ストレスチェック結果の確認ポイントと従業員への対応
事業場でのストレスチェックには、従業員のメンタルヘルス不調を防止する目的があります。
高ストレス者を選定して、従業員自身のセルフケアや面接指導を促すためには、ストレスチェックの結果を適切に評価することが重要です。
しかし、「どの項目の結果を確認すればよいか分からない」「従業員にどのような対応が必要か分からない」などの疑問を持つ人事・総務担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、ストレスチェック結果の確認ポイントや、従業員への対応について解説します。
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ストレスチェック結果の確認ポイント
ストレスチェックの結果から高ストレス者を選定する際は、“ストレスによって起こる心身の反応(以下、心身のストレス反応)”の評価点数やストレスの要因などを踏まえて、総合的に判断することがポイントです。
心身のストレス反応
“心身のストレス反応”の評価点数が高い場合、すでに心身の自覚症状があり、対応が必要な従業員が含まれている可能性が高いと考えられます。
また、“心身のストレス反応”には6つの尺度があり、ストレスの程度を段階的に把握するための基準となっています。
▼心身のストレス反応の尺度(ストレスの程度が高い順)
- 抑うつ感
- 不安感
- 疲労感
- イライラ感
- 身体愁訴
- 活気の低下
従業員のストレス状況を観察する際は、特に、不安感・抑うつ感が高い者に注意が必要です。
出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』
ストレスチェックの3領域
ストレスチェックの調査票は、実施者の提案や衛生委員会の審議を経て、事業者が決定します。法に基づいたストレスチェックにおいては、以下の3つの領域を含む必要があります。
▼ストレスチェック調査票の領域
- 仕事のストレス要因
- 心身のストレス反応
- 周囲のサポート
このうち、心身のストレス反応の評価点数が高い従業員だけを高ストレス者として選定した場合、メンタルヘルス不調のリスクを見逃してしまう可能性があります。
心身のストレス反応の評価点数が一定以上の従業員のうち、“仕事のストレス要因”や“周囲のサポート”の評価点数が著しく高い者についても、高ストレス者として選定します。
なお、“職業性ストレス簡易調査票”を活用して個人結果を計算・出力する際、各項目の点数は、素点換算表の計算欄に従って算出します。ただし、計算は比較的複雑になるため、実際にはストレスチェックをオンラインで実施して、自動集計することが多いです。
▼素点換算表
画像引用元:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』
出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』
ストレスチェック後の従業員への対応
ストレスチェックの実施後は、実施者から従業員へ結果の通知を行います。その後、従業員からの申し出に応じて、医師による面接指導を実施します。
①ストレスチェック結果の通知
『労働安全衛生法』第66条の10第2項において、事業者は、ストレスチェックを行った医師や保健師などから、従業員に直接結果を通知させることが義務づけられています。
2 事業者は、前項の規定により行う検査を受けた労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、当該検査を行つた医師等から当該検査の結果が通知されるようにしなければならない。この場合において、当該医師等は、あらかじめ当該検査を受けた労働者の同意を得ないで、当該労働者の検査の結果を事業者に提供してはならない。
引用元『労働安全衛生法』第66条の10第2項
また、個人のストレスチェック結果に加えて、以下の事項を通知することが望ましいとされています。
▼通知が望ましいとされる内容
- セルフケアに関する助言
- 事業者への面接指導の申出窓口や申出方法
- 面接指導の申出窓口以外の相談窓口に関する情報提供
なお、従業員に結果を通知する際は、ほかの人に見られないように封書や電子メールなどで個別に通知します。
従業員の同意なく、ストレスチェック結果を事業者が入手したり、第三者に漏らしたりすることは法令違反となるため注意が必要です。
出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
②医師による面接指導の実施
『労働安全衛生法』第66条の10第3項において、面接指導の対象者から事業者に申し出があった場合に、医師による面接指導を実施する義務があると定められています。
3 事業者は、前項の規定による通知を受けた労働者であつて、心理的な負担の程度が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当するものが医師による面接指導を受けることを希望する旨を申し出たときは、当該申出をした労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導を行わなければならない。この場合において、事業者は、労働者が当該申出をしたことを理由として、当該労働者に対し、不利益な取扱いをしてはならない。
引用元『労働安全衛生法』第66条の10第3項
面接指導の対象者となるのは、ストレスチェックの結果、高ストレス者と選定されて、かつ実施者が面接指導が必要と認めた者です。
この面接指導は、従業員の心身の状況や勤務状況を確認して、事業者が適切な就業上の措置を講じるために実施します。高ストレス者の従業員が放置されることがないように、従業員が申し出やすい環境を整えることが大切です。
出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
職場環境改善に生かすことが大切
ストレスチェックの実施後は、結果の集計・集団分析を行い、その結果を職場環境の改善に生かすことが重要です。
ストレスチェックには、従業員本人のストレスに気づきを促して、メンタルヘルス不調を未然に防ぐ目的があります。また、事業者においては、従業員一人一人のストレスだけでなく、ストレスの要因そのものを軽減するように努めることが求められます。
検査結果を集計して集団分析を実施することで、職場におけるストレス要因のほか、問題のある部署・課を明らかにできます。
そのうえで、「仕事の量的・質的な負荷が高い」「周囲の社会的支援が低い」などの健康リスクが高い場合には、職場環境の改善が必要です。なお、集団分析の結果を踏まえた措置は努力義務となっていますが、健康リスクを軽減するためには、必要に応じて職場環境の改善を実施することが望ましいとされています。
ストレスチェックの集団分析については、こちらの記事をご確認ください。
出典:厚生労働省『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』/厚生労働省 こころの耳『職場環境改善ツール』
まとめ
この記事では、ストレスチェックについて以下の内容を解説しました。
- ストレスチェック結果の確認ポイント
- ストレスチェック後の従業員への対応
- ストレスチェックを踏まえた職場環境改善について
ストレスチェックの実施後、従業員のセルフケアや面接指導につなげるためには、結果を適切に評価して、ストレスの程度を把握する必要があります。なかでも、心身のストレス反応の評価点数が高い従業員には、早めに対処することが重要です。
また、結果の集計・集団分析を行って問題のある部署・課などを明らかにして、職場環境の改善に生かすことも大切です。
近年、リモートワークが増えて、従業員の健康状態を把握しにくくなっています。従業員の不調にいち早く気づいてケアするために実施するストレスチェックは、今後ますます重要になると考えられます。
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