
企業の健康リスクとは?従業員の安全と生産性向上のための対策やアプローチも解説
「最近、なんだか社員に元気がないような…」「休んだり、辞めたりする人が増えたかも?」と感じていませんか?もしかしたら、それは「健康リスク」のサインかもしれません。
健康リスクというのは、社員が病気になるということだけではなく、社員の心や体の不調が、会社の経営に色々なマイナスの影響を与えてしまう可能性全体のことなのです。
これは多くの会社が抱えている悩みでもあります。社員の健康問題は、仕事の効率が落ちたり、医療費が増えたり、さらには会社のイメージダウンにも繋がりかねません。
放っておくと、いつの間にか会社の成長を妨げる大きな原因になってしまうこともあるでしょう。
この記事では、会社の担当者の皆さんが「健康リスク」についてもっとよく知って、自分の会社に合った具体的な対策を考えるための情報をお届けします。
法律的な責任の話から、生産性を上げる方法、さらには具体的なリスクの種類や見つけ方まで、分かりやすく説明していきます。
また、これらの課題解決として、産業医の紹介や、全国どこでも面談予約・実施・意見書管理までシステム上で実施可能で、オンライン産業医面談が利用できる「first call」の活用も効果的です。
目次[非表示]
- ・健康リスクとは?
- ・会社が注意したい健康リスクの種類と職場への影響
- ・生活習慣病は社員の仕事に支障をきたすため会社も実態把握が大事
- ・職場のメンタルヘルス不調には総合的な健康リスク評価で組織的な対策を
- ・作業環境の物理的・化学的な要因や気候変動も新しい職場リスクに
- ・会社の雰囲気や人間関係の問題は社員の心の負担を増やす
- ・健康リスクが増えてしまう主な原因
- ・健康リスクが会社の経営に与える影響
- ・会社の健康リスクを把握する方法
- ・健康診断の結果をまとめて分析し社員の健康状態の傾向と職場の課題を見つける
- ・ストレスチェックでストレスが高い人への対応と職場環境の改善に活かす
- ・社員アンケートで健康意識や職場満足度を把握し対策の参考にする
- ・産業医や外部の専門機関と連携して健康管理体制を強化する
- ・企業の健康リスク対策でよくある質問
- ・健康リスク対策の費用対効果はどのように評価できますか?
- ・中小企業でも健康経営に効果的に取り組めますか?
- ・社員が健康診断やストレスチェックを受けるのを嫌がったらどうすればいいですか?
- ・メンタルヘルス不調を抱える社員への具体的な対応手順や注意点は?
- ・【まとめ】社員の健康リスク対策は会社の成長の土台
健康リスクとは?
まずは、「健康リスク」という言葉がどういう意味なのか、そこから見ていきましょう。
これは、社員の健康問題が会社の経営にどんな影響を与えるのか、という視点で考えるのがポイントです。
健康リスクとは社員の不調が経営に影響する可能性のこと
会社でいう「健康リスク」というのは、社員の心や体の調子が悪いことが、会社の経営にマイナスの影響を与えてしまうかもしれない、ということです。
例えば、頭痛や腰痛、目の疲れみたいな体の不調は、本人の仕事の効率を下げるだけではなく、職場の雰囲気を悪くしたり、人間関係がギクシャクしたりする原因になることもあります。
一人の不調が、チーム全体のやる気やコミュニケーションに響いて、結果的に会社全体のパフォーマンスが下がってしまう、ということも珍しくありません。
社員の健康状態は、日々の仕事ぶりはもちろん、職場の雰囲気や人間関係といった広い範囲に影響するのです。
会社の健康リスク対策は法律上の責任と生産性アップに不可欠
会社が社員の健康リスク対策をするのは、「やった方がいいよね」という話だけではありません。
実は、法律で決められた会社の義務でもあるのです。会社には、社員が安全で健康に働けるようにするための「安全配慮義務」というものがあります。
これは、正社員だけではなく、契約社員やパート、アルバイトのように、基本的に会社で働くすべての人に関係してくるのです。
社員のQOL低下は会社の活動全体に影響するため対策が必要
社員のQOL(生活の質)が下がってしまうと、会社の経営にも色々なマイナスの影響が出てきます。
自分に合わない仕事や厳しい労働環境、人間関係のトラブルなどは、社員のQOLを大きく下げてしまう原因になります。QOLが下がると、仕事へのやる気や集中力が落ちて、ミスが増えたり生産性が下がったりします。
もっと深刻なのは、これが会社を辞めるきっかけになってしまうことです。逆に、会社が社員のQOLアップに取り組めば、生産性が上がったり、業績が良くなったり、辞める人が減ったりする効果が期待できて、会社のイメージも良くなるでしょう。
会社が注意したい健康リスクの種類と職場への影響
会社が気をつけなければいけない健康リスクには、様々な種類があります。
ここでは、特に注意したいリスクと、それが職場にどんな影響を与えるのかを見ていきましょう。
生活習慣病は社員の仕事に支障をきたすため会社も実態把握が大事
高血圧や糖尿病のような生活習慣病は、社員個人の問題だけではなく、会社の生産性にも関わる大きな健康リスクです。
偏った食事や運動不足などが原因で起こり、社員の集中力や体力を落として、仕事のパフォーマンスに影響を与えることがあります。
会社としては、健康診断の結果などをしっかりと見て、今の状況を把握し、食事や運動、禁煙サポートみたいな予防策を考えることが、将来の医療費を抑えたり、生産性を保ったりすることにつながるでしょう。
職場のメンタルヘルス不調には総合的な健康リスク評価で組織的な対策を
メンタルヘルス不調は、やる気や集中力を奪って、会社に来ていても本来の力が出せない「プレゼンティーズム」を引き起こしたり、ひどくなると休職や離職につながったりします。
これに対応するためには、THP(トータル・ヘルスプロモーション・プラン)のように、会社全体で計画的に心と体の両面から健康をサポートする取り組みが効果的です。
作業環境の物理的・化学的な要因や気候変動も新しい職場リスクに
職場の健康リスクは、心の問題だけではなく、働く場所の物理的・化学的な環境や、気候変動によっても起こります。
工場での粉じんや化学物質、騒音、振動などは、呼吸器の病気や中毒の原因になることがあります。これらには、法律に基づいた適切な管理が必要です。
さらに、最近の気候変動は熱中症のリスクを増やしたり、感染症のリスクを変えたり、メンタルヘルスにも影響を与える新しいリスクを生んでいます。
会社の雰囲気や人間関係の問題は社員の心の負担を増やす
社員の心の健康リスクは、仕事の内容や量だけではなく、職場の雰囲気や人間関係にも大きく左右されます。
風通しが悪くコミュニケーションが少ない職場は、社員のストレスを増やす原因になるでしょう。
上司や同僚からの助けが少ないと感じたり、コミュニケーションがうまくいかなかったり、パワハラのようなハラスメントがあったりすると、社員の心に大きな負担がかかります。
会社として、相談しやすい雰囲気を作ったり、ハラスメントを許さない体制を作ったりすることが大切です。
健康リスクが増えてしまう主な原因
会社で健康リスクが増えている背景には、いくつかの理由があります。
ここでは、その主な原因を見ていきましょう。
社員の良くない生活習慣は会社の損失につながることも
社員個人の偏った食事、運動不足、タバコ、睡眠不足のような良くない生活習慣は、生活習慣病のリスクを上げるだけではなく、日々の心や体の疲れ、不調にもつながります。
こういった状態は、体調が万全ではないのに出勤して生産性が下がってしまう「プレゼンティーズム」を引き起こして、会社にとって見過ごせない経済的な損害になる可能性があるのです。
長時間労働や仕事の偏りは社員のストレスや疲れを増やす
長すぎる労働時間や、一部の社員に仕事が集中してしまう状況は、社員の心と体に深刻なダメージを与えます。
重すぎる仕事は社員に回復できないほどの「疲れ」を溜め込ませて、強いストレス状態を引き起こすでしょう。
この溜まった疲れとストレスは、脳卒中や心筋梗塞、うつ病のような深刻な健康問題のリスクを上げて、最悪の場合、過労死や過労自殺につながることもあるのです。
社会環境の変化がテクノロジー利用の難しさや新しいコミュニケーション問題を生む
社会の急激な変化、特にテクノロジーの進化と普及は、働き方に便利さをもたらす一方で、新しい健康リスクやコミュニケーションの問題も生んでいます。
テクノロジーに頼りすぎたり、それに伴うストレス(テクノストレス)を感じたり、テレワークが普及したことでコミュニケーションが減って孤独を感じやすくなったりすることが挙げられます。
これらに対応するためには、意識的なコミュニケーション戦略が必要です。
健康リスクが会社の経営に与える影響
社員の健康リスクは、個人の問題だけではなく、会社の経営全体に大きな影響を及ぼします。
ここでは、その具体的な影響を見ていきましょう。
社員の病気は医療費アップや働く力の低下という形で経営を圧迫する
社員の病気や健康問題は、会社の経営に直接的にも間接的にも経済的な負担をかけます。
直接的には、会社が払う健康保険料といった医療費が増える可能性があります。
間接的には、病気やケガで休むこと(アブセンティーズム)や、体調が悪くても出勤して生産性が下がること(プレゼンティーズム)で、働く力が低下して、経営を圧迫するのです。
社員の健康問題は会社の社会的な評判やブランドイメージを損なうことも
社員の健康問題への対応は、会社の社会的な評価やブランドイメージにも直接響いてきます。
投資家や社会全体が会社の持続可能性を見る上で、ESG(環境・社会・ガバナンス)という視点が重要視されており、、社員の健康と安全は「S(社会)」の大事なポイントなのです。
社員の健康をないがしろにする会社は信頼を失ってしまい、逆に健康経営に一生懸命取り組む会社は「社員を大切にする会社」として良い評価を受けやすくなるでしょう。
安全配慮義務違反は労災認定や裁判に発展するリスクあり
会社が社員の安全と健康を守るための「安全配慮義務」を怠ってしまうと、法的な責任を問われて、労災認定されたり、損害賠償を求める裁判を起こされたりするリスクがあります。
厚生労働省が出している過去の裁判例では、危ない作業環境を放っておいたり、働きすぎやハラスメントがあったりしたことが原因で、会社の責任が認められています。
会社は「想定外だった」といった言い訳は通用しないと考えて、法律を守るのはもちろん、もっと広い視野でリスク対策をする必要があります。
会社の健康リスクを把握する方法
会社が効果的な健康リスク対策をするためには、まず自分の会社の社員の健康状態や職場のリアルな状況をしっかりと知ることが必要です。
ここでは、そのための具体的な方法を紹介します。
健康診断の結果をまとめて分析し社員の健康状態の傾向と職場の課題を見つける
会社は法律で社員に健康診断を受けさせる義務があります。
この結果を、個人が特定されないようにまとめて分析(集団分析)すると、会社全体の健康課題や、特定の部署や年齢層の傾向が見えてきます。
分析するときは個人情報にしっかりと配慮して、その結果を健康を良くするための取り組みや職場環境の改善に役立てましょう。
ストレスチェックでストレスが高い人への対応と職場環境の改善に活かす
社員が50人以上の会社に義務付けられているストレスチェック制度は、社員のメンタルヘルスの不調を未然に防ぐための大事な取り組みです。
主な目的は、ストレスが高い人を早く見つけてケアすること(医師との面談など)と、結果をグループごとに分析して職場環境を良くしていくことです。
以下の表は、ストレスチェックで把握される主なストレス要因と、それに対応する改善策の例を示したものです。
主なストレス要因 |
改善策の例 |
---|---|
仕事の量的負担 |
業務の棚卸しと再配分、業務の優先順位付けの明確化、不要業務の削減、効率化ツールの導入、人員補充の検討 |
仕事のコントロール |
従業員の裁量権の拡大・明確化、自律的な働き方(フレックスタイム等)の促進、業務改善提案制度の導入、担当業務に関する情報提供の充実 |
上司からの支援 |
管理職向けコミュニケーション研修・メンタルヘルス研修の実施、1on1ミーティングの定期的実施、フィードバック文化の醸成、相談しやすい雰囲気づくり |
同僚からの支援 |
チームビルディング活動の実施、部署内・部署間のコミュニケーション機会の増加(懇親会、社内イベント等)、相互サポート体制の構築、感謝を伝え合う文化の醸成 |
ストレスチェックは、ストレスが高い人への対応と職場環境の改善に繋げてこそ、本当に意味があるのです。
社員アンケートで健康意識や職場満足度を把握し対策の参考にする
社員アンケート(従業員サーベイ)は、社員がどう感じているか、満足度はどうか、健康への意識はどうか、といった主観的な情報を知るための良い方法です。
幸福度、仕事のやりがい、人間関係、職場環境、健康意識などについて質問して、社員の声を集めます。
年に1回の詳しい調査に加えて、短い期間で何回も行う「パルスサーベイ」も、変化を素早くキャッチするのに役立ちます。
これらの結果を健康診断やストレスチェックの結果と合わせて分析して、人事の取り組みや職場環境の改善に役立てましょう。
産業医や外部の専門機関と連携して健康管理体制を強化する
会社の健康管理をうまく進めるためには、専門家の知識を借りることが大事です。
その中心になるのが「産業医」で、医学的な知識をもとに、社員の健康管理や職場環境の改善についてアドバイスをしてくれます。
産業医としっかり連携することで、専門的なアドバイスがもらえたり、社員の安心感がアップしたり、一人ひとりに合ったケアができたり、健康経営を進められたりといった多くのメリットがあるのです。
専門的な内容も多い産業医との契約は、経験豊富な産業医紹介会社に相談するのがおすすめです。first callの産業医サービスは、ご要望に合わせた産業医をご紹介し、法令に沿った業務実施のサポートが可能です。
企業の健康リスク対策でよくある質問
会社の健康リスク対策を進める上で、多くの方が疑問に思うことについてお答えしていきます。
健康リスク対策の費用対効果はどのように評価できますか?
健康経営にかけたお金が、実際にどれくらいの効果を生んでいるのかを評価する指標の一つに「ROI(投資収益率)」というものがあります。
「(投資で得た利益-投資額)÷投資額×100」で計算できて、医療費が減ったり、休む人が減ったり、生産性が上がったりしたことを「利益」として評価します。
ROIを計算するためには、対策を始める前と後のデータをしっかりと測ることが必要です。
中小企業でも健康経営に効果的に取り組めますか?
はい、取り組めます。むしろ中小企業こそ、社員一人ひとりの影響が大きいことから、健康経営に取り組む意味が大きいかもしれません。
生産性が上がったり、良い人材が来て定着したり、会社のイメージが良くなるといったメリットがあるため、専門家や助成金を上手に使い、できることから始めるのがポイントです。
社員が健康診断やストレスチェックを受けるのを嫌がったらどうすればいいですか?
健康診断は社員も受ける義務があるのですが、ストレスチェックを受けるかどうかは本人の自由です。
もし拒否されたら、無理強いはできません。理由を丁寧に聞いて、制度のメリットや結果の安全性を説明し、不利な扱いがないことをはっきり伝えることが大切です。
メンタルヘルス不調を抱える社員への具体的な対応手順や注意点は?
メンタルヘルス不調で休んでいた社員が職場に戻るのをサポートするには、厚生労働省の手引きに沿って、5つのステップで進めます。
- 休業開始とケア
- 主治医の復帰判断
- 復帰できるかの判断と支援プラン作り
- 最終的な復帰決定
- 復帰後のフォローアップ
プライバシーを守ること、関係者としっかり連携すること、一人ひとりに合わせること、焦らないこと、職場環境に気をつけることが注意点です。
【まとめ】社員の健康リスク対策は会社の成長の土台
社員の健康リスクは、生活習慣病やメンタルの不調、働く環境、気候変動のように様々な原因で起こって、生産性が落ちたり、医療費が増えたり、裁判のリスクが出たり、会社のイメージが悪くなったりと、経営に深刻な影響を与えます。
健康リスク対策はお金がかかることではなく、会社が成長するために必要な「投資」です。
これが「健康経営」の考え方で、健康診断やストレスチェックを上手に使ったり、産業医と協力したり、職場環境を良くしたりなど、社員がいきいきと働ける環境を作ることが求められています。
社員の健康は、会社の重要な「財産」の一つです。健康リスクにしっかりと向き合って、計画的に対策をすることが、変化の激しい時代でも会社が競争力を保ち持続的に成長していくための土台になるのです。
また、これらの課題解決として、産業医の紹介や、全国どこでも面談予約・実施・意見書管理までシステム上で実施可能で、オンライン産業医面談が利用できる「first call」の活用も効果的です。