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職場復帰支援プログラムの基本的な取り組みとは?支援の流れを5ステップで解説

令和3年 労働安全衛生調査(実態調査)』によると、メンタルヘルス不調によって「連続1ヶ月以上休業した」「退職した従業員がいる」という企業は、全体の10.1%と、前年調査の9.2%から増加しています。

人材の流出や労働災害を防ぐためには、心の健康問題によって休業した従業員に対する、企業の適切な職場復帰の支援が重要です。

一方、人事・総務担当者のなかには、「どのような手順で職場復帰の支援を進めればよいか分からない」と対応に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、休業した従業員の職場復帰を支援するプログラムの基本的な取り組みや流れについて解説します。

出典:厚生労働省『令和3年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況


目次[非表示]

  1. 職場復帰支援プログラムの基本的な取り組み
    1. 職場復帰支援プログラムの策定
    2. 職場復帰支援プランの作成
    3. 主治医との連携
  2. 職場復帰を支援する5つのステップ
    1. ①休業開始・休業中のケア
    2. ②主治医による職場復帰可能の判断
    3. ③職場復帰可否の判断・職場復帰支援プランの作成
    4. ④職場復帰の決定
    5. ⑤職場復帰後のフォローアップ
  3. まとめ


職場復帰支援プログラムの基本的な取り組み

厚生労働省では、労働者の円滑な職場復帰を支援するための事業者の取り組みとして、『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』をまとめています。

この手引きでは、心の健康問題によって休業した従業員をサポートする職場復帰支援プログラムについて、3つの基本的な取り組みを示しています。


職場復帰支援プログラムの策定

従業員が休業したときのために、あらかじめ休業から職場復帰までの流れをまとめた職場復帰支援プログラムを策定して、体制を整備・ルール化しておくことが重要です。
 
従業員が円滑に職場復帰し、継続して業務に従事できるように、休業から職場復帰までの流れや実施体制、関連規程などについても、明確に策定しておく必要があります。

職場復帰支援プログラムを組織的かつ計画的に行うには、教育研修や情報提供などを行って、産業医、衛生管理者および人事・総務担当者等を含む産業保健スタッフ(以下、企業内産業保健スタッフ等)、従業員や管理監督者に十分に周知しておきましょう。

出典:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き


職場復帰支援プランの作成

実際に職場復帰支援を行うには、策定した職場復帰支援プログラムに基づき、当該従業員に対する具体的な職場復帰支援プランを作成します。

心の健康問題は、回復の度合いや業務遂行能力などが目に見えづらく、状態もそれぞれ異なると考えられるため、個々に応じた復職判断・支援が求められます。

当該従業員のプライバシーに配慮しながら、産業医や管理監督者、従業員と連携・協力し、個々に適した職場復帰支援プランを作成することが重要です。

出典:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き


主治医との連携

当該従業員の健康状態を医学的かつ客観的に判断するためには、主治医との連携も欠かせません。

メンタルヘルス不調によって休業した従業員への対応は、ケースに応じて柔軟に行う必要があり、就業上の配慮は人事・総務担当者が重要な役割を担っています。

人事・総務担当者は、主治医の意見を踏まえたうえで、職場配置や労働条件、勤務制度などに配慮することが必要です。

出典:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き



職場復帰を支援する5つのステップ

心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』では、休業開始から職場復帰後のフォローアップまで、5つのステップで進めることが推奨されています。


①休業開始・休業中のケア

1つ目のステップでは、当該従業員の休業手続きをはじめ、休業制度についての説明や休業期間中のケア、支援制度の情報提供を行います。

休業開始時には、主治医による病気休業診断書を提出してもらいます。休業手続きを進める際は、事前に休業期間や退職などの休業制度について就業規則に記載しておくとともに、適切な説明を行いましょう。特に、休職に入られる際には、従業員も体調が思わしくないため、口頭だけではなく、書面も使い説明しておくとよいでしょう

休業期間中は、当該従業員が療養に専念できるよう、以下のような支援・情報提供を行うことが望ましいとされています。


▼休業中の支援・情報提供

  • 休業中の経済的な保障(傷病手当の付与等)
  • ※ 一般的に、社会保険料(健康保険、厚生年金など)は支払い継続となることが多く、その旨も説明しておくとよいでしょう。
  • 企業内産業保健スタッフ等や管理監督者による相談体制の構築
  • 公的・民間の支援制度や職場復帰支援サービスの紹介・情報提供
  • 就業規則のうち、休職に関するもの(休職可能な期間、それをすぎると自然退職になりうること、など)
  • 復職を希望する際に実施して欲しい内容(診断書の提出など)


出典:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き


②主治医による職場復帰可能の判断

2つ目のステップでは、休業中の従業員から職場復帰の意思表示があった場合、主治医に職場復帰が可能か判断を仰ぎます。

主治医から復職診断書を提出してもらい、当該従業員の健康状態や就業上の配慮に関する具体的な意見について確認します。

ただし、主治医による診断は、職場で求められる業務遂行能力まで病状が回復しているとの判断とは限りません。また、従業員・家族の希望が、診断書の内容に含まれている可能性もあるため注意が必要です。

当該従業員の業務遂行能力については、診断書だけでなく、産業医等の意見を聴取したうえで判断することが重要です。一般的には、まずは主治医から「復職可能」の旨記載された診断書を受領し、その後に産業医面談を実施します。

出典:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き


③職場復帰可否の判断・職場復帰支援プランの作成

3つ目のステップでは、職場復帰の可否を判断したうえで、職場復帰支援プランを作成します。

休業中の従業員の意思に加えて、職場復帰が可能かどうか総合的に評価・判断するため、必要な情報を収集して、従業員の健康状態・回復状況、職場環境との適合性などを評価します。

その評価に基づき、企業内産業保健スタッフなどが中心となって職場復帰の可否判断を行いましょう。職場復帰が可能と判断した場合には、個々の回復状況や業務遂行能力に応じて、以下の項目を検討して職場復帰支援プランを作成します。


▼職場復帰支援プランの項目

  • 職場復帰日
  • 就業上の配慮(業務内容・業務量の変更、残業・深夜業の制限等)
  • 人事労務管理上の対応(配置転換や異動、勤務制度変更の要否等)
  • 産業医による安全配慮義務・職場復帰支援に関する意見・助言
  • 管理監督者や企業内産業保健スタッフによるフォローアップ
  • 当該従業員が行う事項(試し出勤制度の利用、外部支援サービスの利用等)


出典:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き


④職場復帰の決定

4つ目のステップでは、③を踏まえたうえで、最終的な職場復帰の決定を行います。

職場復帰の決定にあたっては、産業医に就業上の配慮に関する意見書を作成してもらい、それを基に当該従業員と話し合いながら手続きを進めることが重要です。


▼職場復帰の手続きの流れ

  1. 労働者への最終確認(疾患の再燃・再発の有無、回復過程における症状等)
  2. 産業医による“職場復帰に関する意見書”の作成
  3. 企業による職場復帰の決定
  4. 産業医による主治医への情報提供(職場復帰や就業上の配慮に関する情報)


出典:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き


⑤職場復帰後のフォローアップ

5つ目のステップでは、職場復帰後のフォローアップを行います。職場復帰した従業員の病状悪化や再休業を防ぐためには、管理監督者や企業内産業保健スタッフ等によって職場復帰後のフォローアップを実施することが重要です。

心の健康問題は、疾患が再燃・再発することも多く、復職後に計画どおりに職場復帰が進まないケースも少なくありません。

できる限りスムーズに復職を叶えるためには、職場復帰後も経過観察を行いつつ、必要に応じて職場復帰支援プランの見直しを行うことが大切です。


▼職場復帰後のフォローアップ

  • 疾患の再燃・再発の早期発見(経過観察、定期的な面談等)
  • 勤務状況・業務遂行能力の評価(当該従業員や管理監督者からの情報収集、企業内産業保健スタッフ等による面談の実施)
  • 職場復帰支援プランの実施状況の確認・評価・見直し
  • 治療状況の確認(主治医との情報連携を通じて確認)
  • 職場環境の改善(人材配置、作業方法等)
  • 管理監督者や同僚に対する負担への配慮


出典:厚生労働省『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き



まとめ

この記事では、休業した従業員に対する職場復帰支援について、以下の項目で解説しました。


  • 職場復帰支援プログラムの基本的な取り組み
  • 職場復帰を支援する5つのステップ


メンタルヘルス不調によって休業した従業員は病状が目に見えづらく、復職後に疾患が再燃・再発するケースも少なくありません。

円滑な職場復帰のためには、産業医や主治医による意見を考慮したうえで、職場復帰ができる状態かを判断し、必要に応じて就業上の配慮を行うことが重要です。職場復帰後は経過観察や定期面談を行い、職場復帰支援プランを見直すことも欠かせません。

なお、職場復帰支援は、安全委員会や衛生委員会等で調査審議したうえで、個々の企業の実態に即した形で取り組むことが必要とされています。

安全委員会や衛生委員会の設置については、こちらの記事で解説しています。

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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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