
外資系企業の産業医の選び方は?英語対応と契約範囲の決め方
「英語で相談できる医師が見つかり、これで大丈夫」と思って契約しても、運用が始まってから「頼みたい業務まで対応してもらえない」と気づくことがあります。
外資系企業でも、日本国内の事業場には、日本の労働安全衛生法に基づく産業医の選任ルールが適用されます。
日本法人で人事・労務を担当している方は、医師を探す前に、日本国内の事業場ごとに産業医が必要か、判断しておきたいところです。
その後は、面接指導を誰が担当するか、海外本社へ共有する情報の範囲、訪問回数や翻訳を料金に含めるかどうかを社内で相談します。
社内で産業医業務の範囲を説明する資料を探している方は、first callの資料一覧をご覧ください。
産業医の選任から職場巡視、健康相談までの対応内容は、産業医サービスでご確認いただけます。
この記事でわかること
日本国内の事業場ごとに、産業医が必要になる基準が分かる
英語対応の範囲と、海外本社へ連絡する担当者・方法が分かる
契約に含める範囲、料金、健康情報の共有先に関する注意点を知ることができる
目次[非表示]
- ・外資系企業でも日本国内の事業場に産業医の選任ルールが適用される
- ・常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに産業医を選任する
- ・常時1,000人以上の労働者を使用する事業場は専属産業医を選任する
- ・常時3,001人以上の労働者を使用する事業場は専属産業医を2人以上選任する
- ・法令で定める有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場は専属産業医を選任する
- ・産業医を14日以内に選任し所轄の労働基準監督署へ遅滞なく報告する
- ・産業医に依頼する業務と外資系企業の連絡体制
- ・外資系企業の産業医選びで重視する経験と実績
- ・外資系企業が産業医を選ぶときの契約範囲と費用
- ・英語で行う健康相談と面接指導の担当者・範囲を契約書に書く
- ・海外本社への説明と文書作成の分担を契約書に書く
- ・通訳・翻訳・追加訪問の費用を契約前に聞く
- ・訪問・オンライン・職場巡視・緊急時の対応範囲を契約前に決める
- ・健康情報を誰にどこまで何のために共有するかを契約と社内規程に書く
- ・外資系企業が産業医を探す窓口と料金の内訳
- ・外資系企業の産業医選びで避けたい失敗
- ・外資系企業の産業医選びでよくある質問
- ・【まとめ】外資系企業が産業医を選ぶ前に決めること
外資系企業でも日本国内の事業場に産業医の選任ルールが適用される
ここで迷いやすいのは、会社全体の人数で数えるのかどうかです。
産業医が必要かどうかは、会社全体ではなく事業場ごとに決まります。
医師を探す前に、国内の本社や支店ごとに、働いている人数と仕事の内容を記録しましょう。
人数と業務内容に応じて、該当する選任区分と手続きが決まります。
産業医を置くかどうかだけでなく、選任後の手続きも含め、押さえたいのは次の5点です。
常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに産業医を選任する
常時1,000人以上の労働者を使用する事業場は専属産業医を選任する
常時3,001人以上の労働者を使用する事業場は専属産業医を2人以上選任する
法令で定める有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場は専属産業医を選任する
産業医を選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、選任後は所轄の労働基準監督署へ遅滞なく報告する
まずは、人数の基準を押さえましょう。
常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに産業医を選任する
常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに、医師の中から産業医を選任する必要があります。
外資系企業だからといって、適用外にはなりません。
国内の本社、支店、営業所などがそれぞれ事業場に当たる場合は、拠点ごとに、各事業場で常時働く労働者の人数を数えます。
拠点が複数ある会社では、所在地、事業場の区分、各拠点で常時働く労働者の数を先に記録しておけば、あとで人数を見返すときも、どの拠点の数字かが分かります。
そこから、産業医が必要かを判断しましょう。
常時1,000人以上の労働者を使用する事業場は専属産業医を選任する
常時1,000人以上の労働者を使用する事業場では、専属産業医の選任が必要です。
英語で頼む業務を依頼先と話す前に、まずは事業場ごとに専属産業医が必要かを判断しましょう。
専属産業医が必要になる拠点では、契約を結ぶ前に、頼みたい業務と英語対応の方法を伝え、対応してもらう範囲を契約書に入れておきましょう。
常時3,001人以上の労働者を使用する事業場は専属産業医を2人以上選任する
常時3,001人以上の労働者を使用する事業場では、2人以上の専属産業医の選任が必要です。
この規模なら、医師の人数だけでなく、担当拠点、職場巡視の頻度、健康相談の窓口、海外本社との連絡役も必要です。
医師が複数いるなら、全体の窓口は1人にします。
法令で定める有害業務に常時500人以上の労働者を従事させる事業場は専属産業医を選任する
専属産業医が必要になる基準は、事業場全体の人数だけで決まるわけではありません。
法令で定める有害業務には、深夜業を含む業務、著しい暑熱・寒冷な場所での業務、有害放射線にさらされる業務、有害物を使用する業務などが含まれています。
その業務に常時500人以上が従事している場合は、事業場全体が1,000人未満でも専属産業医が必要です。
業務内容が法律で定める有害業務に当たるか迷ったら、まず社内の安全衛生担当者に相談しましょう。
必要に応じて、所轄の労働基準監督署や労務の専門家にも相談し、その業務に従事する人数を数えます。
専属産業医の基準に当てはまるか、最後に判断しましょう。
産業医を14日以内に選任し所轄の労働基準監督署へ遅滞なく報告する
事業者は、人数の基準に達した日や、産業医が辞めた日など、選任すべき事由が発生した日から14日以内に産業医を選任します。
選任後は、所轄の労働基準監督署へ遅れずに報告する必要があります。
「遅滞なく」は、報告まで14日以内という意味ではありません。
選任後の報告を後回しにしないよう、担当者を割り当て、選任から報告までの手続きを進めましょう。
選任届の具体的な書き方や提出手続きの流れは、産業医選任届の書き方と提出方法で解説しています。
産業医の辞任・解任などに関する報告は、安全衛生規則の改正に関する厚生労働省の通達に基づき、2026年8月1日から運用が変わります。
産業医に依頼する業務と外資系企業の連絡体制
産業医に頼む仕事と英語対応の範囲は、依頼を始める前に話し合いましょう。
各拠点から誰へ、どの方法で連絡するかも同じ段階で決め、社内窓口を1人にします。
健康相談や面接指導の担当体制、海外本社への説明役、求める英語対応の範囲は、企業ごとに異なります。
依頼前に相談するのは、次の2点です。
健康相談を担当する人、面接指導を行う医師、対応する言語
海外本社へ説明する人と、拠点間の連絡方法
まずは、担当者と医師の仕事を分担します。
健康相談と高ストレス者への面接指導を誰がどの言語で担うか決める
産業医の仕事には、健康診断の結果に基づく意見聴取や面接指導、健康相談などが含まれています。
高ストレス者への面接指導は、ストレスチェックで高いストレス状態にあると判定された人が対象です。
医師や保健師などの実施者が面接指導の必要があると判断し、本人が申し出た場合に、医師が面接します。
実際の受付では、英語での健康相談を誰が受けるのかで迷うことも少なくありません。
産業医が直接対応するのか、社内担当者が同席するのか、通訳を付けるのかは、依頼を始める前に分担しておきます。
担当医が決まったら、対象者への案内、予約、通訳は誰が担うのかも書いておきましょう。
役割分担を記録に残し、従業員から相談が来たときは、内容に応じて産業医・社内担当者・通訳へつなぎます。
会社へ伝える情報の範囲と受け取る担当者は、社内で先に決め、保管場所とあわせて書き残しましょう。
原則として共有するのは、診断名や検査値などの詳細な医学情報ではなく、働く時間を短くする、仕事の内容を変えるなど、就業上の措置に必要な医師の意見などです。
詳細な健康情報を共有するときは、本人の同意や社内ルールに沿って、個別に共有してよいか判断しましょう。
英語対応を医師だけに任せず、社内担当者と通訳の役割分担、共有先、保管方法を契約書と社内ルールに書き残しましょう。
依頼先への質問は社内窓口を通して送り、回答も同じ担当者が受け取ります。
海外本社へ説明する担当者を決め拠点間の連絡体制を作る
海外本社への説明を産業医だけに任せると、医師の判断と会社が伝える情報が混ざりがちです。
窓口は日本法人の人事・労務担当者に置き、医師へ質問する内容と、会社側で答える内容を文書に残しましょう。
英語で共有する資料に書く項目は、次のとおりです。
国内拠点の数と対象業務
会議の参加者と報告の頻度
資料を送る担当者と、どの方法で送るか
海外本社から追加の質問が届いたとき、誰が回答をまとめるかも、この資料に入れます。
緊急時に使う電話番号やメールアドレスも忘れずに。
海外本社への説明では、医師と日本法人の担当者が受け持つ仕事を、契約書にも残しておきます。
外資系企業の産業医選びで重視する経験と実績
外資系企業の産業医選びでは、「英語対応あり」と書かれていても、産業保健の仕事をどこまで頼めるかは依頼先を決める前に一度聞いてみましょう。
知りたいのは、英語でどこまで産業保健の仕事をしてきたかです。
面談では、日本の制度を海外本社へ説明した経験と、複数拠点を担当した経験も聞いておきます。
とくに次の3点は、これまでに担当した仕事まで具体的にたずねてみましょう。
英語で健康相談や高ストレス者への面接指導を担当した経験
日本の産業保健制度を海外本社へ説明した経験
多文化の職場や複数拠点への対応経験
面談では、英語で頼める仕事の範囲と、海外本社・複数拠点への対応経験まで具体的に聞き、その内容を踏まえて依頼する業務を選びます。
英語で健康相談や高ストレス者への面接指導を担った経験を聞く
「英語対応可」と書いてあっても、健康相談や面接指導まで英語で頼めるとは限りません。
予約や記録、会社へ医師の意見を伝える業務など、英語で担当した範囲は、面談で具体例を挙げてもらいましょう。
面談では、健康相談に加え、高ストレス者への面接指導を英語で担当した経験も聞きます。
英語対応が一部に限られる場合は、通訳や社内担当者とどのように連携したのか、産業保健のどの仕事を英語で担当したのかを、過去の事例も交えて話してもらいましょう。
自社で頼みたい仕事に対応してもらえるかどうかも、その場で聞くことができます。
日本の産業保健制度を海外本社へ説明した経験はあるか
海外本社へ説明する内容には、産業医の役割、職場巡視、衛生委員会のほか、高ストレス者への面接指導に加え、就業上の措置に関する意見も含まれます。
誰がどこまで伝えるかは、医師と日本法人の担当者で、説明を始める前に分担しておきましょう。
海外本社からの質問に誰が答えるのかも書いておきます。
面談では、説明を行った会議や答えた質問に加え、いつ、どんな資料を使って何を伝えたのかまで、具体的にたずねてみましょう。
医師が意見を伝え、会社が就業上の措置を判断します。
海外本社へ日本の制度を説明した経験だけでなく、どこまで担当したのかも、実際の業務を挙げてもらい、依頼したい仕事の範囲を具体的に相談しましょう。
多文化の職場や複数拠点を担当した実績がある医師を選ぶ
国籍や文化、働き方が異なる従業員がいる職場では、拠点ごとに健康相談の予約方法や連絡先が違うことがあります。
秘密を守るルールの伝え方や、通訳が必要になるかどうかも、依頼先や契約内容によって変わります。
面談で聞くのは、担当した拠点数と実際に受け持った業務です。
予約方法や連絡先だけでなく、各拠点の職場巡視や衛生委員会への関わり方も、面談で聞いておきましょう。
自社の拠点数と依頼内容を伝えたうえで、人数や移動時間を踏まえ、1人でどこまで担当できるかを面談で相談してみましょう。
外資系企業が産業医を選ぶときの契約範囲と費用
産業医の契約では、月額料金や訪問回数だけでなく、依頼する仕事の範囲と追加料金も、契約を結ぶ前にすり合わせておく必要があります。
契約書に残しておけば、契約後も、依頼できる業務と、どの対応に追加料金がかかるかが分かります。
英語で行う業務、海外本社向けの説明、追加訪問、翻訳、健康情報の共有先まで、契約に含める業務を契約前にはっきりさせましょう。
英語対応や翻訳、海外本社への説明などの業務範囲と費用は、法律で一律に決まるものではありません。
会社が頼みたい仕事と費用を、契約書・見積書へ入れないまま進めると、契約後に追加の仕事や費用が出てくることがあります。
口頭で合意した内容も、契約書と見積書に書き入れます。
契約書と見積書に書いておきたいのは、次の5つです。
英語で行う健康相談と面接指導の担当者、仕事の範囲を契約書に書く
海外本社への説明、文書作成の担当者を契約書に書く
通訳・翻訳・追加訪問に費用がかかるかを契約を結ぶ前に聞く
訪問・オンライン・職場巡視・緊急時に頼む業務を契約に含める
健康情報を誰にどこまで何のために共有するかを契約と社内ルールに書く
契約書と見積書に何を書くかは、仕事、費用、情報の順に書いていきましょう。
英語で行う健康相談と面接指導の担当者・範囲を契約書に書く
健康相談と面接指導について、契約書に残したいのは次の4つです。
健康相談と高ストレス者への面接指導の対象者
行う方法
記録を作る人
会社へ渡す情報
高ストレス者への面接指導を担当する医師が産業医なのか別の医師なのかは、契約書を作る前にはっきりさせておきましょう。
予約・通訳・結果の受け取りを社内担当者が担うかどうかも、契約書に書きます。
英語対応では、産業医が直接話す範囲と、通訳を誰が受け持つのかを、契約書を作る段階ではっきりさせましょう。
オンラインで行う相談と、事業場で行う職場巡視は別の業務です。
対応方法、訪問回数、面接指導の回数、対象拠点、対応時間、依頼する言語や方法、契約後の担当者を、見積書と契約書に書きましょう。
海外本社への説明と文書作成の分担を契約書に書く
海外本社向けの説明では、産業医が英語で医師としての意見を伝えるのか、日本法人の人事担当者が内容を翻訳するのかで、作業量と費用に差が出ます。
海外本社向けに契約に含める業務は3つです。
会議への参加と質問への回答
英文資料の作成と資料の翻訳
会議後の修正
医師が伝える意見の範囲、会社が担当する翻訳・事務作業、会議後の修正を誰が担当するかも、契約書に入れましょう。
会議後に修正が出た場合は、契約書に記載した担当者や窓口へ連絡します。
通訳・翻訳・追加訪問の費用を契約前に聞く
通訳、翻訳、追加訪問、時間外対応、キャンセル対応を、通常の料金に含めるか、別料金にするかは、契約を結ぶ前に話しましょう。
追加料金がかかる場合は、回数や時間の数え方まで見積書に書かれているか、その場でたずねましょう。
追加料金について、先に聞きたいのは次の3点です。
料金に消費税が含まれるか
月額で請求するか、回数ごとに請求するか
キャンセル時に費用が発生するか
英語対応や追加訪問を依頼したときの請求時期も、先に聞いておきましょう。
訪問・オンライン・職場巡視・緊急時の対応範囲を契約前に決める
厚生労働省は、パソコンやオンライン会議システムなどの情報通信機器を使って、産業医の仕事の一部を遠隔で行うときの注意点を案内しています。
オンライン対応を契約に含めても、すべての業務をオンラインだけで終えられるとは限りません。
労働安全衛生規則では、職場巡視は少なくとも毎月1回行うことが必要です。
毎月の巡視情報を産業医へ伝える担当者も、契約前に割り当てます。
職場巡視の頻度を少なくとも2か月に1回とする特例を使う場合は、事業者が次の2つの情報を毎月1回以上、産業医へ伝える必要があります。
衛生管理者が行った巡視の結果
衛生委員会などで話し合い、産業医へ伝えることにした情報
これらとは別に、休憩時間を除いて週40時間を超えて働いた時間が1か月80時間を超えた労働者の氏名とその超過時間も、事業者が時間外・休日労働時間数を算定した後、速やかに産業医へ知らせなければなりません。
長時間労働者の情報を産業医へ伝えることは、職場巡視の特例とは別に必要です。
事業者は衛生管理者の巡視結果などを産業医へ伝え、その後、産業医の意見を踏まえ、衛生委員会などで話し合います。
巡視の特例を使うには、産業医が必要な情報を毎月1回以上受け取り、事業者も同意していなければなりません。
この特例で変わるのは職場巡視の頻度だけで、産業医のほかの仕事はそのままです。
契約書には、訪問で行う職場巡視、オンラインで行う会議や相談、対面へ切り替えるタイミング、緊急時の連絡先を書きましょう。
訪問・オンライン・緊急時の範囲が固まったら、健康情報の共有先、送付方法、受け取る担当者も契約書に書きます。
健康情報を誰にどこまで何のために共有するかを契約と社内規程に書く
健康診断の結果、病歴、産業医が健康管理で得た情報などは、いずれも健康情報です。
個人情報保護委員会は、健康情報には慎重に管理する情報が含まれるとしています。
一方で、すべての健康情報が、病歴などの要配慮個人情報に当たるわけではありません。
ただ、要配慮個人情報に当たらない健康情報も、慎重に管理することが望ましいとされています。
海外本社が日本法人とは別の海外の会社の場合、従業員の健康情報などを海外へ渡すことがあります。
その際は、個人情報保護法に沿った手続きが必要になる場合があります。
個人情報保護法でいう「個人データ」は、個人情報データベース等を構成する個人情報です。
本人の同意を得て、海外本社など外国にある第三者へ個人データを渡す場合は、同意するかどうかを判断できるよう、必要な情報を本人へ先に伝えます。
伝えるのは、渡す相手の国、個人情報の保護に関する制度、相手が取る安全対策などです。
本人の同意が必ず必要とは限りません。
法律上、別の手続きが認められる場合もあるため、必要な手続きは個人情報担当者へ相談したうえで、社内で判断しましょう。
海外共有を一律に止めるのではなく、社内の個人情報担当者または法務担当者へ相談するのが先です。
契約書や社内ルールに入れるのは、渡す相手、目的、データの範囲、誰が見られるか、保管場所です。
海外本社へ送る前に、所定の手続きが済んでいるかを、社内の担当部署にたずねたうえで送るようにしましょう。
職場巡視や衛生委員会の運用について相談したい方は、first callの産業医サービスをご覧ください。
外資系企業が産業医を探す窓口と料金の内訳
依頼先へ相談するときは、「英語対応ができるか」だけでなく、対象拠点と頼みたい仕事まで最初に伝えておくと、見積書へ入れる内容も具体的になります。
見積書には、月額料金に含まれる業務と、追加料金が発生する範囲まで書いてもらいましょう。
そこまで書かれていれば、料金の内訳に気になる点があっても、契約を結ぶ前にその場でたずねておけます。
最初から相談先を一つに絞る必要はありません。
依頼先を探すところから契約後の変更まで、順番に押さえたいのは次の3つです。
医師会・医療機関・産業医紹介サービスから依頼先を選ぶ
英語対応の範囲と料金内訳を見積書に書いてもらう
契約更新・産業医の変更・拠点追加時の手続きを契約前に聞く
まず依頼先を探し、次に見積書を取り、最後に契約内容が変わったときの手続きも聞きます。
医師会・医療機関・産業医紹介サービスから依頼先を選ぶ
医師会や医療機関、紹介サービスには、地域や専門分野とのつながりを生かして産業医を紹介している窓口があります。
窓口ごとに、紹介できる地域と依頼できる仕事を聞いたうえで、自社の依頼に合うかどうかを判断しましょう。
複数拠点への対応や、訪問とオンラインの組み合わせを頼みたい場合は、その対応ができるかどうかも、先にたずねましょう。
見積もりを依頼するときに伝える項目は、産業医を専属・非常勤のどちらにするか、職場巡視・衛生委員会・健康相談・高ストレス者への面接指導・英語対応の有無です。
対応地域、拠点数、訪問・オンラインの組み合わせ、英語で対応する業務、契約後の変更窓口を順番に聞いたうえで、内容に納得できる依頼先を選びます。
紹介を受けただけで、業務範囲や料金が決まるわけではありません。
英語対応の範囲と料金内訳を見積書に書いてもらう
見積書に入れてもらいたいのは、次の6つです。
月額の固定料金
固定料金に含まれる業務
訪問回数
対象拠点
対象人数
追加料金の1回あたりの金額
拠点数や対象人数で金額が変わる場合は、金額の決まり方を見積書に残してもらいましょう。
固定料金に含まれる訪問回数や対象業務、時間外対応が見積書に書かれていないと、後から追加費用が発生することがあるためです。
サービス名だけでは、契約に含まれる業務までは分かりません。
見積書と契約書で業務名が一致しているかを、契約前にひとつずつ確かめましょう。
見積書には、総額の内訳と追加料金の計算方法も入れてもらいます。
請求書が届いたときに、見積額との違いを確かめるためです。
契約更新・産業医の変更・拠点追加の対応を契約前に決める
契約期間、更新月、解約の通知期限に加え、産業医を変更する場合の連絡方法や拠点追加時の料金も、契約書に入っているか、契約を結ぶ前に聞いておきましょう。
海外本社との報告会議の回数、日本国内の拠点追加にかかる料金、手続きの進め方も契約書に含めます。
契約後に内容が変わった場合は、口頭だけで済ませず、変更日と追加料金を文書にも残しておきたいところです。
変更後の連絡先も、同じ文書に書き加えます。
変更後の料金がいつから適用されるのかも、忘れずに聞いておきましょう。
外資系企業の産業医選びで避けたい失敗
英語対応を優先するあまり、日本の産業保健の実務や個人情報の管理まで後回しにしていませんか?紹介文だけで依頼先を選ばず、英語で対応できる業務と、日本の法令に沿った実務経験を契約前に聞いておきましょう。
海外本社から依頼が来たときの窓口、送る情報の範囲、送付方法も社内で先に決めます。
特に注意したいのは、英語対応の範囲と健康情報の送付です。
英語対応だけで産業医を選ばない
海外本社へ個人の健康情報をそのまま送る
依頼する仕事と個人データの共有範囲を契約書に含めましょう。
英語対応だけで産業医を選ばない
「英語対応あり」と書かれていても、産業医に頼める仕事の範囲は、契約を結ぶ前に具体的な業務まで聞く必要があります。
契約前には、産業医の選任に関する手続きと、職場巡視、衛生委員会、高ストレス者への面接指導、就業上の措置に関する意見のうち、どこまで依頼するかをはっきりさせます。
見積書と契約書には、英語で頼む仕事の範囲まで書いてもらいましょう。
医師を選ぶときは、英語力だけでなく、日本の法令に沿った実務経験があるかも、面談で聞いてみましょう。
海外本社への報告に個人の健康情報を含める条件を決める
海外本社から個人の診断名や受診内容を送ってほしいと言われても、すぐに共有してよいとは限りません。
本人の同意や、外国にある第三者へ個人データを渡す手続きが必要になることがあります。
日本法人の人事・法務担当者、または個人情報担当者へ、共有先や範囲を事前に相談しておきましょう。
海外本社に返事をする前に、依頼内容、対応する担当者、共有する情報、送付方法を記録に残し、契約書・社内ルールに沿った手続きを済ませてから返事をします。
海外本社から個人データを送るよう頼まれたときは、共有先・目的・情報の範囲について、法務・個人情報担当者へ相談してください。
外資系企業の産業医選びでよくある質問
外資系企業で産業医を選ぶときに問題になるのが、複数事業場を同じ医師が担当できるか、産業医を変更するときに何を引き継ぐかです。
複数事業場で産業医を兼務できるか?
産業医変更時に業務内容と必要な情報をどう引き継ぐ?
以下では、兼務の条件と、産業医が変わるときに引き継ぐ内容を順に説明します。
複数事業場で産業医を兼務できる条件は?
専属産業医が別の事業場の非専属産業医を兼務できるのは、通知にあるすべての基準を満たす場合に限られます。
通知が挙げる基準は5つです。
両事業場の労働衛生管理が密接に関係し、労働の態様が類似していること
一体として産業保健活動を行うことが効率的であること
兼務する事業場の数、対象労働者数、訪問頻度、移動時間が、専属産業医の職務に支障を生じさせないこと
衛生委員会などで調査審議を行っていること
対象労働者の総数は3,000人以下であること
兼務先は、専属産業医の選任が必要な事業場ではなく、非専属事業場に限られます。
企業グループ内の複数拠点というだけでは、産業医の兼務基準を満たしません。
専属産業医を兼務できるかどうかは、産業医の兼務に関する厚生労働省の通知の基準に沿って、各事業場で必要な仕事を担えるかを判断します。
産業医変更時に業務内容と必要な情報をどう引き継ぐ?
引き継ぐ仕事は、職場巡視、衛生委員会への参加、健康相談、高ストレス者への面接指導、会社へ出す意見書などです。
会社が保管する記録と、前任医師が個別に管理する記録では、保管する人が異なることがあります。
後任医師へ渡す範囲と手続きは、個人情報担当者、前任・後任の医師、医療機関で相談しましょう。
健康情報は、必要な担当者だけが見られるようにし、利用目的と共有する範囲を記録に残してください。
前任者のメモや個人的な記録は、そのまま渡すのではなく、必要な情報だけを選んで後任へ渡すようにしましょう。
引き継ぐ情報の種類と保管者は、個人情報担当者を交えて社内で話し合います。
本人への説明や同意が必要かどうかは、法務・個人情報担当者へ相談してください。
【まとめ】外資系企業が産業医を選ぶ前に決めること
まずは、日本国内の事業場ごとに産業医が必要かを判断するところから始めます。
その後、英語対応の範囲を契約書へ記載します。
特に見落としたくないのは、依頼する仕事、契約に含める範囲と費用、海外本社へ共有する健康情報の範囲です。
契約前に社内で共有し、依頼先と相談するのは次の6点です。
各事業場で普段働く人数と、専属産業医が必要かどうか
健康相談と高ストレス者への面接指導を行う言語・担当者
海外本社への説明、会議参加、英文資料作成の分担
訪問、オンライン、職場巡視、緊急時の対応範囲
追加訪問、翻訳、通訳、拠点追加にかかる料金
健康情報の利用目的、共有先、共有する範囲、保管方法
社内で合意したことは、契約書と見積書にも残しましょう。
依頼先へ相談するときは、国内拠点数、各事業場の人数、求める英語対応、訪問・オンラインの希望、海外本社へ共有する情報の範囲を伝えましょう。
見積もりに必要な内容も、その場で伝えられます。
英語対応や複数拠点への支援を含めて産業医をお探しの方は、first callの産業医サービスをご覧ください。
社内で説明するための資料が必要な方は、資料一覧からダウンロードいただけます。

























