健康診断の事後措置の流れ5ステップ│企業の義務も徹底解説
『労働安全衛生規則』第44条・第52条では、事業者が常時使用する従業員に対して、1年に1回の定期健康診断を実施するとともに、健康診断の結果に基づいて適切な事後措置を行うことが義務付けられています。
また、従業員の健康を保持するためには、法律で定められた義務や事後措置の流れを把握しておくことが重要です。
この記事では、健康診断実施後に人事・総務担当者が行う事後措置の流れと、4つの義務について解説します。
なお、常時雇用する従業員数が50人を超える事業場に義務付けられている環境整備については、こちらで解説しています。あわせてご確認ください。
また、クラウド型健康管理サービス「first call」では、産業医業務のオンライン対応(職場巡視を除く)が可能な嘱託産業医の選任や、医師への相談窓口など産業医や医師による企業の健康サポートを行っています。ストレスチェックの実施に加え、健康診断結果や面談記録の管理、面談日程調整など企業の健康管理業務をオンライン化できます。
出典:e-GOV法令検索『労働安全衛生規則』
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一般健康診断における事後措置の流れ
『労働安全衛生法』第66条の5では、事業者に対して、健康診断の結果に異常の所見があった従業員に適切な措置を行うことが義務付けられています。
ここでは、『労働安全衛生法』第66条で定められている一般健康診断における定期健康診断の事後措置の流れについて解説します。
①定期健康診断の実施
事業者は、常時雇用する従業員に対して、『労働安全衛生規則』第44条に基づく定期健康診断を実施します。
定期健康診断は、従業員の一般的な健康状態を把握するための健康診断で、年に1回実施します。アルバイトやパートであっても、一定の要件を満たす場合は受診してもらう必要があります。
出典:厚生労働省 愛知労働局『定期健康診断』/e-GOV法令検索『労働安全衛生規則』/厚生労働省 東京労働局『健康診断の実施と事後措置の概要』
②異常所見の有無をチェック
健康診断を実施した病院やクリニックから健康診断結果を受領します。
その診断結果を基に、異常の所見があるか確認します。健診結果の項目に、経過観察・要再検査・要精密検査・要治療といった判定が記載されている場合は、異常所見があると判断できます。
また、厚生労働省は、要再検査(要精密検査)の判定があった従業員に対して、受診を勧奨することが適当であるとしています。
さらに、『労働安全衛生法』第66条の7では、異常所見があると判断した従業員には、産業医や保健師による保健指導、病院への受診を行うことが推奨されています。
出典:e-GOV法令検索『労働安全衛生法』/厚生労働省 石川労働局『労働安全衛生法に基づく健康診断に関するFAQ』/厚生労働省 東京労働局『健康診断の実施と事後措置の概要』
③健康診断結果の通知
従業員が自らの健康状態を把握して、セルフケアに取り組めるように、健康診断を受診したすべての従業員に対して結果を通知します。
『労働安全衛生法』第66条6では、健康診断結果を労働者に通知することが義務付けられています。
出典:e-GOV法令検索『労働安全衛生法』/厚生労働省 東京労働局『健康診断の実施と事後措置の概要』
④医師等からの意見聴取
健康診断の結果、異常の所見があると診断された従業員がいる場合、事業者は必要な措置について医師等の意見を聴取します。これは、『労働安全衛生法』第66条の4で定められています。
医師等の意見を聴取する際、産業医がいる企業は産業医へ相談します。産業医の選任義務がない50人未満の事業場においては、労働者の健康管理に必要な知識を有した医師に相談が必要です。
また、必要に応じて従業員の労働環境・労働時間・作業負荷の状況など、情報と職場巡視の機会を医師に提供する必要があります。産業医の選任義務がある常時50名以上の事業場では、職場巡視は義務となっているため、医師と調整して実施が必要です。
健康診断の結果について医師の意見を聴取することで、何らかの就業上の措置を取る必要性があるか、またどのような措置を講じるかなど適切な判断を仰ぎます。
出典:e-GOV法令検索『労働安全衛生法』/厚生労働省『労働安全衛生法に基づく定期健康診断関係資料』/厚生労働省 東京労働局『健康診断の実施と事後措置の概要』/国土交通省『資料2「健康診断後の事後措置等について」』
⑤就業上の措置の決定
『労働安全衛生法』第66条の5に則り、医師の意見を聴取した後、就業を制限する必要がある、または休む必要があると認められる場合、就業上の措置を講じます。
就業上の措置には、3つの判定区分があります。必要な措置については、医師の意見を踏まえつつ事業所が決定します。
▼就業上の判定区分と内容
判定区分 |
就業上の措置の内容 |
通常勤務 |
通常の勤務でよい |
就業制限 |
労働時間の短縮、時間外労働の制限、作業転換、深夜業の回数減少など |
要休業 |
休暇の付与、休職手続き |
このほかにも、作業環境測定の実施や衛生委員会への報告などの事後措置があります。
出典:e-GOV法令検索『労働安全衛生法』/厚生労働省 東京労働局『健康診断の実施と事後措置の概要』/国土交通省『資料2「健康診断後の事後措置等について」』
健康診断の事後措置に関する4つの義務
健康診断の事後措置として、事業者に義務付けられていることは主に4つあります。ここからは、各法令とともに具体的な取組みについて解説します。
①健康診断結果の保存
定期健康診断(一般健康診断)の実施後は、その結果を基に健康診断個人票を作成して、5年間保存する義務があります。
健康診断個人票とは、事業者が法令に基づいて実施した健康診断結果を従業員ごとに記録した書面のことです。
『労働安全衛生規則』第51条に定める“様式第5号”を用いて作成します。健康診断個人票は紙媒体のほか、電子データで保存することも可能です。
健康診断結果の保存方法については、こちらの記事をご確認ください。
出典:e-GOV法令検索『労働安全衛生規則』/厚生労働省『健診結果等の保存期間について(現状)』
②産業医・保健師による保健指導
『労働安全衛生法』第66条の7では、事業者は健診項目に異常所見がある従業員に対して、産業医・保健師による保健指導の実施に努める義務があると示されています。
健康診断の結果によっては、現時点では就業上の措置が必要ない場合であっても、放置することで将来的に健康状態が悪化することも考えられます。
従業員が自身の健康状態を把握して、改善に向けた自発的な行動を取るよう促すためにも、産業医や保健師による保健指導の実施が必要です。従業員の意見を尊重しながら、事業者が生活習慣の改善を支援することで、健康保持・促進が期待できます。
出典:e-GOV法令検索『労働安全衛生法』/国土交通省『資料2「健康診断後の事後措置等について」』
③産業医による就業判定
『労働安全衛生法』第66条の5では、健康診断の結果、異常所見のある従業員に対する必要な措置について、産業医の意見を仰ぐことが義務付けられています。
医学的な観点から、就業制限や休業などの就業上の適切な措置を判断するために、産業医の意見を参考にします。そのため、健康診断結果を産業医とスムーズに共有できる体制が欠かせません。
また、就業判定を行う際、従業員の過去の健康診断結果も判断材料の一つになります。直近の健康診断結果だけではなく、過去のデータを確認できるような管理・保管体制も望まれます。
出典:e-GOV法令検索『労働安全衛生法』/厚生労働省『現行の産業医制度の概要等』
④労働基準監督署への報告書の提出
定期健康診断を実施した際は、所轄の労働基準監督署に報告書を提出する必要があります。一般健康診断には、次の4つがあります。
- 定期健康診断
- 特定業務従事者の健康診断
- 雇入時の健康診断
- 海外派遣労働者の健康診断
これらのうち、報告書の提出が必須とされているのは、定期健康診断・特定業務従事者の健康診断を実施する場合のみです。
また、一般健診以外にも、特殊健診(有機溶剤や特定化学物質など)を行っている場合にはそちらの報告義務も発生します。
なお、健康診断結果報告書に関しては、厚生労働省のホームページ上でPDFファイルをダウンロードできます。
健康診断結果報告書の記入方法や提出方法については、こちらの記事でご確認ください。
出典:e-GOV法令検索『労働安全衛生法』/厚生労働省 岡山労働局『健康診断の種類及び報告義務』『各種健康診断結果報告書』
『first call』で適切な健診管理・事後措置を実現
健康診断の事後措置を適切かつスムーズに実施するためには、健康診断の管理に役立つ『first call』の活用が有効です。
first callの『健診管理サービス』は、健康診断結果をオンラインで管理できるクラウド型サービスです。紙媒体やCSVファイルなど、フォーマットの異なる健診結果が提出されてもOCR機能で取り込み、データ化して一元管理します。
また、異常所見のチェックをはじめ、産業医への意見聴取などもすべてオンラインで対応できるため、スムーズな事後措置が実現します。
さらに、産業医による就業判定機能や意見書作成・共有機能が備わっていることも特徴です。first callの健診結果管理機能は、以下が挙げられます。
▼first callの健診結果管理機能
- 従業員情報の登録・管理
- 紙媒体や画像データによる健診結果の取り込み
- 日本人間ドック学会の基準に基づく健診結果の総合判定の付与
- 就業判定機能
- 労働基準監督署への報告データの集計
- 従業員向け健診結果表示 など
first callを活用すれば、健診結果を踏まえて適切な措置を講じられるため、健康状態悪化のリスクを防ぎ、健康保持・促進につなげられます。健康診断管理の適正化・効率化のために、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。
※first callでは“従業員の健診結果の共有”機能が近日リリース予定となっております。
まとめ
この記事では、健康診断の事後措置について、以下の項目で解説しました。
- 定期健康診断(一般健康診断)における事後措置の流れ
- 事後措置に関する4つの義務
- 適切な健診管理・事後措置を実現する『first call』について
事業者は、定期健康診断を実施した後、健診結果に基づいて従業員に対して必要な事後措置を講じることが義務付けられています。
健診結果に異常の所見があった従業員については、必要な措置について医師等への意見聴取を行ったのち、就業制限や休業などの措置を検討します。
そのためには、従業員一人ひとりの健診結果データを適切に管理して、従業員や産業医とスムーズに情報共有を行える体制づくりが欠かせません。
『first call』を導入することで、健診結果を一元管理して、適切かつスムーズな事後措置が行えるようになります。詳しくは、ぜひお気軽にお問合せください。
健康診断結果の管理業務を効率化する、first callの健診管理サービスについてはこちらからご確認いただけます。