在宅勤務における健康課題と企業が行う健康管理の取り組み

在宅勤務における健康課題と企業が行う健康管理の取り組み

新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、人々の働き方・生活スタイルが変化したことにより、心身の健康に影響を及ぼす2次被害が懸念されています。

また、在宅勤務が続く職場においては、従業員の働く様子や健康状態を確認できないため、従業員の健康管理が難しいという意見も見受けられます。

これから在宅勤務制度の導入・拡大を検討していて、「在宅勤務者への健康管理をどのように行えばよいのだろう」「健康管理に関する取り組みについて詳しく知りたい」とお悩みの人事・総務担当者の方も多いのではないでしょうか。

今回は、在宅勤務者における身体面の健康課題と、企業が行う健康管理の取り組みについて解説します。

なお、メンタルヘルス不調などの精神的な健康管理については、こちらの記事をご確認ください。

  テレワーク環境下における健康課題とメンタルヘルス対策 働き方改革や新型コロナウイルス感染症の感染拡大などの影響により、テレワークの実施率が増加傾向にあります。この記事では、テレワーク環境下における健康課題と、企業に求められるメンタルヘルス対策について解説します。 first call


目次[非表示]

  1. 在宅勤務における身体的な健康課題
  2. 在宅勤務者に対する健康管理の取り組み
    1. 1 運動の啓発・機会提供
    2. 2 労働時間管理・長時間労働の制限
    3. 3 適切な作業環境の提供
  3. 在宅勤務者の健康管理のポイント
  4. まとめ


在宅勤務における身体的な健康課題

在宅勤務の実施における懸念点には、外出機会が減少することによる運動不足や座位時間の増加、労働時間の管理が難しいことによる過度な長時間労働などが挙げられます。

また、自宅の狭さや周囲の雑音が邪魔になり、本来業務に必要とされる作業環境を整備できないケースも懸念点されます。勤務場所として不十分な環境により、「仕事に集中できない」「日常生活との切り離しが難しい」と心身にストレスを感じる従業員もいます。

こうした運動不足の長期化、長時間労働の発生、座位時間の増加、心身のストレスによって、以下のような健康課題につながるリスクがあります。


▼在宅勤務で起こりやすい身体的な健康課題

  • 腰痛・肩こり・疲労
  • 体重増加、生活習慣病の発症・悪化
  • 体力の低下
  • 体調不良


出典:スポーツ庁『新型コロナウイルス感染対策 スポーツ・運動の留意点と、運動事例について』『Withコロナ時代に運動不足による健康二次被害を予防するために』『新しい生活様式におけるスポーツの在り方』/厚生労働省『令和3年版 労働経済の分析』『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン



在宅勤務者に対する健康管理の取り組み

在宅勤務による健康課題を解決するために、企業として従業員の健康管理に取り組む必要があります。ここでは、在宅勤務者の健康保持・増進に向けて企業が実践できる取り組みについて解説します。


1 運動の啓発・機会提供

運動不足による健康課題を解消するために、従業員へ啓発を行ったり、運動機会を提供したりする取り組みです。

自宅でできる運動の情報提供を行うことで、意識的に運動不足を解消する行動を促せます。また、企業が運動機会を提供することで、従業員に参加・活用してもらい、在宅勤務による運動不足の解消にもつなげることも可能です。


▼運動の啓発・機会提供の例

  • 自宅でできるストレッチ・エクササイズのプログラムを提供する
  • 在宅勤務者・オフィス勤務者の双方が利用できるトレーニング・フィットネスマシーンや器具をオフィスに導入する
  • スポーツジムとの法人契約を締結して、従業員に利用を呼び掛ける
  • 社内に運動同好会を設置して、定期的なスポーツイベントを実施する
  • 電子万歩計を付与して、歩数に応じた表彰制度を導入する


出典:厚生労働省『おうちで+10(プラステン)超リフレッシュ体操』/経済産業省『健康経営の推進について』『令和2年3月 健康経営優良法人取り組み事例集


2 労働時間管理・長時間労働の制限

在宅勤務中の過度な長時間労働を防ぐために、客観的な記録方法によって労働時間を管理する方法があります。

従業員の労働時間を適正に把握することは、使用者の責務です。在宅勤務者においては、パソコンの使用時間の記録、ICカードなどを用いて管理することが求められます。

また、労働時間の管理に加えて、次のような取り組みを講じることも必要です。


▼在宅勤務中の長時間労働を防ぐ取り組み

  • 時間外・休日・深夜におけるメール送付の自粛指示
  • 深夜や休日の社内システムへのアクセス制限
  • 時間外・休日・深夜労働の事前許可制度の規定


出典:厚生労働省『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準』『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン


3 適切な作業環境の提供

企業には、自宅で作業環境を確保するためのサポートや、在宅勤務中の健康保持に向けた配慮・措置が求められます。

在宅勤務を実施する際は、必要な作業環境について事前に教育・助言を行い、在宅勤務者自身で適切な環境を整備するように促します。

また、自宅で作業環境を整備できない在宅勤務者に対しては、企業側が設備機器を貸与したり、快適に業務を行える施設の提供を検討したりするといった対応も必要です。


▼適切な作業環境を整備するための配慮・措置

  • 自宅作業場における広さ・明るさ・温度・姿勢・空気環境などについてまとめたパンフレットや資料を提供する
  • パソコン・周辺機器、文具、執務を行う机と椅子などを貸与する
  • サテライトオフィスを導入して、自宅の環境整備が難しい従業員へ活用を促す
  • テレワーク勤務手当として通信費や光熱費を支給する


出典:厚生労働省『令和3年版 労働経済の分析』『自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備』『テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン』/テレワーク総合ポータルサイト『テレワーク実施の際に要した通信費用・水道光熱費などの費用は会社が負担すべきでしょうか。



在宅勤務者の健康管理のポイント

在宅勤務者への健康保持・増進に向けた取り組みに加えて、健康リスク・健康課題を抱える在宅勤務者を早期発見することも欠かせません。そのためには、従業員が気軽に健康相談ができる体制を構築することがポイントです。

在宅勤務では、上司や同僚と対面でのコミュニケーションが取れないため、周囲が従業員の体調の変化に気がつきにくいといった問題があります。

厚生労働省の『テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン』によると、在宅勤務の問題・課題として以下が挙げられています。


▼在宅勤務(テレワーク)の問題・課題


従業員側
健康管理が難しい
6.0%
上司とのコミュニケーションが難しい
11.4%
孤独感や疎外感を抱く
5.7%
企業側(終日在宅の場合)
コミュニケーションに問題がある
27.3%
安全衛生管理が難しい
7.3%

厚生労働省『テレワークにおける適切な労務管理のためのガイドライン』を基に作成


このように、従業員・企業ともにコミュニケーションの取りづらさを感じており、健康管理・安全衛生管理に関する問題を抱えています。

在宅勤務による健康リスクを防ぐためには、運動不足、または心身の疲労やストレスが溜まっている在宅勤務者の不調を早期発見できる仕組みが必要です。


▼不調を早期発見する仕組みづくりの例

  • チャットツールを導入してコミュニケーションを促進する
  • 上司や管理監督者による定期的なオンライン面談を実施する
  • オンラインで産業医に健康相談ができる環境を整備する


出典:厚生労働省『第3節 テレワーク定着に向けた課題について』『テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン



まとめ

この記事では、在宅勤務者への健康管理について以下の内容を解説しました。


  • 在宅勤務における身体的な健康課題
  • 在宅勤務に対する健康管理の取り組み
  • 在宅勤務者の健康管理のポイント


在宅勤務では、運動不足、座位時間の増加、過度な長時間労働の発生によって、身体的な疲労や生活習慣病などを引き起こすことがあります。また、従業員同士のコミュニケーション不足から、身体の不調を気軽に相談することが難しいといった課題もあります。

従業員の健康課題を解決するには、運動機会を提供して意識的な運動を促すとともに、労働時間の適正な管理、適切な作業環境の整備が必要です。加えて、在宅勤務者の体調の変化にいち早く気づくために、社内のコミュニケーションや健康相談を実施できる仕組みづくりも大切です。

クラウド型健康管理サービス『first call』は、オンラインでの産業医面談が可能です。また、12科目の専門医とのチャット相談/テレビ電話にも対応しており、在宅勤務者が気軽に健康相談ができる環境を整備できます。

在宅勤務者の健康管理にお悩みの方は、ぜひご相談ください。


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遅沢 修平
遅沢 修平
上智大学外国語学部卒業。新卒で大手証券会社入社。 その後、スタートアップ企業への転職を経て、2020年4月にメドピアに入社(Mediplat出向)。 クラウド型健康管理サービス「first call」の法人営業・マーケティングを担当し、22年6月より産業保健支援事業部マーケティング部長に就任。
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