特定保健指導の進め方とは? 従業員の生活習慣病予防を実現
近年、がんや心疾患、脳血管疾患をはじめとする生活習慣病に起因する死亡率が増加しています。経済産業省 ヘルスケア産業課『「健康経営銘柄2018」及び「健康経営優良法人(大規模法人)2018」に向けて』によると、実際に医科診療費の3分の1以上が生活習慣病に関連した病気であることが分かっています。
このような生活習慣病の予防を目的として、高齢者の医療の確保に関する法律(以下、高齢者医療確保法)の第20条では、特定健康診査(以下、特定健診)の実施を義務づけています。
▼高齢者医療確保法第20条
保険者は、特定健康診査等実施計画に基づき、厚生労働省令で定めるところにより、四十歳以上の加入者に対し、特定健康診査を行うものとする。ただし、加入者が特定健康診査に相当する健康診査を受け、その結果を証明する書面の提出を受けたとき、又は第二十六条第二項の規定により特定健康診査に関する記録の送付を受けたときは、この限りでない。
引用元:e-GOV法令検索『高齢者の医療の確保に関する法律』
特定健診とは、40歳以上の医療保険加入者を対象に行うメタボリックシンドロームに着目した健診のことで、定期健康診断の健診項目にも含まれています。
また、従業員が自身の健康状態を把握して、必要なセルフケア・治療を促すために、特定健診の結果に応じて“特定保健指導”を受けてもらう必要があります。
しかし、特定保健指導の実施にあたって「どのように進めればよいか分からない」といった悩みを持つ担当者の方も少なくありません。今回は、特定保健指導とは何か、また企業で実施する際の進め方について解説します。
出典:経済産業省 ヘルスケア産業課『「健康経営銘柄2018」及び「健康経営優良法人(大規模法人)2018」に向けて』/厚生労働省『特定健診・特定保健指導について』/e-Gov法令検索『高齢者の医療の確保に関する法律』
特定保健指導とは
特定保健指導とは、特定健診の結果、生活習慣病のリスクが高い人に対して実施する保健指導のことです。
『高齢者医療確保法』第24条では、保険者による特定保健指導の実施が義務づけられています。医師や保健師、栄養管理士などの専門家が運動習慣・食生活・喫煙などの生活習慣に関する指導を行い、内臓脂肪を減少させて生活習慣病の予防・改善につなげることが目的です。
企業で特定健診を実施したあとは、健康状態に応じた特定保健指導の実施が必要です。最近では、重症化予防のために、メタボリックシンドロームに該当しない場合でも保健指導を行うケースもあります。
出典:e-Gov法令検索『高齢者の医療の確保に関する法律』/厚生労働省 e-ヘルスネット『特定保健指導の実際』/政府広報オンライン『がん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!』
企業における特定保健指導の進め方
特定保健指導は保険者に実施義務があります。企業としても円滑に特定保健指導が実施できるように、流れを把握して協力することが重要です。
ここでは、企業における特定保健指導の進め方について解説します。
①特定保健指導の対象者の選定
保険者は、特定健診の結果を基に、特定保健指導が必要な対象者を選定します。
対象者は、内臓脂肪蓄積の程度とリスク要因の数に着目して、リスクの高さや年齢に応じて判断されます。
以下の図のように、胸囲・血糖・脂質・血圧・喫煙歴等の健診結果から、起こり得る病気のリスクと程度を階層化します。
▼特定保健指導の対象者
画像引用元:厚生労働省『特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 3.2 版)』
なお、保険者から事業者または事業者が委託する健診機関に健診結果の共有を求められた場合は、情報を提供する必要があります。
出典:厚生労働省『特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 3.2 版)』
②健診結果の通知
保険者は、受診者に対して健診結果の内容を速やかに通知します。健診結果の内容を受診者に分かりやすく伝えることで、健康課題を自覚してもらい、生活習慣の改善に向けた行動に移すきっかけになることが期待されます。
また、受診者本人が保健指導機関に持参した結果通知を基に、支援計画の作成や保健指導等を行います。
特定保健指導の対象には該当しない場合でも、以下のような方には医療機関への受診勧奨、生活習慣病改善の支援を行うことが望ましいとされています。
▼特定保健指導の実施が望ましいとされる人
- 喫煙・食生活・身体活動などの生活習慣に問題あり、今後の悪化が懸念される人
- 検査データでは保健指導判定値以上だが、肥満でないため対象外となっている人
- 受診を勧奨されているが受診していない人
- 服薬中にもかかわらずコントロール不良の人
出典:厚生労働省『特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 3.2 版)』
③特定保険指導の実施
特定保健指導が必要とされる従業員に対して、動機付け支援・積極的支援を実施します。指導の内容は、加入する医療保険から案内が送付されます。
保健指導の具体的な取組みについては、血圧・血糖・脂質・喫煙歴のリスク程度に応じて、以下の3つに分けられています。
▼特定保健指導内容
判定 |
内容 |
具体例 |
①動機付け支援 |
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②積極的支援 |
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③情報提供 |
受診者全員に対して、生活習慣の見直しや改善に向けた情報を提供する |
出典:厚生労働省『特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 3.2 版)』/厚生労働省 e-ヘルスネット『特定保健指導の実際』/政府広報オンライン『がん検診&特定健診・特定保健指導の受診を!』
④行動計画の実績評価
特定保健指導の実施による効果を得られているか、実績評価を行います。
動機付け支援・積極的支援いずれの場合も、初回面接から3ヶ月以上経過後に、医師や保健師等による評価が必要です。実績評価の内容は、面接または電話、メールなどによって支援対象者に提供されます。
実績評価によって、従業員が生活習慣の改善点を把握して、自身による目標設定や具体的な行動を促すことが期待されます。
出典:厚生労働省『特定健康診査・特定保健指導の円滑な実施に向けた手引き(第 3.2 版)』
まとめ
この記事では、特定保健指導について以下の内容を解説しました。
- 特定保健指導の内容
- 特定保健指導の進め方
生活習慣病に起因する死亡率が高まっているいま、病気の早期発見・治療につなげるためには、従業員に対する特定健診と特定保健指導の実施が必要です。特定保健指導を実施することで、従業員のセルフケアを促して、健康状態に合わせた支援・アドバイスを行えるようになります。
ただし、生活習慣の改善には、運動や食事など日ごろの行動改善も欠かせません。医師・保健師による保健指導だけでなく、従業員の自己管理能力をサポートできるような社内体制が求められます。
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