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健康診断で産業医が行う4つの業務とは

労働者数50人以上の事業場で実施される定期健康診断の有所見者の割合は、2021年時点において58.7%となっており、2017年から右肩上がりで増加しています。

健康リスクが高い労働者を見逃さないようにするには、産業医が専門的な立場から健康確保に向けた活動を行うことが求められます。

企業の人事・労務部門では、「健康診断に関する産業医の役割について再度認識を深めたい」と取り組まれている方もいるのではないでしょうか。

本記事では、法令で定められた健康診断の義務を踏まえつつ、産業医が行う4つの業務について解説します。

出典:厚生労働省『働き方改革関連法により 2019年4月1日から「産業医・産業保健機能」と「長時間労働者に対する面接指導等」が強化されます』/厚生労働省 兵庫労働局『令和3年 定期健康診断における有所見率の状況


目次[非表示]

  1. 健康診断は事業者の義務
  2. 健康診断の対象者
  3. 健康診断での産業医の業務
    1. ①健診結果に基づいた診断判定
    2. ②受診勧奨・保健指導
    3. ③産業医面談
  4. まとめ


健康診断は事業者の義務

労働安全衛生法』第66条において、事業者は労働者に対して医師による健康診断を実施する義務があると定められています。

健康診断の目的は、労働者の健康状態を把握して、業務に起因する事故・疾病の防止、早期発見を行うとともに、職場環境の改善につなげることです。

健康診断の実施後、有所見者に対して保険指導や結果に基づいた健康管理を行うことで、健康障がいの防止につなげることが可能です。また、必要に応じて再検査の受診勧奨や就業上の措置を行うことで、健康被害の拡大を防げるようになります。

なお、企業での実施が義務づけられている健康診断は、職種にかかわらず実施する一般健康診断と、特定の業務に従事する労働者を対象とした特殊健康診断があります(そのほかにも、従業員を対象とする健康診断には、健保主体で行われる特定健康診査や、義務ではありませんが厚生労働省の発出する各種ガイドラインなどに付随する健診などもあります)。

定期健康診断は一般健康診断に該当して、『労働安全衛生規則』第44条に基づいて、1年に1回の実施が事業者に義務づけられています。

一般健康診断の種類については、こちらの記事で詳しく解説しています。

  職場での健康診断は義務! 実施の目的と5つの健康診断を解説 従業員の健康状態を把握して健康保持に努めるために、企業には健康診断の実施が義務付けられています。本記事では、健康診断の義務や種類、実施の目的について解説します。 first call

出典:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』『労働安全衛生規則』/厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』/厚生労働省 石川労働局労働局『労働安全衛生法に基づく健康診断に関する FAQ



健康診断の対象者

事業者が1年に1回実施する定期健康診断の対象者は、常時使用する労働者と定められています。正社員に限らず、契約社員、アルバイト・パートなど、一定の条件を満たす場合には健康診断の実施が必要です。

常時使用する労働者には、以下2つの要件を満たす労働者が該当します。


▼常時使用する労働者の要件

  1. 労働契約の期間に定めのない労働者、または1年以上使用予定のある労働者(更新によって1年以上使用されている労働者も含む)
  2. 1週間の労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数に対して4分の3以上ある労働者


ただし、要件2に該当しない場合でも、要件1に該当して、かつ1週間の労働時間が同種の業務に従事する通常の労働者の1週間の所定労働時間数に対しておおむね2分の1以上ある場合は、健康診断の実施が望ましいとされています。

健康診断の対象者については、こちらの記事で詳しく解説しています。併せてご確認ください。

  【人事総務担当者必見】健康診断の対象者はどこまで? 実施義務がある従業員とない従業員 事業者は労働者に対して、医師による健康診断を受けさせる義務があります。健康診断を受けさせることは、労働者の心身の健康を守ることにつながるため大切です。 しかし、「派遣社員やアルバイト・パートは対象なのだろうか」「健康診断を実施しない場合はどうなるのだろうか」といった疑問を持たれている人事・総務担当者の方もいるのではないでしょうか。 この記事では、健康診断の実施義務がある対象者や、健康診断の種類などを解説します。 first call

出典:厚生労働省 石川労働局労働局『労働安全衛生法に基づく健康診断に関する FAQ』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』『労働安全衛生規則』/厚生労働省 東京労働局『Q16.一般健康診断では常時使用する労働者が対象になるとのことですが、パート労働者の取り扱いはどのようになりますか?



健康診断での産業医の業務

産業医は、労働者の健康管理を行う医学的な知識を持つ専門家として、健康診断に関わる有所見者への対応や事業者への意見通知などを行います。

ここからは、健康診断での産業医の業務について解説します。

出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集


①健診結果に基づいた診断判定

健康診断の実施後、労働者から自発的に提出された健診結果に基づいて、産業医による診断判定(就業判定)を行います。

就業判定では、健診機関の医師による判定区分が有所見者にあたる労働者について、就業措置が必要と思われる対象者を選定します。

就業措置が不要と考えられる労働者については、必要に応じて保健師や衛生管理者への対応方針を指示します。

就業上の措置は、通常業務・就業制限・要休業という3つの判定区分から、労働者の事情を考慮したうえで決定します。


▼就業上の措置の判定区分

画像引用元:厚生労働省『一般健康診断結果を用いた就業措置区分の判定について


また、産業医が就業上の措置を検討する際は、保健師やそのほかの部署と連携を図り、情報共有を行います。

出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』『一般健康診断結果を用いた就業措置区分の判定について』/国土交通省『産業医の職務と具体的機能


②受診勧奨・保健指導

就業措置で「就業制限や休業」とならなくても、受診勧奨の徹底をするように助言したり、健康面について指導を行ったりすることも産業医の業務です。

健康診断未受診の労働者への対応ルールについては、事前に衛生委員会で策定したうえで、産業医に周知しておくことが必要です。

そのルールを踏まえて、産業医は、衛生管理者や保健師に対して受診勧奨を徹底するように助言・指導を行います。

出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集』/国土交通省『産業医の職務と具体的機能


③産業医面談

健康診断の有所見者のうち、就業措置の検討対象となる労働者に対して、産業医面談を実施します。

産業医面談は、就業上の具体的措置を検討するために、労働者が抱える健康課題を把握することが目的です。

また、所見の有無にかかわらず、健康相談を希望する労働者に対しても、産業医による相談対応を実施するのが望ましいといえます。

出典:厚生労働省『産業保健活動をチームで進めるための実践的事例集



まとめ

この記事では、健康診断について以下の内容を解説しました。


  • 健康診断の実施義務
  • 受診対象者の要件
  • 健康診断での産業医の業務


健康診断は、労働者の業務に起因する事故や疾病を防止・早期発見して、健康被害の拡大を防ぐ、また職場環境の改善につなげる目的があります。

産業医は、健康診断の実施について医学知識を持つ専門家として、有所見者への対応や事業者への意見通知などを行います。

健診結果を活用した労働者の健康管理の促進や、有所見者へのフォロー、医学的な知見に基づいた就業上の措置を実施するために、事業場で産業医制度の活用方法を見直されてはいかがでしょうか。

クラウド型健康管理サービス『first call』では、健診結果をデータ化して、産業医への情報共有をスムーズに行うことが可能です。

健診結果に基づいた診断判定や、産業医面談の対象者の選別にもお役立ていただけます。サービス詳細はこちらをご覧ください。

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