従業員50名未満の企業もストレスチェック義務化へ。2028年問題の対策を解説

これまで従業員数が50名以上の事業場のみに義務付けられていた「ストレスチェック」ですが、2025年5月の労働安全衛生法改正により、50名未満のすべての事業場へ拡大されることが正式に決定しました。

小規模なオフィスや工場を運営されている経営者様や人事担当者様にとっては、「また新しい業務が増えるのか」「コストや負担が心配だ」と不安に思われることも多いでしょう。

しかし、この法改正は義務の押し付けではありません。

しっかりと準備をして導入を進めることで、従業員のメンタルヘルス不調による急な休職や離職率の低下を防げるだけではなく、採用活動において「人を大切にするホワイトな企業」という強力なアピール材料にもなるのです。

いわゆる「2028年問題」と呼ばれるこのストレスチェックの完全義務化に向け、今のうちから正しいスケジュールや実施方法、そして活用できる支援制度を知っておけば、慌てることなく、むしろ会社を良くするチャンスとして役立てることができるでしょう。

もし、「産業医との契約がないからどうすればいいかわからない」「できるだけ費用を抑えて手軽に始めたい」とお考えであれば、産業医の選任義務がない50名未満の企業でも使いやすい「first call」の活用を視野に入れてみてください。

オンラインで完結でき、必要な時だけ産業医面談を依頼できるサービスを知っておくだけでも、準備のハードルはぐっと下がります。

目次[非表示]

  1. ストレスチェック50名未満の義務化と2028年問題のスケジュール
    1. 2025年の法改正公布から3年以内に始まる
    2. 産業医不足などの体制整備で完全義務化は2028年頃になる
    3. 義務化を待たずに実施すれば早期に体制を整えられる
  2. ストレスチェック50名未満の義務化に向けた実施方法
    1. 外部委託ならプライバシーを守って実施できる
    2. 医師でなくても研修を受けた看護師なら実施できる
    3. 地域産業保健センターなら無料で面接指導が受けられる
    4. 労基署への報告は簡素化され事務負担が減る
  3. ストレスチェック50名未満の義務化におけるパート従業員の扱い
    1. 正社員の4分の3以上働くなら対象になる
    2. 拒否されても会社に罰則はない
    3. 申し出がない人には窓口を案内する
  4. ストレスチェック50名未満の義務化に伴う費用とサービスの選び方
    1. Web版は安価で、紙は現場作業に向いている
    2. 国が設置する無料の支援センターを活用する
  5. ストレスチェック50名未満の義務化に先行して導入するメリット
    1. メンタル不調による休職や退職を防げる
    2. 人を大切にする会社として採用力が上がる
    3. 職場の課題が見つかり生産性が向上する
  6. ストレスチェック50名未満の義務化に関するよくある質問
    1. 従業員が10名未満でも集団分析は必要ですか?
    2. 社長の家族でも実施事務従事者になれますか?
  7. 【まとめ】ストレスチェック50名未満の義務化に備え準備を始める

ストレスチェック50名未満の義務化と2028年問題のスケジュール

ここでは、義務化が具体的にいつから始まるのか、なぜその時期なのかといったスケジュールの全体像について詳しく解説していきます。

これまで「当面の間は努力義務」とされていましたが、法律の公布によりカウントダウンはすでに始まっています。

  • 2025年の法改正公布から3年以内に始まる
  • 産業医不足などの体制整備で完全義務化は2028年頃になる
  • 義務化を待たずに実施すれば早期に体制を整えられる

2025年の法改正公布から3年以内に始まる

2025年(令和7年)5月14日に改正労働安全衛生法が公布され、50名未満の事業場へのストレスチェック義務化が法律として確定しました。

気になる施行の時期ですが、法律では「公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日」とされています。

つまり、遅くとも2028年(令和10年)5月頃までにはスタートする見込みです。

まだ少し先の話のように感じるかもしれませんが、この期間は企業が新しい制度に慣れ、実施体制を整備するための大切な準備期間として設けられているのです。

産業医不足などの体制整備で完全義務化は2028年頃になる

なぜ施行までに3年もの準備期間があるのでしょうか。

一番の理由は、小規模な事業場には産業医が選任されていないことが多いため、面接指導を行う医師の確保や、サポート体制を整えるのに時間がかかるからです。

準備期間を設けずに、全国すべての事業場で一斉にスタートしてしまうと、現場が混乱してしまう恐れがあります。

そのため、医師や保健師などの専門家の確保や、外部委託サービスの受け入れ態勢が整う2028年頃を目標に、完全義務化が進められる予定となっています。

現状では、この期間を使って無理のない計画を立てることが求められます。

義務化を待たずに実施すれば早期に体制を整えられる

義務化の期限は2028年ですが、ギリギリまで待つ必要はありません。

むしろ、他社が一斉に動き出して外部機関が手一杯になってしまう前に、先行して導入を進めておくことをおすすめします。

今のうちから少しずつ始めておけば、自社に合った無理のない運用ルールを作ることができますし、従業員の健康意識も自然と高まっていくでしょう。

「努力義務」のうちにトライアルとして実施し、現状の課題を洗い出してみるのも良い戦略です。

早期に取り組むことで、将来的な負担を分散させることにもつながります。

ストレスチェック50名未満の義務化に向けた実施方法

「ストレスチェックを行う産業医もいないし、事務作業をする人も足りない」という小規模企業ならではの悩みもあるでしょう。

ここでは、そんな企業でも負担なく、かつプライバシーを守りながら実施するための具体的な方法について解説していきます。

  • 外部委託ならプライバシーを守って実施できる
  • 医師でなくても研修を受けた看護師なら実施できる
  • 地域産業保健センターなら無料で面接指導が受けられる
  • 労基署への報告は簡素化され事務負担が減る

外部委託ならプライバシーを守って実施できる

小規模な職場において気をつけるべきなのは、個人のプライバシー保護です。

「誰が高ストレスだったか」といった情報が社内に漏れてしまうと、職場の雰囲気が悪くなってしまう恐れがあります。

そのため、厚生労働省も50名未満の事業場では、外部委託を積極的に想定しています。

専門の業者に委託すれば、回答データの集計や結果の通知などの業務をシステム上で効率的に進められるだけではなく、クラウド上で安全にデータを管理できます。

ストレスチェックの実施において、企業側には結果の保存義務がありますが、システムを活用することで、人事権を持つ人が個人の回答内容を閲覧できないように権限設定を行うなど、プライバシーに配慮した厳格な運用が可能になります。

例えば、クラウド型のサービスである「first call」であれば、回答データの集計から結果通知までがシステム上で完結し、クラウド上で安全にデータを管理することができます。

医師でなくても研修を受けた看護師なら実施できる

ストレスチェックの「実施者」は、通常は産業医や保健師が務めますが、産業医がいない場合はどうすればよいのでしょうか。

実は、医師でなくても、厚生労働大臣が定める研修を受けた看護師や精神保健福祉士であれば、実施者になることが可能です。

もし社内に看護師資格を持つ社員がいるのであれば、研修を受けてもらい実施体制を内製化するのも一つの手です。

ただし、実施者研修は開催日程が限られていますので、早めに次年度のスケジュールなどを確認しておくと良いでしょう。

もちろん、外部機関に委託する場合は、その機関のスタッフが実施者となってくれますのでご安心ください。

地域産業保健センターなら無料で面接指導が受けられる

高ストレスと判定された従業員から申し出があった場合、医師による面接指導を行う必要があります。

しかし、契約している産業医がいないと困ってしまいます。

そんな時に活用できるのが「地域産業保健センター(地さんぽ)」です。

公的な支援機関で、従業員50名未満の事業場を対象に、メンタルヘルス不調者への面接指導などを原則無料で提供してくれます。

ただし、地域産業保健センターにも「利用回数に制限がある」「面談予約が取りにくい」「大企業の地方事業場などは利用できない場合がある」といった制約があるのも事実です。

もし、「なるべく早く面談を実施したい」「スムーズに予約を取りたい」という場合は、「first call」のスポットオンライン面談サービスがおすすめです。

必要な時だけ医師につなぐことができるため、状況に合わせて使い分けると良いでしょう。

労基署への報告は簡素化され事務負担が減る

現在、50名以上の事業場では労働基準監督署への報告が必要ですが、50名未満の事業場については事情が異なります。

事務負担を軽減するために、一般健康診断と同じように、労基署への報告義務は当面の間、課さない(または簡素化する)方向で調整されています。

報告の手間がないとはいえ、実施した記録は5年間保存しておく必要がありますので、管理はしっかりと行っておきましょう。

こうした配慮により、小規模な事業者でも取り組みやすい仕組みになっています。

ストレスチェック50名未満の義務化におけるパート従業員の扱い

「うちはパートさんが多いけれど、ストレスチェックは全員対象になるの?」という疑問をお持ちの方も多いはずです。

ここでは、正社員以外の従業員、特にパートやアルバイトの方が対象になる条件や、受検時の対応について解説していきます。

  • 正社員の4分の3以上働くなら対象になる
  • 拒否されても会社に罰則はない
  • 申し出がない人には窓口を案内する

正社員の4分の3以上働くなら対象になる

ストレスチェックを受けなければならないのは、正社員だけではありません。

以下の条件を満たすパート・アルバイトの方も「常時使用する労働者」として対象になります。

  1. 期間の定めのない契約、または1年以上の契約期間がある(更新込み)
  2. 1週間の労働時間が、正社員の4分の3以上である

例えば、正社員が週40時間働いている職場なら、週30時間以上働いているパートの方も対象となりますので、漏れがないように確認しておきましょう。

拒否されても会社に罰則はない

会社には「実施する義務」がありますが、従業員側には「受検する義務」までは課されていません。

ですので、もし従業員が「受けたくない」と拒否したとしても、会社が罰則を受けることはありません。

とはいえ、受検率が低いと職場の正確な状況が把握できなくなってしまいます。

プライバシーは守られることや、受けることのメリットを丁寧に説明し、できるだけ多くの人に受けてもらえるよう働きかけることが大切です。

申し出がない人には窓口を案内する

高ストレスという結果が出ても、会社に知られたくないという理由で、医師による面接指導を申し出ない人もいます。

本人が希望しない場合、会社が無理やり面接を受けさせることはできません。

その代わり、社外の相談窓口やEAPサービス、あるいは先ほど紹介した地域産業保健センターの連絡先を案内してあげましょう。

「何かあったらここに相談できる」という安心感を用意しておくことが、会社の安全配慮義務を果たすことにもつながります。

ストレスチェック50名未満の義務化に伴う費用とサービスの選び方

予算が限られる中小企業にとって、費用対効果は非常に重要です。

ここでは、費用を抑えつつ自社に合ったサービスを選ぶためのポイントについて解説していきます。

  • Web版は安価で、紙は現場作業に向いている
  • 国が設置する無料の支援センターを活用する

Web版は安価で、紙は現場作業に向いている

実施方法には、スマホやPCを使う「Web版」と、マークシートを使う「紙版」の2種類があります。

Web版は1人あたり数百円から利用でき、集計も自動で行われるため担当者の負担が軽いのがメリットです。

一方、紙版はコストが少し高めですが、PCを持たない現場作業の方や、スマホの操作に慣れていない方が多い職場では確実な方法といえます。

自社の従業員の働き方に合わせて選ぶか、あるいは両方を組み合わせられるサービスを探してみると良いでしょう。

資料を取り寄せて比較検討することをおすすめします。

国が設置する無料の支援センターを活用する

費用を抑えるためには、公的な支援をうまく使うのがおすすめです。

以前あった個別の「ストレスチェック助成金」は廃止されましたが、現在は商工会議所などの団体を通じた「団体経由産業保健活動推進助成金」などのスキームが存在します。

ただし、こうした助成金は人気があり、年度の途中で予算上限に達して受付終了となるケースも多々あります。

まずは加入している団体や、近くの産業保健総合支援センターに問い合わせて、翌年度の利用枠などを確認してみることを推奨します。

無料で使えるリソースは最大限に活用しましょう。

ストレスチェック50名未満の義務化に先行して導入するメリット

ストレスチェックが義務化されるから仕方なく行うのではなく、会社を良くするための取り組みとして活用してみませんか?

ここでは、ストレスチェックを導入することで得られる、経営上の具体的なメリットについて解説していきます。

  • メンタル不調による休職や退職を防げる
  • 人を大切にする会社として採用力が上がる
  • 職場の課題が見つかり生産性が向上する

メンタル不調による休職や退職を防げる

この制度の一番の目的は、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐことです。

本人が自分のストレス状態に気づき、早めにケアをすることで、うつ病などによる長期休職や退職のリスクを減らすことができます。

特に人手が足りない小規模企業において、貴重な戦力が抜けてしまうダメージは計り知れません。

予防に力を入れることは、結果的に採用コストや教育コストの削減にもつながるのです。

人を大切にする会社として採用力が上がる

「ストレスチェックをしっかりと実施している」「メンタルヘルス対策に力を入れている」という事実は、求職者にとって大きな魅力となります。

最近は働きやすさを重視する人が増えていますので、健康管理体制が整っていることは「ブラック企業ではない」という証明になり、他社との差別化になるでしょう。

結果として、優秀な人材が集まりやすくなり、採用力の向上も期待できます。

職場の課題が見つかり生産性が向上する

個人の結果を集計して部署ごとの傾向を見る「集団分析」を行えば、職場の見えない課題が浮き彫りになります。

「この部署は仕事量が多すぎるのかも」「ここは上司の支援が足りていないようだ」といった気づきが得られれば、具体的な改善策を打つことができるでしょう。

職場環境が良くなれば、従業員のモチベーションも上がり、組織全体の生産性アップにつながるはずです。

ストレスチェック50名未満の義務化に関するよくある質問

最後に、50名未満の小規模事業場の担当者が抱えるよくある質問のなかで、特に気になる「人数の少ない職場での分析」や「実施担当者の条件」について解説していきます。

  • 従業員が10名未満でも集団分析は必要ですか?
  • 社長の家族でも実施事務従事者になれますか?

従業員が10名未満でも集団分析は必要ですか?

集団分析は、原則として10名以上の集計対象がいないと実施できません。

10名未満だと個人が特定されてしまう恐れがあるため、全員の同意がない限り結果を作成・提供してはいけないことになっています。

ですので、10名未満の事業場では無理に集団分析をする必要はありません。

個人の結果通知によるセルフケアの促進や、日頃のコミュニケーションを大切にすることに重きを置いて運用するのが現実的でしょう。

社長の家族でも実施事務従事者になれますか?

実施事務従事者(個人のデータなどを扱う事務担当)には特別な資格はいりませんが、「人事権を持つ人」はなることができません。

社長のご家族であっても、もし社内で人事権を持っていたり、実質的に評価に関わっていたりする場合は、実施事務従事者になるのは避けたほうが無難です。

【まとめ】ストレスチェック50名未満の義務化に備え準備を始める

2028年頃の完全義務化に向け、50名未満の企業も準備を始める時期が来ています。

2025年5月の法改正公布により、「検討中」ではなく「決定事項」となりました。

働く人の心と体を守り、元気な職場を作るための大切な取り組みです。

外部委託や公的な支援センターをうまく活用すれば、コストや手間を抑えつつ、効果的な運用が可能です。

義務化を負担と捉えるのではなく、会社をより良くするための投資と考えて、できるところから少しずつ準備を進めていきましょう。

もし、「産業医との契約がない」「まずは低コストで始めたい」とお考えなら、クラウド型健康管理サービスの「first call」をぜひチェックしてみてください。

ストレスチェックのオンライン実施はもちろん、面接指導が必要になった時だけ医師に依頼できるスポット対応も可能です。

遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。

クラウド型健康管理サービス「first call」は、
人とシステムの両方で、企業の健康管理をサポートします。

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