
医療・介護・福祉業界に強い産業医の選び方とは?院内医師への依頼リスクと働き方改革への対応
2024年4月に医師の働き方改革が本格的にスタートしました。
医療・介護・福祉業界の現場では、長年の課題だった長時間労働の是正や、業務の効率化など、組織のあり方を根本から見直す動きがますます加速しています。
かつては「聖職」という言葉や、現場スタッフの献身的な努力によってなんとか支えられていた体制も、今や法律に基づいた持続可能な環境づくりなしには立ち行かなくなっているのが現実でしょう。
「産業医なんて、法律で決まっているから仕方なく置くだけ」
もしかして、そのように考えてはいませんか?
自院にマッチした優秀な産業医を選任することは、法令遵守にとどまりません。職員の心身の健康管理を徹底することは、深刻な人手不足の中での「離職防止」に直結します。
この記事では、医療・介護・福祉業界ならではの複雑な事情を踏まえつつ、本当に役に立つ産業医の選び方や、院内医師に依頼する場合のリスクについて、最新法改正情報も交えてわかりやすく解説します。
なお、自院に合った産業医を効率よく探したい、オンラインでの面談体制も整えたいとお考えなら、クラウド型健康管理サービスの「first call」をチェックしてみてください。
目次[非表示]
医療・介護・福祉で産業医が必要になる50人の数え方
「従業員が50人を超えたら産業医の選任が必要」というのは有名なルールですが、シフト制や多職種が働くこの業界では、そのカウント方法に迷うことも多いのではないでしょうか。
ここでは、正しい労働者数の数え方と、小規模な事業所の対応について詳しく解説していきます。
- パートや非常勤も常時使用していれば人数に含める
- 同一敷地内の併設施設は原則としてひとつの事業場とみなす
- 従業員50人未満の事業所は地域産業保健センターを活用する
パートや非常勤も常時使用していれば人数に含める
産業医を選任する基準となる「50人」には、正職員だけでなく、パートやアルバイトの方も含まれます。
「週に数回しか来ないから」と除外してしまうケースが見受けられますが、継続して雇用されている実態があれば、労働者としてカウントしなければならないのです。
たとえば、週1回の非常勤医師や、短時間勤務のパート看護師であっても、契約が継続しているなら1名として数えます。
また、派遣スタッフを受け入れている場合、派遣元だけでなく派遣先の施設でも人数に含める必要があるため、注意が必要です。
うっかり50人未満だと思い込んでいたが、実は義務が発生していたという事態になってしまわないよう、しっかりと確認しておきましょう。
同一敷地内の併設施設は原則としてひとつの事業場とみなす
医療法人や社会福祉法人では、病院の敷地内に老人保健施設や訪問看護ステーションが併設されていることがよくあります。
この場合、事業場をどこまで一つとして見るかがポイントになります。
原則として、同じ敷地内にある施設はひとつの事業場として扱います。
例えば、病院と老健が渡り廊下でつながっているような場合は、両方の職員数を合算して判断することになるのです。
一方で、車で移動するような離れた場所にあるサテライトクリニックなどは、原則として別の事業場として扱われます。
場所ごとに50人を超えているかどうかを判断しましょう。
従業員50人未満の事業所は地域産業保健センターを活用する
小規模なクリニックやグループホームなど、従業員が50人に満たない事業所には産業医の選任義務はありません。
しかし、だからといって職員の健康管理をしなくて良いわけではないのです。
こうした小規模事業所のために、国は「地域産業保健センター」という仕組みを用意しています。
ここでは、長時間労働者の面接指導や健康相談などを原則無料で受けることができます。
また、最新のトピックとして知っておきたいのが、2025年5月の法改正です。
これにより、これまで努力義務だった「50人未満の事業所におけるストレスチェック」が義務化されることが決まりました(施行は2028年までの予定)。
小規模な事業所であっても、メンタルヘルス対策の重要性は年々高まっていると言えるでしょう。
ただ、この地域産業保健センターにも、いくつか使いにくい点があるのは事実です。
原則無料で利用できる反面、「利用回数に制限がある」「毎回担当医が変わるため、職場の内情を深く理解してもらいにくい」「予約が取りづらく、急な対応が難しい」といったようにデメリットも少なくありません。
もし、小規模な事業所であっても「いつも同じ医師に継続して相談したい」「オンラインで手軽に面談をお願いしたい」とお考えなら、「first call」を検討してみてください。
コストを抑えつつ、継続的なサポートを受けられるため、初めての産業保健体制づくりにはぴったりです。
医療・介護・福祉で院内の医師に産業医を依頼するリスク
「うちに医師がいるのだから、その人にお願いすれば安上がりで済む」と考える経営者の方も多いかもしれません。
ですが、院内の医師に産業医を任せることには、無視できないリスクやデメリットが潜んでいます。
ここでは、その具体的な問題点について見ていきましょう。
- 理事長や院長など経営権を持つ者は産業医を兼務できない
- 一般勤務医への依頼は上司と部下の関係が障壁になる
- 診療業務との兼ね合いで職場巡視などの法定業務が後回しになる
理事長や院長など経営権を持つ者は産業医を兼務できない
まず法律として、法人の代表者や施設のトップは産業医になることができません。
産業医の役割は、医学的な立場から従業員の健康を守るために、会社(事業者)に対して改善を求めることです。
もし経営者が産業医を兼ねてしまうと、経営上の利益と従業員の健康が天秤にかけられた際、適切な判断ができなくなる恐れがあるからです。
知らずに理事長を産業医として選任していると、法令違反となってしまうため注意が必要です。
一般勤務医への依頼は上司と部下の関係が障壁になる
では、代表権のない勤務医なら問題ないかというと、そうとも言い切れません。
院内の人間関係が壁になってしまうことがあるからです。
例えば、若手の勤務医が産業医になったとしましょう。長時間労働が常態化している部署の責任者が、自分の上司にあたる診療部長や院長だった場合、その医師は強く改善を求められるでしょうか。
「君の立場もわかるが、現場は回らないんだよ」と言われれば、それ以上言えなくなってしまうことが想像できます。
これでは、産業医としての職務や指導の機能が十分に果たせません。
診療業務との兼ね合いで職場巡視などの法定業務が後回しになる
院内の医師は、本来の診療業務で非常に忙しい日々を送っています。
外来や手術、急患対応などに追われていると、どうしても産業医の仕事は後回しにされがちです。
毎月1回の職場巡視が義務付けられていますが、「今日は忙しいからまた今度」と先送りになり、気づけば書類上だけの実施になってしまうことも珍しくありません。
いざ労災事故などが起きた際に「安全配慮義務を果たしていなかった」とみなされ、法人が大きな責任を問われるリスクが高まってしまうのです。
医療・介護・福祉の産業医に求める感染対策や働き方改革への対応
医療や介護の現場では、一般企業とは異なる特有のリスクや課題があります。
特に医師の働き方改革への対応は、制度開始から時間が経過し、より実効性が問われるフェーズに入っています。
ここでは、今の時代の産業医に求められる具体的な役割について解説していきます。
- 医師の働き方改革に伴う「長時間労働医師」への面接指導
- 針刺し事故や感染症の予防体制を構築する
- 腰痛予防やハラスメント対策によるメンタルケア
医師の働き方改革に伴う「長時間労働医師」への面接指導
医師の働き方改革により、時間外労働の上限規制が厳格化されました。
それに伴い、産業医による面接指導の重要性が増しています。
一般の労働者は月80時間を超えると面接指導の対象になりますが、医師の場合は「月100時間」という特有の基準が設けられており、しかも本人の申し出がなくても実施が必須となるケースがあります。
特に、大学病院などから派遣を受けている場合、副業・兼業先の労働時間も通算して管理する必要があるため、制度を正しく理解し、的確に面接指導を行える産業医の存在が不可欠になるでしょう。
針刺し事故や感染症の予防体制を構築する
医療・介護従事者にとって、感染症は常に隣り合わせのリスクです。
患者への感染対策だけでなく、職員自身を守るための対策も産業医の重要な仕事です。
具体的には、B型肝炎などのワクチン接種スケジュールの管理や、針刺し事故が起きた際の対応フローの整備などが挙げられます。
また、インフルエンザや新型コロナウイルスなどの流行期には、N95マスクの適切な使用方法の指導など、現場に即した予防体制づくりをサポートしてくれる医師が理想的です。
腰痛予防やハラスメント対策によるメンタルケア
介護現場での腰痛や、患者様・ご家族からのハラスメント(ペイシェントハラスメント)も深刻な問題です。
これらは離職の大きな原因にもなるため、対策は必須と言えるでしょう。
産業医には、腰痛を防ぐための福祉機器導入の助言や、作業環境の改善指導が求められます。
また、ハラスメントを受けて心が疲弊してしまった職員に対し、早期に相談に乗り、メンタルヘルス不調を未然に防ぐケアも重要です。
職員が安心して働ける環境を作ることが、長く働いてもらうためには重要です。
失敗しない医療・介護・福祉に強い産業医の選び方
では、実際にどのような産業医を選べばよいのでしょうか。
医師免許があれば誰でも同じ、というわけではありません。
ここでは、自院にマッチした産業医を選ぶための3つのポイントをご紹介します。
- 精神科や心療内科の経験や産業医科大学などの専門性を重視する
- 看護師や介護士など多職種連携の風土を理解しているか
- 報酬額だけでなく訪問頻度や紹介会社のサポート体制を見る
精神科や心療内科の経験や産業医科大学などの専門性を重視する
メンタルヘルス不調者が増えている現代において、精神科や心療内科の経験がある産業医はとても心強い存在です。
休職が必要かどうかの判断や、復職時の支援プラン作成など、専門的な知識がある医師ならスムーズに対応できます。
また、産業医科大学出身者や「労働衛生コンサルタント」の資格を持つ医師は、法律や企業のリスク管理に詳しいため、経営的な視点からも有益なアドバイスをくれることが多いでしょう。
看護師や介護士など多職種連携の風土を理解しているか
医療や介護はチームプレーです。医師だけでなく、看護師、介護士、リハビリスタッフなど、多くの職種が連携して動いています。
そのため、上から目線ではなく、多職種の立場や業務内容を理解し、フラットにコミュニケーションが取れる産業医が望ましいです。
「夜勤明けのしんどさ」や「現場の忙しさ」に共感してくれる医師なら、職員も安心して相談できるでしょう。
面談の際に、現場の空気に馴染めそうかどうかを確認することをおすすめします。
報酬額だけでなく訪問頻度や紹介会社のサポート体制を見る
産業医を探す際、どうしても報酬額ばかり気にしてしまうかもしれませんが、サービスの内容もしっかり見極める必要があります。
地元の医師会に頼むのが安価な場合もありますが、産業医紹介会社を利用すると、事務作業の代行やストレスチェックの実施など、人事担当者の負担を減らす支援サポートがついていることがあります。
また、もし相性が合わなかった場合に別の医師を紹介してもらえる保証があるのもメリットです。
たとえば、「first call」では、産業医の紹介だけでなく、ストレスチェックや産業医面談の管理もオンラインで一括管理できる仕組みが整っています。
コストパフォーマンスだけでなく、こうした「運用のしやすさ」も選ぶ際の大事なポイントになります。
医療・介護・福祉の産業医選任に関するよくある質問
最後に、産業医の選任に関してよくある疑問についてお答えします。
ここでは、罰則や複数施設がある場合の対応について解説していきます。
- 産業医を選任しなかった場合に罰則はありますか?
- 訪問看護ステーションなど複数の施設がある場合の選任基準は?
産業医を選任しなかった場合に罰則はありますか?
はい、あります。法律で定められた義務ですので、違反すると50万円以下の罰金が科される可能性があります。
しかし、それ以上に怖いのは民事上のリスクです。
もし過労死や事故が起きた際、「産業医を選任していなかった」「安全配慮義務を怠っていた」と判断されると、法人に対して多額の損害賠償が請求されることになりかねません。
会社を守るための保険と考えて、適切に選任を行うことが重要です。
労働基準監督署からの是正勧告を受ける前に、体制を整えておくべきでしょう。
訪問看護ステーションなど複数の施設がある場合の選任基準は?
原則としては、事業場ごとに判断します。
例えば、本院が50人以上なら選任が必要ですが、離れた場所にある訪問看護ステーションが10人であれば、そこには選任義務はありません。
ですが、本院には産業医がいるのに、ステーションの職員は誰も相談できないとなると、法人内で不公平感が生まれてしまいます。
おすすめなのは、本院の産業医に全体の統括を依頼するか、同じ紹介会社を使って連携を取れるようにすることです。
オンライン面談などを活用して、離れた拠点の職員もケアできる体制を整えるのが理想的でしょう。
【まとめ】医療・介護・福祉の現場を守る実働型の産業医を選ぶ
ここまで、医療・介護・福祉業界における産業医の選び方や重要性について見てきました。
2024年の働き方改革、そして2025年のストレスチェック義務化拡大の決定など、法整備は年々進んでいます。
複雑化するメンタルヘルス問題に対応するためには、「とりあえず名前だけ貸してくれる先生」では通用しません。
法律を遵守し、職員が健康で生き生きと働ける環境を作ることは、結果として医療やケアの質を上げ、経営の安定にもつながります。
- 人数のカウント:パートも含めて正しく数える。
- リスク回避:院内医師への安易な兼務依頼は避ける。
- 人選のポイント:メンタル対応力や現場への理解がある医師を選ぶ。
これらを意識して、現場の実情に合った「実働型」の産業医をパートナーとして迎え入れてください。
もし、「どこに頼めばいいかわからない」「オンライン面談もできる柔軟な産業医がいい」とお考えであれば、産業医の紹介からストレスチェック、面談管理までをワンストップで支援する「first call」の活用を検討してみてください。
職員と法人を守るために、最適なパートナーを見つけましょう。



























