長時間労働者の産業医面談を徹底解説!対象基準から企業の義務と対応策まで

長時間労働は、現代の日本企業が抱える重要な課題の一つです。従業員の心身の健康を損ない、最悪の場合、過労死といった深刻な事態を招くリスクも潜んでいます。

こうした状況に対応するため、労働安全衛生法では「産業医による面接指導制度」が設けられました。特に、一定時間を超えて働く従業員に対しては、この面接指導(産業医面談)の実施が企業の義務となるケースがあります。

人事担当者の皆様にとって、この制度を正しく理解し運用することは、単に法令を遵守するだけでなく、従業員の健康を守り、休職や離職を防ぐ上で非常に重要です。

さらに、健康で働きやすい職場環境を整備することは、生産性の向上や企業イメージの向上にも繋がるでしょう。

この記事では、長時間労働者に対する産業医面談の必要性、対象者の基準、具体的な実施手順、そして実施にあたっての注意点などを、人事担当者の皆様にも分かりやすく解説していきます。

また、これらの課題解決として、産業医の紹介や、全国どこでも面談予約・実施・意見書管理までシステム上で実施可能で、オンライン産業医面談が利用できる「first call」の活用も効果的です。

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目次[非表示]

  1. 長時間労働で産業医面談が必要な理由
    1. 重い健康障害を防ぐため
    2. 法律で企業の義務とされているため
    3. 社員の健康を守る重要な制度であるため
  2. 産業医面談対象となる長時間労働の基準
    1. 月80時間超残業し本人が希望した場合
    2. 複数月平均で月80時間超残業した場合
    3. 研究開発者は月100時間超で申出なしで実施が義務
    4. 高度プロフェッショナル制度対象者も月100時間超で申出なしで実施が義務
    5. 派遣社員の面談は派遣元企業の義務
    6. 基準未満でも会社判断で面談可能
  3. 長時間労働者の産業医面談実施の流れ
    1. Step1:会社の労働時間把握
    2. Step2:産業医への情報提供
    3. Step3:従業員本人への通知
    4. Step4:会社から面談の申し出を促す
    5. Step5:従業員からの面談申し出
    6. Step6:産業医による面接指導
    7. Step7:会社による事後措置の実施
    8. Step8:面談記録の作成と保管
  4. 長時間労働者の産業医面談実施時の注意点
    1. 面談実施体制の準備が必要
    2. 面談中の給与支払いは必要
    3. プライバシー保護と守秘義務の徹底
    4. 面談による不利益な扱いをしない
  5. 【まとめ】長時間労働者の産業医面談で社員と会社を守る

長時間労働で産業医面談が必要な理由

長時間労働で産業医面談が必要な理由

なぜ、長時間働く従業員に産業医面談が必要なのでしょうか。

それには、法律上の義務という側面だけでなく、従業員と会社双方にとって重要な理由があります。

重い健康障害を防ぐため

長時間の労働は、心臓や脳の病気、メンタルヘルスの不調といった深刻な健康問題を引き起こすリスクを高めます。特に、時間外労働が月80時間を超えるような場合は注意が必要です。

産業医面談は、こうした健康障害が起こる前に、専門家である産業医が従業員の疲労やストレスの状況を確認し、早期に対策を講じることを目的としています。問題が大きくなる前に手を打つ、予防のための大切な取り組みと言えるでしょう。

法律で企業の義務とされているため

一定の基準を超える長時間労働者への産業医面談は、労働安全衛生法で定められた企業の義務です。

具体的には、第66条の8に面接指導の実施が、第66条の10には面談結果に基づく事後措置(働き方の調整など)が規定されています。この義務を怠ると、法律違反として罰則の対象となる可能性があります。

万が一従業員が過労で健康を害した場合、企業が安全への配慮を怠ったと判断され、法的な責任を問われるリスクも高まります。法令を守るためにも、この制度の確実な実施が求められます。

社員の健康を守る重要な制度であるため

産業医面談は、法律で決められているだけでなく、会社が従業員の健康を守るための重要な手段です。

従業員にとっては、自分の働き方が健康にどう影響しているか、専門家である産業医に相談できる良い機会となります。会社にとっては、従業員の健康を維持し、生産性の低下や離職を防ぐことに繋がります。

従業員の健康を大切にする姿勢を示すことは、会社の評判を高める上でも役立つでしょう。

産業医面談対象となる長時間労働の基準

産業医面談対象となる長時間労働の基準

どのような場合に産業医面談の対象となるのか、具体的な基準を見ていきましょう。

※上記は主な基準です。詳細は関連法規・通達をご確認ください。

月80時間超残業し本人が希望した場合

基本的な基準として、1ヶ月の時間外・休日労働が80時間を超え、かつ疲労が溜まっている従業員が、自ら面談を希望した場合が挙げられます。

この「80時間超」は健康リスクが高まる目安です。この基準では、従業員からの申し出があって初めて、会社に面談実施の「義務」が生じます。

ただし、会社は対象者に面談の権利があることを知らせ、申し出を促すことが望ましいとされています。

複数月平均で月80時間超残業した場合

1ヶ月だけ突出していなくても、慢性的な長時間労働もリスクとなります。

そのため、最近の数ヶ月(例:2~6ヶ月)の時間外・休日労働の月平均が80時間を超える場合も、面談の申し出の対象となり得ます。

継続的に負担が大きい従業員を見逃さないための基準です。

研究開発者は月100時間超で申出なしで実施が義務

研究開発業務に携わる従業員については、より厳しい基準があります。

時間外・休日労働が1ヶ月で100時間を超えた場合、本人の申し出がなくても、会社は面談を実施しなければなりません。

業務の特性上、特に健康リスクが高いと考えられるため、会社が積極的に介入する必要があるという判断に基づきます。

高度プロフェッショナル制度対象者も月100時間超で申出なしで実施が義務

高度プロフェッショナル制度」の対象者も、労働時間ではなく「健康管理時間」という指標で管理されます。

この健康管理時間が、時間外・休日労働に換算して月100時間を超えた場合、研究開発者と同様に、本人の申し出なしで面談を実施する義務があります。柔軟な働き方であっても、過度な負荷がかかる場合は健康確保措置が必要という考え方です。

派遣社員の面談は派遣元企業の義務

派遣社員の場合、実際に働いているのは派遣先企業ですが、産業医面談の実施義務は、雇用契約を結んでいる派遣元企業にあります。

派遣元は、派遣先から労働時間情報の提供を受けるなどして状況を把握し、基準に該当すれば面談を実施する必要があります。派遣先との連携が重要になります。

基準未満でも会社判断で面談可能

法律の基準(月80時間超など)に達していなくても、会社が独自に面談を実施することは可能です。

例えば、月60時間を超える残業が続く従業員や、健康不安を訴える従業員に面談の機会を提供することは、より積極的な健康管理として有効でしょう。

長時間労働者の産業医面談実施の流れ

長時間労働者の産業医面談実施の流れ

産業医面談は、以下の流れで進められます。会社はこの手順を理解し、適切に運用することが大切です。

Step1:会社の労働時間把握

まず基本となるのは、従業員の労働時間を正確に把握することです。

タイムカードやPCログなど客観的な方法で記録し、時間外・休日労働時間を計算します。

厚生労働省のガイドラインに基づき、適切な管理体制を整えましょう。

Step2:産業医への情報提供

集計の結果、面談基準(月80時間超、月100時間超など)に該当する従業員がいたら、会社はその従業員の労働時間情報を産業医へ提供しましょう。

Step3:従業員本人への通知

基準に該当した従業員本人にも、会社は労働時間に関する情報を遅滞なく(通常、集計後1ヶ月以内を目安に)通知します。

特に月80時間超(100時間以下)の場合は、面談を受ける権利があることも伝えましょう。

Step4:会社から面談の申し出を促す

月80時間超(100時間以下)で本人の申し出が必要な場合、会社は対象従業員に面談の申し出を勧めることが望ましいです。

面談の意義などを説明し、申し出やすい雰囲気作りが大切になります。

Step5:従業員からの面談申し出

月80時間超(100時間以下)の場合、従業員は通知を受けてから原則1ヶ月以内に面談を申し出ます。

申し出の方法は会社のルールに従います。(月100時間超の義務的な面談では、このステップは不要です。)

Step6:産業医による面接指導

申し出があった場合(80時間超)、または基準に該当した場合(100時間超)、会社は速やかに産業医による面談を設定・実施します。

面談では、産業医が勤務状況や健康状態を聞き取り、必要なアドバイスを行います。

Step7:会社による事後措置の実施

面談後、産業医は従業員の健康を守るために必要な措置(働き方の調整など)について、会社に意見を述べます。

会社はこの意見を尊重し、労働時間短縮や作業転換など、必要な措置を講じる義務があります。これが面談を実効性のあるものにするための重要なポイントです。

Step8:面談記録の作成と保管

会社は、面談の結果(日時、産業医名、対象者名、産業医の意見、講じた措置など)を記録し、5年間保存する義務があります。

この記録は法令遵守の証拠となり、プライバシーに配慮して管理する必要があります。

長時間労働者の産業医面談実施時の注意点

産業医面談制度を適切に運用するために、会社が注意すべき点がいくつかあります。

面談実施体制の準備が必要

スムーズに面談を実施できるよう、社内体制を整えておくことが不可欠です。

労働時間の把握方法、対象者への通知、産業医との連携、事後措置の手順、記録保管方法などを明確に定めておきましょう。

面談中の給与支払いは必要

従業員が産業医面談を受ける時間は、労働時間とみなされるのが一般的です。

会社の義務に関連して行われるため、所定時間内はもちろん、時間外に行われた場合も賃金の支払いが必要です。

プライバシー保護と守秘義務の徹底

面談では健康に関する個人情報が扱われるため、プライバシー保護には最大限配慮し、厳格な管理が求められます。

産業医には守秘義務があり、本人の同意なく情報を漏らすことは原則できません(業務上必要な意見具申を除く)。

従業員が安心して話せる環境作りが大切です。

面談による不利益な扱いをしない

会社は、従業員が面談を申し出たり、受けたりしたことを理由に、解雇や降格など不利益な扱いをしてはいけません。

これは法律で禁止されています。安心して制度を利用できる環境を保障することが会社の責任です。

【まとめ】長時間労働者の産業医面談で社員と会社を守る

長時間労働者への産業医面談は、形式的な手続きというだけではありません。過労による深刻な健康問題を未然に防ぎ、従業員の健康と安全を守るための、法律で定められた重要な取り組みです。

企業にとっては、月80時間超の労働者からの申し出があった場合や、研究開発者などで月100時間を超えた場合の義務的な面談など、基準に基づき確実に実施することが法令上の責任となります。派遣社員については派遣元に義務がある点も重要です。

この制度を適切に運用するには、労働時間の把握から始まり、産業医への情報提供、従業員への通知、面談実施、そして産業医の意見に基づく事後措置、記録保管までの一連の流れを確実に実行することが求められます。

その際、実施体制の整備、面談時間中の給与支払い、プライバシーと守秘義務の徹底、不利益取扱いの禁止といった点に注意を払う必要があります。

長時間労働者への産業医面談を適切に行うことは、法令を守るだけでなく、従業員の健康を守り、働きやすい職場を作るという企業の社会的責任を果たすことにも繋がります。従業員の意欲向上や生産性の維持、さらには会社の持続的な成長にも貢献する、重要な取り組みと言えるでしょう。

この制度を正しく理解し、効果的に運用していくことが、従業員と会社のどちらも守るポイントとなります。

従業員の健康管理体制の整備や相談体制の構築といった課題解決に向けては、産業医の紹介や、全国どこでも面談予約・実施・意見書管理までシステム上で実施可能で、オンライン産業医面談が利用できる「first call」を活用することが効果的です。

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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。

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