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傷病手当金の支給と申請方法とは?意見書は産業医でも作成できるのかわかりやすく解説

傷病手当金とは、健康保険の被保険者である従業員が、業務外の病気やケガを理由として就業が困難となった場合に、本人とその家族の生活を保障することを目的とした保険制度です。

傷病手当金の申請を行う際は、療養担当者である医師の意見書が必要です。

しかし、企業の人事・総務担当者のなかには、「産業医でも意見書が書けるのか知りたい」「主治医と産業医の意見が違う場合の対応を知りたい」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。

この記事では、傷病手当金の支給・申請に関することをはじめとして、産業医による意見書の作成可否、主治医と産業医の意見が異なる場合の対応を解説します。


目次[非表示]

  1. 傷病手当金の支給と申請
    1. 傷病手当金の支給
    2. 傷病手当金の申請
  2. 意見書は産業医でも作成できる? 
  3. 主治医と産業医の意見が異なる場合
  4. まとめ


傷病手当金の支給と申請

傷病手当金を申請する前に、支給期間・対象かを把握しておくことが大切です。申請に関しても、提出場所や書類などについて押さえておく必要があります。


傷病手当金の支給

病気やケガが原因で3日以上連続して欠勤した場合、欠勤4日目以降から傷病手当金が支給されます。支給期間は、支給開始日から最長1年6ヶ月です。

また、支給期間は、これまでは支給開始日から“起算して”1年6ヶ月でしたが、2022年1月1日より支給開始日から“通算して”1年6ヶ月に変更されました。そのため、傷病手当金の支給期間中に出勤しても、その期間は支給期間に含まれません。


傷病手当金の支給

画像引用元:厚生労働省『令和4年1月日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます


ただし、下記に該当する場合は、支給額調整の対象もしくは支給対象外となるため、注意が必要です。


▼傷病手当の支給額が調整されるケース

  • 給与の支払いがあった場合
  • 障害厚生年金または障害手当金を受けている場合
  • 老齢退職年金を受けている場合
  • 労災保険から休業補償給付を受けていた(受けている)場合
  • 出産手当金を同時に受けられる場合

全国健康保険協会『傷病手当金』を基に作成


出典:厚生労働省『傷病手当金について』『令和4年1月日から健康保険の傷病手当金の支給期間が通算化されます』/全国健康保険協会『傷病手当金


傷病手当金の申請

申請に際しては、申請書の記入と提出が必要です。

申請書には、申請者本人と企業側のそれぞれが記入する欄があり、申請書に医師の所見を記した“意見書”を添付したうえで、所定の窓口に提出します。

出典:全国健康保険協会『傷病手当金』『健康保険傷病手当金支給申請書



意見書は産業医でも作成できる? 

意見書には従業員の症状や経過を記載するため、意見書を作成するのは、従業員が診療を受けている医師でなければいけません。

産業医が医師として従業員の診療も行っている場合には、健康保険傷病手当金支給申請書に添付する意見書を産業医が作成できます。すべての産業医が作成できるわけではないため、注意が必要です。

産業医は必ず医師資格を持っていますが、一定の条件を満たさなければ、企業で医療行為を行ってはいけません。具体的には、産業医が企業内で診療を行う場合には、『医療法』第1条の2、第7条、第8条の規定に基づき、企業内に診療所を開設している必要があります。

つまり、該当の産業医が医師として診療を行い意見書を書くためには、企業内に診療所を開設して、医師としても活動していることが条件となります。

実際には、産業医が企業内で診療・治療などを行っているケースは少なく、よってほとんどのケースでは、主治医が意見書を記載することになるでしょう。

なお、従業員が主治医から「就業の継続が困難である」という意見が得られなかった場合は、産業医に労働者という立場から就業についての意見を求め、産業医が任意で作成した書類を保険者に提出することが認められています。

産業医は、従業員の就業の継続が困難と判断した病気やケガの詳細を、該当書類に記載します。

出典:厚生労働省『傷病手当金の支給に係る産業医の意見の取扱いについて



主治医と産業医の意見が異なる場合

傷病手当金の申請に際して主治医と産業医の意見が異なる場合は、保険者が双方の意見書を基に、適切な判断を行います。

このときの保険者の判断は、医学的な観点に限りません。従業員の業務の特性を加味したうえで、従業員が引き続き業務を遂行できるか否かを基準として判断します。

また、『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き』では、産業医と主治医との連携が求められています。

産業医は、事業者とともに、主治医に対して職場で必要とされる業務遂行能力に関する情報提供等を行うことが必要です。

なお、従業員の休職・復職判断等の場面で、主治医と産業医が連携する重要性やポイントについては、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。

​​​​​​​   主治医と産業医で意見が異なる? 休職・復職判断の際の両者の役割と連携のポイント メンタルヘルス不調が原因で休職した従業員が復職する際には、適切なサポートが求められます。なかでも、主治医と産業医が連携して、職場環境を整えることが重要といわれています。 人事・労務の担当者のなかには、「主治医と産業医それぞれの意見をどう捉えるべきか分からない」「両者の連携のポイントを知りたい」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。 この記事では従業員の休職・復職対応の際の主治医と産業医の連携について、その重要性と連携のポイントを解説します。 first call


出典:厚生労働省『傷病手当金の支給に係る産業医の意見の取扱いについて』『心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き



まとめ

この記事では、傷病手当金の意見書について以下の内容を解説しました。


  • 傷病手当金の支給と申請
  • 産業医でも意見書は作成できる? 
  • 主治医と産業医の意見が食い違った場合


傷病手当金を受給するには、全国健康保険協会へ申請書の提出が必要です。申請書に添付する書類の一つに意見書があり、診療を行っている医師が記入します。

従業員の診療を産業医が行っている場合には、療養担当者を産業医として申請書を作成してもらうことが可能です。ただし、産業医に診療を行ってもらうには、一定の条件を満たす必要があります。なお、主治医を療養担当者とする場合でも、労働者として産業医に意見を求めることは可能です。

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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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