オフィスや作業場での熱中症予防策とは?会社が暑すぎる時の対応を解説
夏の時期における職場の安全衛生管理の一つに、熱中症対策が挙げられます。
熱中症は屋外で発生するイメージがありますが、室内での発生も見られるため、オフィス・作業場で働く従業員にとってもリスクは存在します。
職場での熱中症対策を講じるとともに、熱中症が疑われる従業員への対処方法について社内共有しておくことが重要です。
この記事では、熱中症の発生状況をはじめ、オフィス・作業場での熱中症対策、対処方法について解説します。
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熱中症の発生状況
総務省の調査によると、2021年5〜9月の熱中症による救急搬送人員は、累計47,877人でした。
熱中症の発生が多かった場所は以下の3つです。
▼【発生場所別】熱中症による救急搬送状況(2021年)
- 住居:39.4%
- 道路:17.5%
- 仕事場①(※):11.2%
画像引用元:総務省『令和3年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況』
これらの結果から、熱中症は屋外だけでなく住居や劇場、飲食店、病院などの屋内でも発生するリスクがあることが分かります。
※仕事場①とは道路工事現場、工場、作業所等のこと。
出典:総務省『令和3年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況』
職場における熱中症の発生状況
熱中症は職場でも発生しています。厚生労働省の『令和3年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況(速報値)』によると、職場での熱中症による死傷者数は2021年で547人でした。そのうち20人が死亡しています。
画像引用元:厚生労働省『令和3年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況』
さらに、熱中症による業種別死傷者数の割合は、2021年速報値で建設業・製造業が全体の約4割を占めました。
画像引用元:厚生労働省『令和3年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況』
特に、入社直後や夏季休暇明けの従業員は、暑熱環境下での作業に身体の体温調節・循環の機能が慣れていない場合もあるため、熱中症にかかりやすい状態といえます。
実際に、入社直後や夏季休暇明けで暑熱順化が不十分と見られる事例や、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)基準値に応じた措置が講じられていなかった事例もあります。
オフィス・作業場では、作業環境を把握して、身体の負担にならないような作業計画・作業指示を行うことが望まれます。
出典:厚生労働省『令和3年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況』『令和2年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します』『令和4年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します』
オフィス・作業場での熱中症対策
オフィス・作業場では、環境や作業内容に応じた熱中症対策を講じることが重要です。ここでは、具体的な熱中症対策を5つ紹介します。
①WBGT値の測定
WBGT値とは、気温・湿度・風速・輻射(放射)熱を考慮した、暑熱環境によるストレスを評価する暑さの指数のことです。
オフィス・作業場ごとにWBGT値を測定して、熱中症のリスクに応じた作業環境・健康管理を行うことが熱中症対策の一つとなります。
WBGT値の基準値は運動や作業の度合いに応じて定められており、測定したWBGT値が基準値を超える場合は、熱中症の発生リスクが高いと考えられます。
画像引用元:環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』
日ごろから職場内のWBGT値を測定して、数値に応じてこまめな休憩や作業中止などを検討することが大切です。
WBGT値を測定する際は、日本産業規格JIS Z 8504、またはJIS B 7922に適合したWBGT指数計で計測するとともに、日射下では黒球のついたものを使用してください。
出典:環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』/厚生労働省『熱中症を防ぎましょう』『令和4年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」を実施します』
②環境管理設備の導入
高温多湿を避けることも熱中症対策の一つの方法です。温湿度の管理や風通しをよくする環境管理設備を導入することで、オフィス・作業場が高温多湿になるのを防ぐことができます。
環境管理設備の導入には、以下のような方法が挙げられます。
▼環境管理設備の導入例
- 扇風機やエアコンを設置して温湿度を調整する
- 遮光カーテンやすだれを設置して室温の上昇を防ぐ
出典:環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』/厚生労働省『熱中症を防ぎましょう』
③休憩場所の整備
熱中症の予防には、水分補給やこまめな休憩が欠かせません。
オフィス・作業場では、従業員が水分補給や体温管理を行えるように、涼しく快適な休憩場所を整備します。
▼休憩場所の整備例
- 休憩室の温度をエアコンで調整する
- 休憩室に飲料水や氷、保冷剤、塩飴等を用意する
出典:環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』/厚生労働省『熱中症を防ぎましょう』
④服装の検討
業務内容や作業環境に応じて、従業員が着用する服装・作業着を見直すことも大切です。通気性がよく吸湿性・速乾性のある衣服を着用することで身体の蓄熱を避けられます。
また、気温・湿度の高い環境でマスクをすると、熱中症のリスクが高まるため注意する必要があります。コロナ禍では、作業環境や作業負荷に応じてマスクを外すことや適切な飛沫飛散防止器具を選択することも重要です。
▼服装・マスク着用の見直し例
- ファン付きの作業着の導入
- 通気性のよい衣類や帽子の導入
- マスクを外してもよい場所、または着用を厳守する場所の周知
- マスクを外して作業ができるよう、作業計画や作業方法を見直す
出典:環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』/厚生労働省『熱中症を防ぎましょう』『令和4年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の概要』『令和2年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します』/政府広報オンライン『熱中症は予防が大事!「3密」を避けながら、十分な対策をとりましょう』
⑤健康状態の確認
業務開始前には、従業員の健康状態を確認することも欠かせません。熱中症にかかりやすい従業員には、作業の配置替えを検討する必要があります。
業務開始前に健康状態を確認するチェック項目は、以下のとおりです。
画像引用元:環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』
熱中症にかかりやすい従業員にウェアラブルデバイスで健康管理を行うことも熱中症対策となります。
また、健康診断結果を基に、熱中症にかかりやすい疾病を有する従業員については、医師等の意見を踏まえて業務上の配慮を行うことが重要です。
出典:環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』/厚生労働省『令和4年「STOP!熱中症 クールワークキャンペーン」の概要』
熱中症が疑われる従業員への対処方法
めまいや頭痛、吐き気など、熱中症の症状が見られる従業員には、適切な措置をとるとともに、状況に応じて救急車を要請します。熱中症の発見や対応が遅れると、容態が悪化するリスクがあるため、迅速な対応が求められます。
厚生労働省『令和3年 職場における熱中症による死傷災害の発生状況』によると、熱中症の自覚症状が出てからすぐ病院に行っているケースでは、休業見込み期間が比較的短くなっていることが報告されています。体調不良を訴える従業員には、早期の対処が重要です。
熱中症が疑われる場合は、以下の措置をとります。
画像引用元:厚生労働省『熱中症が疑われる人を見かけたら』
自力で水分補給ができない、また意識がない場合には、速やかに救急車を呼ぶ必要があります。
また、社内での対応を迅速に行うため、近くの病院や緊急時の対応について、従業員・管理者に周知しておくことも重要です。
出典:厚生労働省『熱中症が疑われる人を見かけたら』/環境省『熱中症 環境保健マニュアル2022』
まとめ
この記事では、オフィス・作業場における熱中症対策について、以下の項目で解説しました。
- 熱中症の発生状況
- 職場における熱中症の発生状況
- オフィス・作業場での熱中症対策
- 熱中症が疑われる従業員への対処方法
熱中症は屋外だけでなく、屋内でも発生します。特に建設業・製造業においては、職場での熱中症による死傷者数の割合が約4割を占めている状況です。
オフィス・作業場での熱中症を防ぐには、WBGT値を測定するとともに、環境管理設備や休憩場所の確保、服装の見直し、健康状態の確認などの対策が求められます。
従業員に不調の傾向が見られる場合は、医師の意見を聞いたうえで人員配置を見直すことも重要です。
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