健康診断の有所見者とは?定義と診断区分、適切に振り分ける方法を解説
従業員の健康診断を実施したあとは、その健診結果に基づいて、再検査や業務上の配慮などの適切な措置を講じる必要があります。
健診機関による判定の基準値や診断区分が異なる場合、「有所見者の振り分けが難しい」とお悩みの担当者の方もいるのではないでしょうか。
この記事では、健康診断における有所見者の定義や診断区分をはじめ、有所見者への企業の対応方法について解説します。
また、クラウド型健康管理サービス「first call」では、産業医業務のオンライン対応(職場巡視を除く)が可能な嘱託産業医の選任や、医師への相談窓口など産業医や医師による企業の健康サポートを行っています。ストレスチェックの実施に加え、健康診断結果や面談記録の管理、面談日程調整など企業の健康管理業務をオンライン化できます。
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有所見者の定義と診断区分
有所見者とは、健康診断の結果、いずれかの項目で何らかの異常がある人を指します。厚生労働省は、医師の診断が“異常なし”、または“要精密検査”、“要治療等”のうち、“異常なし”以外の者を有所見者と定義しています。
健康診断を健診機関やクリニックで行った場合、健診結果には以下のような診断区分のいずれかが記載されています。
▼健診結果の診断区分
A. 異常なし
B. 軽度異常
C. 要再検査・生活改善
D. 要精密検査・治療
E. 治療中
この5つの診断区分は、公益社団法人日本人間ドック学会が公表している区分です。一般的には、この診断区分をベースとして、各健診機関が判定区分や指導内容を設定します。
したがって、検査結果が同程度の異常値であっても、健診機関によっては“要再検査”、“要精密検査”というように診断区分が異なるケースがあります。
従業員によって受診する健診機関が異なる場合、健診結果に記載された診断区分だけで、異常所見の有無を適切に判断することは困難です。
近年、定期健康診断の有所見率が高まっており、健康に問題を抱える労働者が増加しています。厚生労働省がまとめた2020年度の『定期健康診断結果報告』によると、有所見率は長期的に見て右肩上がりになっています。
▼定期健康診断の有所見率
政府統計の総合窓口(e-Stat)『定期健康診断結果報告』を基に作成
有所見率の割合が増加している現代では、業務によるストレスや過重な負荷によって、脳血管や心臓の疾患を発症して死亡・障害を起こすリスクがあります。このようなリスクは、従業員とその家族にとってはもちろんのこと、企業にとっても重大な問題です。
病気の早期発見・早期治療を行うためには、産業医による判断を仰ぎつつ、有所見者を適切に振り分け、保健指導や再検査などの適切な措置を講じることが求められます。
なお、健康診断の検査項目・判定項目の詳しい見方については、こちらの記事をご覧ください。
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)『定期健康診断結果報告』/厚生労働省 東京労働局『二次健康診断等給付について』/厚生労働省『主な用語の定義』/公益社団法人日本人間ドック学会『会告ー判定区分の改定等についてー』
有所見者を適切に振り分ける方法
健診結果の診断区分や判定基準値は、健診機関によって異なることがあります。そのため、再検査や事後措置が必要か否かについては、事業場の産業医・保健師の判断に委ねられます。
ここからは、健診実施後に有所見者を適切に振り分ける方法を解説します。
1.判定基準・診断区分を統一化する
各健診機関や医療機関で基準値が異なる場合、判定結果にばらつきが生じます。
判定のばらつきを防ぐには、健診結果を基に、社内で一定の基準値・診断区分を設けて判定を行うことが重要です。
受診した健診機関が異なる場合でも、統一した基準で異常所見の有無を判定できるようになります。判定基準・診断区分を統一化する方法には、以下が挙げられます。
▼判定基準・診断区分を統一化する方法
- 健診機関や医療機関を指定する
- 健診結果、企業の基準値・診断区分で再判定を行う
- 健診結果をクラウドシステムに取り込み、一定の基準値で自動振り分けを行う など
2.二次健康診断・再検査(精密検査)の受診勧奨を行う
健診結果に異常所見がある、または再検査や要精密検査と判定された場合、指導内容に基づいて、二次健康診断・再検査・精密検査の受診を勧奨します。これは、厚生労働省においても受診勧奨を行うことが適切とされています。
健診結果に異常所見がある場合の対応については、一部で緊急度が高い場合があります。その場合は、健康管理上必ず保健指導を行うことが重要です。
一方、生活習慣病による経年的変化によるものも多いため、再検査・精密検査などは産業医の判断を聴取します。
3.産業医の意見を聴取する
『労働安全衛生法』第66条の4では、健康診断あるいは二次健康診断・再検査によって異常所見があると判定された場合、必要な措置について産業医の意見を聴取する必要があることが示されています。
また、常時使用の労働者数50人未満で産業医の選任義務がない小規模事業場においては、地域の産業保健総合支援センターを活用することが適当とされています。
産業医の意見を聴取することによって、異常所見のレベルの判断や必要な処置について検討できるようになります。なお、産業医の意見聴取を行った際は、以下の3つの区分で就業判定が行われます。
▼医師等による就業判定の判定区分
就業区分 |
就業上の措置の内容 |
通常勤務 |
就業上の措置を講じる必要はない |
就業制限 |
業務時間の短縮や作業転換など、業務に制限を加える必要がある |
要休業 |
療養のための休暇・休職等の措置を講じる必要がある |
国土交通省『資料2「健康診断後の事後措置等について」』を基に作成
『労働安全衛生法』第66条の5では、事業者に対して、就業制限または要休業と判定された場合、就業上の適切な措置を講じる義務があることが記されています。
就業上の適切な措置には、労働時間の短縮や作業転換、休業手続きなどが挙げられます。
出典:e-GOV『労働安全衛生法』/厚生労働省『現行の産業医制度の概要等』/国土交通省『資料2「健康診断後の事後措置等について」』
健診管理サービスでスムーズな事後対応を実現
健診結果の振り分けや産業医への意見聴取などをスムーズに行うためには、健診管理サービスの活用が有効です。
有所見者を適切に振り分けて速やかな事後対応を行うには、健診結果データを集約して、統一した基準で振り分けできるシステムを活用するのも一つの方法です。
クラウド型健康管理サービスの『first call』を活用することで、次のような対応が可能になります。
▼first callでできること
- 紙媒体や異なるフォーマットの健診結果をシステムに取り込み、一元管理する
- 日本人間ドック学会の判定基準を採用して、健診結果判定を統一化する
- システム上で産業医と連携して、健診結果の共有・意見聴取・就業判定依頼を行う
- 労働基準監督署へ提出する報告書用のデータ集計を行う など
first callでは、日本人間ドック学会の判定基準に基づいて、健診結果を総合的に判定します。健診機関が異なる場合であっても、健診結果をシステムに取り込んで再度判定を付与するため、判定基準を統一化できる特徴があります。
また、システム上で産業医と連携して、意見聴取や就業判定などをオンラインでスムーズに行うことも可能です。意見書の作成・共有、労働基準監督署へ提出する報告書用のデータ集計もシステムで完結するため、事後対応、事務処理を効率的に実施できます。
first callの詳しい機能・メリットについては、ぜひこちらをご覧ください。
まとめ
この記事では、健康診断における有所見者の定義や対応方法について、以下の項目で解説しました。
- 有所見者の定義と診断区分について
- 有所見者を適切に振り分ける方法
- スムーズな事後対応を実現する健康管理サービスについて
健診結果は、健診機関やクリニックによって判定基準・診断区分が異なることがあります。有所見者を適切に振り分けるには、判定基準を統一化するほか、二次健康診断や再検査の受診結果の確認、産業医の意見を仰ぐことが重要です。
健康管理サービスの『first call』を活用すれば、統一した基準で健康診断の判定を行えます。産業医と健診結果のデータを共有することも可能なため、保健指導の必要性を判断したり、就業判定を依頼したりといった作業のスムーズな実施が可能です。
従業員の健康保持、人事・総務担当者の業務効率化に向けて、first callの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
健康診断結果の管理業務を効率化する、first callの健診管理サービスについてはこちらからご確認いただけます。