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企業の安全配慮義務とは? 違反を防止する取組みについて解説

近年、業務における心理的負荷により発病したとされる精神障がいの労災請求件数が増加しています。また、過労による脳・心臓疾患を抱えている方も少なくありません。

このような労働災害を防ぎ、従業員が安全で働きやすい労働環境をつくるために、企業には“安全配慮義務”が課せられています。

人事・総務担当者は、安全配慮義務の法令や罰則などについて把握するとともに、安全配慮義務を遵守する取組みを講じることが必要です。

本記事では、安全配慮義務と罰則、違反防止に向けた取組みについて解説します。

出典:厚生労働省『令和2年度 我が国における過労死等の概要及び政府が過労死等の防止のために講じた施策の状況


目次[非表示]

  1. 1.安全配慮義務とは
  2. 2.安全配慮義務に違反した場合の罰則
  3. 3.安全配慮義務違反を防ぐ4つの取組み
    1. 3.1.①労働時間や働き方の見直し
    2. 3.2.②社内相談窓口の設置
    3. 3.3.③教育・研修の実施
    4. 3.4.④産業医との個人面談の実施
  4. 4.まとめ


安全配慮義務とは

安全配慮義務とは、従業員が安全かつ健康に働けるように配慮することです。『労働契約法』第5条において、以下のように使用者に義務付けられています。


▼労働契約法第5条

使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。

引用元:e-Gov法令検索『労働契約法


企業が安全配慮義務を果たすためには、労働災害を起こす危険や健康問題の予知・発見、労働災害リスクの回避・予防といった対応が求められます。また、快適な職場環境を形成するための措置を講じるのも、安全配慮義務の一つとして挙げられます。

労働安全衛生法では、使用者が講じる措置として以下を挙げています。


▼仕事に起因する事故や病気を防ぐための措置

  • 医師による健康診断
  • メンタルヘルス対策


▼快適な職場環境を形成するための措置

  • 職場のパワーハラスメントの防止
  • 空気の汚れ、臭気、温度など、作業環境の適切な管理
  • 仕事における心身の負担を軽減するための作業方法の改善
  • 疲労回復を目的とした施設の整備
  • トイレ・洗面所など職場生活支援施設の清潔保持・整備

出典:e-Gov法令検索『労働契約法』/厚生労働省『快適職場』『労働条件・職場環境に関するルール



安全配慮義務に違反した場合の罰則

一方、企業が安全配慮義務に違反した場合の罰則は定められていません。ただし、民法上の損害賠償責任が問われる可能性があるため、注意が必要です。損害賠償が請求される可能性がある内容として、以下の法令が挙げられます。


▼債務不履行による損害賠償(民法第415条)

債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

引用元:e-Gov法令検索『民法


債務不履行による損害賠償とは、債務者がその債務を履行しない場合に、債権者が損害賠償を請求できるという法律です。安全配慮義務は、民法上の労働契約等に基づく使用者の債務とされています。

安全配慮義務に違反しないようにするには、安全衛生管理体制の整備や健康診断の実施をはじめ、使用者に適切な労働環境を提供・管理することが重要です。

出典:e-Gov法令検索『民法



安全配慮義務違反を防ぐ4つの取組み

従業員の健康・安全を確保するために、法令で定められた健康診断の実施や労働時間などを守ることは基本の取組みといえます。

また、快適かつ風通しがよい職場環境をつくるには、リスクを早期発見して予防措置を行えるような体制が必要です。ここからは、安全配慮義務に違反しないための取組みについて解説します。


①労働時間や働き方の見直し

過労による労働災害を防ぐためには、長時間労働の削減や多様な働き方の導入などの取組みが必要です。

労働時間を適切に管理する、またワークライフバランスに配慮した働き方を導入することで、従業員の心身の健康を維持して、過労死防止につながります。


▼労働時間や働き方を見直す方法

  • 労働時間をタイムカードやICカードで記録し管理する
  • 従業員にも36協定の内容を周知する
  • 計画的な年次有給休暇の取得を促す
  • テレワークや短時間勤務など新しい働き方を導入する

出典:厚生労働省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準』『時間外労働の上限規制 わかりやすい解説』『短時間勤務等の措置について』『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン


②社内相談窓口の設置

従業員が就業上のトラブルや職場の人間関係について相談できる窓口を社内に設置することも、安全配慮義務違反を予防する有効な取組みの一つです。

個別相談窓口の設置により、現状課題を把握して、業務改善や配置転換、休業など適切な解決策を講じられます。


▼社内相談窓口を設置する際のポイント

  • プライバシーに配慮した、従業員が相談しやすい環境を整える
  • メールや電話などでも相談できるようにする
  • 相談窓口の担当者にマニュアルを周知して研修を行う
  • 相談窓口について社内報や掲示板等で従業員に周知する

ただし、単に相談を受けるだけでは事業者の義務を果たしていないと捉えられる場合もあるため、相談を受けた際は放置せずに迅速に対応することが重要です。

出典:厚生労働省『職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!


③教育・研修の実施

従業員・管理者に対して、労働災害やハラスメントに関する教育・研修を実施することも有効です。

労働災害やハラスメントに対する認識を深めて、従業員の意識を高めることで、自主的な行動を促せるようになります。その結果、職場におけるハラスメントの抑制や、事故・病気の防止につながることが期待できます。


▼教育・研修の実施方法

  • 業務上発生する事故や病気のリスクについて研修を行う
  • 業務の作業方法や手順について教育する
  • 産業医のもと、健康教育や衛生教育を行う
  • 従業員へのメンタルヘルス研修を実施する
  • 上司や管理者向けのハラスメント研修を実施する

出典:厚生労働省『労働災害防止のために


④産業医との個人面談の実施

従業員が自身の健康状態や職場の衛生環境について相談できるように、産業医と個人面談ができる環境を整備することも重要です。

従業員の健康状態や働き方の実態を把握できるとともに、医学的な立場から適切な健康管理、就業上の措置を行えるようになります。


▼産業医による個人面談での対応

  • 健康診断結果に関する相談
  • 持病・病気の治療と仕事の両立に対する相談
  • 長時間労働者への面接指導
  • 従業員による休職・復職の相談、事業者への就業可否のアドバイス

なお、『労働安全衛生法』第13条・第13条の2では、従業員50人未満の企業には産業医の選任義務はありませんが、医師等に相談できる体制をつくることが努力義務とされています。

出典:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』/厚生労働省『中小企業事業者の為に産業医ができること



まとめ

この記事では、企業の安全配慮義務について以下の内容を解説しました。

  • 安全配慮義務とは何か
  • 安全配慮義務に違反した場合の罰則
  • 安全配慮義務違反を予防するための取組み

企業には、従業員が安全かつ健康で働けるように安全配慮義務が課されています。さまざまなリスクを防ぐためには、法令で定められた健康診断や労働時間を守るとともに、快適で働きやすい職場環境づくりが求められます。

具体的な取組みとして、労働時間や働き方の見直し、相談窓口の設置、教育・研修の実施、産業医による個人面談の実施などが挙げられます。

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