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特殊健康診断とは?一般健康診断との違い、対象者や実施時期を解説

企業が実施する主な健康診断には、一般健康診断と特殊健康診断があります。

特殊健康診断は、職種に関係なく実施する一般健康診断とは異なり、一定の業務に従事する従業員が対象です。人事・総務担当者は、対象者を分類したうえで必要な健康診断の受診手続きを実施する必要があります。

一方、担当者のなかには、「特殊健康診断の対象者は誰だろうか」「実施は義務なのだろうか」「一般健康診断とどう違うのかよく分からない」と疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。

この記事では、特殊健康診断とは何か、一般健康診断との違いや対象者について解説します。

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目次[非表示]

  1. 特殊健康診断とは
    1. ①特殊健康診断
    2. ➁じん肺健診
    3. ③歯科医師による健診
  2. 一般健康診断と特殊健康診断の違い
  3. 一般健康診断・特殊健康診断の対象者と実施時期
  4. まとめ


特殊健康診断とは

特殊健康診断とは、法令で定められた有害とされる業務に従事する労働者、また特定の物質を取り扱う労働者を対象とした健康診断のことです。

労働安全衛生法』第66条第2項・第3項によって定期的な実施が義務付けられており、従事させる業務によって実施期間や健康診断の内容が異なります。

また、特殊健康診断の結果によっては、就業場所の変更や配置転換、労働時間の短縮などの措置を講じる必要があります。そのほか、作業環境の測定や設備の設置・改善などの措置が求められるケースもあります。特殊健康診断は、主に3つの種類に分けられます。

出典:e-Gov法令検索『労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)


①特殊健康診断

特殊健康診断は、有害とされる業務ごとに健康診断項目が定められています。

指定されている業務は以下のとおりです。


▼特殊健康診断に指定されている業務

  1. 高気圧業務
  2. 放射線業務
  3. 特定化学物質業務
  4. 石綿業務
  5. 鉛業務
  6. 有機溶剤業務
  7. 四アルキル鉛業務

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『特殊健康診断』/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう


➁じん肺健診

じん肺健診は、常時粉じん作業に従事する労働者を雇い入れる際、またはその業務に配置換えを行う際に実施する健康診断です。

じん肺法』の第3条、第7~10条では、現在その業務に従事する人だけではなく、過去に従事したことのある働者で、じん肺管理区分2および3の労働者に対しても、定期的にじん肺検診を実施する必要があると示されています。


▼じん肺管理区分

じん肺管理区分
じん肺健康診断の結果
管理1

じん肺の所見がないと認められるもの

管理2
エックス線写真の像が第1型かつ、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理3
エックス線写真の像が第2型かつ、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
エックス線写真の像が第3型、または第4型(大陰影の大きさが肺の片側3分の1以下のものに限る)で、じん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
管理4

(1)エックス線写真の像が第4型(大陰影の大きさが肺の片側3分の1を超えるものに限る)と認められるもの

(2)エックス線写真の像が第1型、第2型、第3型、または第4型(大陰影の大きさが肺の片側3分の1以下のものに限る)で、じん肺による著しい肺機能の障害があると認められるもの

じん肺法(昭和三十五年法律第三十号)』を基に作成

出典:厚生労働省 | 職場のあんぜんサイト『特殊健康診断』/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう


③歯科医師による健診

特殊健康診断の歯科検診は、塩酸・硫酸・硝酸・亜硫酸・フッ酸等のガス・蒸気・粉じんを発散する場所で業務に従事する労働者に対して実施する健康診断です。

労働安全衛生規則』第48条では、雇い入れ時と配置換えの際および、その後6ヶ月以内ごとに歯科医師による健康診断を実施する必要があることが示されています。

出典:厚生労働省 | 職場のあんぜんサイト『特殊健康診断』/e-Gov法令検索『労働安全衛生規則(昭和四十七年労働省令第三十二号)


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一般健康診断と特殊健康診断の違い

一般健康診断と特殊健康診断は、実施目的や診断項目が異なります。

一般健康診断は、『労働安全衛生法』第66条第1項に定められた健康診断で、労働者の一般的な健康状態を調べることを目的としています。一方、特殊健康診断は、特定の有害な業務に従事する人の健康障害を予防・早期発見することが目的です。

それぞれの診断項目は次のとおりです。


▼一般健康診断の項目

雇入れ時の健康診断
  • 既往歴および業務歴の調査
  • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
  • 胸部エックス線検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査(血色素量および赤血球数)
  • 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP) 
  • 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  • 血糖検査
  • 尿検査(尿中の糖およびタンパクの有無の検査)
  • 心電図検査
定期健康診断
  • 既往歴および業務歴の調査
  • 自覚症状および他覚症状の有無の検査
  • 身長、体重、腹囲、視力および聴力の検査
  • 胸部エックス線検査および喀痰検査
  • 血圧の測定
  • 貧血検査(血色素量および赤血球数)
  • 肝機能検査(GOT、GPT、γ-GTP)
  • 血中脂質検査(LDLコレステロール、HDLコレステロール、血清トリグリセライド)
  •  血糖検査
  • 尿検査(尿中の糖およびタンパクの有無の検査)
  • 心電図検査

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』を基に作成


▼特殊健康診断の項目(一部)

高気圧業務の健康診断項目
  • 既往歴および高気圧業務歴の調査
  • 関節、腰もしくは下肢の痛み、⽿鳴り等の⾃覚症状、または他覚症状の有無の検査
  • 四肢の運動機能の検査
  • ⿎膜および聴⼒の検査
  • ⾎圧の測定、尿中の糖およびタンパクの有無の検査
  • 肺活量の測定
  • ▽二次健康診断項目
  • 作業条件調査
  • 肺換気機能検査
  • 心電図検査
  • 関節部のエックス線直接撮影による検査
放射線業務の健康診断項目
  • 被ばく歴の有無(被ばく歴を有する者は、作業場所、内容および期間、放射線障害の有無、⾃覚症状の有無その他放射線による被ばくに関する事項)の調査およびその評価
  • 白⾎球数および白⾎球百分率の検査
  • ⾚⾎球数の検査および⾎⾊素量またはヘマトクリット値の検査
  • 白内障に関する眼の検査
  • 皮膚の検査

厚生労働省静岡労働局『労働安全衛生法第66条第2項、3項の政令で定める有害な業務について(特殊健康診断、歯科検診)』を基に作成

そのほかの業務の診断項目については、都道府県労働局または労働基準監督署へ問合せることで確認できます。

出典:e-Gov法令検索『労働安全衛生法(昭和四十七年法律第五十七号)』/厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』/厚生労働省静岡労働局『労働安全衛生法第66条第2項、3項の政令で定める有害な業務について(特殊健康診断、歯科検診)



一般健康診断・特殊健康診断の対象者と実施時期

一般健康診断と特殊健康診断では、それぞれ対象者と実施時期が異なります。業務内容に応じて、どのような健康診断が必要になるか確認しておくことが重要です。


▼一般健康診断

健康診断の種類
対象となる労働者
実施時期
①雇入時の健康診断
常時使用する労働者
雇入れ時
②定期健康診断
常時使用する労働者
1年以内ごとに1回
③特定業務従事者の健康診断
労働安全衛生規則第13条第1項第2号の業務に従事する労働者(高熱・低温物体を取り扱う業務、重量物を取り扱う業務、深夜業を含む業務等)
配置換えの際、また6ヶ月以内ごとに1回
④海外派遣労働者の健康診断
海外に6ヶ月以上派遣する労働者
派遣する際、また帰国後に国内業務に就かせる際
⑤給食従業員の検便
事業に付属する食堂または炊事場において給食の業務に従事する労働者
雇入れ時、また配置換えの際

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』を基に作成


▼特殊健康診断

健康診断の種類
対象となる労働者
実施時期
①特殊健康診断

以下の有害業務に常時従事する労働者

  • 高気圧業務
  • 放射全業務
  • 特定化学物質業務
  • 石綿業務
  • 鉛業務
  • 四アルキル鉛業務
  • 有機溶剤業務
雇入れ時、配置替えの際および6ヶ月以内ごとに1回
②じん肺健診
粉じん作業に常時従事する労働者、また、従事したことのある管理2または管理3の労働者
健康状態に応じて、1~3年以内ごとに1回
③歯科医師による健診
塩酸、硝酸、硫酸、弗化水素、黄りんなど有害なガスや蒸気等が発散する場所で常時従事する労働者
雇入れ時、配置替えの際および6ヶ月以内ごとに1回

厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署『労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう』/厚生労働省 | 職場のあんぜんサイト『特殊健康診断』を基に作成


なお、一定の特定化学物質業務や石綿業務などについては、その業務に従事しなくなってからも実施が必要です。

健康診断の種類や対象者によって実施時期が異なるため、人事・総務担当者はあらかじめ業務内容ごとの健康診断の種類を把握して、対象者に対して適切に管理・周知することが欠かせません。



まとめ

この記事では、特殊健康診断について以下の項目で解説しました。

  • 特殊健康診断とは何か
  • 一般健康診断と特殊健康診断の違い
  • 各健康診断の対象者と実施時期

特殊健康診断は、『労働安全衛生法』で定められた有害な業務に従事する従業員に対して受診させることが義務付けられている健康診断です。

職種によって対象者が異なる点を理解したうえで、自社で一般健康診断・特殊健康診断の受診手続きを行う必要があります。

健康診断の管理を含め、従業員の健康管理を適切かつ効率的に行うには、健康管理サービスの活用が有効です。

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※特殊健診については現在未対応


遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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