ストレスチェック制度の8つの規程とは?従業員のメンタルヘルス不調を防ぐ方法を解説
厚生労働省が実施した『令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』によると、仕事や職業生活で強い不安・ストレスを感じている労働者は54.2%を超えているという結果が出ています。
仕事に起因する精神障害で労災認定されるケースも増加傾向にあることから、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ取組みが求められています。
その取組みの一つとして法律で定められているのが“ストレスチェック制度”です。この記事では、ストレスチェック制度の8つの規程について解説します。
出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』『令和2年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況』
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ストレスチェックとは
ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を検査する制度です。労働安全衛生法第66条10において、従業員50人以上の事業場では、1年に1回の実施が義務づけられています。
この制度は、従業員に対してストレスへの気付きを促すとともに、職場環境の改善を図り、メンタルヘルス不調を未然に防ぐことを目的としています。
実施の大枠の流れは以下のとおりです。
▼実施の流れ
- ストレスに関する質問票を従業員に記入してもらう
- ストレス状況の評価・医師の面接指導の要否の判定
- ストレスチェックの結果を基に面接指導や集団分析を行う
ストレスチェックの結果、ストレスが高いと判断された従業員から申し出があった場合は、面接指導を行う必要があります。その後、産業医の意見を踏まえつつ、労働時間の短縮や就業場所の変更など、必要な措置を講じます。
なお、ストレスチェックは医師や保健師等により実施されますが、産業医を選任している企業においては、産業医が実施者となることが望ましいとされています。また、従業員が50人未満の事業場は、ストレスチェックの実施が努力義務ですが、メンタルヘルス不調を未然に防ぐためにも実施が望ましいとされています。
ストレスチェックの対象となる従業員は、以下のとおりです。
▼ストレスチェックの対象者
- 常時50人以上が働く事業場の従業員
- 一定要件を満たすアルバイトやパートタイム労働者
アルバイトやパートタイム労働者の対象範囲については、こちらの記事をご確認ください。
出典:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』/厚生労働省『ストレ スチェック制度導入マニュアル』『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』
ストレスチェック制度の8つの規程
ストレスチェックを円滑に進めるためには、実施体制や実施方法、役割分担などの社内規程を作成して、従業員に周知しておく必要があります。
厚生労働省の“ストレスチェック制度実施規程”の例を参考に、企業の実態に合わせて内容を検討するとよいでしょう。
ストレスチェックの実施プログラムは、こちらからダウンロードできます。
①目的・変更手続き・周知
ストレスチェック制度実施規程の目的や変更に関する内容、従業員への周知方法について定めます。
規程の目的 |
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適用範囲 |
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制度の趣旨の周知 |
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出典:厚生労働省『ストレスチェック制度実施規程(例)』
②実施体制
ストレスチェックの実施にあたって誰が何を担当するか、社内担当者や実施者、事務従事者に関する内容を規定します。規定する項目の例は以下のとおりです。
担当者 |
実施計画の策定・計画について管理する者 |
実施者 |
会社の産業医・保健師など |
事務従事者 |
実施日程の調整・連絡、調査票の配布・回収、データ入力等の各種事務処理を行う担当者 |
面接指導の実施者 |
会社の産業医 |
出典:厚生労働省『ストレスチェック制度実施規程(例)』
③実施方法
ストレスチェックの実施方法や面接指導に関する内容について規定します。規定する項目例は以下のとおりです。
ストレスチェック |
ストレスチェックの実施期間 |
部署ごとの受検期間 |
対象者 |
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受検方法 |
ありのままの回答を求める |
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調査票および方法 |
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評価方法・高ストレス者の選定方法 |
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結果の通知方法 |
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セルフケア |
結果に基づいたセルフケアを行う |
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会社への情報提供 |
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賃金の取扱い |
受検に要する時間は業務時間として扱う |
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面接指導 |
申し出の方法 |
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実施方法 |
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医師の意見聴取方法 |
面接指導から30日以内に、結果報告・意見の提出を求める |
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面接指導後の措置 |
産業医の意見のもと、人事労務担当者が就業上の措置を行う |
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賃金の取扱い |
面接指導に要する時間は業務時間として扱う |
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集団ごとの集計・分析 |
対象となる集団 |
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集計・分析方法 |
マニュアルに基づいて集計・分析する |
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分析結果の利用方法 |
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出典:厚生労働省『ストレスチェック制度実施規程(例)』
④記録の保存
ストレスチェック結果の記録・保存といった業務に従事する担当者や、保存方法・期間などについて規定します。
記録の保存担当者 |
実施事務従事者として規定されている衛生管理者 |
保存期間・保存場所 |
社内サーバへの5年間の保存 |
セキュリティの確保 |
社内サーバへのアクセス制限、パスワード管理 |
保存方法 |
ストレスチェックの結果、集団ごとの集計・分析結果、面接指導結果の記録の社内保存 |
出典:厚生労働省『ストレスチェック制度実施規程(例)』
⑤情報管理
従業員の個人情報保護やプライバシー確保の観点から、ストレスチェックの結果に関わる情報を共有する範囲について規定します。
ストレスチェック結果 |
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面接指導結果 |
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分析結果 |
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健康情報 |
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出典:厚生労働省『ストレスチェック制度実施規程(例)』
⑥情報開示、訂正、追加および削除と苦情処理
ストレスチェックに関して、従業員から情報開示・苦情があった場合の受付方法や、社内の守秘義務について規定します。
情報開示の手続き |
所定の様式・提出方法・提出先 |
苦情申し立ての手続き |
所定の様式・提出方法・提出先 |
守秘義務 |
情報開示や苦情申し立てに対応する社員は守秘義務を負うこと |
出典:厚生労働省『ストレスチェック制度実施規程(例)』
⑦不利益な取扱いの防止
ストレスチェック制度に関して、従業員に不利益な取扱いを行わないことを規定します。
▼不利益な取扱いを行わないことに関する規定
- 就業上の措置として、以下を理由に不利益な取扱いを行わないこと
例)・従業員が医師による面接指導を申し出た、または申し出なかった
・ストレスチェックの結果を提供した、または拒否した - 産業医による面接指導や意見聴取を適切に行わない、従業員の実情を考慮しないなどの不利益な取扱いを行わないこと
- 労働関係法令に違反しないこと
- 解雇や契約更新の拒否、退職勧奨、不当な配置転換・職位変更などを行わないこと
出典:厚生労働省『ストレスチェック制度実施規程(例)』
⑧附則
作成したストレスチェック制度の規程を施行する日を記載します。
施行期日 |
年月日の記載:○年○○日○○日から施行する |
出典:厚生労働省『ストレスチェック制度実施規程(例)』
まとめ
この記事では、ストレスチェックの規程について以下の項目で解説しました。
- ストレスチェックとは何か
- ストレスチェック制度の8つの規程
ストレスチェックに関する社内規程の作成は義務ではありませんが、トラブル防止やプライバシー保護の観点からも詳細を取り決めておくことが必要です。
ストレスチェック結果の取扱いや共有範囲について明文化しておくことで、従業員の不安を解消して、スムーズに受検を促せます。
結果に基づいて適切な健康管理・措置を行うためには、ストレスチェックの結果管理や集団分析、産業医との円滑な連携も重要です。
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