
健康経営のメリットとは?従業員満足度と業績向上を両立させる方法を解説
従業員の健康管理に投資する企業が増えていますが、あなたの会社では健康経営に取り組んでいますか?少子高齢化による労働力人口の減少により、多くの企業が人材確保や生産性向上に頭を悩ませているのが現状です。
このまま対策を講じなければ、優秀な人材の流出や従業員のパフォーマンス低下によって、企業の競争力低下を招きかねないでしょう。
健康経営に取り組むことで、こうした課題を解決できるだけでなく、様々なメリットが得られるのです。
本記事では、健康経営の基本的な考え方から、企業と従業員それぞれにもたらす具体的なメリット、実践する際の注意点、成功させるためのポイントまで、皆さんに役立つ情報を詳しく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
優秀な人が辞めてしまう前のメンタルヘルスケアは産業医との連携が効果的です。またメンタル不調を未然に防止するためには健康相談窓口の設置も有効となります。「first call」なら産業医選任だけでなく、従業員の健康相談窓口の設置までご利用いただけます。
目次[非表示]
- ・健康経営とは?
- ・健康経営が企業にもたらすメリット
- ・健康経営による従業員へのメリット
- ・健康経営の注意点
- ・形だけの取り組みでは効果が出ない
- ・参加率が低いと全体効果が限られる
- ・従業員間で健康への関心に差が出やすい
- ・担当者交代や予算削減で継続が困難になる
- ・業種に合わない施策を選ぶと効果が出ない
- ・一度に多くの施策を導入すると失敗しやすい
- ・投資効果の可視化が難しい
- ・健康経営を成功させるためのPDCAサイクル
- ・健康経営と法令遵守・働き方改革との連携
- ・健康経営に関するよくある質問
- ・小規模企業でも健康経営優良法人になれますか?
- ・健康経営優良法人になるための具体的な申請手順は?
- ・従業員の健康データをどこまで収集して良いのですか?
- ・健康経営の効果が表れるまでどのくらいの期間がかかりますか?
- ・健康経営を推進するメリットのまとめ
健康経営とは?
健康経営とは、従業員の健康保持や増進を経営課題として捉え、企業が主体的に取り組む活動のことです。単なる福利厚生ではなく、企業の持続的な成長と発展のための戦略的な投資として位置づけられています。
それでは、健康経営の具体的な内容について詳しく解説します。
- 従業員の健康が重要な経営資源となる
- 優良法人認定で企業価値が高まる
- 多様な働き方で健康管理の重要性が増している
- 政策面からの後押しが強化されている
-
日本企業と海外企業で取り組み方が異なる
従業員の健康が重要な経営資源となる
企業の持続的な成長において、従業員の健康状態は無視できない重要な経営資源です。健康な従業員がいなければ、どんなに優れた技術や設備があっても十分に活用することができません。
健康関連の総コストのうち、特に注目すべき点として以下があります:
- プレゼンティーイズム(体調不良を抱えながら出勤し、業務遂行能力が低下している状態)が全体の大部分を占めている
- アブセンティーイズム(病欠や病気休業)よりも、出社はしているものの体調不良で生産性が落ちている状態の方が、企業にとって大きな損失となっている
従業員の健康状態やワークライフバランスを改善するための取り組みとして、昼休みのウォーキングイベントを開催したり、オフィスに簡易的なストレッチスペースを設けたりする企業もあります。
優良法人認定で企業価値が高まる
健康経営に積極的に取り組む企業を評価・認定する「健康経営優良法人認定制度」は、企業価値を高める重要な機会となっています。
認定を受けることで得られるメリットには以下のようなものがあります。
- 企業イメージの向上につながる
- 健康やワークライフバランスを重視する若い世代の求職者からの評価が高まる
- 取引先や顧客からの信頼度が向上する
- ESG投資(環境・社会・ガバナンスを重視した投資)の観点から投資家からの評価が高まる
健康経営優良法人として認定されると、採用活動において「従業員の健康を大切にする企業」というポジティブなイメージを持ってもらいやすくなります。
多様な働き方で健康管理の重要性が増している
現代社会では、テレワークやフレックスタイム制など、働き方の多様化が急速に進んでいます。特にコロナ禍以降、リモートワークが一般化したことで、従業員の健康管理のあり方も大きく変化しているのです。
多様な働き方における健康管理の課題には以下のようなものがあります。
- オフィスに出社する従来の働き方と比べ、上司や同僚が従業員の体調不良のサインに気づきにくい
- 自宅での長時間のデスクワークによる運動不足のリスクがある
- オンとオフの境界があいまいになることによるメンタルヘルスの問題が生じやすい
テレワーク中心の働き方では、オンラインでの健康セミナーの開催や、定期的なオンライン面談による心身の状態確認など、新しい形での健康支援が効果的です。
政策面からの後押しが強化されている
健康経営は、国の政策としても積極的に推進されています。少子高齢化による労働力人口の減少や医療費の増大という社会課題に対応するため、政府は企業における健康経営の取り組みを様々な形で支援しているのです。
政策面での健康経営推進の取り組みには以下のようなものがあります:
- 経済産業省と東京証券取引所による「健康経営銘柄」の選定・公表
- 「健康経営優良法人認定制度」を通じた大企業・中小企業の健康経営促進
- 厚生労働省による「データヘルス計画」の推進
- 「ストレスチェック制度」の義務化などのメンタルヘルス対策強化
地方自治体レベルでは、健康経営に取り組む企業への貸付金利の引き下げや、補助金の優遇措置などが実施されています。また、健康経営優良法人認定を受けた企業に対して、自治体の入札制度で加点評価を行うケースも増えています。
日本企業と海外企業で取り組み方が異なる
健康経営の概念や実践方法は、日本と海外では異なる特徴を持っています。
日本と海外の健康経営の違いには以下のような特徴があります。
【日本】
- 企業全体での組織的な取り組みを重視する傾向がある
- 健康保険組合と連携した取り組みが多い
【欧米】
- 個人の選択と責任を重視したアプローチが一般的
- メンタルヘルスや心理的安全性に関する取り組みが早くから進んでいる
日本企業では健康診断の受診率向上や残業時間の削減など、全従業員を対象とした施策が中心となる傾向があります。
一方、欧米企業では個人の選択と責任を重視したアプローチが主流です。健康的な生活習慣を持つ従業員に対してインセンティブを提供する「ウェルネスインセンティブプログラム」や、個人の健康目標達成を支援する「パーソナライズドヘルスコーチング」などが広く普及しています。
健康経営が企業にもたらすメリット
健康経営を導入することで、企業には多くのメリットがあります。従業員の健康状態が改善されることで生産性が向上し、業績アップにつながるだけでなく、健康保険料の削減、人材の確保や定着率の向上など、経営面での様々なプラスの効果が期待できます。
それでは、健康経営が企業にもたらす具体的なメリットについて詳しく解説していきます。
- 従業員の生産性が向上し業績が改善する
- 採用・教育コストを削減できる
- ESG評価が高まり資金調達が有利になる
-
融資条件などで優遇措置を受けられる
従業員の生産性が向上し業績が改善する
健康経営の大きなメリットは、従業員の生産性向上による業績改善です。
健康経営によって改善が期待できる内容には以下のようなものがあります。
- 従業員の集中力と判断力の向上
- 創造性や問題解決能力の強化
- チームワークと職場コミュニケーションの活性化
- 仕事へのエンゲージメント(熱意や没頭度)の向上
腰痛に悩む従業員のためにスタンディングデスクを導入することで、椅子に座って仕事をしていた時よりも集中力が高まり、業務効率が向上するケースもあります。
採用・教育コストを削減できる
健康経営に取り組む企業は、採用市場での評価が高まり、人材の確保や定着率の向上というメリットがあります。
健康経営による採用・教育コスト削減効果には以下のようなものがあります。
- 「健康経営優良法人」としてのブランド価値向上による採用力強化
- 従業員の定着率向上による採用コストの削減
- 経験豊富な人材の継続雇用による「暗黙知」の社内保持
- 職場の雰囲気改善による新入社員の早期戦力化
健康経営の一環として柔軟な働き方を導入することで、育児や介護と仕事の両立がしやすくなり、貴重な人材の流出を防ぐことができるでしょう。
ESG評価が高まり資金調達が有利になる
近年、投資家の間でESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した投資が広がっており、健康経営はその「S(社会)」の要素として高く評価されています。
健康経営がESG評価と資金調達に与える好影響には以下のようなものがあります。
- 機関投資家からの投資増加による株価の安定・上昇
- ESG投資ファンドからの資金流入の増加
- 資金調達コストの低下と有利な条件での調達
健康経営の取り組みをサステナビリティレポートやCSR報告書で積極的に開示することで、投資家からの評価が高まり、株価の上昇や安定につながることがあります。
融資条件などで優遇措置を受けられる
健康経営に取り組む企業は、金融機関からの融資条件で優遇を受けられるケースが増えています。
健康経営による金融面での優遇措置には以下のようなものがあります。
- 金融機関からの低金利融資の適用
- 融資審査における優遇措置
- 自治体の補助金や助成金の優先的な適用
- 公共事業の入札における加点評価
- 取引先からの信頼度向上による取引条件の改善
地方自治体が実施する中小企業向け融資制度において、健康経営優良法人認定を受けている企業には金利を引き下げるといった優遇措置が適用されるケースもあります。
健康経営による従業員へのメリット
健康経営は企業だけでなく、従業員自身にも多くのメリットがあります。会社から適切な健康増進サポートを受けられることで、忙しい日々の中でも自身の健康管理に意識を向けることができるようになるのです。
それでは、健康経営が従業員にもたらす具体的なメリットについて詳しく解説します。
- 業務効率と集中力が向上する
- 職場満足度とモチベーションが高まる
- ワークライフバランスが実現する
- 健康寿命が延び長く活躍できる
- 職場の人間関係が改善する
-
プライベートの生活の質も向上する
業務効率と集中力が向上する
健康経営の取り組みは、従業員の身体的な健康状態を改善するだけでなく、仕事への集中力を高める効果があります。
健康経営によって期待できる効果には以下のようなものがあります。
- 適度な運動習慣による脳内の血流改善と集中力向上
- 適切な休憩時間の確保による疲労回復と業務効率の向上
- ストレス管理によるメンタル面での負担軽減
社内でのストレッチタイムの導入により、長時間のデスクワークによる体のこわばりがほぐれ、リフレッシュした状態で業務に取り組めるようになります。
職場満足度とモチベーションが高まる
健康経営の取り組みは、従業員の職場に対する満足度とモチベーションを大きく向上させます。
健康経営が職場満足度とモチベーション向上に与える影響には以下のようなものがあります。
- 健康への投資による「会社に大切にされている」という実感
- エンゲージメント(仕事への熱意や没頭度)の向上
- 労働環境の整備による働きやすさの向上
健康目標達成者を表彰する制度を設けることで、従業員は健康増進に取り組む意欲が高まるだけでなく、達成感や承認欲求も満たされます。
ワークライフバランスが実現する
健康経営の取り組みは、従業員のワークライフバランスの実現に大きく貢献します。
健康経営によるワークライフバランス実現のポイントには以下のようなものがあります。
- 柔軟な働き方(フレックスタイム制度やテレワークなど)の導入
- 長時間労働の是正と有給休暇取得の促進
- 仕事とプライベートの境界を明確にする文化の醸成
フレックスタイム制度を導入することで、子育て中の従業員は学校行事に参加しやすくなり、介護が必要な家族がいる従業員も、仕事と介護を両立させやすくなります。
健康寿命が延び長く活躍できる
健康経営の取り組みは、従業員の健康寿命を延ばし、長く活躍できる基盤を作ります。
健康経営による健康寿命延伸のアプローチには以下のようなものがあります。
- 定期的な健康診断と結果に基づく早めの対応
- 生活習慣病予防のための健康セミナーや保健指導
- 運動習慣の定着を促す取り組み
- 健康的な食生活の推進
栄養バランスについての情報提供や、社員食堂での健康的なメニューの提供は、従業員の食生活改善をサポートできるため、生活習慣病のリスクを減らすのに役立つでしょう。
職場の人間関係が改善する
健康経営の取り組みは、職場の人間関係の改善にも大きく貢献します。
健康経営による人間関係改善のポイントには以下のようなものがあります。
- 部署を超えた交流機会の創出
- 社内コミュニケーションの活性化
- ストレス軽減による穏やかな対人関係の構築
例えば、部署対抗のスポーツイベントを開催することで、普段の業務では交流の少ない従業員同士が一緒に活動する機会が生まれます。
プライベートの生活の質も向上する
健康経営の取り組みは、従業員の職場での健康だけでなく、プライベートの生活の質も大きく向上させます。
健康経営がプライベートの生活の質向上に与える影響には以下のようなものがあります。
- 健康的な生活習慣の定着による休日の充実
- 健康知識が家族へ広がる
- ワークライフバランス改善による自己啓発や趣味の時間確保
健康経営を通じて適度な運動習慣が身につくと、体力や持久力が向上し、休日のハイキングや子どもとの外遊びをより楽しめるようになります。
健康経営の注意点
健康経営は従業員の健康増進と会社の成長を両立させる素晴らしい取り組みですが、実践するときに気をつけるべき点がいくつかあります。
効果的な健康経営を実現するには、これらの注意点をよく理解して対処することが大切です。ここでは、健康経営を進める上で特に気をつけるべきポイントについて詳しく説明します。
- 形だけの取り組みでは効果が出ない
- 参加率が低いと全体効果が限られる
- 従業員間で健康への関心に差が出やすい
- 担当者交代や予算削減で継続が困難になる
- 業種に合わない施策を選ぶと効果が出ない
- 一度に多くの施策を導入すると失敗しやすい
-
投資効果の可視化が難しい
形だけの取り組みでは効果が出ない
健康経営の取り組みを始めたものの、実際には形だけで終わってしまい、期待した効果が得られないことがあります。
形だけの取り組みを避けるためには、以下のポイントに注意しましょう。
- 経営者自身が健康経営の重要性を理解し、積極的に参加する
- 会社の特徴や従業員の健康状態に合わせた取り組みを選ぶ
- 目に見える活動だけでなく、働き方や職場環境の改善も行う
健康セミナーを開いたり、フィットネスジムの利用料を補助したりしても、それが従業員のニーズや会社の課題と合っていなければ、「やった感」だけで終わってしまいます。まずは従業員の健康状態や働き方の実態をよく調べ、会社の特徴に合った取り組みを考えることが大切です。
参加率が低いと全体効果が限られる
健康経営の取り組みを始めても、従業員の参加率が低ければ、期待した効果を得ることは難しいでしょう。
参加率を高めるためには、以下のような工夫が効果的です。
- アンケートなどで従業員の健康に関する関心事を把握する
- 業務時間内に参加できる仕組みを作る
- 短時間で気軽に参加できるプログラムを用意する
- 楽しみながら参加できる要素(ゲーム性など)を取り入れる
昼休みに15分間のストレッチタイムを設けると、忙しい従業員でも参加しやすくなります。また、部署対抗のウォーキングイベントを開催すれば、チームの一体感も生まれ、自然と参加率が高まるでしょう。
従業員間で健康への関心に差が出やすい
健康経営を進める上での課題の一つに、従業員間での健康への関心の差があります。
健康への関心の差に対処するためには、以下のようなアプローチが有効です。
- 従業員の健康意識の実態を詳しく調査する
- 健康への関心が低い層に焦点を当てた啓発活動を行う
- 健康の重要性を分かりやすく伝える工夫をする
- 健康への取り組みを楽しく、気軽に始められるようにする
健康に関心が低い人向けに、健康状態が仕事のパフォーマンスや将来の生活にどう影響するかを、グラフや事例を使って分かりやすく示すと効果的です。
担当者交代や予算削減で継続が困難になる
健康経営の取り組みを長く続けることは、思った以上に難しい課題です。特に、担当者が変わったり予算が減ったりすると、健康経営の継続が難しくなることがあります。
継続的な取り組みを実現するためには、以下のポイントに注意しましょう。
- 健康経営の理念や目的を文書にして社内で広く共有する
- 特定の担当者だけに頼らず、複数の部署で分担する体制を作る
- 健康経営の効果を数字で示し、経営層に理解してもらう
- 外部のリソース(健康保険組合や地域の医療機関など)を活用する
担当者が変わっても取り組みの本質が失われないよう、健康経営の理念や具体的な施策内容をマニュアル化しておくと良いでしょう。
業種に合わない施策を選ぶと効果が出ない
健康経営の施策を選ぶとき、自社の業種や職種の特徴を考えないと、期待した効果が得られないことがあります。
業種に合った施策を選ぶためには、以下のポイントを押さえましょう。
- 自社の従業員が直面している健康課題を正確に把握する
- 業種特有の健康リスクに対応した施策を選ぶ
- 勤務形態(シフト制など)に合わせた取り組みを考える
- 同業他社の成功事例を参考にする
例えば、デスクワーク中心の会社では、長時間座っていることによる健康リスクが高いため、定期的に立ち上がることを促すアプリの導入や、立ったまま行う会議の推奨などが効果的です。
一度に多くの施策を導入すると失敗しやすい
健康経営に熱心に取り組もうとするあまり、一度に多くの施策を導入してしまうケースがあります。
多くの施策を同時に導入する際の問題点と対策は以下の通りです。
- 従業員が何から始めればよいか分からず、どの施策にも十分に取り組めない状況を避けるため、段階的なアプローチを取る
- 各施策の効果を適切に測定・評価できなくなるため、優先順位の高い1〜2つの施策から始める
- 短期的な成果を求められるプレッシャーが生じるため、長期的な視点で取り組む重要性を経営層と共有する
従業員の運動不足が課題であれば、例えば社内ヨガ教室などを始め、定着してきたら次に栄養指導を追加するといった段階的なアプローチが効果的です。
投資効果の可視化が難しい
健康経営の大きな課題の一つが、投資効果の可視化の難しさです。健康経営は中長期的な取り組みであるため、短期間で効果を数値化することが難しいという特徴があります。
投資効果を可視化するためには、以下のような工夫が必要です。
- アウトプット指標(施策の取組状況や従業員の意識・行動変容)とアウトカム指標(最終的な目標指標)を区別して設定する
- 複数の指標を組み合わせて多角的に効果を測定する(健康状態、欠勤率、医療費、生産性、定着率など)
- 定量的な評価と定性的な評価を併用する(数値データと従業員の声の両方を収集)
健康経営の投資対効果を可視化するためのツールやサービスを活用することも一つの方法です。「健康上の理由による生産性・勤務時間の損失」「メンタルヘルス不調により休業した場合にかかる費用」「運動不足により将来かかる医療費」などの観点から経済的損失金額を算出することが可能になります。
健康経営を成功させるためのPDCAサイクル
健康経営を効果的に推進するためには、計画的かつ継続的な取り組みが不可欠です。そこで重要となるのが「PDCAサイクル」による改善の枠組みです。
PDCAサイクルとは、Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)の4つのステップを繰り返すことで、継続的な改善を図る手法です。
それでは、健康経営を成功させるためのPDCAサイクルの各ステップについて詳しく解説していきましょう。
- 現状分析と目標設定を行う
- 部門を超えた連携で施策を効果的に実行できる
- 定期的な効果測定で進捗を確認する
-
改善点を次のサイクルに活かす
現状分析と目標設定を行う
健康経営のPDCAサイクルを始める第一歩は、現状分析と明確な目標設定です。この段階では「今どこにいるのか」と「どこに行きたいのか」を明確にすることが重要になります。
目標設定の際に考慮すべきポイントには、以下のようなものがあります。
- 具体的で測定可能な目標を設定する
- 達成可能な現実的な目標にする
- 会社の経営方針と整合性を持たせる
- 期限を明確にする
「全社員の健康診断受診率を100%にする」「喫煙率を削減する」「運動習慣のある従業員の割合を増やす」といった具体的な目標を立てることで、取り組みの方向性が明確になり、効果測定もしやすくなります。
部門を超えた連携で施策を効果的に実行できる
健康経営の施策を効果的に実行するためには、人事部門だけでなく、様々な部門が連携して取り組むことが重要です。部門の壁を越えた協力体制があってこそ、全社的な健康経営の浸透が可能になります。
効果的な部門間連携のポイントには、以下のようなものがあります。
- 定期的な健康経営推進会議の開催
- 社内イントラネットでの情報発信
- 部門横断的なプロジェクトチームの結成
健康保険組合のデータと人事部門の勤怠データを組み合わせることで、より精緻な健康課題の分析が可能になります。
定期的な効果測定で進捗を確認する
この段階では、設定した目標に対する進捗状況を確認し、施策の効果を客観的に評価します。
効果測定では、定量的な指標と定性的な指標の両方を活用することが重要です。
効果測定に役立つ具体的な指標には、以下のようなものがあります。
- 健康診断の受診率や有所見率の変化
- 特定保健指導の実施率と改善率
- 喫煙率や運動習慣者の割合の変化
- 残業時間や有給休暇取得率の推移
- 従業員の健康意識や生活習慣の変化
効果測定の結果は、わかりやすく可視化し、経営層や管理職、従業員に適切にフィードバックすることが大切です。
改善点を次のサイクルに活かす
効果測定(Check)で得られた結果を基に、次のステップとして改善(Act)を行いますが、この段階では成功した取り組みを標準化し、課題のある部分を見直して、次のサイクルに活かします。
改善策を検討する際に考慮すべきポイントには、以下のようなものがあります。
- 現場の声を積極的に取り入れる
- 外部の事例や最新の健康経営の動向を参考にする
- 施策の内容やレベルを調整する
一例として栄養セミナーの参加率が低かった場合、開催時間や内容、告知方法などを見直し、より参加しやすい形に改善するといったことが考えられます。
健康経営と法令遵守・働き方改革との連携
健康経営と法令遵守・働き方改革は密接に関連しており、相互に補完し合う関係にあります。健康経営を推進するうえで、労働安全衛生法や労働基準法などの法令遵守は基本的な前提条件となります。
また、働き方改革と健康経営をセットで取り組むことで、相乗効果が生まれ、より大きな成果を上げることができるでしょう。
それでは、健康経営と法令遵守・働き方改革との連携について、具体的な方法を詳しく解説します。
- ストレスチェックと連動させると効果が高まる
- 長時間労働対策と組み合わせられる
- ハラスメント防止策と一体化できる
-
メンタルヘルス不調を早期に発見できる
ストレスチェックと連動させると効果が高まる
労働安全衛生法で義務付けられているストレスチェックを健康経営の取り組みと連動させることで、メンタルヘルス対策の効果を大きく高めることができます。
ストレスチェックの結果を健康経営の施策に活かす方法としては、以下のようなアプローチが効果的です。
特定の部署でストレス度が高い場合、その原因を探り、業務プロセスの見直しや人員配置の調整など、具体的な改善策を講じることが可能になります。
長時間労働対策と組み合わせられる
働き方改革の中核である長時間労働対策と健康経営を組み合わせることで、従業員の健康維持と生産性向上の両立が可能になります。
長時間労働対策と健康経営を効果的に組み合わせるポイントには、以下のようなものがあります。
- 労働時間の適正管理に加え、健康リスクを最小化するための独自基準を設ける
- 業務の効率化や生産性向上を「従業員の健康を守る」という視点で推進する
- フレックスタイム制度やテレワークなど柔軟な働き方を導入する
月の時間外労働が30時間を超えた従業員には産業医との面談を推奨するなど、法定基準よりも厳しい独自の基準を設ける方法もあります。
ハラスメント防止策と一体化できる
職場におけるハラスメント防止は法令遵守の観点から重要であるだけでなく、健康経営の実現にも不可欠な要素です。
ハラスメント防止と健康経営を一体化させる効果的な方法には、次のようなものがあります。
- ハラスメント防止研修と健康経営の研修を統合する
- ハラスメント相談窓口と健康相談窓口を連携させる
- 管理職研修で「部下の健康を守る」視点からハラスメント防止を伝える
従来のハラスメント防止研修では「してはいけないこと」に焦点が当てられがちですが、健康経営の視点を取り入れることで、「心理的安全性の高い職場づくりがなぜ重要か」「良好な人間関係が心身の健康や生産性にどう影響するか」といった、より本質的な理解を促すことができます。
メンタルヘルス不調を早期に発見できる
健康経営と法令遵守・働き方改革を連携させることで、従業員のメンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な対応を取ることが可能になります。
メンタルヘルス不調の早期発見に効果的なアプローチには、以下のようなものがあります。
- 産業医との積極的な連携(定期的な職場巡視や健康相談の機会を増やす)
- 法定基準より低い時間(例えば月45時間以上)で長時間労働者への面接指導を実施する
- 管理職向けのメンタルヘルス研修を充実させ、部下の不調サインに気づく感度を高める
産業医による定期的な職場巡視や健康相談の機会を増やすことで、メンタルヘルス不調のサインを早期に捉えることができます。
健康経営に関するよくある質問
健康経営に取り組む企業が増える中で、特に初めて導入を検討している企業は様々な疑問を持っていることでしょう。健康経営優良法人の認定要件や申請方法、従業員の健康データの取り扱い方、効果が表れるまでの期間など、知っておくべき重要なポイントは少なくありません。
ここでは、健康経営を推進する上で特によくある質問について、具体的かつ実践的な回答をご紹介します。
- 小規模企業でも健康経営優良法人になれますか?
- 健康経営優良法人になるための具体的な申請手順は?
- 従業員の健康データをどこまで収集して良いのですか?
-
健康経営の効果が表れるまでどのくらいの期間がかかりますか?
小規模企業でも健康経営優良法人になれますか?
小規模企業でも健康経営優良法人になることは十分可能です。
中小規模法人部門の認定数は年々増加傾向にあり、大規模法人部門を大きく上回っています。多くの中小企業が健康経営に積極的に取り組んでいる証と言えるでしょう。
まずは健康診断の受診率向上や、社内での健康情報の共有から始め、徐々に取り組みを広げていくことも可能です。
健康経営優良法人になるための具体的な申請手順は?
申請の流れは、以下のようなステップで進みます。
- 医療保険者の「健康宣言」に参加する
- 自社の取り組み状況を認定基準に照らして自主確認する
- 申請書に必要書類を添付し、健康保険組合へ提出する
- 日本健康会議「健康経営優良法人認定委員会」で審査を受ける
- 基準を満たしていると判断されれば認定される
協会けんぽの場合、支部によっては健康宣言に申し込むだけでなく、活動後に支部が所定する認定を受けないと申請ができないケースもあります。申請期間は毎年8月中旬から10月中旬までで、翌年3月に認定が完了するため、計画的な準備が大切です。
従業員の健康データをどこまで収集して良いのですか?
従業員の健康データの収集・管理については、法令に基づいた適切な取り扱いが求められます。労働安全衛生法では、企業が従業員の健康情報を収集・保管・使用するに当たっては、健康の確保に必要な範囲内で行い、適正に管理するための措置を講じなければならないと規定されています。
健康情報の適切な管理のためには、取扱規程を策定し、健康情報の取得・保管・利用・第三者提供の制限などについて明記することが重要です。
健康経営の効果が表れるまでどのくらいの期間がかかりますか?
効果が表れる時期の目安としては、以下のような傾向があります。
- 短期的効果(3〜6ヶ月):健康意識の向上、職場の雰囲気改善など
- 中長期的効果(1〜3年):健康診断結果の改善、医療費削減、生産性向上など
健康セミナーの開催後、従業員の間で健康に関する話題が増えるといった変化は比較的早く現れますが、生活習慣病のリスク低減など健康状態の根本的な改善には時間がかかるものです。効果の現れ方にも時間差があるため、焦らずに継続することが大切です。
健康経営を推進するメリットのまとめ
健康経営は、企業と従業員の双方に多くのメリットをもたらす戦略的な取り組みです。
企業側から見ると、従業員の生産性向上による業績改善、採用・教育コストの削減、人材の確保や定着率の向上など、経営面での具体的なメリットが期待できます。
一方、従業員にとっては、業務効率と集中力の向上、職場満足度とモチベーションの高まり、ワークライフバランスの実現など、仕事と生活の両面でポジティブな変化が生まれます。健康経営によって心身ともに良好な状態で働けるようになると、仕事のパフォーマンスが上がり、成果が出しやすくなるだけでなく、プライベートの充実にもつながるのです。
健康経営は単なるコストではなく、企業の未来への投資なのです。従業員の健康と企業の成長を両立させる健康経営の実践に取り組んでみませんか?きっと、価値ある変化が生まれるはずです。
優秀な人が辞めてしまう前のメンタルヘルスケアは産業医との連携が効果的です。またメンタル不調を未然に防止するためには健康相談窓口の設置も有効となります。「first call」なら産業医選任だけでなく、従業員の健康相談窓口の設置までご利用いただけます。