産業医面談を行う3つの基準とは?面談内容も解説
企業は、勤務状況や心身の状況など、一定の基準を満たしている労働者に対して産業医面談を実施する義務があります。
しかし、「産業医面談を行う基準が分からない」「産業医面談とはどのようなものなのかを知りたい」と疑問を持つ担当者の方もいるのではないでしょうか。
従業員の健康を守るには、産業医面談の実施基準や面談内容を十分に理解しつつ、労働者の健康リスクを見逃さないようにすることが重要です。
この記事では、産業医面談の概要をはじめ、実施基準や面談内容を解説します。
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産業医面談とは
産業医面談とは、産業医と労働者が行う面談のことで、“面接指導”とも呼ばれます。
産業医には、労働者の健康管理や作業環境の維持管理などさまざまな職務があり、そのうちの一つに産業医面談があります。
産業医の目的は労働者の健康管理を行うことで、面談はそのために必要な措置の一つです。
出典:厚生労働省『中小企業事業者の為に産業医ができること』『長時間労働者への医師による面接指導制度について』
産業医面談の実施基準
産業医面談の実施においては、実施基準を理解しておく必要があります。ここでは、法令で義務化されている3つの基準を解説します。
①長時間労働者
『労働安全衛生法』第66条8項では、長時間労働者に対して医師による面接指導を実施することが義務づけられています。
第六十六条の八 事業者は、その労働時間の状況その他の事項が労働者の健康の保持を考慮して厚生労働省令で定める要件に該当する労働者(次条第一項に規定する者及び第六十六条の八の四第一項に規定する者を除く。以下この条において同じ。)に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による面接指導(問診その他の方法により心身の状況を把握し、これに応じて面接により必要な指導を行うことをいう。以下同じ。)を行わなければならない。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
長時間労働者に該当する面接指導の対象者は以下のとおりです。
▼面接指導が必要な長時間労働者の条件
- 月80時間超の時間外・休日労働を行ったことで疲労が蓄積している者
- 研究開発業務従事者のうち、1.に当てはまり、かつ月100時間超の時間外・休日労働を行った者
- 高度プロフェッショナル制度適用者のうち、1週間の健康管理時間が40時間を超えて、その超過時間が1ヶ月で合計100時間を超えた者
長時間労働は、メンタルヘルス不調や脳・心臓の疾患のリスクを高めます。長時間労働者に対する面接指導の目的は、長時間労働による健康障害を防ぐことです。
産業医面談を実施して、勤務状況と疲労の蓄積状況、またメンタルヘルスの状況などを把握することで、健康面での適切な指導を行うことが可能になります。
なお、長時間労働者への面接指導の詳細は、こちらの記事で解説しています。併せてご覧ください。
出典:厚生労働省『長時間労働者への医師による面接指導制度について』『過重労働による健康障害を防ぐために』/厚生労働省 こころの耳『長時間労働者、高ストレス者の面接指導について』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
②高ストレス者
事業場でストレスチェックを実施した結果、高ストレス者に該当し、面談を希望した労働者には産業医面談を行う必要があります。
高ストレス者への産業医面談の目的は、メンタルヘルス不調者の発生を未然に防ぐことや、よりよい職場環境を整えることです。
高ストレス者に対して産業医面談を実施することで、産業医が労働者のストレス状況を把握できるほか、労働者が自身のストレス状況を客観的に把握することにもつながります。
なお、ストレスチェックは、常時雇用する労働者が50人以上の事業場にて実施が義務づけられています。ストレスチェック後の面接指導については、こちらの記事で詳しく解説しています。
出典:厚生労働省『医学的知見に基づくストレスチェック制度の高ストレス者に対する適切な面接指導実施のためのマニュアル 2021年9月版』『中小企業事業者の為に産業医ができること』/厚生労働省労働基準局安全衛生部 労働衛生課産業保健支援室『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』
③健康診断後
健康診断の結果、健康上で問題が見られる労働者に対しては、産業医面談を実施することが望ましいです。
事業者は健康診断の結果に問題があると判断される労働者の措置について、3ヶ月以内に医師の意見を聴く必要があります。
健康診断の結果のみでは十分な情報が得られない場合は、産業医面談を実施して情報を聴取するという活用方法があります。
また、医療機関の受診が必要な労働者に対して、面談の場で産業医が受診を促して、保険指導を行うことも可能です。
出典:厚生労働省『中小企業事業者の為に産業医ができること』『健康診断を実施し、事後措置を徹底しましょう』
産業医との面談内容
ここからは、産業医面談での面談内容と、労働者に産業医面談を拒否された場合の対応を解説します。
面談の内容
産業医面談では、労働者の勤務状況や疲労の蓄積状況、メンタルヘルス面をチェックしたうえで、必要な指導を行います。
具体的には、定期健康診断・ストレスチェックの結果、勤務状況など、面談前に得られる情報を整理したうえで、当該労働者の状況を確認します。
産業医面談の具体的な内容は以下のとおりです。
▼産業医面談の内容
長時間労働者の主な面談内容 |
高ストレス者の主な面談内容 |
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なお、産業医面談の内容について、詳しくはこちらの記事で解説しています。ぜひご一読ください。
出典:厚生労働省『過重労働による健康障害を防ぐために』『医師による長時間労働面接指導実施マニュアル』/厚生労働省労働基準局安全衛生部 労働衛生課産業保健支援室『労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル』
労働者に産業医面談を拒否された場合の対応
『労働安全衛生法』第66条の8第2項では、長時間労働者は面接指導を受ける必要があると記されています。
2 労働者は、前項の規定により事業者が行う面接指導を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師が行う面接指導を受けることを希望しない場合において、他の医師の行う同項の規定による面接指導に相当する面接指導を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。
引用元:e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
ただし、対象の労働者に産業医面談を拒否された場合は、面談の目的を明確に伝えて、面談の重要性を理解してもらうことが望ましいといえます。
また、事業者が日頃から労働者との関係性や職場環境に気を配り、産業医面談で労働者自身の体調や悩みを相談しやすい環境をつくることも重要です。
なお、産業医面談を拒否された場合の対応については、こちらの記事で詳しく解説しています。
出典:厚生労働省 こころの耳『Q14:管理職が知っておくべき個人情報保護と安全配慮義務とは?』/e-Gov法令検索『労働安全衛生法』
まとめ
この記事では、産業医面談について以下の内容を解説しました。
- 産業医面談とは
- 産業医面談の実施基準
- 産業医との面談内容
産業医面談は、長時間労働や高ストレス、健康診断の結果など、健康面やメンタルヘルスで問題が見られる労働者に対して実施します。
面談を実施することで、産業医から健康改善の指導や、医療機関の受診を促してもらえます。また、労働者が産業医面談を拒否する場合は、面談の必要性を丁寧に説明して、趣旨を理解してもらうことが大切です。
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