事業所が行わなければいけない社会保険の手続きとは?入社や退社などケース別で申請方法を解説
従業員の入退社や住所変更があった場合は、社会保険の手続きが必要です。
社会保険の手続きは、保険料の支払いや年金の受給にも関わるため、定められた期限までに適切な処理を行うことが求められます。
しかし、社会保険の種類によって必要な届出や書類が異なるため、「具体的な手続きの進め方が分からない」「手続きが漏れていた」といった悩みを持つ担当者の方も多いのではないでしょうか。
この記事では、人事・総務担当者の方に向けて、従業員の社会保険の手続きについて解説します。
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社会保険とは
社会保険とは、医療保険・年金保険・雇用保険・労災保険・介護保険といった社会保障制度の総称です。
そのうち、医療保険にあたる健康保険、年金保険にあたる厚生年金保険の2つを社会保険と呼ぶこともあります。ここでは、健康保険と厚生年金保険の2つに絞って解説します。
▼健康保険
事業所に勤めている従業員は、国民健康保険に代わって健康保険に加入します。健康保険に加入することで、病気やケガになった場合の手当・給付が充実します。
▼厚生年金保険
事業所に雇用されている従業員は、国民年金に加えて、厚生年金保険に加入します(国民年金を基礎年金とした2階建て構造)。国民年金のみの場合と比べて、将来受け取れる年金額が増加します。
健康保険・厚生年金保険は、以下の取扱い期間によって運営されています。
健康保険 |
健康保険組合 |
厚生労働大臣の許可を得た独自の組合で、企業単位または業界単位で設立・運営を行う |
全国健康保険協会
(協会けんぽ)
|
全国健康保険協会が運営 |
|
各種共済組合 |
公務員・私立学校教職員が対象 |
|
厚生年金 |
日本年金機構 |
厚生労働大臣から委任・委託を受けて、公的年金に係る一連の運営業務を担う |
また、以下の要件を満たす事業所では、社会保険の加入が義務付けられています。
▼社会保険の加入が義務付けられている事業所
- 法人事業所:従業員数に関係なく、従業員を常時使用している
- 個人事業所:常時5人以上の従業員が働いている事務所・工場・商店など
いずれにおいても、事業主を通して加入手続きを行う必要があるほか、保険料は事業所と被保険者の折半となります。
出典:日本年金機構『事業所が健康保険・厚生年金保険の適用を受けようとするとき』『国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり』/厚生労働省『国民健康保険制度』/政府広報オンライン『パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入により手厚い保障が受けられます。』
事業所における社会保険の手続き
従業員の入退社や住所変更の場合は、事業所で社会保険の手続きが必要です。
たとえば、全国健康保険協会と日本年金機構は一部連携しており、申請書・届出書によって提出先が分かれています。
健康保険の給付の手続き・相談は各都道府県に設置された全国健康保険協会の支部、健康保険の加入・保険料の納付に関する手続きは日本年金機構で行われています。
また、健康保険組合と各種共済組合における健康保険に関する手続きは、各組合によって異なります。ここでは、全国健康保険協会に加入する健康保険と厚生年金保険の手続きについて解説します。
従業員が入社するとき
従業員が新たに入社する際は、事業主が日本年金機構に“被保険者資格取得届”を提出して、社会保険の加入手続きを行います。
日本年金機構へ提出した書類の登録データは全国健康保険協会に送信され、そのデータを基に健康保険証が発行されます。
なお、従業員に扶養家族がいる場合は、“健康保険被扶養者(異動)届”の提出が必要です。
▼被保険者資格取得届の提出について
提出時期 |
従業員が被保険者になった日から5日以内 |
提出先 |
事業所の所在地を管轄する年金事務所 |
提出方法 |
郵送、窓口持参、電子申請 |
必要事項 |
従業員の個人番号(マイナンバー)または基礎年金番号の記載 |
なお、60歳以上の方をそのまま再雇用する場合や、国民健康保険に引き続き加入する場合などは別途添付書類が必要です。
申請書と記入例については、こちらをご確認ください。
日本年金機構『従業員を採用したとき』
出典:日本年金機構『就職したとき(健康保険・厚生年金保険の資格取得)の手続き』/全国健康保険協会 愛知支部『協会けんぽ ガイド』
従業員が退社するとき
従業員が退社する際は、社会保険の資格喪失手続きが必要です。事業主は、日本年金機構に“被保険者資格喪失届”を提出します。
退職後の健康保険に関しては、退職者自らが次のいずれかの保険に加入する手続きを行う必要があります。
- 任意継続健康保険
- 国民健康保険
- 家族の健康保険(被扶養者)
▼被保険者資格喪失届の提出について
提出時期 |
被保険者が退職した日から5日以内 |
|
提出先 |
事業所の所在地を管轄する年金事務所 |
|
提出方法 |
郵送、窓口持参、電子申請 |
|
必要書類 |
健康保険組合 |
特になし |
協会けんぽ |
※1.は交付されている場合のみ |
なお、60歳以上の方を退職後1日の間もなく再雇用した場合は、別途添付書類が必要です。
出典:日本年金機構『従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き』/全国健康保険協会『退職後の健康保険について』『年金と健康保険に関する書類の提出先』/全国健康保険協会 愛知支部『協会けんぽ ガイド』
申請書と記入例については、こちらをご確認ください。
日本年金機構『従業員が退職、死亡したとき』
氏名・住所・生年月日に変更があったとき
健康保険・厚生年金保険の被保険者となる従業員とその扶養家族(被扶養配偶者)の氏名・住所・生年月日に変更があった場合にも変更手続きが必要です。
事業主は、日本年金機構に“被保険者氏名変更届”“被保険者住所変更届”、“被保険者生年月日訂正届”を提出します。
また、住所変更については、国民年金第3号被保険者となる被扶養配偶者の変更後の住所も併せて届け出ます。
▼被保険者住所変更届・被保険者氏名変更届の提出について
氏名変更 |
住所変更 |
生年月日変更 |
|
提出時期 |
速やかに |
速やかに |
速やかに |
提出先 |
事業所の所在地を管轄する年金事務所 |
事業所の所在地を管轄する年金事務所 |
事業所の所在地を管轄する年金事務所 |
届出書 |
被保険者氏名変更届 |
被保険者住所変更届 |
被保険者生年月日訂正届 |
提出方法 |
郵送、窓口持参、電子申請 |
郵送、窓口持参、電子申請 ※『国民年金第3号被保険者住所変更届』は電子申請不可 |
郵送、窓口持参、電子申請 |
ただし、マイナンバーと基礎年金番号が紐づいている被保険者の場合は、氏名変更・住所変更のいずれの届出も不要です。
申請書と記入例については、こちらをご確認ください。
日本年金機構『被保険者の氏名に変更があったとき』『被保険者の住所に変更があったとき』『被保険者の生年月日に訂正があったとき』
出典:日本年金機構『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)及び被扶養配偶者の住所に変更があったときの手続き』『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)の氏名に変更があったときの手続き』『従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)から生年月日訂正の申出があったときの手続き』
そのほかのケース
人事・総務部門では、従業員の入退社や住所・氏名変更、生年月日訂正のほかにも、状況に合わせて社会保険の手続きが必要です。
たとえば、社会保険の手続きが必要になる主なケースには、以下が挙げられます。
▼社会保険の手続きが必要になるケース
- 従業員が家族を扶養に入れる
- 被扶養者に異動がある
- 従業員に健康保険被保険者資格証明書を交付する
- 従業員の家族が海外に住んでいる
- 従業員が複数の事業所で雇用されている
- 70歳以上の方が厚生年金保険に加入する
これらの手続きに関しては、『日本年金機構』のWebサイトで確認できます。
なお、全国健康保険協会ではなく、健康保険組合や共済組合に加入している場合は、各取扱い期間の手続きに沿って行ってください。
出典:『被保険者・被扶養者関係(その他)』『被保険者・被扶養者関係(資格取得・喪失等)』
社会保険の申請方法
社会保険の申請方法は、郵送・窓口提出・電子申請の3つがあります。
郵送の場合、各書類の到着に日数を要するほか、窓口提出の際の混雑具合によっては待ち時間が長くなるときもあります。スムーズに手続きを行うには、電子申請の活用が有効です。
▼電子申請の概要とメリット
電子申請が可能な手続き |
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申請時の添付書類 |
書類を以下の画像ファイルに変換して、データ化して提出
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活用のメリット |
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政府としても、各省庁が所管する行政手続きをオンラインで対応できる『e-Gov電子申請』や『届書作成プログラム』の利用を推奨しています。
e-Gov電子申請は、24時間申請できるうえ、オンライン上で手続きを完結できます。また、作成用プログラムに従ってデータを入力する届書作成プログラムでは、PDF化したデータを電子申請窓口へ送信することで申請が可能です。
これらの方法を活用すると、行政機関の窓口に出向く必要がなくなるため、移動時間や待ち時間が短縮できます。人事・総務担当者の業務効率化に向けて、電子申請の活用を検討してはいかがでしょうか。
出典:厚生労働省『事業主の皆さまへ 社会保険の手続きは電子申請が便利です!』/日本年金機構『電子申請・電子媒体申請(事業主・社会保険事務担当の方)』/e-Gov電子申請『電子申請について』
まとめ
この記事では、社会保険の手続きについて以下の項目で解説しました。
- 社会保険とは
- 事業所における社会保険の手続き
- 電子申請について
従業員を雇用している事業所は、一定の要件を満たす場合に社会保険の加入が義務付けられています。従業員の入退社時や、住所・氏名の変更など、状況に応じて期限内に所定の手続きが必要です。
ただし、従業員数が多い職場や、入退社の入れ替わりが激しい職場では、社会保険の手続きが煩雑になるケースも少なくありません。人事・総務担当者の業務負担を軽減して、効率的に手続きを進めるためには、電子申請の活用が役立ちます。
また、人事・総務担当者は、社会保険の手続き以外にも、従業員の健康管理や労務管理など、さまざまな業務を行います。人事・総務担当者による調整や作業時間に時間がかかっている業務については、効率化できる方法を取り入れることで担当者の負担を減らすことができます。
健康診断やストレスチェックなどの健康管理については、クラウド型健康管理サービス『first call』の活用が有効です。オンラインで従業員の健診結果を一元管理できるだけでなく、産業医との連携もスムーズに行えます。
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