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衛生管理者とは? 業務内容や企業の選任基準についてわかりやすく解説

企業には、従業員が安全かつ健康に働けるような職場環境づくりに向けた取組みが求められます。そのなかの一つに、“衛生管理者の設置”があります。従業員が一定数いる企業には設置することが法律で定められています。

しかし、「衛生管理者ってどういう業務?」「どのように選定すればいいの?」と、衛生管理者について把握できていない担当者の方もいるのではないでしょうか。

従業員が働きやすい職場環境づくりに向けて、衛生管理者の設置義務を守るとともに、業務内容や選任基準について理解しておくことが重要です。

本記事では、衛生管理者とは何か、業務内容や企業における選任基準についてわかりやすく解説します。


目次[非表示]

  1. 1.衛生管理者とは
  2. 2.衛生管理者の業務内容
  3. 3.衛生管理者の選任基準
    1. 3.1.衛生管理者の選任数
    2. 3.2.業種別の資格者
    3. 3.3.特定事業場の選任要件
  4. 4.まとめ


衛生管理者とは

衛生管理者とは、衛生的な職場環境を確保することを職務とする専門家です。『労働安全衛生法』第12条第1項で、事業場の規模に応じて設置することが定められています。

職場の設備や作業方法、衛生状態などに危険がないかチェックして、従業員の健康問題を防止することが主な役割です。

衛生管理者は、職場の安全衛生管理体制を整備するために、常時50人以上の労働者を使用する事業場において、産業医とともに選任が義務付けられています。また、衛生管理者は誰でもよいという訳ではなく、業種に応じた資格が必要です。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『衛生管理者』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』/厚生労働省『衛生管理者について教えて下さい。



衛生管理者の業務内容

衛生管理者は、職場における作業管理や従業員の健康管理、労災防止対策などのうち、衛生に関する技術的な措置・管理を行います。

衛生に関する技術的な措置・管理としては、以下のような業務が挙げられます。


▼衛生管理者の業務内容

  • 健康に異常がある従業員の発見・処置
  • 作業環境における衛生上の調査
  • 作業条件・施設などの衛生上の改善
  • 労働衛生保護具・救急用具等の点検・整備
  • 衛生教育・健康相談・労働者の健康保持に関する必要な取組み
  • 労働者の負傷・疾病、それによる死亡、欠勤・移動に関する統計の作成
  • ほかの事業の労働者と同じ場所で作業する際の衛生に関する措置
  • 衛生日誌の記載、職務上の記録の整備
  • 安全衛生に関する方針の表明
  • 特定業務に関する危険性・有害性の調査・措置
  • 安全衛生に関する計画の作成・実施・評価・改善


また、衛生管理者は、少なくとも週1回の職場巡視が必要です。職場巡視の結果、職場の衛生状態が安全・健康に影響を及ぼすリスクがある場合には、適切な措置を講じることが求められます。

さらに、事業者は選任した衛生管理者に対して、衛生に関する技術的な措置・管理を行わせるための権限付与が必要です。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『衛生管理者』/厚生労働省『衛生管理者について教えて下さい。



衛生管理者の選任基準

衛生管理者は、事業場の規模に応じて選任数が定められています。衛生管理者には4つの資格区分があり、事業場の業種に応じて選任します。


衛生管理者の選任数

常時50人以上の従業員を使用している場合は、従業員数に応じて1〜6人以上の衛生管理者の選任が必要です。


▼衛生管理者の選任数

職場の従業員数
衛生管理者の選任数
50人以上~200人以下
1人以上
200人超~500人以下
2人以上
500人超~1,000人以下
3人以上
1,000人超~2,000人以下
4人以上
2,000人超~3,000人以下
5人以上
3,000人超
6人以上


ただし、従業員数が10人以上50人未満の場合は衛生管理者の設置は不要ですが、代わりに“衛生推進者”の選任が求められます。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『衛生管理者』/厚生労働省『衛生管理者について教えて下さい。』『安全衛生推進者(衛生推進者)について教えて下さい。


業種別の資格者

企業の業種に応じて、資格を持つ衛生管理者を選任する必要があります。

衛生管理者として選任できるのは、都道府県労働局長の免許を受けた者のほか、医師・歯科医師・労働衛生コンサルタントなどが挙げられます。

衛生管理者として業務に従事できる資格の区分は、以下のとおりです。


▼衛生管理者の資格区分

  1. 第一種衛生管理者免許
  2. 第二種衛生管理者免許
  3. 衛生工学衛生管理者免許
  4. 労働安全衛生規則』第10条の各号に掲げる者(医師・歯科医師・労働衛生コンサルタント・厚生労働大臣の定める者)

また、企業の業種に応じて、以下の資格を有した衛生管理者を選任する必要があります。


▼業種ごとの必要資格

業種
資格
農林畜水産業、鉱業、建設業、製造業(物の加工を含む)、電気業、ガス業、水道業、熱供給業、運送業、自動車整備業、機械修理業、医療業、清掃業
  • 第一種衛生管理者免許
  • 衛生工学衛生管理者免許
  • 労働安全衛生規則』第10条の各号に掲げる者
上記以外の業種
  • 第一種衛生管理者免許
  • 第二種衛生管理者免許
  • 衛生工学衛生管理者免許
  • 労働安全衛生規則』第10条の各号に掲げる者

厚生労働省 職場のあんぜんサイト『衛生管理者』を基に作成


第二種衛生管理者免許のみを取得している衛生管理者は、農林畜水産業や製造業、建設業などでは選任できないため、注意が必要です。

出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『衛生管理者』/厚生労働省『衛生管理者について教えて下さい。


特定事業場の選任要件

特定の業務を行う事業場で、なおかつ従業員数が一定数を超える場合には、衛生管理者の選任要件が設けられています。


▼従業員500人以上の事業場

坑内労働、または以下の業務に常時30人以上を従事させる場合は、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者の免許を受けた人にする必要があります。


▽該当業務

一 多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

三 ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

四 土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

五 異常気圧下における業務

九 鉛、水銀、クロム、砒ひ素、黄りん、弗ふつ素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫  酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

引用元:『労働基準法施行規則』第18条1号、3号~5号、9号


▼従業員1,000人以上の事業場

坑内労働、または以下の業務に常時30人以上を従事させる場合は、衛生管理者のうちの少なくとも1人を専任の衛生管理者とする必要があります。


▽該当業務

一  多量の高熱物体を取り扱う業務及び著しく暑熱な場所における業務

二  多量の低温物体を取り扱う業務及び著しく寒冷な場所における業務

三  ラジウム放射線、エックス線その他の有害放射線にさらされる業務

四  土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務

五  異常気圧下における業務

六  削岩機、鋲(びよう)打機等の使用によつて身体に著しい振動を与える業務

七  重量物の取扱い等重激なる業務

八  ボイラー製造等強烈な騒音を発する場所における業務

九  鉛、水銀、クロム、砒(ひ)素、黄りん、弗(ふつ)素、塩素、塩酸、硝酸、亜硫酸、硫酸、一酸化炭素、二硫化炭素、青酸、ベンゼン、アニリン、その他これに準ずる有害物の粉じん、蒸気又はガスを発散する場所における業務

十  前各号のほか、厚生労働大臣の指定する業務

引用元:『労働基準法施行規則』第18条


出典:厚生労働省 職場のあんぜんサイト『衛生管理者』/e-Gov法令検索『労働基準法施行規則



まとめ

この記事では、企業が選任する衛生管理者について以下の内容を解説しました。

  • 衛生管理者とは何か
  • 衛生管理者の業務内容
  • 衛生管理者の選任基準

衛生管理者は、職場の安全や従業員の健康を確保するために、衛生面から職場環境を管理する役割を担います。

企業では、法令で定められた選任基準を遵守するとともに、衛生管理者が職場巡視などの措置を行えるように、業務権限の付与やサポートをすることが重要です。

また、従業員50人以上の事業所では、衛生管理者と同様に産業医の選任が義務付けられています。

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