テレワーク環境下における健康課題とメンタルヘルス対策

テレワーク環境下における健康課題とメンタルヘルス対策

働き方改革や新型コロナウイルス感染症の感染拡大などの影響により、テレワークの実施率が増加傾向にあります。

内閣府が実施した調査によると、全就業者のうち、テレワークで働く労働者の割合は東京では50.6%、全国では30.6%と、新型コロナウイルスの流行前と比べて著増しています。


新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査

画像引用元:内閣府『第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査


テレワークは、従業員自身のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にできるという一方で、「コミュニケーションが取りづらい」「長時間労働になりやすい」という課題もあります。また、それによるメンタルヘルス不調も懸念されます。

そこで企業には、従業員の心身の不調に気付き、健康保持に向けた適切な措置を行えるよう、テレワークという就労環境に対応したメンタルヘルス対策が求められます。

この記事では、テレワーク環境下における健康課題と、企業に求められるメンタルヘルス対策について解説します。

出典:内閣府『第5回 新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査』/厚生労働省『テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き


目次[非表示]

  1. テレワークにおける健康課題
  2. テレワーク環境下のメンタルヘルス対策
    1. 1 メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)
    2. 2 早期発見と適切な措置(二次予防)
    3. 3 職場復帰に向けた支援(三次予防)
  3. まとめ


テレワークにおける健康課題

テレワーク環境下では、対人関係や就労環境などがストレスとなり、メンタルヘルスに関する健康課題が生じやすくなります。オフィスへの出社がなくなるため、上司や同僚とのコミュニケーションが不足してしまい、孤独感・孤立感を覚える従業員もいます。

また、遠隔地同士で業務を遂行するため、従業員が働く様子や健康状態を上司・管理監督者が確認できないという点も課題の一つです。こうしたテレワークならではの就労環境によって、業務の過多や偏りが生じる、従業員の心身の不調に気付きにくいといった問題が起こる場合もあります。

メンタルヘルス不調につながりやすい主なストレス要素として、以下が挙げられます。


▼メンタルヘルス不調につながりやすいストレス要素

対人関係
  • コミュニケーション不足、悩みや不満の抱え込み
  • 強制的な監視を求められるなどのハラスメント行為
就労環境
  • 自宅での作業環境の整備不足
  • 自宅で働く場合の光熱費の負担
  • 同居家族の理解・協力が得られない
  • 一人暮らしの従業員の疎外感・孤独感
仕事面
  • 業務分担・業務量の偏り、長時間労働の発生
  • ICT環境やツール活用に慣れないことによるストレス
  • 出社従業員との処遇や評価に対する不公平感・不安
生活習慣
  • 通勤・外出がないことによる運動不足
  • 働き方の変化に伴う、生活リズムの不規則化
  • 気分転換の不足による体調不良

出典:厚生労働省『テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き』/厚生労働省 こころの耳『テレワークでのメンタルヘルス対策について



テレワーク環境下のメンタルヘルス対策

企業がメンタルヘルス対策を講じる際は、「コミュニケーションが取りにくい」「従業員の心身の不調に気付きにくい」といったテレワーク特有の就労環境を考慮する必要があります。

メンタルヘルス対策を講じる際は、以下のような3段階の予防措置を準備しておくことがポイントです。


一次予防
メンタルヘルス不調の未然防止
二次予防
早期発見と適切な措置
三次予防
職場復帰に向けた支援


また、この3つとともに、従業員自身や上司・管理監督者、産業医、外部機関など、関係者による“4つのケア”に取り組むことも併せて重要です。

4つのケアについては、こちらの記事をご確認ください。

  厚生労働省が示す“4つのケア”とは? ケアが必要な背景と実施のための取組み! 従業員のメンタルヘルス対策に向けた取組みの必要性が高まるなか、厚生労働省は、従業員の心の健康保持・増進のための指針となる“4つのケア”を示しています。本記事では、厚生労働省が定める“4つのケア”について、メンタルヘルス対策が求められる背景や“4つのケア”を実施するための取組みを解説します。 first call



1 メンタルヘルス不調の未然防止(一次予防)

メンタル不調を未然に防止するためには、以下のような取り組みが必要です。


▼メンタルヘルス不調を未然防止する取り組み

  • メンタルヘルスケアに関する教育研修・情報提供
  • 社内の労務担当者に相談ができる専用窓口の設置
  • 社外の専門家に相談ができる外部相談サービスの活用
  • 管理監督者による定期的なミーティングの実施
  • 健康面や就労環境に関するアンケートの実施
  • ストレスチェックの実施


メンタルヘルスケアに関する教育研修や情報提供を行う際は、新入社員向けや管理監督者向けなど、階層別でプログラムを実施することがポイントです。

また、従業員が相談できる機会をつくるために、社内外問わず相談できる場を設けることも重要です。

そのほか、現在のストレス状況を把握するために、1対1のミーティングやアンケート、ストレスチェックの実施なども有効だと考えられます。

出典:厚生労働省『テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き


2 早期発見と適切な措置(二次予防)

万が一未然に防ぐことができなかった場合は、重症化を防ぐための早期発見・早期治療といった二次予防が必要になります。


▼メンタルヘルス不調の二次予防のための措置

  • ストレスチェック制度、疲労蓄積度チェックリストを用いたセルフチェック
  • 業務日誌の作成・提出
  • 産業保健スタッフによる面談・チャットによる状況確認
  • 従業員の家族への相談依頼・理解の呼びかけ
  • 外部機関によるコンディションサーベイ(※)の実施


不調者の早期発見と適切な措置を実行できるよう、上記のような取り組みが求められます。

疲労蓄積度を把握できるチェックリストを活用して、結果を基に従業員に振り返りやセルフケアを促します。従業員が自身の健康状態を把握することで、生活習慣の改善に向けた自発的な行動や企業への相談にもつながります。

また、産業医による面談や家族への呼びかけを行い、心身の早期発見できる仕組みを構築することも重要です。


※病院や心理カウンセラーがメンタルサポートを提供すること。


出典:厚生労働省『テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き』/厚生労働省 こころの耳『二次予防


3 職場復帰に向けた支援(三次予防)

三次予防として、メンタルヘルス不調で休業している従業員の回復を図るとともに、職場復帰を支援することも大切です。


▼職場復帰に向けた支援策

  • 職場復帰支援プログラムの策定
  • 休職期間中における産業医によるオンライン面談の実施
  • 外部EAPサービス(※)活用による復職サポート依頼


職場復帰支援プログラムの策定では、産業医の助言を受けながら、テレワーク中の従業員の休職・復職に関する規定を整備します。

その際は、試し勤務制度や産業医との面談頻度・方法についても取り決めておく必要があります。

※EAPとは、“従業員支援プログラム”という意味があり、心身の健康を支援するプログラムのこと。

出典:厚生労働省『テレワークにおけるメンタルヘルス対策のための手引き



まとめ

この記事では、テレワーク中の従業員に対するメンタルヘルス対策について、以下の内容を解説しました。


  • テレワークの実施状況
  • テレワークにおける健康課題
  • テレワーク環境下のメンタルヘルス対策


テレワーク環境下のメンタルヘルス対策を講じる際は、一次予防・二次予防・三次予防の3段階で予防措置を考案することがポイントです。

アンケートの実施や相談窓口の設置でストレス過多による不調を未然に防止したり、すでに不調がある従業員を早期発見できるようセルフチェックの機会を設けたり、重症化させないための取り組みが重要です。

また、メンタルヘルス不調で休業している従業員に対しては、産業医や外部機関を活用しながら、職場復帰を支援することも欠かせません。

クラウド型健康管理サービス『first call』では、12診療科の専門医へのチャット相談や、オンラインでの産業医面談が可能です。休職中、遠方で療養している従業員との産業医面談や、テレワーク主体の働き方をしている従業員の健康相談、休職・復職面談などでも活用することができます。


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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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