健康診断結果の判定区分と項目別の見方を解説

健康診断結果の判定区分と項目別の見方を解説

従業員に対して健康診断を実施した際、企業はその結果に基づいて適切な措置を講じる必要があります。

しかし、健康診断の結果には専門用語や検査値が多いため、「見方がよく分からない」という人事・労務担当者の方も多いのではないでしょうか。

異常所見のある従業員を見落とさずに、必要に応じて再検査や受診勧奨を行うためには、健康診断結果の判定区分・見方について知っておくことが重要です。

本記事では、日本人間ドック学会の基準値を基に、健康診断結果の判定区分と各項目の見方について解説します。


目次[非表示]

  1. 健康診断の判定区分
  2. 健康診断結果における各検査項目の見方
    1. ①身体計測
    2. ②視力(眼)
    3. ③聴力
    4. ④胸部X線
    5. ⑤血圧
    6. ⑥血液検査
    7. ⑦尿検査
    8. ⑧心電図
    9. ⑨呼吸機能検査
    10. ⑩子宮頸部細胞診
  3. まとめ


健康診断の判定区分

健康診断結果の判定区分は、アルファベットで記載されていることが一般的です。公益社団法人日本人間ドック学会が公表している判定区分は、A~Eの5段階になります。


▼公益社団法人日本人間ドック学会の判定区分

判定区分
内容
A
異常なし
B
軽度異常
C
要再検査・生活改善
D
要精密検査・治療
E
治療中


健康診断の判定区分は、検査項目ごとに判定される仕組みとなっており、5段階の判定区分のうち、測定に異常値があった場合はB~Eの判定が記載されます。

ここでいう異常値とは、一定の基準値から外れる数値のことです。日本臨床検査医学会では、健康な人の検査値の分布中央95%の範囲を一定の基準値と定義しています。

なお、上記の判定区分は2022年4月に改訂された人間ドック学会の例です。医療機関ごとに独自の区分が設けられるため、提携している医療機関の判定区分と内容を確認しておく必要があります。

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『会告-判定区分の改訂等について-』『判定区分表等に関するQ&A』/日本臨床検査医学会『基準範囲・臨床判断値

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健康診断結果における各検査項目の見方

健康診断結果を確認する際は、検査結果の数値が基準値に収まっているかどうかを確認します。また、基準値を超えている場合はどのような健康状態なのかを把握することも重要です。

ここからは、公益社団法人日本人間ドック学会の判定区分に基づいて、各検査項目と検査結果の見方、基準値について解説します。


①身体計測

身体計測は、身長に見合った適正体重かどうかを判定するBMI値(※)を測定する検査項目です。基準範囲から外れる場合、低体重あるいは肥満と判断できます。


▼BMI値(単位:kg/m2)

要検査・生活改善

(低体重)

18.4以下
基準範囲
18.5 – 24.9

要検査・生活改善

(肥満)

25.0以上


▼腹囲(単位:cm)


男性
女性
基準範囲
84.9以下
89.9以下
要再検査・生活改善
85.0以上
90.0以上


腹囲については、次のいずれかに当てはまる方で、医師が必要でないと認める場合には省略可能です。

  • 40歳未満の者(35歳の者を除く)
  • 妊娠中の女性その他の者で、腹囲が内臓脂肪の蓄積を反映していないと診断された場合
  • BMI値が20未満である者
  • BMI値が22未満である者のうち、自ら腹囲を測定した値を申告した者

※BMI値とは、体重(kg)÷身長(m)の2乗で算出される体格指数のこと。

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『判定区分 2022年版)』/厚生労働省『労働安全衛生法に基づく定期健康診断


②視力(眼)

視力(眼)検査は、視力・眼圧を検査して、目の状態、病気の有無・程度を判断する項目です。裸眼、もしくは矯正(眼鏡やコンタクトレンズ)の場合は矯正で判定します。

眼の病気がなく裸眼視力が0.7未満の場合は、近視・乱視が考えられます。また、眼圧が低いケースでは網膜剥離や外傷、高いと高眼圧症、緑内障が疑われます。


▼視力

基準範囲
1.0以上
要再検査・生活改善
0.7 – 0.9
要精密検査・治療
0.6以下

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『判定区分 2022年版)』『検査表の見方 (2018年4月改訂版)


③聴力

聴力検査は、低音・高音が聞こえるかを測定する項目です。高い音で基準範囲以上の場合、難聴や中耳炎などが疑われます。


▼1000Hz(低い音)(単位:dB)

基準範囲
30以下
要再検査・生活改善
35
要精密検査・治療

40以上


▼4000Hz(高い音)(単位:dB)

基準範囲
30以下
要再検査・生活改善
35
要精密検査・治療

40以上

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『判定区分 2022年版)』『検査表の見方


④胸部X線

胸部X線検査は、胸部の背後からX線を照射して呼吸器疾患の有無・程度を判断する項目です。

胸部X線については数値による基準範囲はなく、さまざまな所見から病気が判定されます。具体的には、肺炎、肺結核、肺がん、肺気腫、胸水、気胸などが挙げられます。

なお、次のいずれかに当てはまる者で、医師が必要でないと認める場合は、この診断項目を省略することが可能です。

胸部X線の所見については、こちらをご確認ください。

  胸部X線 - 日本人間ドック学会 胸部X線 - 日本人間ドック学会の公式サイトです。学術大会、学会誌、認定医・専門医制度、人間ドック健診施設機能評価事業などについて、情報を発信しています。 https://www.ningen-dock.jp/public/inspection/chest-x

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『検査表の見方 (2018年4月改訂版) 』/厚生労働省『労働安全衛生法に基づく定期健康診断


⑤血圧

血圧検査は、心臓が収縮・拡張したときの圧力を測定して、正常に心臓のポンプが機能しているか、低血圧・高血圧かを判断する項目です。

食塩の過剰摂取や肥満、飲酒、遺伝体質、甲状腺などの病気があれば、数値が上昇します。また、前日の寝不足や測定時の緊張によって一時的に数値が上昇するケースもあります。


▼収縮期(単位:mmHg)

基準範囲
129以下
軽度異常
130 – 139
要再検査・生活改善
140 – 159
要精密検査・治療
160以上


▼拡張期(単位:mmHg)

基準範囲

84以下​​​​​

軽度異常
85 – 89
要再検査・生活改善
90 – 99
要精密検査・治療
100以上

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『判定区分 2022年版)』『検査表の見方 』『血圧


⑥血液検査

定期健康診断の診断項目に含まれる血液検査には、4つの検査項目があります。

  1. 貧血検査:血色素量(Hb)(ヘモグロビン)、赤血球数(RBC)
  2. 肝機能検査:AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP
  3. 血中脂質検査:LDLコレステロール・HDLコレステロール、TG
  4. 血糖検査:空腹時血糖(FPG)、HbA1c(NGSP)

それぞれの基準値は以下のとおりです。


▼貧血検査

▽血色素量(単位:g/dL)


男性
女性
基準範囲
13.1 – 16.3
12.1 – 14.5
軽度異常
16.4 – 18.0 
14.6 – 16.0 
要再検査・生活改善
12.1 – 13.0
11.1 – 12.0
要精密検査・治療
12.0以下、18.1以上
11.0以下、16.1以上  


▽赤血球数(RBC)

赤血球の数が多すぎれば多血症、少なすぎる場合は貧血が疑われますが、公益社団法人日本人間ドック学会の判定区分には明確な数値の基準は示されていません。


▼肝臓系検査(単位:U/L)


AST(GOT)
ALT(GPT)
γ-GTP
基準範囲
30以下
30以下
50以下
軽度異常

31 – 35

31 – 40
51 – 80
要再検査・生活改善
36 – 50
41 – 50
81 – 100
要精密検査・治療
51以上
51以上
101以上


▼血中脂質検査

▽HDLコレステロール・LDLコレステロール(単位:mg/dL)


HDLコレステロール
LDLコレステロール
基準範囲
40以上
60 – 119
軽度異常
-
120 – 139
要再検査・生活改善
35 – 39
140 – 179
要精密検査・治療
34以下
59以下、180以上


▽TG(中性脂肪・トリグリセライド)(単位:mg/dL)

基準範囲
30 – 149
軽度異常
150 – 299
要再検査・生活改善

300 – 499

要精密検査・治療
29以下、500以上


▽non-HDLコレステロール(単位:mg/dL)

基準範囲
90 – 149
軽度異常
150 – 169
要再検査・生活改善
170 – 209
要精密検査・治療
89以下、210以上


※non-HDLコレステロールの判定方法

  • トリグリセライド400mg/dl以上、または食後に採血する場合
    LDLコレステロールの代わりにnon-HDLコレステロールで判定する

  • トリグリセライド400mg/dl未満かつ空腹時に採血する場合
    non-HDLコレステロールの値を判定に用いずに、LDLコレステロール値で判定する


▼血糖検査

▽空腹時血糖(FPG)(単位:mg/dL)) 


空腹時血糖(FPG)
(単位:mg/dL)

HbA1c(NGSP)

(単位:%)

基準範囲
99mg/dL以下かつ5.5%以下
軽度異常

1)、2)いずれかの者

1)100 - 109mg/dLかつ5.9%以下 

2)99mg/dLかつ5.6 - 5.9%

要再検査・生活改善

1)、2)、3)、4)いずれかの者

1)110 - 125mg/dL     

2)6.0 - 6.4%                 

3)126mg/dL以上かつ6.4%以下 

4)125mg/dL以下かつ6.5%以上 

精密検査・治療
126以上mg/dLかつ6.5%以上

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『判定区分 2022年版)』『検査表の見方 』/厚生労働省『労働安全衛生法に基づく定期健康診断


⑦尿検査

尿検査には、尿蛋白・尿潜血・尿糖の検査項目があります。これらを測定して、腎臓の障害がないかを判断します。基準値から外れる場合には、腎炎や糖尿病腎症などが疑われます。


▼尿検査

▽尿蛋白・尿潜血

基準範囲
(-)
軽度異常

(±)​​​​​

要再検査・生活改善
(+)
要精密検査・治療
(2+以上)


▽尿糖

基準値
(-)
軽度異常
(±)以上
要再検査・生活改善
-
要精密検査・治療
-

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『判定区分 2022年版)』『検査表の見方


⑧心電図

心電図は、心臓の筋肉に流れる電流を測定して、不整脈や血液循環の不良、心筋梗塞などがないかを判断する項目です。

心電図には基準となる数値の範囲はなく、RSR’パターンやR波増高不良、異常Q波など、複数の検査所見が設けられています。また、寝不足や測定時の緊張によって一時的に数値が上昇することがあります。

心電図の検査所見については、こちらをご確認ください。

  心電図 - 日本人間ドック学会 心電図 - 日本人間ドック学会の公式サイトです。学術大会、学会誌、認定医・専門医制度、人間ドック健診施設機能評価事業などについて、情報を発信しています。 https://www.ningen-dock.jp/public/inspection/electrocardiogram

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『検査表の見方 (2018年4月改訂版) 』『心電図


⑨呼吸機能検査

呼吸機能検査は大きく息を吸ったり、吐いたりして呼吸機能を評価する検査項目です。結果は%肺活量と1秒率の2つで判断されます。

1. %肺活量
性別や年齢、身長から出した予測肺活量のうち、何%の肺活量があるかを調べます。

2. 1秒率
大きく息を吸って一気に吐き出すときに、最初の1秒間に何%息を吐き出せるかを調べます。

異常数値の場合は、間質性肺炎や肺線維症、肺気腫、慢性気管支炎の可能性が考えられます。それぞれの基準値は以下のとおりです。


▼呼吸機能検査

▽%肺活量(単位:%)

基準範囲
80.0以上
軽度異常
-
要再検査・生活改善
-
要精密検査・治療
79.9以下


▽1秒率(単位:%)

基準範囲
70以上
軽度異常
-
要再検査・生活改善
-
要精密検査・治療

69.9以下

​​​​​​​

出典:公益社団法人日本人間ドック学会『検査表の見方


⑩子宮頸部細胞診

子宮頸部細胞診は、オプション検査として受診できる婦人科検診の一つです。子宮頸部の粘膜から細胞を採取して、 顕微鏡で異常がないかを調べます。

子宮頸部細胞診の受診は、子宮頸がんの早期発見、トリコモナス膣炎やカンジダ膣炎などの感染症の発見につながります。なお、検体の採取は医師のみとなっており、自己採取は認められていません。


▼子宮頸部細胞診

基準範囲
NILM
軽度異常
-
要再検査・生活改善
不適正標本 = 判定不能
要精密検査・治療

ASC-US,ASC-H,LSIL,HSIL/CIN2,HSIL/CIN3,

SCC,AGC,AIS,Adenocarcinoma,Other malig​​​​​​

出典:公益社団法人日本人間ドック学会:オプション検査 婦人科検診『子宮頸部細胞診』『子宮頸がん検診における細胞診検査の検体採取について』『判定区分 2022年版)



まとめ

この記事では、健康診断の判定区分について、以下の項目で解説しました。

  • 健康診断の判定区分
  • 健康診断結果における各検査項目の見方

公益社団法人日本人間ドック学会が公表している健康診断の判定区分は5段階ですが、医療施設によって独自の区分が設けられることがあります。

”異常なし”以外の判定があった場合は、再検査を促すとともに、産業医の判断を仰いで労働時間削減や休業など、就業上の措置を検討することが重要です。また、有所見者を見落とさないために、健康診断結果を適切に管理して、統一の基準に沿って判定の仕分けを行うことが必要です。

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健診結果は、日本人間ドック学会の基準を基に総合判定されるため、従業員が受診した医療機関がバラバラでも一定の基準で就業判定実施ができ、有所見者を適切に仕分けるためにも有効です。

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