やる気が落ちる「五月病」とは?原因や職場でできる4つの対策を解説
新入社員の入社や転勤など、職場環境が変わることの多い4月。新しい環境に少しずつ慣れてくる5月に入ったあたりから、心身に不調を感じる“五月病”の症状が現れる従業員も少なくありません。
五月病は一過性の症状といわれていますが、仕事に対するやる気の低下によって、会社にもさまざまな影響を及ぼす可能性もあります。場合によっては離職につながることもあるため、人事・総務の担当者には適切な対策が求められます。
この記事では、五月病の原因やなりやすい人の特徴、企業における対策について解説します。
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五月病とは
五月病とは、5月の連休明けごろから現れ始める心身の不調のことです。医学的な病名ではなく、新しい環境に慣れ始めたころに現れる症状を指しており、病院では軽度のうつ病、適応障害と診断されるケースもあります。
4月のうちは、新しい環境に慣れようとして多少無理をしてでも努力をします。ところが、5月の連休明けごろになると、新しい環境にうまく適応できないことによるストレスや心身の疲労が表面化しやすくなります。
一般的に現れる、以下のような心身の不調が現れます。
▼五月病の症状
- やる気の低下や倦怠感
- 不安、イライラ、憂うつ感
- 不眠
- 食欲不振、胃痛、吐き気
- 頭痛、肩こり など
五月病は誰でもなり得る可能性がある症状です。症状が悪化すれば、うつ病や適応障害などにつながるおそれもあるため、長引かせないことが重要といえます。
仕事や私生活に影響が出ていると思われる従業員がいる場合には、産業医への相談、または医療機関の受診を勧めることが大切です。
出典:全国健康保険協会 協会けんぽ『4月 未然に防ぐ5月病対策』
五月病の主な原因
五月病の原因は明確ではありませんが、新卒入社や転勤、部署異動など、新たな環境に身を置く人になりやすいとされています。ここからは、一般的に五月病の原因として考えられる4つについて解説します。
①新しい環境になじめない
五月病になる原因の一つとして、新しい環境になじめないことが挙げられます。
生活環境が変わる、または新たに人間関係の構築が必要になる際に精神的なストレスにつながり、心身に不調が現れることがあります。
▼五月病の原因となるケース例
- 配属先・転職先の人たちとなじめない
- 初めての1人暮らしで不安やプレッシャーを感じる
- 転勤先の地域での生活が合わない
出典:全国健康保険協会 協会けんぽ
『4月 未然に防ぐ5月病対策』/厚生労働省 『こころもメンテしよう』『私の場合、僕の場合:大学になじめず、いつのまにか「五月病」』
②目標が見つからない
たとえば、目標としていた就職や転職を達成した後に、次の目標がなかなか見つからないというケースがあります。
抱いていた目標を達成したことで、脱力感を覚えたり、やる気が低下したりして、五月病になることがあります。
▼五月病の原因となるケースの例
- 第一志望の企業に努力して入社して、燃え尽きてしまった
- 転職のキャリアアップに成功したが、この先何をしたいのか見失った
- 大きなプロジェクトを成功させた達成感を超える目標が見つからない
出典:全国健康保険協会 協会けんぽ『4月 未然に防ぐ5月病対策』
③完璧を求めすぎる
仕事やプライベートなどで完璧を求めるあまり、できないことに対して極度にストレスを感じてしまう人がいます。真面目で責任感が強い人ほど完璧を求めやすくなるため、ささいなできごとでも不安・不満が募ってしまうことがあります。
▼五月病の原因となるケース例
- 仕事で思うような成果を挙げられなかった
- 同僚や部下よりも業務成績が悪かった
- 仕事と育児を両立することが難しくなった
- 自分が思うように同僚や部下が仕事をしてくれない
出典:全国健康保険協会 協会けんぽ『4月 未然に防ぐ5月病対策』
④理想と現実にギャップがある
思い描いていた理想と現実にギャップがあることでやる気や自信がなくなり、消極的になったり、イライラしたりしてストレスが溜まってしまうことがあります。
たとえば、自分のスキル不足を痛感したり、自分が抱いていたイメージと実際の仕事内容に相違があったりする場合に、精神的なショックから五月病につながるケースもあります。
▼五月病の原因となるケース例
- 自分がやりたい業務があったが、担当させてもらえなかった
- 部署異動で心機一転できると期待していたが、残業が多く疲労が増えた
- 円滑な人間関係を築けると思っていたが、打ち解けられなかった
出典:全国健康保険協会 協会けんぽ『4月 未然に防ぐ5月病対策』
職場でできる4つの五月病対策
従業員の五月病を防ぐためには、ストレスや疲労を溜め込まないための取組みが必要です。職場で取り組める対策には、次の4つが挙げられます。
①有給休暇・特別休暇の取得を促す
ストレスや疲労を溜め込まないようにするには、休暇によって心身をリフレッシュしたり、プライベートを充実させたりすることが大切です。
従業員へ有給休暇の取得を推奨して、十分な休暇を取ってもらうことで心身のリフレッシュや気分転換を促せます。たとえば、年次有給休暇のほかに、企業が独自に規定できる特別休暇制度を導入するのも有効です。
▼取組み例
- チームで業務進行を共有して、休みやすい環境づくりを行うよう呼び掛ける
- リフレッシュ休暇、ボランティア休暇、病気休暇などの特別休暇を設ける など
出典:厚生労働省 働き方・休み方改善ポータルサイト『特別な休暇制度とは』『事業主の方へ』
②コミュニケーションの場を設ける
上司・管理者・同僚などとのコミュニケーションを深められるような時間やイベントを設けることも有効です。
特に、入社の時期に交流の場を設けることで、社員同士が打ち解けあい、新しい環境に慣れるきっかけになります。
また、上司や人事・総務担当者に相談しやすい雰囲気づくりをはじめ、コミュニケーションを通して部下の悩みや不満に耳を傾けることは、従業員の不安を和らげたり、ストレスを緩和したりすることにもつながります。
▼取組み例
- 週に1回、上司と部下で1対1のミーティングを実施する
- お花見、運動会など社内全体のイベントを設ける
- 上司や部下とのランチ会を実施する など
出典:全国健康保険協会 協会けんぽ『4月 未然に防ぐ5月病対策』
③メンタルヘルス研修を実施する
従業員や管理者にメンタルヘルス研修を実施して、五月病についての理解を深めてもらうことも重要です。
従業員自身が感じるストレスの原因を把握して、セルフケアができるようになることで、症状が悪化するのを防げます。また、管理者は、部下のメンタルヘルス不調に配慮して、働きやすい職場環境づくりに取り組めるようになります。
▼取組み例
- 自身のストレス傾向を知ってもらうために、ストレスチェックを実施する
- ストレスを溜めない生活習慣・睡眠についての研修を実施する
- 従業員へのフォローを強化するために、管理者向けの行動マニュアルを活用する など
出典:全国健康保険協会 協会けんぽ『4月 未然に防ぐ5月病対策』
④産業医に相談できる体制を整える
五月病の兆候にいち早く気付き、適切なフォローを行うためには、産業医に気軽に相談できる体制を整えることが大切です。
『労働安全衛生法』の第66条では、労働者が常時50人以上いる事業場において、年1回のストレスチェックの実施を義務付けています。ストレスチェックの実施により、メンタルヘルス不調の早期発見・自覚を促せるほか、高ストレス者に対して産業医による面談を実施できるようになります。
たとえば、ゴールデンウィーク後にストレスチェックを実施した場合、産業医への相談を促すことで、五月病の症状が深刻な状態に進行することを防げます。ストレスチェックの結果や相談の内容に応じて、業務量を減らしたり、労働時間を短縮したりするなどの対応も検討します。
▼取組み例
- 定期的に産業医による面談を実施する
- ストレスチェックの高ストレス者に、産業医による保健指導を行う
- 健康管理システムを導入して、オンラインによる健康相談を導入する など
出典:厚生労働省『ストレスチェック制度導入マニュアル』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)』
まとめ
この記事では、五月病とその対策について、以下の項目で解説しました。
- 五月病とは何か
- 五月病の主な原因
- 職場でできる4つの五月病対策
五月病は、生活環境や職場環境が変わる4月・5月頃に発症しやすい症状です。心身の不調によって仕事にも影響を及ぼす可能性があるため、早い段階でのフォローが欠かせません。
企業においては、従業員が産業医に気軽に相談できる体制を構築することで、従業員へのスピーディかつ的確なフォローを実現できます。オンラインによる健康相談を実施することも有効な取組みの一つです。
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従業員が不調やストレスを感じたときに、気軽に医師に匿名で相談できるため、五月病の予防・早期発見に貢献します。
五月病の対策の一つとして、従業員の健康管理に役立つfirst callの活用を検討してみてはいかがでしょうか。