報告

ストレスチェックの実施完了後、事業者は面接指導の実施状況を所定の労働基準監督署へ報告します。

報告様式は規則に規定されている様式を利用する必要があります。報告書の様式は厚生労働省のホームページから取得できます。

出典:厚生労働省『ストレスチェック制度 導入マニュアル』『ストレスチェック制度導入ガイド



ストレスチェック制度の注意点

ストレスチェック制度は、従業員の精神状況を把握するというセンシティブな問題を扱う制度です。そのため、事業者が慎重に取り組むことが求められます。ここでは、ストレスチェックを実施する際の注意点を紹介します。


①実施者の選定

ストレスチェックの実施者は、事業場産業医などの医師や保健師などがつくこととされています。ストレスチェックを受ける従業員に対して、直接的な人事権を有する人はストレスチェックの実施者を担当できません。

また、直接的な人事権を有する人が本人の許可なくストレスチェックの結果を閲覧することも禁止されています。

これらは、従業員の不利益な人事異動を防止するためのルールです。同様の理由から、ストレスチェックのアンケート配布や回収の担当者を選定する際も気を配る必要があります。

事業者は、実施者の選定に細心の注意を払い、従業員が安心してストレスチェック制度に参加できる体制を整えることが重要です。


②プライバシーの保護

ストレスチェックを実施する際は、従業員のプライバシーに配慮することも欠かせません。

ストレスチェックの内容は個人情報に該当します。本人の許可なく、事業者がストレスチェックの結果を入手・閲覧することがないよう、注意が必要です。また、ストレスチェックや面接指導の結果についても、厳重かつ適切な管理が求められます。

ストレスチェックを実施する前に、個人情報の取扱に関して、規定などの取り決めを行ってから実施されることをおすすめします。

厚生労働省から『事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き』が出されていますので、参考にしてみてはいかがでしょうか。特に、巻末に出されている参考資料は規定の雛形として参考にしやすいです。

出典:厚生労働省『事業場における労働者の健康情報等の取扱規程を策定するための手引き



まとめ

ストレスチェック制度は、従業員の精神的健康を保持するために欠かせない取組みです。実施が義務化された背景には、2015年に制度が義務化されるまでの数年間で精神障害による労災認定件数が増加傾向にあったという事実があります。

ストレスチェック制度により、事前に高ストレス者を発見することができれば、メンタルヘルス不調による休職を未然に防ぐことができるだけではなく、社内の労働環境を改善するための取り組みも実施できます。

今後、事業場の従業員が50人を超えるという場合は、ストレスチェック制度の必要性や注意点を理解したうえで事前準備を進めましょう。

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