健康診断結果を紙管理する理由│ペーパーレスのメリットやデメリットを解説
『労働安全衛生法』第66条の3では、企業は従業員の健康管理のために健康診断結果を適切に保管することが定められています。
健康診断結果を紙媒体で管理している場合、診断結果の仕分けや産業医への郵送などに労力がかかります。また、従業員数が多くなるほど管理が煩雑化するといった問題があります。
国内のペーパーレス化が推進されるなか、従業員の健康診断結果についても、紙媒体から電子媒体へ移行しようと検討している方もいるのではないでしょうか。
本記事では、健康診断結果を紙媒体で管理するデメリットやペーパーレス化のメリットについて解説します。
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健康診断結果は電子保存が可能
労働安全衛生法で定められている健康診断は、結果を紙媒体だけでなく電子形式で保存・申請することが可能です。
健康診断の結果を個人ごとに記録した書面を“健康診断個人票”といい、事業者には以下の対応が義務付けられています。
▼事業者に義務化されている健康診断結果の取扱い
- 指定の様式に沿った健康診断個人票の作成
- 健康診断個人票の5年間の保存
健康診断結果(健康診断個人票)の電子保存が認められるようになったのは、2020年8月28日の改正労働安全衛生関係法令の施行からです。
この法改正によって、健康診断個人票や定期健康診断結果報告書への医師等の押印、電子媒体で保存する際の電子署名が不要になりました。
医師等の記名のみでよくなったため、社内での健康診断個人票の保管や労働基準監督署への届出を電子化することが容易になりました。
また、厚生労働省では、国民・患者の保健医療情報を活用して、医療・介護現場、保健事業などに役立てるために、健診情報の円滑な提供を求めています。加えて、企業と国・自治体等が健診情報を円滑に連携するために、情報の電子化やデータ形式の標準化なども推奨しています。
これまで紙媒体で申請・保存していた健康診断結果を電子化することで、社内のペーパーレス化が進み、業務効率化や産業医とのスムーズな連携が期待されています。
出典:厚生労働省『健診結果等の保存期間について(現状)』『労働安全衛生規則関係様式』『資料2「健康診断後の事後措置等について」』『保健医療情報の利活用に向けた工程表の策定について』『健康診断個人票や定期健康診断結果報告書等について、医師等の押印等が不要となります。』
健康診断結果を紙媒体で管理するデメリット
健康診断結果を紙媒体で管理している場合、人事・総務担当者の業務が煩雑化しやすくなります。具体的なデメリットとして、以下の4つが挙げられます。
①管理業務に工数がかかる
健康診断結果を紙媒体で管理していると、従業員数が多くなるほど管理業務に工数がかかってしまいます。担当者の業務負担が増加すると、結果的に業務効率の低下につながる可能性もあります。
健康診断結果の管理業務にかかる工数には、以下があります。
▼管理業務にかかる工数例
- 異常所見の有無の判断と健康診断結果の仕分け
- 従業員へ健康診断結果を通知するためのコピー・郵送作業
- 産業医への郵送、労働基準監督署への報告書の作成
- 社内保管のためのファイリング
②保管スペースが必要になる
健康診断結果は5年間の保管が義務付けられており、従業員が多い職場では、保管するための広いスペースが必要です。
しかし、オフィス・倉庫の収納場所が健康診断結果のスペースで圧迫されると、業務に必要なほかの資料を保管できなくなる可能性があります。
ほかにも、紙媒体で保管すると以下のようなデメリットがあります。
▼健康診断結果を紙媒体で保管するデメリット
- 保管用のキャビネットやファイルなどの購入費がかかる
- 保管期間終了後の処分に労力がかかる
③情報の抽出・分析に時間がかかる
紙媒体で健康診断結果を管理する場合、必要な情報を抽出・分析するのに時間がかかるのもデメリットの一つです。
情報の抽出・分析に時間がかかることで、業務効率の低下につながるほか、適切な健診・保健指導を実施できなくなるおそれがあります。
▼具体例
- 健診実施報告書に記載する有所見者の数のカウントに多くの工数がかかる
- 健康診断のたびに個人のファイルを探す必要がある
- 健康診断結果の経時的変化が分かりにくい
- 従業員全体の健康状態を定量的に把握しにくい
④紛失や盗難のリスクがある
健康診断結果を紙媒体で保管する場合、紛失や盗難のリスクが伴います。ほかにも、収納場所や個人ファイルを誤って保管してしまい、健康診断結果の書類が散在してしまうといったミスが発生する可能性もあります。
具体的には、以下のようなリスクが考えられます。
▼紛失・盗難のリスク例
- 人事・総務担当者の人以外が従業員の健康診断結果を閲覧する
- 悪意のある人物によって盗難される
- ファイリングや保管場所を誤り紛失する
- 自然災害によって消失・破損する
健康診断結果をペーパーレス化する4つのメリット
健康診断結果をペーパーレス化することで、人事・総務担当者の業務効率化をはじめ、産業医とのスムーズな連携が可能になります。
ここでは、ペーパーレス化の4つのメリットを紹介します。
①管理の工数を削減できる
健康診断結果をペーパーレス化することで、管理にかかる工数を削減できます。
手作業による仕分けやファイリング、通知用の健康診断結果のコピーも不要になるため、担当者の業務効率化に貢献します。
健康診断結果をデータ化して保存・管理することで、以下のように活用できるようになります。
▼ペーパーレス化でできること
- 従業員とメールやシステム上で健康診断結果を共有する
- システム上で異常所見の有無を自動仕分けする
- 様式の異なる健康診断結果をシステム上で統一する
- システムを通じて健康診断結果を産業医へ報告する
②収納スペースを有効活用できる
健康診断結果をペーパーレス化すると、物理的な保管場所が削減できます。従業員数が多い職場においても保管スペースを圧迫する心配がなくなるため、社内の収納スペースを有効活用できます。
データとして保存すると、以下のようなメリットがあります。
▼ペーパーレス化でできること
- キャビネットやファイルなどの購入費を削減できる
- 従業員が増えても保管場所を拡大する必要がなくなる
- 健康診断結果の保管期間の確認・処分作業が不要になる
③データ検索や分析が容易になる
ペーパーレス化によって、健康診断結果を分析しやすくなることもメリットの一つです。
従業員の健康診断結果を継続的に記録して健康状態を分析することで、前年結果との比較や今後の保健指導の判断に役立てられます。また、転勤や転居に伴う健康診断結果のデータをスムーズに引継げるようになります。
ペーパーレス化によって、以下のような対応が可能です。
▼ペーパーレス化でできること
- 紙媒体を探す必要がなくなり、必要なデータをすぐに確認できる
- 収納やファイリングの人的ミスを防ぐ
- 過去の結果と比較して、従業員の保健指導や面接などを実施する
- 職種や性別、部署別などカテゴリ別に健康診断結果を分析する
④紛失・盗難リスクを防げる
健康診断結果は、漏えいや改ざん等をされないように、権限を有しない者がアクセスできないような管理が必要です。
健康診断結果をデータとして保管することで、情報へのアクセス制限やセキュリティ管理がしやすくなります。
また、物理的な保管場所がなくなるため、自然災害による紛失リスクや関係者以外の人物による持ち出しを防止することが可能です。
ペーパーレス化によって、以下のような安全管理措置を行えます。
▼ペーパーレス化でできること
- システム上に健康診断結果を保存して、通信の暗号化によってデータ改ざんや漏えいを防ぐ
- システムの脆弱性診断を実施して、セキュリティ性を向上させる
- システムのアクセス管理・記録を行い、データへの不正アクセスや悪用を防ぐ
さらに、適切な安全管理措置を講じるには、セキュリティ対策をしっかり行えるシステムを選定することも重要です。
クラウド型健康管理サービス『first call』では、以下のように紙媒体・PDF・CSVファイルといった異なる形式の健康診断結果を、データ化して一元管理することが可能です。
▼first callの『健診管理サービス』
- 紙媒体の健康診断結果をPDF化して、システムに取り込む
- CSVファイル(健康診断結果)をシステムに取り込む
従業員への共有・産業医との連携がオンライン上でできるため、手作業による異常所見の有無の仕分け・ファイリングといった作業が不要になります。その結果、業務効率の向上をはじめ、管理スペースの削減、紛失リスクの回避につながります。
詳しいサービス内容について知りたい方は、お気軽にお問合わせください。
まとめ
この記事では、健康診断結果の紙管理のデメリットとペーパーレス化について、以下の項目で解説しました。
- 健康診断結果の電子保存について
- 健康診断結果を紙媒体で管理するデメリット
- ペーパーレス化のメリット
- クラウド型健康管理サービス『first call』について
従業員の健康診断結果を紙媒体で管理する場合、手作業による仕分けやファイリング、産業医への郵送などに労力がかかるだけでなく、リスクもあります。
現在では、健康診断個人票の電子保存や定期健康診断結果報告書の電子申請ができるため、業務効率化や産業医とのスムーズな連携が可能になりました。また、健康診断結果のペーパーレス化は紛失・盗難防止にもつながります。
紙媒体での健康診断結果の管理にお悩みの方は、電子媒体での管理を検討してみてはいかがでしょうか。
クラウド型健康管理サービス『first call』を活用すれば、紙媒体やPDF、様式の異なるCSVファイルの健康診断結果をクラウド上のシステムに取り込み、一元管理することが可能です。人事・総務担当者の業務負荷の軽減をはじめ、産業医へのスムーズな連携や法令に基づいた適切な保存を実現できます。
健康診断結果の管理業務を効率化する、first callの健診管理サービスについてはこちらからご確認いただけます。