休職者の年末調整は原則必要!不要になるケースや実施義務を解説
年末調整とは、毎月の給与や賞与から源泉徴収した所得税の合計額と、1年間に納める必要のある所得税の差額を精算して、正しい所得税を確定させる手続きのことです。企業が雇用している従業員は、一部を除いて年末調整の対象となります。
しかし、「休職者に年末調整は必要なのだろうか」「実施にあたって注意点を把握しておきたい」などと考える人事・総務担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、休職者における年末調整の実施義務や、手続きを行ううえでの注意点について解説します。
出典:国税庁『No.2665 年末調整の対象となる人』『令和3年分年末調整のしかた』
休職者の年末調整は必要
休職者は、企業に在籍している状態です。そのため、当該者が給与取得者の扶養控除等申告書を提出している場合は、基本的に年末調整を行います。
1年を通じて会社に在籍している方のほか、年の途中で就職して年末まで在籍している方も年末調整の対象となります。
また、年の途中で就職した従業員が、就職前に別の会社に給与所得者の扶養控除等申告書を提出している場合は、別の会社の給与も含めて年末調整を行う必要があります。
その際、源泉徴収票がなければ、年末調整を行うことができません。そのため、1月1日〜12月31日の期間で、前の会社から給与を受け取っていた休職者がいる場合は、従業員に源泉徴収票の提出を求める必要があります。
ただし、以下に該当する方は、年末調整の対象にはなりません。
▼年末調整が不要になる場合
- 1年間に支払うことが確定した給与の総額が2,000万円を超える
- 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた
なお、従業員の休職面談に関しては、こちらの記事をご確認ください。
出典:国税庁『No.2665 年末調整の対象となる人』『No.2674 中途就職者の年末調整』『No.2668 年末調整の対象となる給与』
年末調整を行う際の注意点
休職者の年末調整を行う際は、休業補償や手当の計算、年末調整の時期に注意が必要です。
休業補償や手当の計算
休職者の年末調整を行う際は、非課税となる補償や手当の計算に注意します。
『労働基準法』第76条では、業務上の疾病・療養によって労働ができない場合に、従業員に対して企業が休業補償を支払うことが定められています。
第七十六条 労働者が前条の規定による療養のため、労働することができないために賃金を受けない場合においては、使用者は、労働者の療養中平均賃金の百分の六十の休業補償を行わなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働基準法』第76条
休業補償は、所得税が非課税となるため、年末調整の計算には含めないほか、支給の際に源泉徴収も必要ありません。
また、休業補償だけでなく、休職中に支給する以下の給付・手当金も所得税は課税されません。
▼所得税が非課税となる給付・手当金
- 傷病手当金:病気療養中に健康保険組合から支給される
- 育児休業給付:育児休業中に雇用保険から支給される
出典:厚生労働省『Q&A~育児休業給付~』/国税庁『年末調整Q&A』『No.1400 給与所得』/e-Gov法令検索『労働基準法』
年の途中の年末調整
年末調整は、12月に実施するのが一般的です。ただし、場合によっては、年の途中で行うケースもあります。年の途中の年末調整の対象者は、前述した対象者とは異なります。
▼12月に実施する年末調整の対象者
- 1年を通じて会社に勤務している
- 年の途中で就職して、年末まで勤務している
▼年の途中に実施する年末調整の対象者
(1)海外支店等に転勤したことにより非居住者となった人
(2)死亡によって退職した人
(3)著しい心身の障害のために退職した人(退職した後に再就職をし給与を受け取る見込みのある人は除きます。)
(4)12月に支給されるべき給与等の支払を受けた後に退職した人
(5)いわゆるパートタイマーとして働いている人などが退職した場合で、本年中に支払を受ける給与の総額が103万円以下である人(退職後その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人は除きます。)
引用元:国税庁『No.2665 年末調整の対象となる人』
年の途中に行う年末調整は、会社を退職した方や、海外転勤によって住民票を抜いたことにより非居住者となった方などが対象です。
休職者として企業に在籍している従業員は、これらの理由には当てはまりません。そのため、年の途中ではなく、12月の年末調整の対象となります。
出典:国税庁『No.2665 年末調整の対象となる人』
まとめ
この記事では、休職者の年末調整について以下の内容を解説しました。
- 休職者の年末調整の実施義務
- 年末調整を行う際の注意点
年末調整は、従業員が納税する所得税を正しく精算するための手続きです。源泉徴収済みの所得税額と本来の納税額の差分をなくすことが目的のため、休職者であっても一部の非対象者に該当しない限り、年末調整を行う必要があります。
ただし、労働基準法に基づく休業補償・傷病手当金・育児休業給付金は所得税が非課税となるため、年末調整の計算には含めません。
人事・総務担当者は、こういった労務関連の手続きについて、必要に応じて休職者に説明を行うことが求められます。しかし、心身の不調が原因で休職している従業員の場合、どのように連絡を取ればよいか対応に迷うケースもあるのではないでしょうか。
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