
会社の健康診断の費用負担は誰がする?法的義務と費用相場、経費計上のルールを解説
毎年の健康診断シーズンは医療機関の選定から日程調整、結果のフォローまで、なにかと忙しい時期です。それに加えて、「この健診費用って、会社負担でいいんだっけ?」「人間ドックの費用はどう扱えば?」「経費処理の方法は?」など、費用に関する疑問や問い合わせへの対応に追われることもあるのではないでしょうか。
会社の健康診断にかかる費用負担や経費の扱いには、法律で定められたルールや税務上の注意点が存在します。これらのルールをよく知らないまま処理してしまうと、後々従業員との間でトラブルになったり、税務署から指摘を受けたりする可能性もゼロではありません。
この記事では、そういった担当者の皆さまが抱える健康診断費用に関する疑問を解消できるよう、基本的な考え方から具体的なケースまで、分かりやすく解説していきます。ぜひ参考にしてみてください。
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目次[非表示]
- ・会社で行う健康診断にかかる費用の考え方
- ・会社で行う健康診断の種類別の費用相場
- ・会社で行う健康診断費用の負担区分
- ・会社で行う健康診断費用の経費処理
- ・会社で行う健康診断の費用に関するよくある質問
- ・健康診断を受けなかった社員がいる場合その分の費用負担はどう考えますか?
- ・会社が負担すべき健康診断費用を従業員の給与から天引きできますか?
- ・健康診断の費用が医療機関によって異なるのはどのような理由からですか?
- ・退職が決まっている従業員の健康診断費用も会社が負担しなければなりませんか?
- ・健康診断を受けている時間中の賃金は支払う義務がありますか?
- ・海外に派遣する従業員の健康診断費用は会社が負担すべきですか?
- ・ストレスチェックと同時に健康診断を行う場合の費用はどうなりますか?
- ・会社の健康診断にかかる費用のまとめ
会社で行う健康診断にかかる費用の考え方
会社にとって従業員の健康診断は、法律で定められた義務であると同時に、大切な従業員の健康を守るための重要な取り組みです。しかし、その実施に伴う「費用」について、どのように考え、向き合うべきか、悩む担当者の方もいるのではないでしょうか。
ここでは、費用に関する法的な義務や対象者、リスクについて、具体例を交えながら詳しく解説します。
- 法律で実施と費用負担が会社の義務
- 条件を満たすパート等も対象者
- 対象者「常時使用する労働者」の条件
- 義務違反には罰則の可能性
法律で実施と費用負担が会社の義務
会社が従業員に健康診断を受けさせ、その費用を負担することは、法律で決められた「義務」であり、避けて通ることはできません。
これは「できればやってくださいね」というお願いレベルの話ではなく、労働安全衛生法という法律(第66条)にはっきりと「事業者は、労働者に対し、医師による健康診断を行なわなければならない」と書かれています。
費用についても同様で、「法律で義務付けているのだから、当然会社が負担すべきもの」という国の考え方(行政解釈)があるのです。例えば、「費用がかさむから、一部従業員に負担してもらおう」ということは、法定健診に関しては原則としてできません。会社が全額負担するのが大原則となります。
条件を満たすパート等も対象者
健康診断を受けさせる義務があるのは、正社員だけではありません。パートタイマーやアルバイト、契約社員といった方々も、一定の条件を満たせば対象となります。
「うちのパートさんは週3日だから対象外かな?」など、雇用形態だけで判断するのは間違いのもとです。雇用契約を結ぶ際に「1年以上働く予定」となっていて、かつ週の労働時間が正社員の4分の3以上(例:正社員が週40時間なら週30時間以上)であれば、パートタイマーの方でも健康診断の対象者となるのです。
対象者「常時使用する労働者」の条件
パートタイマーなどが対象になるかの判断基準となるのが、「常時使用する労働者」という言葉です。具体的には、以下の2つの条件を両方とも満たす方が該当します。
①契約期間について
- 期間の定めのない契約である(無期契約)
- または、有期契約の場合でも、契約期間が1年以上である、1年以上雇用される予定がある、契約更新によって1年以上雇用されている
②労働時間について
- 1週間の所定労働時間が、同じ職場で同様の仕事をしている正社員の4分の3以上である
例えば、契約期間が定められていても、毎年更新されていてすでに2年働いており、週の労働時間が正社員の4分の3以上であれば、「常時使用する労働者」として健康診断の対象と考えられます。
義務違反には罰則の可能性
もし、会社が健康診断の実施や費用負担の義務を怠った場合、法的なペナルティを受ける可能性があります。
労働安全衛生法には、義務違反に対して50万円以下の罰金という罰則が定められています(同法第120条)。
実際に罰金刑が科されるケースは多くないかもしれませんが、労働基準監督署から改善を求める指導(是正勧告)が入ることは十分に考えられます。対象となるべきパートタイマーに健康診断を実施していなかったことが発覚すれば、指導の対象となるでしょう。
会社で行う健康診断の種類別の費用相場
ひとくちに「健康診断」と言っても、会社で行うものにはいくつかの種類があります。目的や対象となる従業員が違うため、当然、検査内容やかかる費用もそれぞれ異なってくるのです。
担当者としては、「うちの会社でやる健診は、大体いくらくらい見ておけばいいの?」というのが、やはり気になるところでしょう。大まかな費用相場を知っておけば、年間の予算を立てやすくなりますし、健診をお願いする医療機関を選ぶ際の比較検討にも役立ちます。
ここでは、会社で行う主な健康診断の種類ごとに、費用相場や負担の考え方について具体的に見ていきましょう。
- 定期健診は会社全額負担で相場は5千~1万5千円
- 雇入時健診も原則会社負担で費用は定期健診並み
- 特殊健診も会社負担で費用は検査内容次第
定期健診は会社全額負担で相場は5千~1万5千円
会社で行う健康診断として最も一般的なのが、年に1回、全従業員を対象に行う「定期健康診断」です。法律で義務付けられている健診で、基本的な健康状態をチェックするための費用は、会社が全額負担しなければなりません。
法律で定められている主な検査項目には、以下のようなものがあります。
- 既往歴や業務歴の調査、自覚症状・他覚症状の有無
- 身長、体重、腹囲、視力、聴力
- 胸部X線検査
- 血圧測定
- 血液検査(貧血、肝機能、血中脂質、血糖など)
- 尿検査
- 心電図検査(年齢等により省略基準あり)
これらの法定項目にかかる費用相場は、一般的に一人あたり5,000円から15,000円程度です。基本的な項目だけであれば比較的安価ですが、血液検査の項目が詳しかったり、心電図が必須だったりすると費用は上がる傾向です。
雇入時健診も原則会社負担で費用は定期健診並み
新しく従業員を雇い入れる際に行う「雇入時健康診断」も、会社に実施が義務付けられています。これから一緒に働く方の健康状態を把握し、適切な配置などを考えるために必要な健診です。この費用も、原則として会社が負担すべきものと考えられています。
費用相場は、検査項目が定期健康診断とほぼ同じであるため、こちらも一人あたり5,000円から15,000円程度が目安です。採用候補者に「健診費用は自己負担でお願いします」と伝えてしまうと、入社をためらわれたり、法的な観点から問題視されたりする可能性も考えられます。
スムーズな採用活動のためにも、会社負担を基本とするのが一般的でしょう。
特殊健診も会社負担で費用は検査内容次第
一般的な健診とは別に、特定の「有害業務」に従事する従業員に対して行うのが「特殊健康診断」です。これも法律で定められた義務であり、費用は会社が全額負担する必要があります。
これは、例えば、有機溶剤や鉛などの化学物質を扱う、粉じんが舞う場所で作業する、強い騒音や振動にさらされる、といった特定の業務が対象です。
その業務特有の健康リスクを調べるための専門的な検査を行うため、費用はまさにケースバイケースです。一般的な定期健診よりも検査項目が多く複雑になるため、費用は高額になることが多く、一概に相場を示すのは難しいのが実情となっています。
例えば、放射線業務に従事する方であれば、被ばく線量の測定など特殊な検査が必要となり、それに応じた費用が発生します。
会社で行う健康診断費用の負担区分
会社の健康診断費用は、法律で定められたものは会社が負担する、というのが基本ルールでしたね。しかし、実際の現場では「じゃあ、人間ドックの費用は?」「オプション検査や再検査はどうなるの?」といった、具体的な線引きで迷う場面が出てくるのではないでしょうか。
この費用負担のルールをはっきりさせておかないと、従業員から「これは会社負担だと思ったのに…」といった声が上がったり、不公平感が出たりするかもしれません。会社としての方針を定め、就業規則に明記するなど、従業員にしっかりと伝えておくことが大切です。
ここでは、法定健診、人間ドック、オプション、再検査といった具体的なケース別に、費用負担の境界線について、分かりやすく整理していきます。
- 法定健診項目の費用は必ず会社負担
- 人間ドック費用は自己負担原則だが会社補助も可能
- オプション検査費用は従業員の自己負担が基本
- 再検査や精密検査費用に会社負担義務はない
法定健診項目の費用は必ず会社負担
健康診断費用の負担を考える上で覚えておかなければいけないのが、法律で会社に義務付けられている「法定健診」の費用は、理由を問わず、必ず会社が全額負担しなければならない、ということです。
毎年行う定期健診や入社時の雇入時健診に含まれる、問診、身体測定、血液検査といった基本的な検査項目について、これらの費用を従業員に負担させることはできません。
人間ドック費用は自己負担原則だが会社補助も可能
法定健診より詳しく検査できる「人間ドック」ですが、これは法律で定められた義務ではありません。そのため、会社が費用を負担する法的な義務はなく、基本的には従業員の自己負担となります。
とはいえ、従業員の健康をより手厚くサポートするために、会社が福利厚生の一環として費用を補助するケースは多く見られます。「勤続〇年以上の希望者には、費用の半額(上限〇万円)を補助する」といった制度を設けるなど。こうした補助は従業員の満足度向上にも繋がるでしょう。
ただし、会社が補助を行う場合は、特定の従業員だけでなく公平な条件で提供すること、補助額が高額すぎないこと、企業から医療機関へ直接支払うことなどが、福利厚生費として認められるポイントです。
オプション検査費用は従業員の自己負担が基本
法定健診に加えて、個人の希望や必要に応じて追加する「オプション検査」(がん検診や婦人科検診など)の費用も、人間ドックと同様に、会社に法的な負担義務はありません。
したがって、従業員が「この検査も追加で受けたい」と希望した場合、その費用は自己負担でお願いするのが基本となります。もちろん、会社として「従業員の健康のためにこの検査は受けてほしい」と考え、福利厚生として費用を補助することは可能です。
再検査や精密検査費用に会社負担義務はない
健康診断の結果、「要再検査」「要精密検査」と判定されることがあります。この、再検査や精密検査にかかる費用については、会社に法律上の負担義務はありません。
健康診断の会社の義務は、あくまで病気の疑いを見つける「一次検査」まで。その後の詳しい検査や治療は、従業員自身が健康保険を使って医療機関で受けるのが原則となります。
しかし、「再検査を受けずにいたら、病気が進行してしまうかもしれない」といった懸念から、会社が任意で費用を補助するケースもあります。例えば、「再検査費用のうち、初回の〇〇検査までは会社が負担する」というルールを設けるなどです。
会社で行う健康診断費用の経費処理
会社が従業員の健康診断費用を負担した後、次に気になるのが「この費用、ちゃんと経費にできるの?」という点ではないでしょうか。経理担当者だけでなく、人事担当者としても、費用がどのように処理されるのか、基本的なルールは知っておきたいところです。
結論から言うと、会社が負担した健康診断費用は、一定の条件を満たせば「福利厚生費」として経費(損金)に計上することが可能です。経費として認められれば、会社の利益を計算する上で差し引かれ、結果的に法人税などの税負担を軽くすることにつながります。
ただし、「健康診断なら何でもOK」というわけではなく、注意すべき点もあります。
ここでは、健康診断費用を正しく経費処理するためのルールや注意点について、具体例を挙げながら分かりやすく解説していきます。
- 要件満たせば福利厚生費として経費にできる
- 勘定科目は福利厚生費が一般的だが例外もある
- 役員のみ高額健診は給与課税に注意
- 特定者のみ高額健診は福利厚生費にできない
要件を満たせば福利厚生費として経費にできる
会社が負担した健康診断費用を「福利厚生費」として計上するためには、それが「従業員全員のためのもの」であり、「常識的な範囲内」であると認められる必要があります。
具体的には、以下の点を満たしているかチェックしましょう。
- 対象者:一部の役員や特定の従業員だけでなく、原則として全従業員に健康診断を受ける機会が平等に与えられていること(年齢など合理的な基準で対象を区切るのはOK)
- 費用:健康診断の内容が、健康管理上必要なレベルであり、その費用が社会一般的に見て高額すぎないこと(一般的な健診費用から著しくかけ離れたVIP向けドックなどは注意)
- 支払い:会社が直接、医療機関(健診機関)に費用を支払っていること(従業員立替払いより直接払いがベター)
例えば、全従業員を対象とした一般的な定期健康診断の費用を、会社が健診機関に直接支払っていれば、福利厚生費として経費計上できる可能性が高いです。
勘定科目は福利厚生費が一般的だが例外もある
健康診断費用を経費として計上する場合、帳簿にはどの「勘定科目」を使えばいいのでしょうか。
最も一般的なのは、やはり「福利厚生費」です。健康診断が従業員の福利厚生の一環である、という性質をそのまま表す科目だからです。多くの会社ではこの科目を使っているのではないでしょうか。
ただ、会社によっては他の勘定科目を使っているケースも考えられます。社会保険料などと一緒に「法定福利費」で管理したり、「衛生費」「保健衛生費」といった科目を使ったり。どの科目を使うかは会社の会計ルール次第ですが、大切なのは、一度決めた科目を継続して使うことと、それが福利厚生目的の支出であることを明確にしておくことです。
役員のみ高額健診は給与課税に注意
経費処理で特に気をつけたいのが、役員だけが受ける健康診断のケースです。もし、社長や取締役といった役員だけが、一般の従業員とは比べものにならないほど高額な人間ドックなどを受けて、その費用を会社が負担した場合、それは福利厚生費とは認められません。
これは、税務上「役員個人への給与」と同じように扱われる可能性が高いのです。そうなると会社はその費用を経費にできず、さらに役員個人にも所得税などが課税される、という結果になる可能性があります。
「役員の健康は会社の要だから」という理由で、毎年数十万円の特別コースを会社負担にしていると、税務調査で指摘されるリスクがあるため注意しましょう。
特定者のみ高額健診は福利厚生費にできない
役員に限らず、特定の立場の従業員だけが特別に高額な健康診断を受けている場合も、同様に注意が必要です。
「営業成績トップの社員だけ、会社負担でプレミアム人間ドックへご招待」といった制度は、福利厚生費としてはNGです。その特定の社員への「給与」とみなされてしまいます。
たとえ会社からの「ご褒美」のつもりでも、税務上はそう判断されないので注意しましょう。
会社で行う健康診断の費用に関するよくある質問
ここまで健康診断費用の基本ルールや負担区分、経費処理について見てきました。それでも、実際の現場では「こういう時、どうすればいいの?」と迷うケースがあります。
ここでは、担当者が日頃「これってどうなんだろう?」と感じやすいポイントや、よくある質問を選びました。具体的な疑問についてQ&A形式で解説していきます。
- 健康診断を受けなかった社員がいる場合その分の費用負担はどう考えますか?
- 会社が負担すべき健康診断費用を従業員の給与から天引きできますか?
- 健康診断の費用が医療機関によって異なるのはどのような理由からですか?
- 退職が決まっている従業員の健康診断費用も会社が負担しなければなりませんか?
- 健康診断を受けている時間中の賃金は支払う義務がありますか?
- 海外に派遣する従業員の健康診断費用は会社が負担すべきですか?
- ストレスチェックと同時に健康診断を行う場合の費用はどうなりますか?
健康診断を受けなかった社員がいる場合その分の費用負担はどう考えますか?
従業員が健康診断の受診を拒否した場合、会社がその費用を負担する必要はありません。ただし、会社としては、まず従業員に受診を強く勧める義務があります。
「忙しいから」「面倒だから」といった理由で受けたがらない従業員もいるかもしれません。その際は、なぜ健康診断が必要なのかを丁寧に説明したり、受診しやすい日時を複数提示したりするなど、受診に向けた働きかけが大切です。
会社が負担すべき健康診断費用を従業員の給与から天引きできますか?
この行為は法律上認められていません。
労働基準法第24条には「賃金全額払いの原則」があり、法律で定められているもの(社会保険料や税金など)や、労使協定で明確に定められたもの以外を、会社が一方的に従業員の給与から差し引くこと(天引き)は原則として禁止されています。
会社負担が義務付けられている法定健診の費用は、この「労使協定で定めれば天引きできるもの」には該当しないと考えるのが一般的です。
健康診断の費用が医療機関によって異なるのはどのような理由からですか?
健康診断の費用は、医療機関によって意外と差があるものです。健康診断が自由診療であり、公的医療保険が適用されないサービスだからです。各医療機関が自由に価格を設定できます。
価格差が生まれる理由としては、以下のような点が考えられます。
- 設備:最新のMRIやCTスキャンがあるか、など
- 立地:都心の一等地か、郊外か
- 人件費:経験豊富な専門医やスタッフが多いか
- サービス:結果説明が丁寧か、待ち時間が短いか、施設が綺麗か
- 検査項目:基本プランにどこまでの検査が含まれているか
安さだけで選ぶのではなく、こうした点も考慮して、自社のニーズや予算に合った医療機関を選ぶことが大切になります。
退職が決まっている従業員の健康診断費用も会社が負担しなければなりませんか?
これは判断に迷うところかもしれませんが、ポイントは「健康診断の実施基準日に、その従業員が在籍しているか」です。
会社が定めた基準日(例えば「毎年10月1日現在の在籍者」など)に在籍していれば、たとえその後に退職することが決まっていても、原則として健康診断を受けさせる義務があり、費用も会社が負担します。
基準日が10月1日で、11月末に退職予定の従業員も、10月1日時点では在籍しているので対象となるわけです。
健康診断を受けている時間中の賃金は支払う義務がありますか?
法律上、明確な支払い義務まではありません。
しかし、厚生労働省の資料によると「受診がスムーズに進むよう、賃金を支払うことが望ましい」という見解を示しています。賃金が支払われないとなると、従業員が受診をためらってしまうかもしれません。
もし支払わない方針にする場合は、後々のトラブル防止のため、就業規則などにその旨を明記しておくのが良いでしょう。
海外に派遣する従業員の健康診断費用は会社が負担すべきですか?
はい、その通りです。従業員を6ヶ月以上海外へ派遣する場合、派遣前と帰国後に健康診断を受けさせる義務が会社にはあり、その費用は会社が負担しなければなりません。
これは労働安全衛生法で定められた法定健診の一種です。従業員をアメリカ支社に1年間派遣する場合、派遣前と帰国後に、通常の定期健診項目に加えて、現地の状況に応じた検査項目(感染症など)を含めた健康診断を受けさせる必要があります。
ストレスチェックと同時に健康診断を行う場合の費用はどうなりますか?
ストレスチェックと健康診断、どちらも従業員の健康管理に重要ですが、費用負担の考え方は別々です。同時に実施したからといって、ルールが変わるわけではありません。
まず、ストレスチェックの実施費用(調査票の準備や結果分析、外部委託費など)は、法律により全額会社負担と定められています。
一方、健康診断の費用は、これまで見てきた通り、法定健診分は会社負担、オプション検査などは原則自己負担となります。
同じ日に両方実施して会場費などを節約できたとしても、それぞれの費用負担の原則は変わりません。
会社の健康診断にかかる費用のまとめ
ここまで、会社の健康診断費用に関する様々なルールや考え方、注意点について解説してきました。最後に、特に重要なポイントを簡単におさらいしておきましょう。
まず、法律で定められた健康診断(法定健診)の費用は、必ず会社が全額負担しなければなりません。これは従業員の雇用形態(正社員、パートなど)に関わらず、一定の条件を満たせば対象となる大切な義務です。
次に、人間ドックやオプション検査といった法定外の健診費用については、会社に負担義務は原則ありません。福利厚生として任意で補助することは可能ですが、その場合は公平なルール作りが重要となります。
また、会社が負担した費用は、全従業員が対象であるなど一定の要件を満たせば「福利厚生費」として経費計上が可能です。ただし、役員や特定の従業員だけを対象とした高額な健診は、給与として扱われ課税対象となるリスクがある点に注意が必要でしょう。
健康診断は、単なる義務の履行ではなく、従業員の健康を守り、働きやすい職場を作るための重要な投資でもあります。費用に関する正しい知識を持ち、適切に対応していくことが、会社の健全な発展にもつながるでしょう。
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